俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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31_決戦、?????(人物紹介あり)

『この長い夢は、決して悪夢なんかじゃない』

 

『君たちがいた世界と同じように続く、もう一つの世界なんだ』

 

『ドリームランド……本来なら存在する事が出来なくなったこの世界が形を保ち続けているのは、みんなが祈っているから』

 

『だから……どうかお願いだ、シンを倒さないでほしい』

 

 シン……

 

『……罪だよ。アレは、いつまでも世界が続くと驕っていた僕たちの罪そのものなんだ』

 

 石と化した人間達と同様に両手を握り、シンに向けて祈る少年。

 唄は流れ続けている。

 あの唄は何だ、あれが祈りなのか? 

 

『アレは──』

 

 少年から、未知の話を聞かされる。

 召喚術、異界から召喚獣と呼ばれる存在を呼び出す摩訶不思議な力。

 崩壊しかけているこの世界を繋ぎ止める楔の役割を背負っているのが召喚術であり、その楔を形作っているのが石になっても祈っている人間達? 

 

「ピカチュウ、どういうこと? 僕全然わかんないよ……」

 

 俺も分からない。

 ダンジョンとラスボスが待ち受けていると思っていたらそこにいたのは大昔に絶滅したはずの人間で、人間は石になって世界を維持し続けていました。

 ……何言ってんだ? 

 

『君達が平穏に暮らせていたのなら、僕たちが祈っていたのにも意味があった』

 

 少年は、心の底から嬉しそうに胸を撫で下ろす。

 

『それにしても……ドリームランドの住民でここを訪れたのは君が初めてだ、アリゲイツ』

 

 ドリームランドの住民で? 

 何だその含みは。

 

『君たちもまた、召喚獣なのさ』

 

 そして召喚獣はこの神殿に引き寄せられる……そういうわけか。

 俺たちがあっちの世界で存在していたのは事実なのか? 

 

『うん。シンがいなくなったらこの世界は無くなってしまうけど、君たちは目覚めるだけだ』

 

 それはありがたい。

 でも、アリゲイツにとっては嬉しくも何とも無いか……

 アリゲイツが少し目を怒らせながら一歩前に出た。

 

「一つだけ教えて」

 

『うん』

 

「あの地震はシンの歌で引き起こされたの?」

 

『もちろん違う。でも、シンが無関係なわけでもない』

 

 少年は頭を下げた。

 

『お願いです、僕たちを助けてください』

 

 各地のダンジョンに現れていたのはシンのコケラ。

 シンに自律的な意思は無いが防衛機構が存在した。

 外部から強い刺激を受けた時に自らの鱗を周囲にばら撒いて、強力なモンスターとして顕現させる。

 では、シンに強い刺激を与えたのは一体? 

 地震を引き起こし、大陸を二つに裂いてこの神殿を露出させたのは? 

 

『地脈の奥深く、地下世界にアレはいる』

 

『殻を被って、自らをアン=イシュワルダと名乗る者──』

 

 扉から出て、座り込む。

 俺の住んでいた世界ともホシノ達の世界とも違う、もう一つの世界。

 そのポケダン世界の住民であるアリゲイツが元気なさげにしているので何とか励ましてみようと頑張るも、世界が壊れていましたなんて事を教えられてしまったのは相当なショックだったようだ。

 まあでも、元気出せよ! 

 地下世界の親玉をぶっ殺せば何事もなく世界は続いていくんだろ! 

 ソレで元の世界に帰るのかって? 

 そりゃあな。

 コイツらを帰さなきゃいけないっていうのは変わらないし。

 それに俺たちは召喚獣らしいし、いつかはそうなる運命だったんだ。

 ……あんな事を教えられて、世界の真実を知りながら生きていくのは嫌だよな。

 まあでも、俺もあんまりお前と変わらないから気にしないでいいよ。

 いや本当だよ、別に慰めとかじゃないって。

 ……本当だっつってんだろうが! 

 

 大扉の上にあるタペストリー、見えるよな。

 何の嫌がらせか知らねえけど、アレ俺の故郷なんだよね。

 そうそう、永遠に失われた俺の故郷だ。

 心配すんな、そこまで悲観的じゃ無いし。

 故郷なくなっちゃった〜うぇーん、とはならない。

 俺が全部失くしただけだからな、きっと俺の家族だってそこにはいる。

 寂しくないかって? そうだなあ……きっと俺1人だったらダメだったよ。でも、あいつらがいた。

 あいつらがいるから俺は普通に生きていける。

 大事なんだ、何よりも。

 でもワニノコ……お前もきっといつか、大事な物を見つけられる日が来る。

 その未来まで、お前は必死に生きてくれ。

 もちろんそれより先にやる事はあるけど。

 

 村に戻って準備を整えるのもアリだ。

 ラスダンに乗り込む前はセーフポイントが一つくらいあるもんだからな。

 

 ……そんじゃあ、カッコ付かないけど一旦帰りますか! 

 

 

 ──────

 

 

 大事なものを見つけろ、か。

 短い日々だった。

 1年なんてあっという間だったよ。

 でもピカチュウ、君はこの世界に来てからたったの一年で全てを変えたんだね。

 すごいなあ。

 かっこいいなあ。

 僕が君たちのいた世界に行ったとして、一年で一体何を変えられるんだろう。

 ピカチュウの小さな体で巻き込まれて、あの4匹を引っ張っていくのはすごい大変だったとおもう。

 ピカチュウはそれをおくびにも出さないけど、絶対そうだ。だからこそあんなにダンジョンに潜ってたんだし。

 ……まだ、最後の敵を倒してないのにこんなことを考えるのはおかしいんだけど。

 

 君と、彼女らと、僕がいれば何だってできる。

 どんな敵でも打ち倒せる。

 それは僕が1年間君たちと一緒に過ごしてきたからこそ分かる、揺るがない結論だ。

 だから、最後の敵だって必ず倒せる。

 君たちは元の世界に帰ってハッピーエンドだ。

 あのニンゲンに頼めば帰してもらえる。

 

 じゃあ僕は? 

 ……家族がいる。

 村のみんながいる。

 なんならピカチュウよりも友達だって多い。

 それに僕はエリートランクだ。

 1人だって依頼はこなせる。

 きっとやっていけるんだろう。

 そんな気がした。

 でも……だからこそ、ピカチュウに隣にいて欲しかった。

 お父さん達はなんか変なことを考えているみたいだけど、そういうのじゃなくても良いんだ。

 ずっとこの日常を、そばで笑って見ていたい。

 ピカチュウがみんなを甘やかして、ダンジョンでリンゴを齧って、クッパみたいな凶悪な相手には真っ先に立ち向かって、図体に似合わない強気な姿勢で僕の手を引っ張って……時々おいたをやらかしてみんなに叩かれる。

 その日常が、一瞬の出来事だった。

 あんなに楽しかったのに、もう過去の出来事だった。

 いいや違う。

 あんなに楽しかったからこそすぐに終わってしまったんだ。

 帰ってほしくない。

 みんなで一緒にいたい。

 でも、ピカチュウの望みを邪魔するなんてことは許されなくて。

 ピカチュウはそもそも折れなくて。

 そうだ、宝物……宝物があれば……

 

 ……今、僕は何を考えた? 

 頭をブンブンと振る。

 ピカチュウに怪訝そうに見られたけど笑って誤魔化した。

 そんなこと、考えちゃダメだ。

 ピカチュウ達が笑って帰れるようにしなくちゃ。

 ほっぺたを摘まれた。

 

「無理してるやつはっけーん」

 

 ピカチュウだった。

 僕の顔を見ていたらしい。

 

「だ、大丈夫だよ? ちゃんと地下世界には行けるから」

 

「そんな話してない」

 

「え……」

 

「仲間が暗い顔してたら、元気付けるのなんて当たり前だろ?」

 

「…………」

 

「さっきから何でそんなに暗い顔してるんだ? あのガキの言ってた事をまだ気にしてるのか?」

 

「……」

 

「黙られちゃあ俺も分かんねえな」

 

「……何でそんなに楽しそうなの?」

 

「楽しそう?」

 

「ずっとそうだよ、何でそんなに笑っていられるの?」

 

 チラッとナカヌチャンを見たピカチュウは、僕の言葉を否定した。

 

「楽しそうなんじゃない、楽しいんだ」

 

 天井を見上げて、タペストリーを指差す。

 ピカチュウ曰く、ニンゲンの姿だった時の彼らが記されている。

 

「大扉の前にあったのは俺の原点。そして、今見えているあれこそ俺の歩んできた旅路、そしてきっとこれから歩む旅路……その旅路の中で俺はかけがえのない出会いを得てきた、冒険をしてきた」

 

「出会い……」

 

「もちろん別れもあったし、何なら最初にあったのは出会いじゃなくて別れだった」

 

「全部失くしたって話のこと?」

 

「そうそう。俺は記憶とか名前とかの代わりにあいつらとの絆を手に入れた、そして……お前とも出会うことができた」

 

「……じゃあ、君たちが元の世界に戻ったら僕はどうすればいいの?」

 

 ついに口に出してしまった。

 こんな事、ピカチュウに言っても困らせるだけだって分かってるのに……言わずにはいられなかった。

 ……ほら、やっぱり困ってる。

 

「海と空は繋がってる、なんて言っても世界が違うから繋がってないんだよなあ……お前の好きなように生きていい、ってのもちょっとあれだし」

 

「……」

 

「……正直なところ、元の世界に連れて行きたいって気持ちはある」

 

「……」

 

「でも、この世界……ドリームランドの夢から覚める俺たちと違って、そこに生きてるお前が俺たちの世界に来れるかなんて俺にはわからないんだ」

 

「……うん」

 

 そんなの分かってる。

 でも、どうにかしたかった。

 

 

 ──────

 

 

 あっさりと村に帰ってきた俺たちは、村の住民へとシンに関する話をした。

 コータスも初耳だったけど思い当たる節はあったらしく、神妙に頷いていた。

 やっぱジジイってすげえわ。

 そういえば帰る目処も着いたんだよね、って話をしたら2度目のお茶が飛んできた。流石に2回は喰らわないんだよなあ。

 アリゲイツが慌てて抑えたのでそれ以上は無かったけど、捨てるのか捨てないのかみたいなことを言われた。

 そもそも俺の所有物じゃないと思うんですけど。

 ……いや落ち着けえ! 

 そこはあくまで最後の話というか、もう少し本題を詰めたい。

 ……だから地下世界が本題だっつってんだろ! 

 

 地下世界の入り口は北の火山の奥深くにあるらしいから、そこをまずは目指す。

 いつもなら連れていくやつは2匹までなんだけど、今回は……おい、全ての救助隊、聞け! 

 お前らの中に、今から俺と一緒に世界を救いたいってやつはいるか? 

 ……そうか、安心した。

 どうやらお前らも多少の度胸は持っていたらしいな。

 全員の準備ができたら出発するから、各々準備ができたら俺に話しかけてくれ。

 猶予は明日から三日間だ。

 ……やっぱ俺の役割ってどう考えてもNPCだよな。

 

 村の施設を一つ一つ見て回る。

 嫌というほど見てきたが、まずは連絡所から。

 ペリッパーが今も1匹で営業を続けている。

 俺に気付くと、羽ばたいてこちらに向かってきた。

 

「ピカチュウ、私は地下にはいけない……ただ、約束してほしい、必ずソイツを倒して来ると」

 

 当たり前だろ、流石に世界をぶっ壊すとあっちゃあ俺も黙っていられない。ポケモンの世界でそんなのは許されないからな。例え四肢が亡くなろうと喉元に噛みついてぶっ殺して来るから安心しててくれ。

 ……何でちょっと引いてんだよ、いいだろ別に。

 どうせ元の世界に帰れば直るんだから。

 

「……どうか、どうかお願いします」

 

 まかせろ。

 

 次に向かったのは店がまとまっている場所。

 散々モノを買ってきたから、俺らが村一番の常連客だ。

 ミルタンクから弁当を買ってきた。コレも、もしかしたら最後になるかもしれない。

 本当に世話になった。

 ……無理なんかしてないぞ? コレが俺の自然体だ。もちろん解決したい事はたくさんあるけど……アリゲイツのこととかな。

 おいおい、前から言ってるけど別にあいつらは俺の嫁じゃない。だからアリゲイツの事を仲間として見ていても別に浮気にはならない。

 一緒の家で暮らしててそんな言い分が通るわけがない……たしかに? 

 いや、シェアハウスという可能性もあるぞ。

 シェアハウスなんかあるわけないか……。

 ……まあ、そういうわけだから。

 

「普通の生き方じゃないねえ」

 

 普通だ。

 俺はどこまでいっても普通でしかない。

 チートと仲間に恵まれただけの凡人の限界がここだよ。

 

 ケロマツの爺さんは今日も畑を耕していた。

 よう爺さん、精が出るな。

 ……毎晩精を出してるのはお前だろとか、そんなド下ネタいきなりぶち込むなよ。そんなキャラだったか? 

 だいぶ気安くなったというか……あんたの依頼はどれも一癖あったから中々楽しかったよ。

 肥料として撒くためにスーパーキノコを集めてこいとか、クリスタル結晶を集めて剣を作れとか、古代デデデ王国の槌を見つけてこいとか。

 ああいうのでいいんだよ。

 冒険がしたいんだ俺は。

 

「小僧が生意気言いやがって……」

 

 それで、爺さんは泣いてくれないのか? 

 

「どこ行ってもお前さんなら生き抜けるだろうよ、心配する意味が無い」

 

 ……へっ。

 

 その後も集会場や酒場、公園などを周った。

 太陽が水平線が見える岬で、アリゲイツが夕陽に照らされるのを見て既視感を覚える。

 どこかで見た光景だった。

 思い出せないけど、俺はこれと似た光景を目にしたことがある気がする。

 俺の世界か? 

 ……まあ、旅して合計で二年ぐらい経ってるし、似たようなのなんていくらでも見たか。

 

 

 ──────

 

 

 最後に来たのはやっぱり家だった。

 家……俺もいつか、手に入れるのかねえ。

 ここじゃなくてあっちの世界で。

 金は相変わらずホシノ達に管理されてるから俺の手持ちの金とか雀の涙。

 ……いつになったら俺は自分で金を持てるようになるんだ? 

 バシバシと柱や壁を叩きながら考える。

 最初の見窄らしい見た目からは想像もできないほどに立派な家になっていた。

 この家とも、もう直ぐおさらばだ。

 みんなで汗水垂らしながら作った階段をゆっくり上る。

 2階には寝室があり、店で買った一番デカくて高いベッドを置いていた。

 なんだかんだここでの暮らしは気に入っていた。

 レッドにした事を忘れたわけじゃないが、村が憎くて仕方ないなんてこともない。

 あれだって当然の防衛反応だと理解してはいた。

 それはそれとして、大事な仲間を傷付けられるのは我慢ならないだけで。

 

 ベッドに身を投げ出す。

 天窓からは月が顔を覗かせていた。

 太陽光線を反射して光る月は吸い込まれそうなほど輝いていて……視界がぐるっと回った。

 

「……な、なんだ!?」

 

 視界に入る星は、俺の知っている地球と良く似て青い。

 気付いたら月にいた。

 ……窒息すりゅううう!! 

 と若干パニックになったが俺が言葉を発している時点で問題なかった。

 足元にある石を何となく拾う。

 まじかよ、歴史の教科書に載ってる月の石を生身で拾っちまったよ。

 生身っつってもピカチュウだけど。

 コレを現実世界で売ったら一体いくらになるのやら……

 石を投げ捨ててしばらく歩くと、旗が掲げられている建物があった。

 明らかに誘われている。

 このタイミングで月に呼んだという事は、そこらへんの話なのだろう。

 コンコンとノックをして待つ。

 ギイイと建て付けの悪い建具特有の音を立てながら開く扉の向こうでは、窓の前のロッキングチェアに誰かが座っていた。

 

「見上げるのも悪くないが、見下ろすのもまた然りだ」

 

 分かるような分からないような。

 誰だと率直に聞いた。

 宇宙飛行士にしか見ることができない景色を独り占めしていた存在が、椅子から降りてこちらを振り向く。

 せいれいポケモン、ネイティオがその曇りなき眼を俺に向けていた。

 

「久しぶりだね、ピカチュウ」

 

 …………? 

 悪いけど、こっちでネイティオと出会うのは初めてだ。

 あっちの世界でなら会った事もあるけど。

 

「まあ、そうだよね」

 

 せいれいポケモンだからってよくわかんないこと言ってりゃ良いってもんでもねえんだぞ! 

 どうせラスボスとかシンとかに関することなんだろう! 教えろよ! 

 

「半分違うよ」

 

 なんでやねん! 

 流れ的にそうじゃねえのかよ! 

 全面的にそうであれ! 

 

「最後だろうって思ったから喚んだのさ」

 

 なにが? 

 

「会うのがだよ」

 

 まあ帰るからな。

 この世界に来れるなんて2度とありえないだろうし。

 そもそも会うのも最初で最後になるだろ。

 

「君がどう思っていても関係無い、私は今でも……」

 

 ネイティオは胸に手を当てて意味深な事を呟いた。

 なんならさっきから意味深なことしか言ってない。

 俺みたいな直線的な思考のやつにもわかるように言ってほしいんだよね。

 

「手を出してくれ」

 

 差し出した右手には光が乗せられた。

 おいなんだコレ、アイリの磨きすぎたジムバッジみたいになってるぞ。

 実体が見えないんだけど。

 

「君が残したモノ、新しく失くしたモノの一部だよ」

 

 俺が失くしたモノ……俺の正体を知っているのか? 

 ……ん? それより今もっと重要な事を──

 

「ずっと忘れないって、そう約束したからね」

 

 ……約束って、誰と? 

 ますます謎が増えていくんだけどもうちょっとわかりやすく……

 

「シンがいる限り世界は守られる」

 

 え? 

 

「これが最後のお願いだ」

 

 何を……

 

「今度こそ、救ってあげてくれ」

 

 …………待て、お前は何を隠してる。

 最後ってなんだ。

 なんで俺の正体を知ってるんだ。

 どうして俺の失くしたモノをお前が持ってるんだ。

 

「さようなら……会えて嬉しかった」

 

 っ! 

 まだ帰すな! 

 お前は何もn

 

「──やっと、再開できたんだね」

 

 

 ──────

 

 

 目覚めたら手の中には小さな鍵が握られていた。

 よく分からないけど、どっかの部屋の鍵だろうか。

 失くしたらめんどいので紐を付けてリュックに入れておいた。

 空を見ると、まだ月は窓枠分しか動いていなかった。

 少しだけ居眠りをしてしまったらしい。

 夢を見ていたような気がする。

 下に降りるとキルリア達がいて、夕飯の準備をしていた。お前ら帰ってきてたのか。

 

「ししょー2階にいたんですね、何してたんです?」

 

 一瞬だけ横になってた。

 ……そういえばうちに鍵かけるところってあったっけ? 

 

「無いです」

 

 おーん……まあいいか。

 あいつは? 

 

「アリゲイツさんならそろそろ来るんじゃないかと……」

 

「こんばんは」

 

「あ、来ましたね!」

 

 アリゲイツが家族と一緒に来た。

 どうやら庭でパーティーを開くらしい。

 まあいいんじゃない? 景気付けに。

 

 静かなパーティーだった。

 一年前は日常だった、焚き火の弾ける音が響く中での夕食。

 もはや懐かしさすら覚える光景になっていた。

 それだけ俺も、この仮初の肉体で過ごしてきたって事だな。

 他愛のない事を話して時間は過ぎていった。

 酔い潰れたアリゲイツの父親を台車に乗っけてアリゲイツの家まで運び、いまだに微妙な顔をしているアリゲイツを俺たちの家に連れて戻る。

 

「今日は泊まっていくの?」

 

「うん」

 

 じゃあ、俺もそろそろ寝るか……

 リュックの中を確かめると、鍵は確かに入っていた。

 なんなんだコレ。

 

 三日後、全員が揃って北の火山に向かった。

 迷いがあるヤツもいた。

 でも関係無い。

 コレは全員でやるべき事だ、百竜夜行の時も、クッパとの戦争の時もそうしてきたように。

 未到だった北の火山には強敵が待ち受けていた。

 溶岩を自在に操るブースターを数で押し潰し、溶岩を駆け巡るエンテイを下し、地脈のエネルギーを吸収して無限にかえんほうしゃを放つファイヤーの群れを打ち倒した。

 火山を噴火させたヒードランを強襲し、燃え盛る大気をみずタイプのわざで中和しながら必死に戦った。

 逃げようとするヒードランを仕留めようとして相対したのは、アカムトルムと名乗る存在。

 全身から音の砲弾を発射し、ヒードランも含めて一撃で全員を静かにさせた。

 

 しかし、意外なことにアカムトルムは理性的であり、この先にアン=イシュワルダがいると教えられる。

 圧倒的な強者なのになぜ戦わないのかと問うと、コレはお前達のやるべき仕事だと返された。

 既に守護の役目は後進に引き継いでおり、あくまで見守るのが使命だと語るアカムトルムは、おとのからという道具をアリゲイツに手渡した。

 

 噴火によってマグマの抜け切った火山の底にはぽっかりと穴が開いていた。

 アリゲイツが下を覗き込む。

 穴には終わりが無く、奥底からは唄から上がってくる。間違いなかった。

 これこそ、地獄の門だ。

 

「こ、ここ?」

 

「そうだ水の者よ、ここから飛び込むのだ」

 

「し、死ぬんじゃ……」

 

「躊躇うならば立ち去れ、勇者のみが唄の主を目にする資格を得る」

 

「……」

 

「恐れよ、爾して乗り越えよ」

 

 そんな助言を二、三、アリゲイツに施した。

 

「それにしても久しいな」

 

 久しいらしい、前にも来たやつがいるのだろうか。

 

「……奇妙だがそういう事もあるのだろう」

 

 勝手に感心したアカムトルムは地中へと消えていった。

 ムーブがあまりにも強者すぎる。

 ……よっしゃ、一番乗り! 

 

「ちょっ!」

 

 飛び込んだ。

 死んだらそこまでだ。

 コレがただの試練である以上、先に待ち受けているアン=イシュワルダはコレよりも遥かに厳しいのだろう。

 真の暗闇の中で、加速していく感覚が座標の移動を教えてくれた。

 やがて光の点が近付いてくる。

 この先に諸悪の根源がいて、そいつは世界を滅ぼそうとしている。

 それを打ち倒す。

 なんて明快な勧善懲悪だ。

 こういうわかりやすい物語でいいんだよ。

 

 終端速度まで加速した俺は砲弾のように宙に放り投げられ、逆さまに自由落下して着地した。

 草木が生え、蝶が舞う。

 一見して地上と同じような地下世界には、明確に足りないものがあった。

 次々と飛び出してきた救助隊の面々はザワザワと動揺を見せる。

 

「空に……星が無い」

 

 そこには星も、月も、太陽も無かった。

 ただ、巨大な枯れた根が張り巡らされ、その中央に巨大な球体が鎮座していた。

 アリゲイツの持つおとのからが共鳴している。

 間違いなくアイツだ。

 ただ、あんなところにいられたら手出しできない。

 ひこうタイプのポケモンに運ばれて、勇者達は球体に突撃した。

 球体から発される、攻撃の意思の無いただの音の波に苦しめられながらなんとか攻撃を繰り出し続け……破壊した球体はただの外殻だった。

 岩で構成された異形の翼を広げ、本格的に動き出した。地震を起こすほどの音のエネルギーを一対一で受ければどうなるか、わからないわけでは無い。

 必死に避けながら、岩の身体を攻撃した。

 

 

 ──────

 

 

『……始まったんだね』

 

 地殻を砕いていく音のエネルギーは断層を活性化させ、或いは断層を生み出し、はたまたそのエネルギーで直接、地震を引き起こした。

 脅威を感じ取ったシンの身体から鱗が剥がれ落ち、動き出そうとしている。

 世界を守るために、敵となり得るすべての生命を滅ぼす。

 それこそシンが抱えた矛盾だった。

 シンのコケラが、次々とその身を構成させて神殿の門を出ていく。

 そこに意志は無く、ただ、己の本能に従うのみだった。

 少年は祈る。

 どうかモンスター達よ抗ってくれ、コケラに負けないでくれ。

 そして、全世界に向けて災厄が解き放たれた。

 

 数秒後、出て行ったばかりのコケラが吹き飛ばされて戻ってきた。

 ズシンズシンと重い足音が鳴り響く。

 

「まさか本当に、あんな夢が現実になるなんてなあ……」

 

『君は……』

 

「スーパーキノコ、クリスタルの剣、デデデの槌、全部使わせてもらうぜ」

 

『それは、幻想の遺物……そうかネイティオが──』

 

「ダイマックス、おとぎ話だけのチカラかと思っていたが……このおいぼれに一花咲かさせてくれるなんて粋じゃねえか」

 

 もう一つの戦いが始まった。

 

 チュンチュン村も再びの地震に動揺が広がっていた。

 村民はコータスの家の庭に集まっていた。

 動揺を紛らわす為、隣のモンスターと口々に話す。

 

「コータス老はなんとおっしゃっている」

 

「信じて待つしかない、と」

 

「また家が崩れるかも……」

 

「津波は?」

 

「近くの集落は既に飲み込まれていた」

 

「ここは高台だ、津波もここまでは来れない」

 

「…………きゃああ!」

 

「揺れてるぞ!」

 

「今のは大きかった……」

 

「それにしてもケロマツさんはどこへ行ったんだ?」

 

「やる事があるとか言ってどこかへ……」

 

「ま、まさか畑の様子を見に行ったんじゃ」

 

 門番の二匹は村民のそんな様子に我関せずと門の外を見る。

 役割は、中を外から守る事。

 何が来ても対処できるように気は抜かない。

 

「本当に、僕たちが役に立つ時は来るのかね」

 

「いつまで言っている」

 

「だって、地震と戦ってるんでしょ?」

 

「正確には地震を引き起こしている存在、だ」

 

「つまり地震より強い奴と戦ってるってことだよね」

 

「そうだ」

 

「……無理じゃない?」

 

「いいや、必ず勝つ」

 

「コータス老が言っていたから?」

 

「違う」

 

「え」

 

「なんだ」

 

「君がコータス老以外に判断基準を持つなんて……」

 

「失礼な奴だ、俺とて自我ぐらい持っている」

 

「そりゃ分かってるけど……それじゃあなんで?」

 

「勝利を信じないものに勝利は訪れないからだ」

 

「さいですか」

 

 そんな二匹の視界の奥で、凄まじき柱が立ち上る。

 極限まで圧縮されたエネルギーが地下世界から地殻を破って溢れ出した。

 鳥が群れをなして飛んでいく。

 地震、そんな一言で片付けられない。

 星の嘶き、星震によって世界が揺さぶられていた。

 モンスター達が恐れ慄き、立っていられなくなり、地面にうずくまる。

 

「……勝てるのかなあ」

 

「…………」

 

 カイロスも、冷や汗を隠す事ができなかった。

 

 

 ──────

 

 

 唄なんか、どこにも無かった。

 あんなに美麗で聴き心地の良かった唄は、怨嗟に満ちた絶叫だった。

 岩の肉体は破壊した。

 しかしやはりと言うべきか、聞いているだけで、目や耳から出血するほどの呪いを撒き散らしながら真の姿を表した。

 いきなり、先ほどまでの無差別的な攻撃では無く、明確に俺たちを狙って破滅的な音が放たれた。

 おとのからの共鳴が極大に達し、アリゲイツがおとのからを掲げた。

 アン=イシュワルダから放たれた奔流は俺たちの周囲だけ、何も無かったかのように通り過ぎていく。

 正直、死んだと思った。

 

「い、今のは……」

 

 アリゲイツが動揺しながら、おとのからを見つめる。

 そうか、後進ってのはお前達の事でもあったんだな。

 ファイヤー達を倒したからこそ、そのアイテムが与えられたんだろう。

 ……なんて偉大な先輩だよ。

 でも、シンが倒されるかどうかなんて関係無い。アイツのビームが放たれれば放たれるほど、地上がぶっ壊れてくぞ。

 ……もう、やるしかねえ! 

 

「そうだ、やるんだ……村を……守るんだ!」

 

 カメックスが震える手を握りしめた。

 他のポケモンも覚悟を決めた顔つきになる。

 恐怖を乗り越えた勇者……確かにその名を背負うに相応しいやつらだ。

 

 空間を丸ごと削り取るとしか表現のしようがない威力のソレは通った後に何も残さなかった。

 ほんの少しおとのからの範囲外に出ていた岩も、掠っただけで振動しながら砕け散った。

 身震いするようなその光景に怯む事なく、技を繰り出す。

 しかし音のアーマーとでも言うべきものに阻まれて全く届かない。

 ……つまり、俺たちはアイツと至近距離で戦う必要があるわけだ。

 近付けば近付くほど、呪いは強くなる。

 なのに、おとのからをアイツの近くに置かなきゃまともに攻撃も通らないなんてとんだクソゲーだ。

 それでもやるしかない。

 

 おとのからは、あの奔流以外には反応しなかった。

 しかも近付けば近付くほど、アイツの攻撃は激しくなる。

 まるで、俺たちが近付く事そのものを嫌っているかのように。

 ……いや、もしかして? 

 再びおとのからに視線が集まる。

 

「アイツは、おとのからを恐れている……?」

 

 ならばやりようもある。

 ただ、問題はどうやって近付くかということだった。

 俺たちの戦力だと足りなかった。

 

 その時、俺たちが入ってきた入り口からマグマが流れ込んだ。

 ファイヤー達だ。

 一体どういうつもりで来たのかと身構えていたら、アン=イシュワルダに向けて攻撃をし始めた。

 ここは火山じゃないので、俺たちと戦った時ほどの攻撃では無いがそれでも、アン=イシュワルダが怯んだ。

 

「今だ!」

 

 誰かが叫んだ。

 アリゲイツが走り出した。

 まさにここだった。

 アリゲイツの道を作り出した。

 放たれる全てのタイプのわざがアン=イシュワルダの動きを縫い止める。

 だくりゅうの流れに乗ったアリゲイツが一気に接近した。

 

「──は?」

 

 目を疑った。

 おとのからを取り付けられたアン=イシュワルダは、その瞬間にぶっ放したビームが反転して消滅した。

 その場に、見覚えのある姿を残して。

 ファイヤーがアリゲイツを即座に回収した。

 

「ダーク……マター……」

 

 ソレこそは悪意の集合体、星の公転を止めるもの。

 そいつが、悍ましい声で啜り泣いていた。

 

「あ、頭が割れる……!」

 

「があああああ!!」

 

「グォォォオオオオオ!!」

 

 仲間が全員、狂気に飲み込まれていた。

 頭を抱えてよろめきながら技を撒き散らす者、蹲って動かない者、ぶつぶつとつぶやく者。

 ダークマターが怨嗟のままに黒い光線を放った。

 そして、みんな石になった。

 

 

 ──────

 

 

 落下の衝撃で気絶してしまい目を覚ますと、僕を掴んで逃げてくれたファイヤーが石になっていた。

 砕けないようにそっと外し、さっきまで戦っていた場所に向かう。

 

「み、みんな……」

 

 キルリアも、ナカヌチャンも、カメックスもリオレウスも、みんな石になっていた。

 ただ、二匹を除いて。

 黒く脈打つ謎のモンスターとピカチュウがいた。

 

「あの光線を浴びるとこうなるんだな」

 

『なぜ……なぜ石化しない!』

 

「……生命の樹が無いから公転を止められないのか。そうか、だからアン=イシュワルダに寄生して……」

 

『貴様、私を無視するな! ……まだ邪魔者がいたのか、くらえ!』

 

「うわああああ!! …………?」

 

 黒い光線が僕に放たれて直撃した。

 思わず叫んでしまったけど、別になんとも無かった。全身を見ても跡すら無い。

 

『俺の光線が効かない……!?』

 

「…………握手か?」

 

『握手……?』

 

「──きずなスカーフはきっと失われてる。だって、お前が横たわっていたのは生命の樹の根っこなんだろ?」

 

『……何故それを!』

 

「お前は大昔に生命の樹を使って公転を止めようとして……負けたんだ。きっとその時にきずなのスカーフも、生命の樹も──」

 

『やめろ!』

 

「そんで、この世界の主人公はアリゲイツで、パートナーは俺なんだろう」

 

「ピカチュウどういうこと……?」

 

「──ここから先は、ステゴロ勝負ってことだ!」

 

『ぐぅぅぅ…………忌々しい!』

 

 

 ──────

 

 

 長期戦だったが、ステゴロなら負ける気はなかった。

 とはいえステータスを最低に下げられてしまいボロボロだが。

 アリゲイツもワニノコに戻されて今にも気絶しそうだ。

 核が剥き出しになったダークマターを見る。

 

「ピカチュウ……何を……」

 

 ワニノコを無視して、ダークマターの元に向けて短い脚を動かす。

 本当に、いつもなんて役回りだ。

 こんなの許されていいのか? いや、良くない。

 神様は俺に対する運命をもっとイージーモードにしろ。

 南国のビーチで寝っ転がってるだけで金が貯まるようになれ! 

 しかも結局、アン=イシュワルダはコイツの寄生先でしか無かったって事じゃん。

 ……まあ、それでもやれって言うならやりますよ。

 巨大な根っこの中央で微動だにしないダークマターの核は、見るに耐えなかった。

 黒くて、醜くて、どうしようもないものがそこにあった。

 

 ソレに触れた瞬間に俺の意識はコイツの中に飲み込まれ、さまざまな負の感情が流れ込んできた。

 怒り、悲しみ、不安、孤独、劣等感。

 

『Wあたshがなぜこんなに苦しまねばならんのだ』

 

『わrえについてくるものはいないのか』

 

『おreはなんでこんなにできないんだ』

 

 老若男女、誰もが持つそれが流れ込んできたが、その元となった記憶の一部まで流れ込んでくる。

 そこからわかったのは、こいつを構成する感情はこの世界の物だけではないということ。

 核戦争、勉強、資本主義、貧困、差別、侵略者、ソレらのイメージが鮮明に視界に映る。つまりコイツは……俺の世界のダークマターでもあるんだ。

 でも、俺の世界なら顕現することはあり得なかっただろう。

 なんせオカルトが掘り尽くされた世界だ。

 妖怪もUMAも解き明かされ、種族として固定された世界。

 ただ、誰かがそんな世界の悪意をこっちに持ち込んだ。

 ……俺か? 

 ポケモン世界に来た時に俺が持ち込んだのか? 

 考えている間にもダークマターの負の感情はさらに爆発する。

 

『なんで、何度も負けなきゃならないのよ』

 

『お前達さえいなければ……』

 

 悪いけど、その『お前達』がいなくなることは無いよ。きっと、この世界はそうできているんだ。

 

『もう少しだった……本当にもう少しだったんだ!』

 

 そうだな。

 お前はもう少しでこの世界を滅ぼせた。

 シンを殺し、ドリームランドを丸ごと消し去るところだった。

 ……でも、アカムトルムがその気になればいつだって止められた。それを選ぶかどうかはともかくとして。

 だから、本当は詰んでいたんだ。

 

『何故だ! 何故いつも邪魔が入る!』

 

 涙を流す機能は備えていない。故に、肉体的な感情の発露は許されずダークマターは苦しんでいた。

 ……とても憐れだった。

 つい、なんとなく声をかけてしまった。

 

「滅ぼすのはダメだけど、他になんかしたいこととか無い?」

 

『は?』

 

「いやほら、悪い感情って筋トレとかで発散できるし、他に打ち込めるものがあればいいじゃん」

 

『お前は何を言っているんだ?』

 

「だから、やりたいことを言えよ」

 

『…………世界を』

 

「話聞いてたのかお前」

 

『我にそれ以外の欲望など……』

 

「悪意を持った奴は全員、世界を滅ぼしたいと思ってるなんてそんな事あるわけねえだろ」

 

『…………』

 

 ときたま爆発する悪感情を押しつけられながらも対話をやめなかった。

 一方的に質問を押し付けてただけのような気もする。

 ただ、放っておくという選択肢はなかった。

 色々聞きたかったし。

 

 

 ──────

 

 

 どれくらいの時間だったかすら分からない。

 

『ふはは……愉快だ』

 

 そんな事を言い残して、ダークマターはいきなり光になって消えた。

 ……え? 

 いや、俺まだ聞きたい事がたくさんあったんだけど……

 微妙に不完全燃焼感は残ったけどみんなは石から戻ることができた。

 ナカヌチャン、キルリア、ロコン、アブソルが飛び付いてきて……いや俺のステータス戻ってないいいいい!!! 

 グエエと潰され、瀕死になった。

 

 ワニノコの必死の看病で回復し、なんとか立ち上がる。

 川の向こうでひいおばあちゃんがおいでおいでしてたぜ……

 どうやら石になっても意識が無くなったわけじゃなかったらしくて、何が起きたかは見えていたんだとよ。

 アカムトルム達に感謝を告げ、村への帰途に着く。

 

 北の火山からチュンチュン村までは、かなりの距離がある。

 みんな静かだった。

 起きた出来事を脳内で反芻し、その結果を目の当たりにしていた。

 道が断裂し、大地が隆起し、川が干上がり、森が飲み込まれている。

 津波も押し寄せたようだ。

 詰んでいたと言ってもアン=イシュワルダの力は本物で、世界はめちゃくちゃに壊れていた。

 大地震を引き起こす。それはつまり核兵器を凌駕するほどのエネルギーを秘めているという事で、アカムトルムがいなかったら一方的に負けていたという事だった。

 あちらこちらに穴も空いている。

 アイツが放ったビームの跡だ。

 もし村に当たっていたら……そんな想像をせずにはいられない。

 ワニノコも不安なのか、俺の手を握りながら時々涙を堪えている。

 流石にこの現状で大丈夫なんて言えるほど頭ハッピーじゃ無いので、口を閉じた。

 

 村に帰ると、誰もいない。

 地震であちこち壊れているし、建物も崩れている。

 そして、連絡所のあった場所に巨大な穴が空いていた。

 まさか飲み込まれた? 

 住民でもある救助隊達が息を呑む。

 

「おい」

 

 啜り泣く声が聞こえ、ワニノコも地面に膝をついた。

 抱きしめて背中を摩る。

 

「ダメだったんだ……」

 

「おい」

 

 小さく溢れたワニノコの声は、世界を救ったと思えないほど悲痛でがああああああ!! 

 お、重い!? 

 この背中に乗ってるのなに!? 

 

「話聞けガキども」

 

「ケロマツさん!?」

 

 ワニノコがびっくりして立ち上がる。

 偏屈じじいケロマツがいた。

 マジかよ生きてたのか、ちゃんと嬉しいわ。

 でも俺の上に立つな。

 というかなんでボロボロなの? 

 

「どうでもいい事を気にしやがって……村の奴らはどこだよ」

 

 俺も知りたい、今到着したばかりなんだよね。

 どこか知らない? 

 

「知らん」

 

 ええ……あんた村の住民でしょ……

 

『わああああああ!!!』

 

 なんかコータスの家がある方から大声が……ってめっちゃいるじゃん。

 すごい勢いで坂を駆け降りてくるポケモン達。

 ワニノコの親父がいの一番に駆け寄ってきてワニノコを抱きしめた。

 救助隊も駆け出して家族や友人などと再会を喜ぶ。

 どうやらコータスの家に避難していたっぽいな。

 ……みんななんの怪我もしてないんだけど、なんでケロマツの爺さんだけ怪我してんの? 

 

「ふん、畑の様子を見に行ってたんだよ」

 

 川とかに流されてそう。

 

「減らず口を……ほれ」

 

 ダイコのみを手渡される。

 齧ると瑞々しさが口の中に広がった。

 途端に疲れが足腰に……

 ケロマツの爺さんもそうなのか、二匹してその場に座り込む。

 

「全く、明日は筋肉痛だ……くっくっく」

 

「俺も雑魚にされちまったよ」

 

 自然と笑みが溢れる。

 別に何もおかしい事なんてないのに、笑いが止まらない。

 

「がーはっはっは!」

 

「わはははは!」

 

 なんだなんだとざわめく周囲を無視して、爆笑していた。

 

 

 ──────

 

 

 アリゲイツに光る冠が押しつけられる。

 もはや憂いは無いとばかりにピカチュウは最後の言葉を紡ぐ。

 

「世界は救われ、ストレンジャースもマスターランクになり、お前も宝物を見つけた」

 

「…………」

 

「楽しかったぜワニノコ」

 

 6匹のポケモンは再びシンの元に戻ってきていた。

 村での1ヶ月に及ぶ長い祭りが終わり、挨拶もし尽くした。

 最後は笑って、みんなに見送られた。

 歩いてきた彼らを少年が出迎える。

 

『アン=イシュワルダ──いいや、ダークマターは眠りについた……ありがとう、異界の英雄達』

 

「俺たちはどうすればいい?」

 

『シンに一度触ってくれ。そうすれば君たちは元の世界に戻れる』

 

「ワニノコは? 歩いて帰すつもりか?」

 

『心配いらないよ、村に直接転移させる』

 

「アフターケアもバッチリだな、もしかして以前はサービス業にでもついてたのか?」

 

『あはは、今だってサービス業みたいなものさ』

 

「はっはっは! 確かに!」

 

 少年とピカチュウは暫し会話を楽しむ。

 2度と出会えないことを直感的に理解していた。

 ナギ達も、アリゲイツと惜しげに最後の挨拶をする。

 

「ワニノコ、ありがとう……あなたとの旅は楽しかったわ」

 

「うん……」

 

「今度会う時はオーダイルになってるかもね〜? 楽しみにしてるよ〜」

 

「僕も……楽しみだよ……」

 

「……がんばれ」

 

「……ありがとう、アブソル」

 

「うぇぇぇん!! ワニノコさーん!! 寂しいですー!!」

 

「ロコン……」

 

 ワニノコはピカチュウを見た。

 その身を構成していた泡が抜けていく最中だった。

 夢はここで終わり、召喚獣の存在がほどけていく。

 自分の手と、宙に浮いていく泡を不思議そうに見ている。

 コレが夢から覚める感覚かと、感心していた。

 

「本当に行くんだね……」

 

「そうだ」

 

「……その、これは僕に持っている資格は──」

 

 何でも願いを叶えてくれる。そんな宝を押し付けられたワニノコは、自分が持っていていいのかと戸惑う。

 

「いいや、お前はソレを使う資格を持っている」

 

 強く肯定した。

 そもそもポケモントレーナーに、この世界で叶えたい願いなど一つしかなかった。

 すでに叶いつつあるそれをまた願うことに、意味など無い。

 

「その宝物は、頑張ってきたお前にこそ相応しい」

 

「そんな……」

 

「好きに使ってくれ」

 

「じゃあ……みんなに、残って……欲しい……」

 

 冠が輝き、その願いを叶えようとして……失敗した。

 

「悪い、それだけはできないんだ」

 

「……や、やだ! みんな行かないで!」

 

 ポロポロと涙をこぼしながら懇願するワニノコの願いは届かない。結局、祭りで1ヶ月も何していたかと言えば、村のみんなにずっと引き留められていたのだ。

 ソレでも彼らはここにきた。

 つまりはそういうことだった。

 4匹は薄くなり、泡となって消えていき、ピカチュウだけが残っていた。

 あ、とピカチュウは一つ思い出す。

 ワニノコに手を伸ばした。

 必死に両手で掴むワニノコを見て、少しだけ寂しそうに笑う。

 

「俺の名はポケモントレーナー、異世界の放浪者だ。またいつか、会える日を楽しみにしてるよ」

 

「あ……」

 

 最後にワニノコを抱き締めようと反対の腕を伸ばし──身体をすり抜けて消えていった。

 

 

 ──────

 

 

 …………はっ!? 

 

「あ、起きた」

 

「ワニノコと何話してきたの〜?」

 

 …………ピカチュウになってるんだけど!? 

 なんだこれ!? 

 

「そりゃそうでしょ」

 

 なにが!? 

 お前ら誰!? 

 

「も〜落ち着いてよ〜」

 

「ほら、あの看板見て」

 

 読めねえよ! 

 というかお前ら誰!? 

 

「……そういえばそうだったわね、ここはスパイクタウンよ」

 

 ……つまりどういうこと? 

 あとお前ら誰? 

 

「師匠! 私たち帰って来れたんです!」

 

 ロコンが飛びついてきた。

 ぐええ! 重い! 

 俺のパワーはどこ行った! 

 

「おもくないです! ばか!」

 

 ──ああ、叩かれたら頭ハッキリしてきたわ。

 そうだ……俺たちはドリームランドから帰ってきたんだな。

 ……そうか、戻れたか。

 

「そうだよ〜……お兄さん、おかえりなさい」

 

 ただいまホシノ。

 それにしても、あの家惜しかったなぁ。

 どうせならあれごと持ってきたかった。

 

「何寝ぼけたこと言ってるのよ……」

 

 だって結構良い暮らししてたじゃん。

 みんなで同じ家で過ごして……楽しかったよ、あの時間は。

 ワニノコ……あいつだけはこっちに来れない。

 やっぱ寂しいな。

 

「師匠……」

 

 んまあ、戻って来れたのはいいことだ! 

 とりあえず、久しぶりにちゃんと人間の姿に戻りたいから町を出よう! 

 それにしてもなんか騒がしいな。違うか、こんな人混みに来るのが久しぶりだからそう感じるだけか。

 ……いや、やっぱり誰かこっちに向かってくるぞ。

 ポケモンだから誰かもわかんねえや。

 

「こらー! 誰だ勝手に入ってきたやつはー!」

 

 二匹組のポケモンが走ってくる。

 アチャモとキノガッサだ。

 管理者か何かだろうな。

 道を歩くポケモン達は即座に退いて道を確保した。慣れてそうな雰囲気を感じるし、結構ああいうの多いのか。

 大変だな。

 

「オイラのスパイクタウンで何するつもりだー!」

 

 ん? あの口調は……チェリノか? 

 なっつ! 一年ぶりだもんな! 

 おいアイリ、チェリノだぞチェリノ! 

 ……あれ、何であいつこっちに向かってくるの? 

 よおチェリノ、お出迎えか? 

 

「馴れ馴れしく呼びかけるな! オイラはスパイクタウンジムリーダーにしてモンスター大好きクラブ会長でもありデトロイトファンクラブ会長でもあり──」

 

 うっせえ! 

 

「……うわーん! メイー! こいつらがー!」

 

 なんだこいつ、情緒不安定か? まあまだ子供だもんな、やっぱこいつがジムリーダーやってんのおかしいよ。俺と替わる? 

 っていうかキノガッサがメイかよ。

 ひっさしぶりだわマジで。

 人間の姿の方が見たいけど。

 

「ししょーから変な気配を感じました!」

 

 あいてっ! なにすんだアイリ! 

 人の頭を叩いちゃダメでしょ! 

 

「ばかばか!」

 

 は、反抗期……! ええい、さっさと街の外に出るぞ! 

 

「……ちょ、ちょっと待って!?」

 

 え? ……ああ、まだいたんだお前ら。何? 俺たち疲れてるからゆっくりしたいんだけど。

 街から出て良い? 

 

「こらー! オイラ達を無視するなー! 全く…………ぬ!? また変な気配が! ……で、でもこいつらも見ていなければいけないのに……」

 

「チェリノ、そっちには別の警備員を向かわせて? 私、コイツらの声に聞き覚えが……」

 

 聞き覚え? そりゃあるだろ、話した事あるんだから。一々確認する必要あるか? 

 

「あなたの名前は?」

 

 もしかして映画始まった? 

 俺も名前聞き返さなきゃいけない感じ? 

 

「いいから!」

 

 ポケモントレーナーですけど。

 

「ええ!?」

 

 ええ!? じゃないが。

 そんなの分かりきってることだろ、何を驚くことがあったんだ。

 というか、俺たちのことを不審者って言ってたの? 

 ……ん? 何か違和感が。

 

「ねえ、あの世界で一年以上暮らしてたけど……こっちの世界だと私たちってどうなってたのかしらね」

 

 …………!!!! 

 確かに!!! 

 

「か、かくほー!」

 

 チェリノの号令で警備員が突撃してきて呆気なく捕まった。

 弱い、弱すぎる。

 あんなに鍛えたのに……データ引き継ぎしてくれよ! ゲーム世界のくせに融通が効かないやつだな! 

 ……まあ、最後はレベルダウンしてたけど。

 捕まった後は酷い扱いを受けたわけではなく、事情を聞かれた。というか説明しろと言われた。

 ちゃんと同じ時間だけ失踪していたらしい。

 大丈夫? 俺の肉体、真理の扉の前で餓死しそうになってたりしない? 

 ──別にそんなことはなかった。

 リザードン達もチェリノ達に保護されていたとかで、急いで迎えに行った。

 リザードンがレッドを抱きしめるそんな一幕も。

 俺のことは尻尾で一巻き、珍しいこともあるもんだ。

 

 しかし……レッドの親友であるピカチュウは、あっちの世界にもいなかった。

 レッドの親友ならあのポケモンだらけの世界にいてもおかしく無いと思ったんだけど、残念ながら見つけることはできなかった。

 もうぶっちゃけるけど、ピカチュウって特徴無いからな……

 でも、コレでいいという感覚があった。

 何の進展も無いのに、コレが正しいんだと直感が囁いてくる。

 レッドとはそのことについて話した。

 少し寂しそうにしながらも、俺の事を信じてると言ってくれた。

 

 そして、愛しの仲間達を目一杯可愛がった。

 久しぶりに見るおなごはちょー眩しい。

 一人一人にめっちゃ時間かけた。

 ポケモンの時も可愛かったけど、元のレベルが高すぎる。

 しかもこいつら、一年もあっちにいたせいでポケモンの時の仕草が所々癖付いてるからすごいこう……萌えです。

 

「きゅぅぅ……」

 

 最後に可愛がったナギが溶けて、仲間全員が寝袋に沈んだ後、鍵を触る。

 あっちの世界でリュックにしまっていたはずの鍵がこっちまでくっついてきていた。

 ただ、問題があって……紐を通したはいいけど、こいつを首にかけてると少し頭痛がするんだよな。

 グリフィンドールの剣があったら叩き壊してたかもしれない。

 しょうがないので再びリュックに仕舞い込む。

 リザードンに頭を叩かれた。

 理不尽だったのでモフモフの刑に処した。

 

 なんかまたザワザワうるさいんだけど、なんだよこんな夜に。

 オッサン、何なのこの騒ぎ。

 

「……うわぁポケモントレーナーだ!」

 

 地下闘技場で観戦してたりした? 

 それで、何の騒ぎ? 

 

「お、おう。いやなんかよ、いきなり女の子が現れたらしいんだよ」

 

 ? 

 そうなんだ。

 そんな騒ぐ事? 

 

「いやいや聞けって! なんか全裸で、胸がでかいらしいんだぜ!」

 

 馬鹿野郎それを先に言え! 

 どこだ! そこはどこだ! 

 

「あっち、だと思う……え、まじで行くの? 例の子達は? 浮気? あ、もういない……やば……」

 

 急いで人混みを駆け抜ける。

 ──こ、この疾走感!! 

 俺の肉体が帰ってきた! 

 テンション高くなってきたな! 

 ザワザワと騒ぐ中心では警備員が人を堰き止めていた。

 

「あっちいけ! こっちへ寄るな! おい嬢ちゃん、お前も何でそんな堂々としてんだ!」

 

「ここから先に進んだら逮捕だぞ! おい、近寄るな!」

 

 メガネを付けている奴らは何故か悔しがっていた。

 

「なんで撮れねーんだよー……」

 

「この周辺の設定いじられたんだろ」

 

「ちぇー、記憶に焼き付けとくかー」

 

 邪魔者どもを擦り抜け、中心にたどり着く。

 少女が不安そうに周囲を見回していた。

 

「何だこいついつの間に……えっ!? ポ、ポケ……!?」

 

 警備員が目の前に立った俺に気付いたのか反応していた。

 ただ、俺の方はそんな余裕が無かった。

 少女と目が合う。

 赤い瞳に水色の髪。

 そんなわけはないと思いつつも、言葉が漏れる。

 

「ワニノコ……」

 

 ピクリと反応した少女がタタタッと駆け寄ってきた。

 

「ピ、ピカチュウ? ピカチュウなの? 僕、その……こんな姿になっちゃったけどワニノコで……」

 

 お、おう……

 

「そ、その……さっき、みんなと一緒にいたいって願っちゃって、そしたらなんかここに来ちゃって……あのあのっ……ど、どうすれば……?」

 

 どうすればって…………うん! 服を着よう! 

 急いで俺のTシャツを着せて、観衆を蹴散らす。

 散れ散れ! 見世物じゃねえんだよ! メガネかち割るぞ! 

 あと、うちの子に触れようとしたら漏れなく土に埋めるからそのつもりでよろしく! 

 

「何だよあいつ調子乗って……」

 

「おいやめとけ……あいつ間違いない、ポケモントレーナーだ。メガネどころかタマまで割られるぞ」

 

「……失踪してたんじゃなかったのか!?」

 

「今日帰ってきたらしい」

 

「嘘だろ……死んだと思ってた」

 

「くっそ、何で動画撮れねえんだよ! こんなの絶対バズるのに!」

 

「久しぶりー!」

 

 何がどうしてこうなった? 

 静かになったワニノコはサンダルすら履いてなかったので、抱えてテントに連れ返った。上はそのままに、ナギのズボンを履かせる。シャツはまあ、若干緩いくらいだが良いだろう。

 それにしても……ワニノコおめぇ、4歳の割にすんげえ身体してるなあ、オラ感心しちまったぞ! 

 

「何その口調……」

 

 おっと、つい。

 ……それで、勢いでこっちに来ちまったわけだが、帰る方法とか考えて来たのか? 

 

「……全然わかんない」

 

 …………はははは!! 

 あ、あんなにきちんと別れたのに再会はえ〜! 何時間だよ! 

 だめだ、我慢できねえ! 

 はははは! はーっはっはっは! あー腹痛え! ……ふぅ……わはははははは!! 

 

「わ、笑わないでよ! 僕は困ってるんだよ!? ピカチュウも一緒に考えて──―な、なんだよぅ…………折角……堪えてた、のに……ひぐっ」

 

 言葉を遮って。

 最後に触れられなかったワニノコを、今度こそ──その感触をしっかりと確かめながら抱きしめる事ができた。

 それにこれは、お別れのハグじゃない。

 

「一緒に冒険をしような、ワニノコ」

 

「……う゛んっ!」

 

 ──いや、鼻水を俺のTシャツで拭かないで!? 

 このTシャツ、今着たばかりだからね!? 

 ……あーっ! おまっ、ちょっ、やめっ……ティッシュを使えええええ! 

 

 

 ──────

 

 

「──ドリームランド? なんだそれは」

 

『チェリノちゃんから聞いたんじゃよ。失踪している間、そこにいたらしいのお』

 

「我は聞いたことがないな」

 

『ワシもない』

 

「…………何で彼は毎度のようにトラブルに巻き込まれているのだ?」

 

『それはあやつの方が知りたいんじゃないかの』

 

「……一年前は本当に大変だった」

 

『そうじゃな、オールドタウンの後処理でどれだけ駆り出されたことか……』

 

 あまり思い出しくない記憶、テッセンはシンプルにいつも忙しくて、シンリンカムイはナバルデウスの対応と重なって……2人して肘をついてあの地獄を思い返す。

 ジムリーダーを辞めたいと何度思ったことか。

 アイズカンパニーの解体、少女達の身に起こった悲劇、国際警察の介入、拡散した数々の動画。

 そして……世界を破滅させようとした者。

 アラカゼからも話を聞いて、本当に肝が冷えた。

 そして、規模の大きさを考慮して協会からも報奨金を出そうということで話がまとまった矢先の失踪。

 

「はぁ……」

 

『ほんと、大変じゃったよなあ……』

 

 真面目な話し合いだと聞いて参加したら、なぜか愚痴を聞かされることになった三人目が苦言を呈す。

 

『……あの、なんで私はここに呼ばれたの? 私だって結構忙しいんだけど』

 

 そんな彼女に、2人は助言をした。

 

「次に彼が向かうのは君の街だからだ」

 

『え?』

 

『何が起きても対応できるように、しっかり準備を整えておくんじゃよ?』

 

『……何が起きるかも分からないけど、対策はしておけって? 失踪していた有名人の為に?』

 

「そういう事だ」

 

『2人が言うから参加したのに……損した』

 

 プツッと通話が切れる。

 カムイとテッセンは顔を見合わせた。

 

『まあ、彼女は若いし……それに、目にしないと信じ難いからのお……』

 

「実際に足跡を追った我らとは違う故、致し方あるまい。いつでもフォロー出来るようにしておこう」

 

『……炎の街グレンタウン、君もかつて手を焼いたところだな』

 

「タイプ相性というものがあるからな」

 

『ほっほっほ……次は何が起こるのやら』

 

「ああ、もう書類はいやだ……」

 

 頭を抱える二人の後ろでそれぞれの秘書も困り顔をしていた。結局、2人のそばで働いている秘書だって同じように忙しいんだ。

 




ポケモントレーナー(ピカチュウ)
22歳
四足歩行生物とかほんまやってられまへんわ……

タカナシホシノ(ナカヌチャン、原作:ブルーアーカイブ)
17歳
この人といるととんでもない事になるな……と改めてドン引きした。
ショットガン以外の武器もいいかも。

レッド(アブソル、原作:ポケットモンスター)
15歳
ピカチュウを舐めて毛繕いしてあげるのが結構好きだった。

アイリ(ロコン、原作:ポケットモンスター)
11歳
ししょーちっちゃーい!
かわい〜!
クマのおじさん達が褒めてくれるのは嬉しいけど、師匠からはあんまり近寄らないようにって言われてたから言う通りにしとこ……と少し塩対応だった。

ナギ(キルリア、原作:ポケットモンスター)
18歳
小さくなったポケモントレーナーを拘束するのに少しハマっていた。

ノコ(ワニノコ、原作:ポケットモンスター、魔法少女リリカルなのはシリーズ)
ビジュアル:レヴィ・ザ・スラッシャー(おとなのすがた)
4ちゃい

臆病で、純粋で、脆かった。
初めは興味だった。
それは仲間ができる期待に変わった。
やがて実感に変わり、身を包む喜びへ。
ありえない速度で駆け上がっていくというのは、喜びよりも戸惑いが勝ると知った。
底知れぬ相棒に畏怖を抱き、同時に憧れた。
どこまで行けるのか、見たくなってしまった。
重荷になっていても、それでも相棒と呼んでくれるならば着いていきたかった。
ダンジョンからダンジョンへ。
まるで散歩でもするように踏破し続ける。
その果てに、世界を壊す敵がいた。
気絶しそうな視界の中で、対話する相棒を見た。

生命を司る大樹の頂上、宙から世界を見下ろした。
隣を見ると、満足そうな横顔だった。
なんでも叶う、そんなお宝。
置いてあったそれを手に取ることもせず。
この世界でやり残した事はない、そんな顔だった。

レベルが下がり、前のように小さくなってしまった身体。
痛む胸、震える手を握りしめて。
置いていかれる事が、何よりも恐ろしかった。
頑張ったと褒められた。
渡された宝はその成果物だと。
最高位に辿り着いて良かったな、と。
もうそんな事はどうでもよかった。
自室で1人、冠に縋り付いた。
そして、どこにいるかも知れない神に希う。

『僕を――』


コータス(原作:ポケットモンスター)
鶴は千年、亀は……?
流石にそこまでは生きてない。

ネイティオ(原作:ポケットモンスター)
どうか、健やかに。
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