俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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34_みんなにくびったけ

 ずざざざざざ。

 そんな音が道を駆け抜けていく。

 

『ディグダ、ディグダ、ダグダグダグ』

 

『ディグダ、ディグダ、ダグダグダグ』

 

「…………」

 

 ポケモントレーナーは特に抵抗らしい抵抗もせず無言で運ばれていた。諦めたというより、この先に何があるのか気になっての行動だった。

 そもそもどうにかしようと思ってたら指示を出すだけで済む。

 仲間とはどうせそのうち合流できるだろうし、無理にディグダやダグトリオをどうこうするのでは無く、成り行きに身を任せようと。

 人事を尽くして、天命を待つだ。

 青年は待つだけだし、人事を尽くすのは彼女達だけど。

 押し寄せるディグダに驚いて道を開ける人々の間を通り抜けていく。

 

 ディグダ達が跳ね上げる土に塗れながら真顔でモンスターに運ばれていく青年を見て、人々はどうするか。

 通報するに決まっている。

 

「はい、はい、なんか男の人がディグダに運ばれていきました! ……いや、真顔でした!」

 

『ご連絡ありがとうございます、ただいま別の者が現場に向かっております』

 

「お願いします!」

 

 せっかく運ばれるんだから、軽く街の様子を流し見ることにした。

 大体の人間は青年のことを見ているが、そこまで驚いた様子は見受けられない。ディグダがこうして街中を動き回るのは珍しいわけでは無いようだ。

 ただ、人が連れて行かれるのは珍しいのか心配そうに声をかけて来る事も。ヒラヒラと手を振って大丈夫と表現するけど、それでもやっぱり通報しているようにも……

 

 しばらく運ばれると湯気が立っている一角に来た。この街には温泉があるようで、1年半ぶりぐらいの硫黄の匂いに懐かしさを覚える。

 コトリタウン──ナギとの出会いはあまり良いものではなかったんだけど、あいつの真摯さに心を動かされて……あの街で触れ合っていくうちに絆されてしまった。

 やっぱり頑張ってる奴には報われてほしいからな。

 

 運ばれ続けて三千里、なにやら岩岩しい場所に来た。

 というか洞窟が見えてきた。

 ……ちょっと待てい! 

 身体を跳ね上げて脱出する。

 流石に何の準備もせずに洞窟に入るのは良く無い。

 問題は無いけど色々と面倒なことになるのが目に見えていた。

 洞窟に向き直ると、ディグダ達はこちらを気にせず次々と中に消えて行った。

 ディグダ達の行動には必ず意味がある。

 ポケモンは賢いんだ! 

 意味も無くあんな事はしないし、それは意外と重要なことだったりもする。

 まあ、今回は諦めて帰りますよ。

 

 引き返してる途中、警察に囲まれた。

 どろだらけで堂々と歩いているのを見て、俺がディグダを操って青年を誘拐したとか勘違いしたらしい。

 笑わない事で有名な俺も、自分で自分を誘拐したって言われるのは面白すぎたので爆笑した。

 ますます状況が悪化した。

 電気を撒き散らす、明らかに良く無いタイプの警棒を振り翳してきた警官とデンチュラを反射的に吹き飛ばした瞬間、やべっやっちった、って思ったのは言うまでもあるまい。

 ……やっちまったもんはしょうがねえよな! 

 俺を法律や条例、規則やルールで縛れると思ったんなら大間違いだぜ! 

 なにせ戸籍が無い、存在しない人間を縛れるものなんかどこにも無いんだから! 

 

 警官を全員KOしてスッキリした後、川で体を洗って全身の泥を落とし、素知らぬ顔で街に戻った。服が濡れていたのでちょーっとだけ目立ったけど、温泉に浸かってきたでゴリ押してなんとかなった。

 警官達が俺の元いた方向に向かって走って行ったけど物騒だなあ……

 スタスタと横を通り過ぎ、店先で売っていた饅頭を食べる。

 モグモグモグ、お代は現金で。

 …………うぇっ!? 現金不可!? 

 無理無理我眼鏡使用不可! 電子支払不可! 小銭以外不持! 願小銭支払! ……不可? 

 ……皿洗、掃除、洗濯、我任! 全部我行! 願願! 

 ……謝謝! 

 

「へいらっしゃい、よってらっしゃい見てらっしゃい! 火山灰饅頭をおひとついかが! そこの僕ちゃん、ぜひこれ食べて! ほおら、とろっとろのカスタードクリーム──」

 

 結局店の正面で宣伝する事になった。

 道ゆく人に話しかけてまんじゅうの素晴らしさを説く。

 最初は全然買ってくれなかったんだけど、ひたすら話し続けてたら一人買ってくれる人がいた。

 すると、続くように買ってくれる人が増えていく。

 人って流されやすいよね。

 でも、俺の言葉で買ってくれる人がいるのってこんなに嬉しいんだな……

 労働の喜びを得た俺はウキウキと饅頭分の稼ぎを終え、店主とお茶休憩をしていた。

 娘さんがお茶菓子をくれたのでありがたく口に入れると、饅頭とは違うし食べた事ない食感なんだけどすげえ美味しかった。クマシュンの鼻水餅って言うらしい。

 売り上げは良くないけど食べた人からの評判は良いとか。

 売り上げが良くない原因、丸見えだと思うんですけど……ほのおの街感も無いし……

 

 もう今日は良いよって言ってくれたので、ありがとうございましたと店を後にしようとしたら娘さんが追いかけてきた。

 俺のことを知っていたらしい。

 あ、どうもポケモントレーナーです。

 ……お土産? 

 マジ? 

 タダ飯食って店先で騒いだだけでこんなものまでもらえるとか鶴瓶師匠みたいな扱いじゃん。

 ありがとう、みんなも喜ぶよ。

 美味しくいただきます。

 ……なんか警察が店前に。

 泥まみれの成人男性をこの辺りで見なかったか? 

 見てないなあ……店主さんは? 

 

「見てないなあ」

 

 娘さんは? 

 

「見てないですねえ」

 

 だそうです。

 じゃあそろそろ行くね……

 ブンブンと手を振る二人と別れ、街中ぶらぶら散策タイム。

 いや、最初にするべきなのが仲間を探すことだってのは分かってるんだけどね? でも俺、ディグダに転がされた時はほとんど荷物置いてたからすげえ身軽なんだよね。

 街に来て早々こういう状態になることってあんまり無いから、仲間も誰もいないうちにソロの時間を楽しもうかなって。

 荷物はあいつらがちゃんと確保してるだろうし、どうせ宿だって見つけてるんだからそのうち合流できるっしょ! 

 

 

 ──────

 

 

 ポケモントレーナーの後を追っていった少女達は、警察が集まってる場面に出会した。

 途端に浮かぶ嫌な想像。

 気絶した警察が運ばれていく。

 野次馬に話を聞いてみると、泥だらけのバケモンが警察と何か言い合いを始めたと思ったら大笑いして、危険を感じた警官が攻撃したらあっという間に全員倒されてしまったのだとか。

 ホシノは溜息をついた。

 

 なぜあの人は大人しくするという事ができないのだろう。せめて私たちが来るまで待ってくれていれば穏便に済んだだろうに。

 幸いなことに、ポケモントレーナーであるという事はバレてなさそうだったので

 

「へー、大変ですねぇ……」

 

 なんて言いながらその場を離れる。

 犯人は現場に戻って来ると良く言うけど、彼は生憎とそういう人間では無い。

 街を探した方が良いわねというナギの判断の下、そういう方針にしよう──としたけど荷物の問題があった。

 いつもは例のアイツが持っている荷物を抱えたままだ。この状態で街を駆けずり回るのは非常に疲れる。

 しょうがない、先に荷物を置く場所を決めよう。

 レッツ宿探し! 

 

 一つ目、安宿。

 

「僕、こんな狭いと寝られないよ……」

 

 二つ目、リゾートホテル

 

「開発したのがティアーズカンパニーだから嫌よ」

 

 三つ目、ビジネスホテル

 

「大人数用の部屋は無いね〜」

 

 四つ目、試練プレイヤー専用宿泊施設

 

「お風呂が共用だからヤダ」

 

 金はある、良い宿をもってこい! 

 そんなスタイルで色々と探す。

 そして結局、温泉宿のある一角にやって来た。

 とある宿の暖簾をくぐると、どこかで見たようなエントランスが広がっている。

 

「ようこそおいでくださいました」

 

 女将が三つ指揃えて出迎えた。

 年上から厚く歓迎された経験なんて全く無い子供達には、どう対処すれば良いか分からない。

 5人揃って挙動不審になりつつ、よろしくお願いしましゅ……と返すので精一杯だった。

 

「コトリタウンでは手前の姉が営んでおります宿を大層ご贔屓にしてくださったそうで、厚く御礼申し上げます」

 

「えー! お宿の雰囲気が似てると思ったらそうだったんですねー!」

 

 アイリが口に手を当てて大きく驚いた。

 穏やかに笑った女将は頷いた。

 

「はい、二人で計画して別々の街で立ち上げました」

 

「系列店、みたいなものなのかしら……」

 

「似たようなものと考えていただければ問題ございません、それで本日は──」

 

 入り口を若干占領していた一行は謝りつつ、6人で泊まれる部屋は無いかと尋ねた。

 

「もちろん、最高にピッタリな部屋がございます」

 

 私を誰だと思っていやがる、そんな誇りが垣間見えるような返答だった。

 ホシノの額に冷や汗が生じる。

 どれだけ高いんだろう。

 金はあるけど無限じゃ無い。基本的には1ヶ月以上滞在する事を考えているので、値段次第では相談になる。

 

「お値段はコレくらいですね」

 

 ……まあ、コレくらいなら試練で稼げばいけるか? 

 という感じで特にメンバーからの拒絶もなくスルッと決まった。

 なお青年がこの場にいたら

 

「俺の部屋は!? ……俺の睡眠は!?」

 

 と騒いでいた事間違いなしだが、事後報告すれば基本的に通るので考慮に値しなかった。

 チョロくて助かる、レッドはニヤリと小さく笑った。

 

 先にある程度の期間分の支払を済ませたのだけど、貯金からゴッソリ金が抜ける瞬間の感覚にはいつも慣れない、ホシノはそう思いながら残金を確かめた。

 

「ひょえ〜……少なくなっちゃったねえ……」

 

「ねえねえお金大丈夫なの?」

 

「うん、とりあえずは大丈夫だけど……いっぱい試練受けなきゃね」

 

 通された部屋は6人が泊まるのに相応しい広さを備えていて、荷物を放り投げて一息つく。ナギが窓を開けると広大な庭園、几帳面に整えられた植栽の間を駆け回るポケモン達、そしてグレン火山が姿を見せた。

 レッドはまずお風呂を確認した。

 広々とした空間に掛け流しの露天風呂も備えてある。というか常時利用できるらしい、さすが高級旅館。

 満足そうに頷いたレッドの肩に顎を乗せるホシノ。

 

「すっかりお風呂が好きになっちゃったんだねえ」

 

「ホ、ホシノ……」

 

 マイペースなレッドも他の3人ならともかく、今のホシノにそれを言われると弱いところがあった。

 風呂を確認した意味をわかってるぞ、と指摘されたようなものだと理解していたからだ。

 ただ、ホシノの声に険は含まれていない。

 

「別に怒ってないよ〜」

 

「そう」

 

「前も言ったけど、おじさんだけのモノなんて思ってないからさぁ」

 

「……気にしてないし」

 

「そっか……レッドちゃんも大切な仲間なんだから、遠慮なんてしないで良いんだよ? お兄さんもいつも言ってるでしょ?」

 

「分かってるから」

 

「なになに? 何が分かってるの?」

 

 ノコが顔を出した。何も分かっていない表情で二人を交互に見る。

 そしてお風呂を見て……場の音圧レベルが10dbぐらい上がった。

 

「これがオンセン!!? すごーい!!! こんなの見た事無いよ!!! この街の変な匂いは火山じゃなくてこれだったんだね!!!」

 

「ノコうるさい」

 

「ノコさん、もう少しだけ声を下げて?」

 

 うるさすぎてレッドがうんざりした声になる。静かな空気を好むナギも顔を顰めて注意した。

 温泉旅館なんて見たこともなかったノコは、お湯に顔を近づけると匂いをしっかりと嗅いだ。

 手をチョンチョンとお湯に付け、熱すぎないことを確認する。

 

「ニンゲンはこういうお湯も使うんだねー……今すぐに入っちゃおっかな!」

 

 言うが早いか、バッと服を脱ぎ捨てたノコが温泉に突撃した。呆気に取られた2人を放って、教えられた通りに身体を洗って露天風呂に飛び込む。

 マナー? それは食べられますか? 

 

「ノコちゃん!?」

 

 ホシノが素っ頓狂な声を出す。

 ザバンという音を聞き付けてアイリ達も見に来た。

 

「さっきから何を騒いで……まだお風呂に入るのは早くないかしら?」

 

「あー!? 一番風呂取られました! ノコさんなんで勝手に入っちゃうんですかー!」

 

 何故かアイリも服を脱ぎ捨てて浴室に駆け込んだ。

 ここで一つ、大事なことがある。

 お風呂の床っていうのは基本的に、濡れていても滑りにくいようにできている。だって転んで頭ぶつけたら痛いもんね。

 でも旅館で大事なのは高級感であり、この宿の浴室の床も高級感を出すためにいろいろな大きさの石畳で構成されている。

 しかも天然モノ。

 ……天然の石に滑り止め機能とかついてるわけねえだろ! 

 !! ああっと!! 

 アイリの後頭部が床へダイレクトシュ────ッ!!! 

 するかに思われたが、ホシノがインターセプト。

 後頭部と石畳のファーストキスは避けられた。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「もー……おじさんがいなかったら怪我してたよ〜?」

 

「ごめんなさい……」

 

「ふーっ……間一髪だったね」

 

 汗が出てるか分からないけど、ノコは額を腕で撫でる。自身も飛び出そうとしていたが、お湯から尻が出たくらいで止まっていた。

 全身が女性らしい丸みを帯びた曲線を描き、腰付きも胸部も恐ろしいくらいに蟲惑的ではあるが、アイリを助けるための行動に必要な筋力量からは程遠かった。

 ダイスを振ってもクリティカルが出ない限りは不可能だろう。

 

「──―だから、お風呂に入るのは良いけど、危ないから歩かなきゃダメよ?」

 

「はい……」

 

 全裸でナギに叱られて、若干気落ちしながら髪から洗っていくアイリ。

 自分の責任ではあるがちょっとむくれていた。

 汚れを落とし、露天風呂に足から浸かると汚い声で喘ぐ。

 

「ゔぅ〜……」

 

 世界が違かろうと声帯が一緒なら、熱めの風呂に入る時に人間から出る声などだいたいそんなもんである。

 そして何故かノコを背もたれがわりに使っていた。

 ノコも、ゆっくりしていたらアイリがいきなり自分の胸にもたれかかって来たので、少しだけ静観した後にその理由を聞いた。

 

「アイリ、どうしたの?」

 

「……しい」

 

「え?」

 

「うらやましい!」

 

「ええ!?」

 

「なん! ですか! この! おおきな! むねは!」

 

 ゆさゆさと頭を揺らして、後頭部に当たるでかいたわわを感じ取るアイリ。

 自分のたわわ(笑)を見下ろすと太ももまでストンと視線が抜ける。

 

「ノコさん!」

 

「は、はい」

 

「下を見ると何がありますか!」

 

「……胸です」

 

「むぅぅぅぅ!!」

 

「えっ、なに!? なんでこっち見るの!?」

 

 ガバッと振り返ったアイリは目の前に立ちはだかる巨大な敵を睨みつけた。

 完全に、先ほどナギから叱られた八つ当たりだった

 

「えいっ! ──―」

 

「うわっやめてよ! 乱暴は…………ん?」

 

 両のそれを下からぐわしと掴み上げた。

 その瞬間手に伝わる、たゆんという圧倒的なボリュームにポキリと心が折れる。

 ハイライトの消えた目でモミモミと手のみが動く。

 

「ア、アイリ? くすぐったいんだけど」

 

「私だって……まだ12歳だし……」

 

「え?」

 

「成長すれば……レッドさんより全然大きくなるし……」

 

「どうしちゃったの……」

 

「……アイリ?」

 

 いきなり流れ弾が飛んでいってブッ刺さったレッドは、唖然とした表情でアイリを見つめている。

 入り口で見ていただけなのに、そんな酷いことを言われるとは夢にも思わなかった。

 確かに自分の胸はそんなに大きくないが、まだまだ成長の余地は全然ある。それなのに、もう大きくならないんだろうな……とアイリから思われていることが判明した。

 こうして、レッドとアイリが傷付いて2人の入浴タイムは終了した。

 全部、ポケモントレーナーがこの場にいないせいなんだ……

 

 

 ──────

 

 

 スーパーパパラッチタイム、到来! 

 いやーおかしいな。

 アイリ曰く俺の顔は普通らしいし、1人だけならバレないかと思ったんだけど……

 こうして歩いている間にも視線を感じるし、指差しもされる。

 街中でこうなるのは1年以上ぶりだから、少し変な感じだ。スパイクタウンは街の中だとポケモンの姿でいられるから普通に紛れる。

 ピカチュウちっさいし。

 ……あれだ、一年経つと耐性も消えるもんで、やっぱりコソコソ話されるの腹立つわ。

 そもそも全部聞こえてるし。

 

「あれポケモントレーナーだよね……? なんで1人なの?」

 

「ね」

 

 俺が1人でいたらそんなに変か? 人間って外出する時は基本1人だよね? 

 俺のイメージってそうなの? 

 常に誰かと一緒にいるの? 

 

「なんか饅頭持ってる……クマシュンの鼻水餅だってさ、変な名前」

 

「鼻水って……不味そうだな」

 

 ……ちょっと待てい! 

 

「うわっ!?」

 

 名前が悪いのは分かってるが食ってみろ! 

 ほら、ものは試しだ! 不味いと思われたままなのは納得いかん! 

 ほら! ほら! 

 

「……あはは」

 

 苦笑して去ってしまった。

 その場には個包装を差し出した格好の俺だけが取り残された。

 しょうがねえ、これは俺が食うか。

 ……やっぱり美味いのに、ネーミングセンスで本当に損してる。食い終えたので二つ目の袋を開けようとして、あいつらの分だったことを思い出す。

 

 この街にはもしかしたらあるんじゃ無いかと思っていた物が、ありました。

 ビードロ工房。

 ブーバーが従業員として働いているらしい。

 見学してみると確かに火を吹きながら必死にビードロを整形している。

 

「こいつは職人気質でね、野生にいた時から岩に火を吹きかけて像を作ったりしていたんだ」

 

 それはもはや気質では無く本物の職人では? 

 

「昔拾ったビードロを大切に持っていたんだよ。それが壊れちゃったってんでうちに来て、それからだね」

 

 言葉わかるんすか? 

 

「粉々に砕けたビードロを大事そうに抱えて店前にいたんだ、分からないわけないだろ?」

 

 …………ポケモンの感情や動きは、アニメやゲーム内で補完されるフレーバーテキストに過ぎない。ゲームの進行とは関係の無いものである以上、その内容がなんであっても変わらないんだけど……

 芸術を解するポケモンか。

 良いな、そういうの。

 まあ俺は芸術分からないけど。

 

「暇さえあれば火山灰を拾って来て、こうしてビードロを作っているんだよ。幸いスペースはあるし、場所を貸してるって感じだな。その代わりに、できた作品は店頭に並べてる」

 

 軽く手を挙げた店主に反応して、ブーバーもちらっとこちらを見ると手を挙げた。

 トレーナーとポケモンじゃ無い、違う形の絆なんだな。

 良いものを見せてもらったので鼻水餅を取り出そうとしたら──

 

「鼻水餅じゃん、ブーバーも俺も大好きだから冷蔵庫に常に入ってるんだよな」

 

 まさかの返しが来た。

 

「仲間がいたよな? あの子たちに食べさせてあげろよ」

 

 俺がポケモントレーナーである事は知っていたらしい。なんで俺がそうだってわかるのか聞いても? 

 

「立ち振る舞いが俺たちと全然違うからじゃ無いか? そりゃあ目にも止まるし、顔を見れば流石に分かるだろ」

 

 顔はソーマで見慣れ過ぎて分かるらしい。

 それはもうね、俺の負けです。

 どうしようもありません。

 

 ピンク髪のダルそうな女の子がいなかったかと聞き込みを開始した。もうそろそろ探し始めないと夜になっちゃうんでね。

 せっかく遠回しに聞いてるのに、ホシノちゃんは見てないねえ、とかホシノさんあっちの方に向かって行ったよ、とかホシノさんを僕にください、とか普通に名前出されるの困惑するわ。

 お前らホシノの友達か? 

 わざわざ名前を出さなくて良いんだよ、いたかどうかだけ答えてくれれば。

 

 証言をまとめると、宿を探していたらしい。

 さすが俺のホシノだ。

 俺のな。

 くださいと言われてもやらん。

 そういうわけで色々な宿を回る。

 しかし、大きな壁が立ちはたがった。泊まっているかどうかという情報は個人情報であり、おいそれと教えてもらえなかったのだ。

 詰んだ、どうすりゃ良いんだ? 

 …………

 

 結論が出た。

 大声でホシノの名前を叫びながら走り回る。

 これが一番早いと思います。

 ……ホシノー!! どこだホシノ──!! 

 助けてくれー!! 腹が減って死にそうだー!! 

 ホシノー!! 

 

 

 ──────

 

 

 ソーマを見て、ホシノは顔を赤くした。

 

『ホシノー!! 助けてくれホシノー!! 超さびしいぞー!! ホシノー!!』

 

「ほんとにやめて……」

 

 ただただ恥ずかしい。

 しめるべき時はきちんとやるのに……

 街中を必死の形相で走り回りながら叫ぶ醜態を世の中に晒してなんとも思わないのか、小一時間問い詰めたい。

 周りの人達がクスクス笑っているのは当然認識しているだろうに。

 

「じゃあ、確保してくるから」

 

 ナギがすっくと立ち上がり、出かける準備を済ませた。

 ちょっと怒っているようだった。

 

「ホシノさんは?」

 

「いやぁ、おじさんはちょっと……」

 

 ホシノはとても外に出る気になれなかった。

 だって、これで青年を迎えに行ったら囃し立てられる事間違い無い。

 そんなの拷問じゃないか。

 

「他に来る人はいる?」

 

 畳の上で溶けてるアイリとノコからは動こうという気概が全く感じられない。お風呂に入ったせいでねむねむだった。

 レッドは体育座りでしょぼんとしている。

 

「…………」

 

 思い詰めたような表情で下を向いているが、実際はアイリに言われた事がずっと響いているだけだった。

 

「じゃあ行って来るわね」

 

「頼んだよ〜」

 

 外に出て、隣に誰もいないことに違和感を感じたナギ。1人でお出かけするのが久しぶりという事実に気付いた。

 どうせ彼はすぐ見つかるし、少しだけ街を見ながら行こうかしらなんて、モヤモヤしながらも足取り軽く歩き出す。

 

 街を行き交う人々を見る。

 花は咲き誇り、太陽は明るく人々を照らし出す。人々は何も感じる事なくそれを受け入れ、当たり前の日常を過ごしていた。

 改めて、すごい人生を送っていると感じた。

 この日常が薄氷の上に成り立っているに過ぎない事を、一体どれだけの人が知っているんだろう。

 オールドタウン、マサゴタウン、ドリームランド。

 その全てで、世界を滅ぼす力を秘めたモンスター達と戦って来た。

 対峙して分かる、彼が常々言っていた伝説のポケモンという言葉の意味。

 

 巫女としてコトリタウンにいた時は想像する余地もなかった。

 伝説を作り上げるほどに強大なモンスターであり、只人たる私達が対峙するには力不足のはずだった。

 ……でも、いつもなんとかなった。

 いつだって、なんとかして来た。

 彼は言う。

 これがストーリーだ、と。

 アイツが生み出すメインストリームの中にいる俺らは、その流れに逆らわずに進むだけで良いんだ、と。

 とんでもない大嘘つき。

 それか適当を言ってるだけ。

 逆らわなかったらどうなっていたか、一番わかっているくせに。

 

 アラカゼおじさんには、何があったか全部伝えてある。

 正式なジムリーダーで、ウルトラビーストの存在も知っていたおじさんなら理解してくれるはずだと思ったから。

 聞いたおじさんもドン引きしていた。

 過去には世界を滅ぼすようなモンスターが現れた記録もあるらしいけど、立て続けになんてのは無いらしい。

 

『彼はもしかしたらそういう敵を見つけ出す、あるいは引き寄せる能力でも持っているのかもしれない。我々の一族が風を感じ取れるように』

 

 ほぼ同感だった。

 あの人はレッドさんが全ての発端だと思っている節があって、その事に関してはレッドさんも嫌な顔をしている。

 レッドさんはとてつもなく優秀なプレイヤーではあるけど、それ以外では普通──うん、ふつうのおんなのこだ。

 その事は彼だって知っているはずなのに、どんな色眼鏡で見ているんだろうか。

 彼は思考が柔軟に見せかけて、変なところで頑固だった。

 どういう過程を経れば彼みたいな人間ができるんだろう。いくら古代の人間とはいえ、あまりにも常識が外れ過ぎているんじゃないかしら。

 

 オールドタウンの最終決戦で見せられた星の記憶。きっと彼は、あの時代からやって来た。

 モンスターボールという道具を操るプレイヤー達のいた時代。

 そこまで今と違うのかな。

 彼が最初に着ていたという服を見せてもらったことがあるけれど、確かに私達が来ているのとは若干生地とかが違う気はした。

 でもそれも大きな差では無いし、ほとんどの物に対して、文字が読めないだけでそれが何であるかは分かっているっぽい。

 いくらなんでも……あんな風に、人前で女の子の名前を叫んで走り回るのが常識である時代なんてあるはずない……よね? 

 

「ホシノー! くそお! アイツ全然出てこねえじゃねえか!」

 

 ──ホシノさんばかり。

 せっかく迎えに来てあげたのにイライラするし、とても目立っているし……やっぱりやめようかしら。

 あっ……こっち見られた。

 

「おい」

 

 話しかけられてるのは気のせいだよね多分……

 

「おい、お前だ」

 

 顔を背けていたら、不審者がいつのまにか間近に迫っていた。警察に通報しようかしら……

 

「おいナギ無視すんな! 泣くぞ! 良いのか成人男性が道路のど真ん中で喚き散らしても!」

 

「……ホシノさんが恥ずかしがってたわよ」

 

「連絡手段が何もないんだからしょうがねえだろ」

 

「聞き込みとかしなさいよ」

 

「それは死ぬほどしたんですがそれは……」

 

「ともかく、行くわよ!」

 

「おお……なんでちょっと怒り気味なんだよ」

 

「うるさい!」

 

「…………」

 

 話し始めたら、最初の怒りが沸々と大きくなってきた。

 いつもホシノさんやレッドさんばかり贔屓して、私は後回し。みんなよりも年上だからって……ああ、腹が立つ。

 彼にも腹が立つし、腹が立つ自分にも腹が立つ。

 こんなに腹立たしいのは初めてだった。

 

 

 ──────

 

 

 なんかナギが怒ってる。

 手を強く握られていて、俺の肉体が特別じゃなかったら痛いぐらいだろう。

 ツカツカと、俺の事を全く考えない早歩きで進んでいく。

 相当お怒りです……

 そのまま宿まで無言で、暖簾をくぐっても女将さんに挨拶する暇もなく部屋に連れて行かれる。

 なんか見覚えのある顔だったな……いつか刺されるよ、とアドバイスして来そうな顔だった。

 ……まさかジュンサーさんやジョーイさんと同じタイプ!? 

 部屋は随分と……なんか、アレですね。

 お高そうなアレですね……

 とりあえず入りますか。

 

「たでーまー」

 

「おかえりー」

 

 ホシノがにぱぁと入り口で出迎えてくれた。

 新妻かな? 

 

「…………ふんっ」

 

 ナギは手を離してズンズンと怒り肩で洗面所に行ってしまった。

 

「……お兄さん、何かしたでしょ〜」

 

「してないしてない」

 

「あんな状態なのに〜?」

 

「……自信無くなって来た」

 

「ちゃんと接してあげてる?」

 

「そう、だと思う……けど、自信が……」

 

「……ナギちゃんの事、もっと大事にしてあげて?」

 

「…………」

 

 俺にはどうやら年齢が下のやつを優先してしまう悪癖があるらしい。

 ホシノにそう教えられた。

 そんな雑に扱ってたわけでもないんだけど。

 それに、アイツも18とかだしあんまり構われてもウザいのでは? 

 ……でもホシノがああ言ってるしな……忠告を無視するほど流石にバカじゃない。

 ただ、他の意見も欲しかったので相談する事にした。

 アイリに手伝ってもらってタブレットで通話をかける。

 相手はアラカゼさんだ。

 

「お久しぶりです、アラカゼさん」

 

『ああ、久しぶり』

 

「話しがしたいとおっしゃっていたとナギから聞いたので、遅くなっちゃったんですけど連絡させてもらいました」

 

『そうか、わざわざすまないな』

 

「それで話したい事と言うのは?」

 

 相談はしたいけど、まずはアラカゼさんの用件を聞く事にした。

 

『……実は相談があって』

 

「おっ、奇遇ですね。俺も実は相談したいことがあるんですよ」

 

『そうなのか?』

 

「はい、じゃあアラカゼさんの方から聞いても良いですか?」

 

『ああ……実は、年頃の子供との接し方がよく分からなくて』

 

「…………」

 

『孤児院の子ども達ってお父さんお母さんがいないから慎重に接しなきゃならないんだが……なにせ俺には実子がいない。女性ならともかく、泣いた子をあやす方法とか全く分からないんだ……』

 

「あの……ナギは?」

 

『ナギは両親を失った時にはある程度育っていたからな……俺が育てたわけじゃない』

 

「そ、そうなんですか……」

 

『4人も女の子を連れている君なら……今は5人か。ともかく君なら子ども達との接し方とか分かるんじゃないかと思って……何か無いか? テッセンさんは役に立たなかった』

 

「わ、わかんないっピ……」

 

『ピ……?』

 

「僕も、アイツらとの接し方はいつも難しいって思ってるっピ……」

 

『それやめろ』

 

「今日だってナギのことを相談しようと思ってたんすよ……」

 

『ナギがどうかしたのか?』

 

「実は──」

 

 例のことを相談すると、考えながら少しずつアドバイスをしてくれた。

 

『君みたいな状況になった事は無いんだが……そうだな、まず前提としてナギを大事にしてくれているのは伝わって来てるんだ。俺と話す時、ナギはいつもお前のことを自慢しているからな』

 

 ただ、と次に続ける。

 

『やはり、ホシノくんの言う事に概ね同意だ』

 

「そうですか……女の子って難しいですね」

 

『君のパーティは特殊過ぎて、普通の難しさとはかけ離れていると思うんだが……』

 

「まあ分かりました、2人から同じこと言われたんならそうなんでしょう」

 

『何か考えているのか?』

 

「……ま、まあ何とかします」

 

『そうか』

 

「なんかすみません、俺だけ相談に乗ってもらっちゃって」

 

『いや、君も悩みながらやっていることが分かって良かった。俺も少しずつ進んでいく事にするよ』

 

「そ、そうですか?」

 

『ああ、ナギをよろしく頼むぞ』

 

「はい」

 

 俺もアラカゼさんみたいなイケおじになりてえ……

 そんなことを考えながら広い風呂に入った。

 レッドは先に風呂に入ってしまったらしいので乱入者は無し! 

 いや、一緒に入りたいとかそう言う話じゃないからね? 居間で仲良く4人でなんかしてましたよ。ナギはどこ行ったか分からんけど……

 

 さっさと身体を洗って露天風呂に浸かり、グレン火山を眺める。半端ない湯気で見辛くはあるけど、仄かに赤く光る先端が今も噴火していることを示していた。

 そして気付く、腰にタオルを巻いて風呂に入っていた事に。

 レッド来ないんだからタオルもいらないじゃん、アホらしい。

 レッドと言えば、多分グレン火山も登ったらなんかイベントがあるんだろうな……ピカチュウいないかな……ポケモンいっぱいいるし、いてもおかしく無いよな……

 

 ナギもどうしよう。ただ謝るのはなんか違うし、デートに誘うのも安直だし……いや、どっちもやるか。

 ナギはまだ子どもなんだけど大人びてる所があるから、そういう基本的なコミュニケーションを疎かにしちゃうんだよな俺も。反省反省。人生とはこれ即ち反省なり。

 

 ナギのことを考えながら庭園にいるポケモン達をボーっと眺めていたら、ガラガラと風呂の扉が開く音がした。

 レッドだな。

 どうやら2度目の風呂に入る事にしたらしい。

 結局、俺と風呂に入る入らないみたいな話をナギとしてたのはどうなったんだ。

 レッドが身体を洗っている間、また先ほどと同じように夜行性のポケモン達の様子を見る。

 湯船に浸かるまでは前を向いているようにと言われてるからな。そんなの言われなくてもそうするけど、乙女心ってヤツだよな俺は詳しいんだ。

 

 ポケモンの中には庭園の外から流入して来た奴もいるっぽくて、縄張り争いをしていた。庭園には調整された美味しい実がいっぱいあるし、そりゃ争うよねって感じだ。

 ドカンボカンと技を放ち合うので、もはや騒音レベルのはずなんだけど別にそこまでうるさくも無い。もしかしてノイキャンされてる? 

 野生のポケモンバトルを特等席で夢見心地になって見ていたら、ヒタヒタと歩いてくる音が現実に引き戻した。

 

「2回目入るなんて、前と比べたら随分お風呂が好きになったんだ?」

 

「…………」

 

「いや、前は不潔だったとかそんな事言ってないからね? あくまで風呂が好きになったという事実だけを──レッド?」

 

「…………」

 

 違和感を感じた。

 レッドは基本的に反応が薄いけど、普段、会話を無視したりなんてしない。

 どうしたんだろうか。

 無言で近付いてくる足音に戸惑いながら、少し間を開けて腰を下ろした少女を見る。

 

「……ふん」

 

 ふん、じゃないが。

 お風呂に入って第一声がそれって──

 

「なによ黙っちゃって……何か言ってよ」

 

「──ふん、じゃないが!?」

 

「……は?」

 

「あ、いや……レッドかと思ってたからビックリしたんだ」

 

「レッドさんじゃなくて悪かったわね」

 

「いやいやそんな事言ってないだろう……」

 

 何がしたいのかよく分からん! 

 ……流石に風呂に入りたいってだけでこんな事しない筈だけど。

 

「で?」

 

「……で、とは?」

 

「何か言うことは?」

 

 ほほほほほ! この子、お面倒くさいですわよ! 

 何か言えって言われても、何で怒ってるかも分からないのに適当なこと言えねえよ! 

 やっぱ求めてることは口に出さないとダメだよ! 

 ……何て答えればいいんだ。

 教えてくれ五飛、チートは俺に何も言ってはくれない。

 

「…………」

 

「やっぱり」

 

「な、何でしょう……」

 

 俺は知ってるんだ。

 こういう時は俺が悪いんだ。

 でも下手に謝れないんだ。

 視線で右目が消失しそうなほど横顔を見つめてくるのを感じて、流石に顔が歪む。

 そんなに見られても答えは出てこないんだよなあ……

 

「こっち見て」

 

「はい…………お前」

 

「うるさい!」

 

 さっきは湯気で気づかなかったけど、改めて見ると顔が真っ赤で唇もプルプルと震えていた。羞恥心を必死に堪えているらしい。

 

「……はあ」

 

「ため息なんかつかないでよ! ……私の気も知らないで!」

 

「いや、本当……そうだな」

 

 パーティの中では一番歳が近いから、なんだかんだで一番後回しにしてたのかもしれない。

 子供だ子供だと言っておきながら、そういうところで大人扱い。思い返してみれば確かにそんな感じで相手してたわ。

 ……ああなるほど、それで不満が爆発したって感じか。

 

 やべえ、言い訳ができない。

 ナギが子供みたいな癇癪起こすなんて初めてだ。

 触れたらさらに弾けそうな雰囲気を感じる。

 

「あー……」

 

「なに!」

 

 いやもう弾けてるよねこれ。

 炒め切ったトウモロコシぐらい弾けてるよ、今まさに。

 

「いつもいつもアイリちゃんとかレッドさんばっかり贔屓して!」

 

「……」

 

「私がどんな気持ちでいるかも知らないで!」

 

「む…………」

 

 目にいっぱいの涙を溜めていた。

 頬を膨らませ、怒っていますと表情で表していた。

 俺は確かに、ナギがどんな気持ちでいるか知りもしなかった。

 かと思ったら──

 

「ひぐっ……」

 

「え」

 

「私だっで……こどもなのに……ぐすっ……」

 

 溜めていた涙が次々と水面に落ちていく。

 いつも凛と振る舞っているナギが、まるであの時のように泣いていた。

 

 ほぼ2人で生活していた、コトリタウンでの日々を思い出す。

 アラカゼさんがいなくなり、心の均整が取れなくなっていたあの頃。身体にまで不調をきたし、俺が付きっきりで生活を送っていたんだったな。

 

 ナギは我慢できる子で、我慢してしまう子だ。

 辛くても頑張れるし、いつも通り過ごせるけど、そこで心に取り込んだ澱みを吐き出さずに溜め込んでしまう子だ。

 それはもちろん知っていた。

 ただ、こんな事で──俺と接している時間がどうとかでそこまで、泣くほど不満を感じているなんて、正直分かっていなかった。というか、マジで雑に扱ってる意識無かったし。

 ……だって、そもそもポケモンってギャルゲーじゃ無いじゃん。

 

 あの頃と同じように、ナギを抱きしめた。

 あの頃のようにアメジスト色の髪を撫でて、まだ見ぬポケモンにまつわる話をした。

 セレビィの話だ。

 サトシが出会った、時間を越える能力を持った存在。

 ユキナリとの短い冒険。

 

 泣き止んだナギは、その話を聞いている。

 今度は睨んでいなかった。

 ただ、驚いたような顔をしていた。

 驚きが止むと今度は耳を俺の胸につけて、心臓の鼓動を感じているようだった。

 話を続けているとナギが脈絡無く、俺の腕を強く握った。

 

「……ナギ?」

 

「あなたは──」

 

 そこで目が左右に泳ぎ、最後まで言うべきかどうか迷っているような仕草を見せる。

 黙って待っていたら決心が付いたのか、瞳を揺らしながらも唇の間から言葉が出て来た。

 

「あなたは……セレビィを探しているの?」

 

「……そうだな、会えるなら会いたい」

 

「あ……」

 

「?」

 

「そ、それで……過去に?」

 

「そりゃそうだろ」

 

 折角ならモンボがあった時代にも行ってみたいよな。サトシもいたかもしれないし、会えたらサインもらおう

 

「──だめ!」

 

「うわっ! なんだなんだ、何でダメなんだ?」

 

 離さないとばかりに俺にしがみついてくるナギは、俺の問いに答える事なく首を振っていた。

 ニッチもサッチもいかないとはまさにこの事で、なんでダメなのか、何がダメなのか、全く分からない。

 落ち着くように言い聞かせ、落ちそうになっているナギのバスタオルを締め直して、なんとか聞き出す。

 

「帰っちゃ……だめ」

 

「帰る? 何の話だ?」

 

 いきなり帰宅の話をされても困る。

 というかそんな気軽に帰れないし。

 

「……セレビィに、元の時代に連れて帰ってもらうつもりなんでしょ?」

 

「元の……時代……? …………あっ!」

 

 すっかり忘れてた。

 俺って遠い昔からやってきたタイムトラベラーなんだった。まいったまいった、そうだったわ〜。

 ……いや、そういう事じゃ無いからね!? 

 

「私たちを捨てるんでしょ?」

 

 俺がまるでろくでなしみたいな言い方されるのは困る。そもそも民主主義的には5人の方が本体なんだから、捨てられるのは俺だと思うんですけど。

 

「帰らないよ」

 

「…………」

 

「本当さ」

 

「……じゃあ、証明して」

 

「証明……」

 

「帰らないってことを証明して」

 

 何かを期待しているような上目遣い。

 心中に迷いがあった。

 正直な話、この世界に来て2年で俺の倫理観はだいぶ変容しているけど、それでもセカンドパートナーがどうのこうのみたいなのは抵抗感がある。

 人生の根幹、俺を構成する世界の常識はいまだに根付いていた。

 ただ、ナギを裏切ることはできなかったし、俺は男だった。

 

「ん…………ふふ、私が2番目ね……あっ」

 

 離れた唇に二本の指で触れて嬉しそうにしているナギを再び抱き寄せながら、ホシノになんて言おうとか考えている俺は最低だった。

 

 

 ──────

 

 

「え? 知ってたよ?」

 

 ほわぁっ!? 

 知ってたってどういうこと!? 

 

「お風呂一緒に入ったんでしょ?」

 

 ……な、なんだぁ!? 

 

 お風呂でワチャワチャした後、ホシノを別の部屋に呼び出して土下座した俺を待っていたのはまさかの対応。

 頭がおかしくなりそうだった。

 ……これまで気にして無かったけど、この世界の恋愛観とかどうなってんの!? 

 俺の世界と何から何まで違うの!? 

 一夫多妻なの!? 

 サトシが全ヒロインと結婚しちゃうの!? 

 

 ちょ、ちょっと待て……いや、待ってください! じゃあなんだ、浮気とかいう概念が実は俺の知っているものと違う可能性が? どうなんだ、ホシノ! 

 …………一緒じゃねえか! 

 やばい、俺の想像を超え過ぎて脳が処理できない。

 え? 俺は今どういう状況なの? 

 

「ちゃんと責任取ってね?」

 

 そういう状況なの? そこは変わらないんだ……

 じゃあ……しょうがないか。

 

「……切り替え早いね〜」

 

 だってしょうがない。

 後悔しても仕方ないし、こっちでそれが問題無いならそうするよ。

 

「おー」

 

 ぱちぱちぱちと拍手が鳴る。

 

「それにしても、私に手を出してそんなに間が空いてないのに手が早いね〜……」

 

 ウリウリと肘でついてくるホシノのアホ毛を掴んでやめさせる。

 そもそも俺からは手出してないでしょ……それに今回は最後までしてないし。

 あと、そのおっさんみたいなセクハラの仕方はどこで学んだんだ。

 おじさんだからか? 

 

「…………」

 

 何でちょっとムッとしてんだよ。

 今のセクハラの仕方はおっさんだっただろ。

 

「自分からは手を出してないって……手、出したじゃん」

 

 そっち!? 

 いやいや、あの状況で無理とか言ったらそれこそおかしいだろ男として! 

 

「……というか、最後までしてないってどういうこと?」

 

 お風呂の床は硬いし冷たいんだよ。

 

「私だって最初は暖房の効いてないテントだったし地面もあんまりやわらかくなかったよ?」

 

 ……ごめん。

 ま、まあともかく! 

 腹も減ったしそろそろ部屋に夕飯届くだろうし! 

 居間に戻るか! 

 …………ホシノ、袖が伸びちゃうんだけど。浴衣だからあんまり強く掴まれると脱げちゃうし。

 

「さ、最後までしてないんでしょ?」

 

 ……そうだけど、もうやめない? 

 この話続けて誰が喜ぶの? 

 

「…………」

 

 うおっと……どうしたんだよ。

 相撲でも取るか? 

 

「……一回したらもう十分なんだ」

 

 え……

 

「もう、私には興味ないんだ?」

 

 興味? 

 

「あれから一度もしてない」

 

 ……いやいやいやいや俺ら旅してたじゃん。

 昼間は基本固まって動いてるし、夜だってみんなで寝てるのにどこにそんな暇が……? 

 

「……うるさーい! もっと構え〜! 責任取れ〜!」

 

 ちょ──らめええええ! そんなに引っ張ったら袖が千切れちゃうよおおおお! 

 

「わたしだって──」

 

「ししょー! ご飯きましたご飯!」

 

 ワチャワチャやってたら扉が勢いよく開き、アイリが仁王立ちでご飯の到着を教えてくれた。

 

「あ、2人で遊んでたんですか?」

 

「あ……うん」

 

「ずるーい! 私も一緒に遊びます! ……あ、でもごはんが先ですね!」

 

「そ、そうだね〜! おじさんもお腹空いて来ちゃったな、あはは……」

 

「ん? ホシノさん、お顔がまっかっかですけど……風邪でも引いちゃったんですか?」

 

「そそそれはぁ〜……あ、アイリちゃんが可愛いからね! おじさんは可愛い子が好きだから、見てるだけで顔が熱くなって来ちゃったんだよ!」

 

「ほえ〜」

 

 ホシノは慌てて俺から離れると、アイリと手を繋いで居間に向かった。

 ポツンと残された僕、悲しいのねん……

 

 

 ──────

 

 

 でかい座敷机の上には所狭しと海の幸が載っている。

 あいつらは座布団を敷いて、その上に座って大人しく俺を待っていた……わけも無く、楽しそうに話しながら飯を突いていた。

 少し遅れて行っただけなのにこれですよ奥さん。

 仲間って普通、全員揃うまでご飯食べ始めるのを待つものじゃないんですか? 

 夜遅くまで頑張って働いて来たお父さんが、なんで1人でポツンとご飯を食べなきゃいけないんですか? 

 

 とまあ小粋なジョークは置いといて、俺の顔を見た瞬間、顔を真っ赤に染めたやつが2人いた。

 1人はあっち見たりこっち見たり、しかもすげえモジモジしてて隣に座っているレッドが「何だこいつ……」みたいな顔してたし、もう1人はアイリの腹に顔を埋めて表情が読めなかった。

 混ざるよりも見てる方が面白いので、ワニノコと一緒にエビの活き造りを食ってるワニ娘の隣に座った。

 

「よう、野生が出てんな」

 

「開口一番それって……僕、何かした?」

 

「普通はタイの刺身から行くもんだぜ」

 

「絶対君だけだよ」

 

「美味いか?」

 

「……うん!」

 

 ごくんと飲み込むと、ご機嫌に笑う。

 

「ここ、食べカスついてんぞ」

 

「ん? ……取って!」

 

 ほっぺたを差し出して拭きやすいようにしてくれたので、箸でヒョイパクした。

 

「えへへ、ありがと!」

 

「どういたまして」

 

「……変なの」

 

「オクタンの刺身食おうかな……あーん」

 

「隙あり!」

 

 醤油よりも緑色がかったタレに付けて口に運んだら横から掻っ攫われた。

 下手人はモニュモニュと口を動かし、ニヤついた笑みを浮かべていた。

 

「おいしー!」

 

「……ぞ」

 

「ふふふ、なにー?」

 

「……すぞ」

 

「えー? 聞こえないよー?」

 

「ぶち転がすぞ」

 

「ピィッ!?」

 

 俺の飯を奪い取った憎き怨敵の目をじっと見つめる。

 プルプルと震えるばかりでうんともすんとも言わない。

 オラ、なんとか言え。

 

「ぼ、ぼーりょくはんたい……」

 

「俺もだ」

 

「そ、そうだよね……ほっ」

 

「獣に対する躾なら許される」

 

「ごめんなさいぃぃぃ!!」

 

 ノコは、ワニノコを眼前に掲げて贄にすると、その後ろに隠れた。

 

「ワニィ!? ワニワニ!?」

 

 ワニノコはワチャワチャと手足を動かして後ろを指し示す。大丈夫だワニノコ、俺は分かってる。

 即座にワニノコを手から外し、ノコを胡座の上に確保した。

 

「!? は、はや……」

 

「カクホカンリョウ、コレヨリ、ショチヲカイシシマス」

 

「あわわわわわ……こ、ころされる……!」

 

 手足をばたつかせるノコを抑え、刺身に醤油を付けてノコの口元に寄せる。

 半狂乱になって暴れる顔に追従して箸を動かしていく。

 

「うみいいいいい!!」

 

「なんの鳴き声だよそれ……ほら、食べろ」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ……美味しい」

 

「美味しいか? じゃあ俺も食べるわ」

 

「あ、はい…………あの、なにこれ」

 

「まずお前に毒見させてから俺が食べる」

 

「……あーん」

 

 雛鳥のように、口を開けて刺身が運ばれてくるのを待っているノコへ、まだ食べてない刺身を食わせていく。

 

「おいしー」

 

「じゃあ食べよう」

 

「これもおいしー」

 

「たしかにうまい」

 

「ん〜! ほっぺた落ちちゃいそう!」

 

「大トロか」

 

 さすが高級旅館、どれを食っても一級品だ。

 それに、大量消費文明じゃないので獲れる魚の大きさもエグい。人口が多くない分、生き物もきちんと育つんだろう。

 ……まあ、クソでかい化け物が闊歩してる世界で遠洋漁業とかしたらあっという間に藻屑だよな。

 

「はーお腹いっぱい!」

 

 グイグイとつむじで胸を押して要求してくるのは、座椅子になれということだろう。お望み通り、畳に腕をついてノコが寄りかかりやすいようにする。

 

「……見たことも聞いたこともないものばっかりだよね、この世界は」

 

「そうだな」

 

 眠たそうな目でレッド達を見て、緩やかにカーブした口からそんな言葉が発された。ノコは、俺と同じ感覚を共有し得る稀有な存在だ。

 

「まだ寝ちゃダメだぞ? 歯を磨かないと虫歯になっちゃうからな」

 

「ん〜……」

 

 返事をしている間にも眠そうに目を閉じていくので、身体を起こして夢の世界への逃亡を阻止する。

 

「やめてよ……」

 

 なぜそんな目で見られなきゃいけないんだ。

 やめるも何もお前が横たわってたのは俺の身体じゃい! 

 今すぐ寝るのをやめて歯を磨け! 

 

「あれ、嫌い」

 

 幼稚園児みたいなこと言い出した。

 まあ人間経験的には幼稚園児どころか赤ちゃんも良いところだけど。

 きらいだー、とやる気を見せないので洗面所から歯ブラシを持って来て強制歯磨きタイムが始まった。

 仰向けに寝かせて、シャカシャカと白い歯を磨いていく。

 さすが赤ちゃん、綺麗な歯をしてやがるぜ。

 俺は……俗世からこの白さを守り抜いてみせる! 

 

 歯磨き後、たるんたるんに溶けたノコにうがいをさせて寝室へと運ぶ。

 

「僕は……ライバル……だから……眠くない……」

 

 背中の上で意味不明なことを言い出した。

 眠いんだろ。

 肩を枕にしてて息もめっちゃ近いし。

 

「ちょっと寒い……」

 

「布団に入れば暖かいから、そこまで我慢」

 

「……おしっこ」

 

「はいはい」

 

 布団に入る前にトイレを済ませて出て来たノコはフラフラしていて、目を閉じながらどっかに歩いていこうとした。

 これもうほぼ寝てるな。

 

「布がちべたい……」

 

 春といっても差し支えない季節のはずだけど、まだ少し早いのか夜は冷える。

 布団も入ったばかりだと冷えていて、ブルっとノコもワニノコも震えていた。

 湯たんぽになれ(意訳)との仰せなので、少しの間だけ布団に入ることにした。

 

「……へへ、ピカチュウはやっぱり暖かいや」

 

 ムニャムニャとなんか言ってるけど返事したら起きてしまいそうだったので、ノコの頭を少しだけ持ち上げて、寝癖にならないように水色の髪を後ろへ流す。

 

「おとーさんみたい」

 

 早く寝ろ、という念を込めて頭を撫でていたらそんなことを言い出した。

 ライバルだろ? 

 …………ライバルって何すれば良いんだ? 

 100万円請求すりゃ良いのか? 

 ジム戦の後にバトル吹っ掛ければ良いのか? 

 それって仲間にすることじゃ無くない? 

 

 ライバルって何? 

 俺を越えるってどういうこと? 

 こいつプレイヤーだろ。

 パートナーの俺と比較できないじゃん。

 同じ土俵に上がって初めて競争は始まるんだぞ。

 それで、同じ土俵に上がるならまずは旅の仲間を自分で見つけるところから始めないといけないんだけど。

 あと、ライバルと同行する旅ってなんだよ。

 そこんとこ、どうなんだ。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「ワニ……ワニ……」

 

 寝てた。

 ガッツリ寝てた。

 俺が考え込んでいる間にもノコの意識は闇の奥底へと沈んでいっていたらしい。

 

 

 ──────

 

 

「……連続でんぐりがえし」

 

「ふふふふふ……うふふ、ふふふ」

 

「うへ〜……お兄さんはいっつも無茶ばっかりしてさ〜……ね、リザードン、聞いてるー? お兄さんはいっつも無茶ばっかりしてさ〜……全然私の言うこと聞いてくれないんだよ? ……しかもお兄さんはいっつも無茶ばっかりしてさ〜」

 

「うわああああーん! ヒーホー君がおどってくれなーい!」

 

「地獄かな?」

 

 布団から出て戻ると中からうるさいほどに声が漏れていて、扉を開ければ居間は宴会場と化していた。

 暖房をガンガンに効かしているのか異常に暑い。

 転がる空き瓶を拾って匂いを嗅ぐ。

 ……うん、これ酒だ! 

 誰だ、この部屋に酒を持って来たやつは。

 

「グルル……」

 

「ヒホ……」

 

 リザードンとヒーホー君のなんとかしろという視線を受けて、1人ずつ片付けていく。

 酔っ払ってるやつの起こし方を知ってるか? 

 浴槽に押し倒して冷水シャワーをぶっかけてやりゃ良いんだ。

 まあそんな浴槽は無いし、その時によほど疲れてない限りはしないけど。

 

 まずはアイリから。

 

「ししょー、踊ってください……」

 

 何その指令、俺はピエロか何かですか? 

 アイリからは酒臭さを感じないし、空気で酔っちゃった感じか? 

 布団に寝かせたらすぐさま寝落ちした。

 

 レッド。

 

「ちゅーして」

 

 すしざんまいの体勢で俺にキスしろとせがんでくる。レッドはキス魔なのかもしれない。あんまり酒臭くはなかった。

 

「ん……」

 

 目を瞑ってキス待ちしてるので、お茶を飲ませた後に抱きかかえて洗面所にて歯磨きさせた。お前がキスするのは俺じゃ無くて歯ブラシだ。

 

「ちゅー……」

 

 眠りにつく直前のセリフはちゅー、だった。

 お望み通りおでこにチューしてやったよ。

 満足そうに夢の世界へ旅立つのを見届けた後、二匹のバケモンに立ち向かうことにした。

 ポケモンじゃ無くてバケモンな。

 

 無限ループおじさんと笑い上戸、どちらを片付けるのが先か悩ましい。

 

「リザード〜ン……」

 

「うふふふふ」

 

 おじさんから片付けよう。早くしろというリザードンの圧がすごい。

 

「あっ、お兄さんだ〜……うへへ、おじさんの隣に座りなよ」

 

 腰を下ろ……くさっ! 

 酒臭っ! 

 お前ガッツリ呑んだだろ! 

 

「うへ〜?」

 

 目の前にあるコップに残っている液体を一口飲むと、やはり酒だった。

 酒があったとして、なんで呑んだんだよ

 

「うふふふ」

 

 ナギが笑いながら隣にやって来た。

 ……くさっ! 

 呑んだのほぼお前ら2人だな!? 

 こうなるのがイヤだから仲間の前では酒飲まなかったのにさあ……なぜ俺の努力を無駄にしてしまうのか。

 

 如何せん世界が違う。

 みんなメガネで連絡できるから、内線電話なんて置いてない。

 俺はわざわざフロントまで足を運び、お酒は要らないという事を伝えた。

 申し訳ございません、切腹いたします! ぐらいの勢いだったので流石に止めたけど、これでもう酒が運ばれてくる事は無いはずだ。

 どうやら、俺がいるからお酒も呑むだろうという事で一本だけ差し届けたらしい。

 ありがた迷惑ってやつだ。

 

「グァァァァ……」

 

 とりあえず2人を放置してフロントに行ったので、戻った時にはリザードンは揉みくちゃにされていた。

 2人にも歯磨きをさせて、さっさと布団に放り込んだ。

 横向きに寝ろよ。

 ゲロで溺れ死んだら笑えん。

 

 フワンテ? あいつは天井に浮いてたよ。

 

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