俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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48_娘さんを僕にくださぁい!!(ヤケクソ)

「ねえ、私言ったわよね」

 

「はい」

 

「信じるって言ったわよね? 

 

「はい」

 

「なんでこんな事しちゃったの?」

 

「…………」

 

 ナギが指差す方向、ポッカリと空間丸ごと消滅したような痕跡が遥か遠くまで続いていた。

 周囲の木々は燃えている。

 その場にいる全員のメガネに、警報が鳴り響いていた。

 警戒システムが作動したのだ。

 

「あなたもよ、リザードン」

 

「リザ」

 

「強くなれて嬉しかったのはわかるけど、そういう時にこの人の言う事なんか聞いちゃダメでしょ」

 

「え」

 

「なに? 文句あるの?」

 

「無いです……」

 

「そうよね、こんな大火事引き起こしておいて言い訳なんてあるわけないわよね?」

 

「はい……」

 

 レッドのリザードンと青年は揃って正座をし、ナギのお説教に粛々と首を項垂れさせる。

 ナギはナギで、説教をすることで動揺を必死に隠していた。

 メガシンカ、こんなものが標準化されたらどんな事になるのか想像もできない。

 確かにこれは古龍にも匹敵するものだ。

 

「せめて空に向けてくれれば良かったのに……」

 

「はい……」

 

 今も必死にカメックスや森に住むモンスターが消化活動をしている。

 リザードンの変化は解けて見慣れた姿に戻っていた。

 絶対強者の気配はすでに無い。

 

「うん…………うん…………」

 

 ブルーは目を閉じて頷き、ポケモントレーナーから伝わってきたイメージを思い出す。

 あの瞬間ポケモントレーナーは、脳内ファミチキよろしくブルーにだけ分かるように強い意識を送り込んでいた。

 言葉無しに感覚のみを伝える。

 サイコエネルギー、波導を使えるからこその荒技。

 さっきの光景を見て高鳴った心臓はまだ鳴り止んでいなかった。

 

 世界を変え得る力。

 今、この世界でたった1人だけが使える力。

 最強を求める自分にそれが手渡された。

 キーストーンを見つめる。

 結局のところ、自分は本当の仲間にはなれないと思っていた。

 当然なのかもしれないと、そう思っていた。

 出会いが最悪だったから。

 不貞腐れて、機嫌悪く話しかけて、言うだけ言って立ち去った。

 そんな事を何度もした気がする。

 困惑しているのを見て溜飲を下げていた私は、さぞや滑稽だったに違いない。

 キーストーンの対として渡されたメガストーンを見る。

 最強に届く力を必要ないと断じて、世に仇なすだけだと評して、それでも私のことを信じてくれた。

 胸の中にじわじわとした温かさが広がっていく。

 何か、感じたことの無い変な感情が込み上げてくる。

 トレーナーさんの姿を探した。

 ポン、と肩を叩かれる。

 

「ブルー」

 

「あ……」

 

 説教を受け終えて少しやつれたトレーナーさんがやってきた。

 キーストーンを指差す。

 

「使い方はなんとなく分かったか?」

 

「うん」

 

「いつかお前も……いや、すぐにメガシンカを使いこなせるようになる。でも誓ってくれ、その力を無闇矢鱈に使わないって」

 

「……うん、分かったよ」

 

 心に刻み込む。

 信じて渡されたこの力を、無秩序に扱うことはしないと。

 トレーナーさんは跪いて、私の右手に自分の手を重ねた。

 

「大いなる力には大いなる責任が伴う。ブルー、それは力を得たものの宿命なんだ」

 

「大いなる責任……それはトレーナーさんもなの?」

 

 トレーナーさんは目を瞑って、静かに頷いた。

 でも、そんなの窮屈じゃ無いだろうか。

 

「窮屈、か……そんな風に考えたことは無かったな」

 

「何カッコつけてるのよ。窮屈も何も、こっちの理屈とかルールとか無視してるじゃない。ブルーさんはあなたとは違うのよ?」

 

「ううん、それもそうかぁ……」

 

 キマリ悪そうに頬をかく。

 

「俺も最初はそんな大層な気持ちは無かったんだけど……ホシノやノコ、ホリィ達と出会って理解できたんだ」

 

「大いなる責任のこと?」

 

「そうそう! でもブルーは俺より賢いから、きっとすぐに分かってくれると思うんだよな!」

 

 本心から言っているのが顔に出ていた。

 なんでここまで真っ直ぐなんだろう。

 とても羨ましかった。

 

 

 ──────

 

 

 アイリと一緒にお湯に浸かりながら青年はネオプラズマ団について、というよりゲーチスについて知っている事を話していた。

 

「じゃあ、お母さん達も洗脳されて……」

 

「いや、あいつの洗脳はNが純粋だからこそ出来たことだよ。無垢で、ポケモンと心を通わせることができる。そういう性質を持っていたからゲーチスの目的にとって都合が良かった、それだけなんだ。少なくともアイリのお母さん達がその対象になることは無い」

 

 むしろアイリの方が……と続けることはしなかった。

 

「じゃあ、無事なんです、よね……?」

 

「ああ!」

 

 威勢良く答えはしたものの、正直なところ、全くと言って良いほどには分からなかった。

 ゲーチスの目的は雑に言って終えば、自分が世界で一番偉くなることだけど、それはプラズマ団においての話だ。

 ネオプラズマ団において、どんな目的を持って動いているのかまでは知らない。

 でも、アイリの表情が少しだけ和らいだような気がした。

 

「師匠が言うなら……信じます」

 

 明るいとまではいかなくとも少しだけ肩の力が抜けたような、そんな様子だった。

 

 

 ──────

 

 

 出発の日の朝、院長とレッドについて色々と話した後、剽軽に告げる。

 

「──まあ、そういうわけなんでレッドは連れていきます」

 

「……もう四天王のお嬢ちゃん達にも言ったんだけどね、危ないところに連れて行くなんてのは──」

 

「まだ旅は終わってないんでね、院長さんはソーマでも見てのんびり待っててくださいや」

 

 とりつく島がないとはまさにこの事だった。

 青年の中でレッドを連れて行くのは既定事項であって、許可を取るような事じゃなかったのだ。

 もちろん、彼女を戦わせるのが良くないことなのは分かっている。

 それでも一緒にいたかっただけで……

 ポケモントレーナーはワガママなのだ。

 

「待ちなさい!」

 

「アデュー!」

 

 青年は仲間達と合流した。

 すでに荷物はまとめてある。

 四天王やチャンピオンも待っていた。

 そこに走ってきた院長を止めたのはレッドだった。

 

「……院長」

 

「レッド、あんたが危ない事に首を突っ込む必要は無いんだよ。この街にいれば何も……」

 

「だいじょーぶ」

 

「大丈夫なんて、そんな……」

 

「──もう、本当に大丈夫なんだ。あの日、言われた事……ちゃんと分かったから」

 

 青年の腕に抱きつく。

 俺? と目線をチラチラと行ったり来たりさせるポケモントレーナー。

 それはまるで──

 

「…………そうかい」

 

 肩に籠っていた力がフッと抜ける。

 親だったとは言えない。

 自分には荷が重かった。

 それでも……少しだけど、この子に何かを伝えられたらしい。

 この短い里帰りで、あの子が変わったのは十分に分かっていた。

 今もポケモントレーナーの傍で、レッドは笑っていた。

 それならもう、何も言う必要は無かった。

 ──ああ、一つだけ。

 

「ポケモントレーナーさん」

 

「はい」

 

「これからも……その子達をよろしくお願いします」

 

「謹んでお受けします」

 

 胸に手を当てて誓う男の、その眼を見て安心した。

 底抜けたバカの眼だった。

 例え何があっても約束は違えないと、無根拠に信じている男の眼だった。

 きっと、この男は今回だけじゃ無い。

 またバカみたいに色々な事に首を突っ込むのだろう。

 その果てにどうなるかなど考えもしないで、ただ、自分の思いのままに動き回る。

 その結果がこれだ。

 

 癖の強いブルーですらが懐いていた。

 本人は認めないだろうと、院長は確信していた。

 あの子は素直じゃ無い。

 それでも、何かがあった。

 確実に、ブルーとポケモントレーナーの間には何かがあった。

 ……親ならば……それを知る術もあったのだろうか。

 意味の無い仮定であっても、そう思ってしまう。

 

 あの子達は、この厳しい世界で現実を見て生きていた。

 少なくとも自分が知る2人はそうだった。

 だから強くなったと思っていた。

 それが今や、夢を見ている。

 未来に想いを馳せ、楽しい将来を夢想する。

 久しぶりに会ってとんでもなく驚いた。

 あんなに楽しそうなのは、とても小さかった頃以来の事だったから。

 ……ブルーとレッドに夢を見せているのがポケモントレーナーであることは明白だった。

 

 見れば見るほど普通の人間だった。

 いわゆる普通の20代に見えた。

 もっとも、普通の20代はみんな就職してるけれども。

 ……ソーマで散々言われてる事だ。

 誰かが言わなくとも、誰だって思ってること。

 だからこそ初対面では、この男が世界を変えつつあるということが信じられない。

 ただ、有名人がやってきたとしか思わない。

 

 

 ──────

 

 

 人は、ポケモントレーナーと接して内面を知ると、そこに二面性を見出す。

 少し話すと、如何にこの男が享楽的かという事が分かる。

 彼は基本的にこの世界をどれだけ楽しんで、遊び尽くしてやるかという事しか考えていない。

 何もなければずっと旅しているだろう。

 

 そして何かが起きた時、そこには何故かこの男がいる。

 先ほどまで夢中だった楽しい事を投げ捨て、瓦礫を踏み締めて敵に近付いていく。

 笑い方が変わる。大きく開いていた口元は閉じられ、それでも口の両の端が上がっている。

 それがやるべき事だと拳を握りしめ、敵に叩きつける。

 平穏を乱す者の前に現れて、死闘を繰り広げる。

 

 人はその二面性を目の当たりにして、そこに夢を見る。

 英雄というレッテルを貼る。

 自分の分かる形に定義する事で、触れられるようにする。

 ブルーもレッドも同じだった。

 彼の背中に、望んだナニカを見出してその近くにいる。

 それは普通のことだ。

 彼自身も仲間達に対してナニカを期待している。そうあって欲しいと思っている。

 そう──普通のことだからこそ、普通な彼はその通りになる。

 

 

 ──────

 

 

 丘の峠を越えると、風に乗ってきたのは食べ物の香り。

 一団はガイアの導きに従い、新たな街へと来ていた。

 

「次の街が近いな、ホリィ」

 

「ええ、美味しそうな匂い。それになんだか、街全体が明るいわね」

 

 ソッと寄り添い、左腕が軽くなった事でバランスの崩れている青年を支える。それは2人のいつもになっていた。

 スエゾーもブーブー言う事はあっても、認めている。

 

「お互い無しではいられない、という感じですねえ」

 

 ガストはヒソヒソとゴーレムに囁く。

 下世話ではあっても、分別は弁えていた。

 

「ゴーレムワカル、アレ、ナカヨシ」

 

「そうですね、仲良しです」

 

 街に入ると祭りの最中だった。

 どうやら祀っている神に関わっていたようで、盛大にお祭りが開かれている。

 ホリィもワタルもユカタを借りて、場の空気に馴染んでいた。

 

「──はい、あーん」

 

「あーん」

 

 ホリィは青年の無い腕に替わって、口へとタコ焼きもどきを届ける。

 

「……あ、あふい! あふいよほりぃ! これあふい!」

 

「熱いんだ……ふー、ふー」

 

 青年の耐性を貫通して熱さをお届けする概念系タコ焼きもどき。ホリィはしっかりと息を吹きかけて口に運んだ。

 

「──ホリィ!? なんで俺で熱さを確かめたんだ!?」

 

「…………てへっ!」

 

「こ〜ら!」

 

 怒ってんだかイチャイチャしてんだか分からない2人の様子にスエゾーはテンションダダ下がりでタコ焼きもどきを口の中に入れ──

 

「うわちゃちゃちゃ!!」

 

 あまりの熱さに舌を火傷した。

 

「何してんだあいつ……」

 

「さぁ……」

 

 束の間の平穏がそこにはあった。

 腕を失くして以降、勾玉は見つかっていない。

 それでもガイアは色々な方向を指し示し、その先に行けば円盤石がある。

 しかし、ヒノトリそのものは見つからないというのが現状だった。

 

 あの大規模襲撃から今に至るまで、散発的にワルモン軍団はやってくるものの本気度が感じられない。

 幹部が投入されていないので、即座に撃退・討伐して終わりだった。

 不気味だとは思いつつも、束の間の平穏を楽しみながらヒノトリを探して旅を続けている。

 

 青年が再びこの世界にやってきたのはマタナキタウン突入の直前。

 それから2ヶ月だ。

 アイリのことが気がかりでしょうがなかった青年をホリィは心配していた。

 新しい街の祭りを楽しんでいれば、もしかしたらポロッと悩みをこぼしてくれるかもしれない。ホリィは何をそんなに気もそぞろなのかと尋ねた。

 それに対して、別の世界のことだから気にしなくて良いと青年は答えた。

 

 ホリィは憤慨した。

 その別の世界からやってきてお節介をしているクセに、自分は拒むのか、と。

 仲間なのに、なんでそんな水臭い事を言うんだ、と。

 青年はガストやゴーレムにも諭された。

 それならと腰を落ち着け、事情を話す。

 

「──そう……アイリちゃんのお母さんが……」

 

「うん、だから俺はあっちに行ったらきっと、あいつと戦う事になる」

 

「あいつ?」

 

「王様を作ろうとした男。偽りの冠を与えて、全てを手に入れようとした男さ」

 

「知り合いなの?」

 

「いや、本物を見たのは初めてだった。顔を動画で見たんだけど……どうやら懲りない男らしくてさ」

 

 突入の数日前、青年はハンサム達とのブリーフィングを終えている。

 すでにマタナキタウンは制圧されており、カムイの行方も知れていない。

 グリーンスカイロッド、地上2800mの階層にある展望台。

 最も標高の高い人工物に陣を構え、男は演説を行なっていた。

 この地方にいる全人類に対して、ソーマを通してメッセージが伝えられる。

 

『──アトラス地方のみなさま、初めまして』

 

『私の名はゲーチス』

 

『私はあなた方の敵では無い』

 

『むしろ、あなた方を守る者です』

 

 区切り、ソーマの向こうにいる人間を見つめる。

 

『この世界のあり方に疑問を抱いた事はありませんか?』

 

『子供が危険な旅をして、大人はのうのうと安全な街の中で仕事をする』

 

『それは不自然だと思いませんか?』

 

『大人が子供を守るべきではありませんか?』

 

『……今もどこかで、子供が犠牲になっている』

 

『お父さんお母さんと泣きながら、絶望している』

 

 男は拳を掲げ、ギチギチと握りしめた。

 そして演説台に叩きつける。

 

『私はそれが許せない!』

 

『守るべき子供に守護の役割を、狩猟の役割を担わせるこの世界が許せない!』

 

『あの非力なジムリーダー達を見なさい!』

 

『私は今回、この街の力を試しました!』

 

『結果は…………』

 

 首を横に振る。

 

『大層な肩書を持ちながら、私一人止める事すらできなかった!』

 

『そんな力で何を守る! 誰を守る!』

 

『────だから、我々が代わる』

 

『子供の犠牲を強いることのない、完全で完璧な世界を作り上げる!』

 

『我々はネオプラズマ団!』

 

『この世界を変革し、秩序を作り出す者!』

 

『──しかし、言葉だけでは信じられない』

 

『だから証明しましょう!』

 

『そう、我々は成功したのです!』

 

『人類は遂に、古龍を征服した!』

 

 画面が切り替わり、構造物が映し出される。

 ソレは水族館だった。

 この地方のチャンピオン達が死力を尽くした結果がそこにあった。

 男の声は続いた。

 

『あそこには古龍ナバルデウスがいます』

 

『チャンピオン達は、あそこに入れただけで閉じ込めた気になっていた』

 

『しかし、先日もあの建物を破壊し脱走を図った……』

 

『あんな不安定な檻では、いつか大きな犠牲が出たでしょう』

 

『そんな凶暴な古龍を、我々は手懐ける事に成功しました』

 

『その姿をみなさまに見せて差し上げます』

 

 ゴウンゴウンと音を立てて開く、屋根の役割も持っていた天蓋。

 姿を見せたのは、チカラそのもの。

 大いなる存在。

 ソーマを通してナバルデウスが人々を覗き込んでいた。

 悲鳴を上げる者すらいる。

 画面越しだとしても、それは余りにも恐ろし過ぎた。

 赤く染まった瞳。

 空間ごとねじ曲がりそうな重圧。

 これをどうしたというのだ。

 

『──ナバルデウス、その威を知らしめなさい』

 

 アトラス地方にいる人々は見た。

 肉眼ではともかくメガネで拡大すれば、そこには確かに。

 マタナキタウンの方角、空に伸びる水色の柱。

 雲を蹴散らす圧倒的な武威の解放。

 それは新たなる秩序の完成なのか、それとも混迷極まる時代の到来なのか。

 守られているだけの者達には最後まで分からなかった。

 

 

 ──────

 

 

「そのゲーチスっていうのは、本当に悪い人なの?」

 

 ホリィは不思議そうな顔をしている。

 演説の内容を聞く限り、凄くまともそうな話だった。

 むしろ、世界を良くしようと頑張っているようにも思えた。

 いっそのこと、その人に従ってみるのも……

 

「いや、アイツは絶対に違う」

 

「──ワタル?」

 

「アイツを信じたものは破滅する、そういうキャラクターなんだ」

 

「きゃ、きゃらくたぁ……」

 

「子供を誘拐し、劣悪な環境で洗脳する事で英雄と王を作り出そうとした…………いや、作ること自体には成功した」

 

「洗脳ってそんなまさか」

 

 まるで見てきたかのように語る。

 顔をはじめて見たと言っていた割には確信を持っているようだった。

 

「きっとどこかにいる。アイツが作り出した王と、その対になる英雄が」

 

 緑髪の青年と、敗北したチャンピオンを思い浮かべる。互いの信念に従って戦い、勝利した末に英雄へと至った。

 きっとこの世界でも、同じようにチャンピオンは敗れている。そして同じようにゼクロムかレシラムを降ろしているはずだ。

 その果て──最後にもう一人の英雄が現れ、打ち砕いたのだろう。

 そうで無いなら、ネオなどと付ける意味が分からない。

 

 その後、Nがどうなったのかは分からない。

 ただ、一つだけ確かなことがあった。

 どれだけプレイヤーとして、ポケモントレーナーとして大成していようと、パートナーの力だけではリュウに勝つことは出来ない。

 そういう意味では、Nが現れてチャンピオンと戦う展開になっても安心だった。

 だから──あれは予想する限りで最悪の展開だった。

 まさかナバルデウスをダークボールで、なんて……

 

「……あなたは大丈夫なの?」

 

「俺?」

 

「ゲーチスっていう人も強いんじゃないの? ムーみたいなものなんでしょ?」

 

「……俺が本当に、ただのポケモントレーナーだったら勝てない可能性もあった」

 

「勝てるの?」

 

 まるで、すでに勝ちを確信しているようだった。

 

「勝算はある。なら俺はそこに向かって走るだけだ」

 

「……」

 

「ホリィ、この戦いもそうだ。勝つための方程式は分かっていて、あとは数字を埋めればいい」

 

「そう、ね……」

 

 ただ、その数字を見つける道のりはひたすらに長かった。苦しくて、泣きたくなるような道のりでもあった。

 一人なら折れていた。

 ゲーチスを倒す道のりも、彼が言うほど楽じゃ無いのだろう。

 そして、ワタルが二つの戦いに身を投じる事になるのが辛かった。

 それでも……逃げて欲しいと言えない自分がいた。

 

「ホリィ?」

 

「あ、ううん……なんでもない、なんでも、ないの……」

 

「なんだ、また変なこと考えてんのか?」

 

 ワタルはホリィの左側に場所を変えると、残った右手を伸ばした。

 肩に乗った手が2、3度軽く叩く感触。

 それは、彼がホリィになんでも話せと言う時の合図だった。

 

「何かあるんだろ? 言ってみろよ」

 

「……その…………」

 

「うん」

 

「…………」

 

 なかなか言い出さないホリィをゆっくりと待つ。

 話したく無いなら話さないでいいし、そういうことでも無いなら待てばいい。どうせ時間はある。

 そういう楽観的な思考だった。

 

「あのね」

 

「うん」

 

「私に言う資格があるのか分からないけど……」

 

「俺は聞きたいな」

 

「……そんなに戦ってて……嫌になったり、しないの?」

 

「…………」

 

「この世界で大怪我をするくらい頑張って……それで、元の世界でも何度も世界を救って……」

 

「──ふはっ」

 

「?」

 

「わーっははは! ははっ! はーはっはっはっはっは!」

 

「!?」

 

 通りすがる人々が驚いていた。しかし、祭りの雰囲気で楽しくなっているのだろうとすぐに興味を無くす。

 ホリィ達は呆気に取られてポカンと口を開けている。

 これほど大笑いしているところを見るのは初めてだった。

 

「はっはっはっは! あーおかしい!」

 

「…………へ?」

 

「な、なにがおかしいんや?」

 

「いや〜……どいつこいつも、同じこと聞くよなって思ってさ」

 

「むっ……」

 

 言外に若干の貶しが入っていたような気がしてホリィが頬をむくれさせる。

 悪い悪いと謝り、当然のことだとフォローする。

 

「そりゃあ気になるのかもしれない、俺も逆の立場だったら聞きたくなるかもしれないし」

 

「適当過ぎる……」

 

「……いやさ、戦うのって嫌になるとかそういうのじゃないんだよな」

 

「そうなの?」

 

「なんていうかこう……ワクワクするんだ。この世界に生きている実感が湧くっていうか……心臓が熱くなるんだよ。そりゃあ痛い事だってあるし、辛いこともある。でも、やっぱり……楽しいんだよなあ」

 

 しみじみと言っていた。それは、たしかな実感のこもった言葉だった。

 そう──彼の鼓動が高鳴る時、そこには敵がいた。

 

「ふぅん」

 

「勿論、嫌いな敵だっているぞ? ヒカワなんか本当に殺したかったし」

 

「こ、ころっ……」

 

「でも、あれは俺の役目じゃ無かった。実際死ぬ気でやっても届かなかったし、なるべくしてああなったって感じだったな」

 

「えーと……確かオールドタウン、だったわよね?」

 

「うん、そうだな…………いつも全力だった。俺が出来ることは全部やって、それで最後は誰かに託して──そうやってなんとかここまで来たんだ」

 

「そうなの……」

 

 それがどれだけの事なのか、ホリィには想像出来なかった。信じられるのは、彼が全力であるという言葉に嘘がないという事だけだった。

 

「だから、今回も大丈夫だ」

 

「……そ、そうよね!」

 

 むんむん! 

 

「ただ、勾玉の場所がなあ……」

 

「頑張りましょう?」

 

「結局、勾玉を集めたらなんだよって話なんだが!」

 

「そんなこと言わないの」

 

「……よし! あっちの屋台も見に行こう!」

 

「ふふ、そうね」

 

 

 ──────

 

 

 巨大な鉤爪が透明な容器を撫でる。

 凶悪で、繊細さとは程遠い見た目にも関わらず、その手つきは絹を撫でるようだった。

 

「やっと」

 

 低く、唸るような声が周りのワルモン達をすくみ上がらせる。

 目の前にいる王は、戯れに自分達を屠ることも可能だった。いや、実際にそうしてきた。

 

「やっと完成する」

 

 その手には勾玉。体躯に比べてあまりにちっぽけに見えるそれをずっと持ち続けてきた。

 ただ一つの目的のため。

 かつて、自分が味わった屈辱に対する復讐。

 ヒノトリの完全抹殺。

 その為にはこの勾玉が不可欠だった。

 

「あの人間達は大いに役に立ってくれた。まさか、私が求める知識を揃えた状態で現れてくれるとは」

 

 すでに血肉となり、己の腹の足しとなった二人。

 死を前にして錯乱したのか妙なことを言っていた。

 ポケモントレーナーに気を付けろ、次はお前だ、と。

 

「──グフッ、グフッ、グフッ」

 

 邪悪な笑みが漏れる。

 勝利への歓喜を身の内に感じ、抑えきれない。

 身体を揺らすその怪物を、畏れと共に見る幹部達。

 

「ム、ムー様、例の女はどうしますか?」

 

「……」

 

 ピタリと笑いが収まる。

 答えは決まっていた。

 

「完成次第、丁重に迎えに上がる。貴様らは、そうだな……それまでに女を殺し、勾玉を奪い取れたなら褒美をやろう」

 

「──はっ!」

 

 すでに残り3匹となった幹部が直ぐに出て行った。

 他は全員、女の護衛に殺されたという報告が上がっていた。

 腕利きなのは確かなようだ。

 だがマガタマを吸収させた5匹に特攻させ、片腕を奪うことには成功した。

 あの3匹も既に不要。

 だが、無意に処分するのも勿体無い。

 出来なくて元々、出来たら残してやろう。

 そんな目算があった。

 

 

 ──────

 

 

「せやあ!」

 

「──ぐわああああ!!」

 

 リュウの拳から放たれたエネルギーの塊が炸裂し、ネオプラズマ団の雑魚っぱが吹き飛ばされた。ダークボールで強化されたドダイトスも、先んじて地に伏せている。

 まさに鎧袖一触。

 進む先、現れる敵を前にして全く動じず、丁寧に処理していく。

 四天王達も同様に。

 とはいえ、敵は余りにも多い。

 リッカは思わず叫ぶ。

 

「お、多過ぎない!? こんな数のモンスターは流石に相手したこと無いよ!」

 

「どうやらダークボールで大幅に戦力を増強しているらしいねえ……でもリッカ、気をしっかりおし。こんなところで弱音を吐いてたら最後まで保たないよ」

 

 殲滅戦と言えばのバハムートも、こんな街中でメガフレアを放つわけにはいかない。

 1番の強みを潰された形だった。

 

「アッシュでも同じようなことやってたらしいけどよ……ダークボール? の分、絶対俺らの方が大変だろ!」

 

 ダツラはパートナーを同時に3匹操っている。トドセルガ、ピカチュウ、アグニモン。

 

 順当にバトルをして捌いていくフローラとダツラ。ミストドラゴンによって撹乱の役を担うリディア。キングゥはリッカの指示で変形を繰り返し、敵からの攻撃を防ぐ。

 そしてリュウは敵に突っ込み、青い炎を纏って蹴散らしていた。

 

 ポケモントレーナー達の姿はそこには無かった。

 何をしていたかと言えば、彼らはアイリの両親を探していた。

 ソーマではまともな情報が手に入らない。

 それ故に、チャンピオン達とは別に動いてまずはアイリの不安の種を取り除くことを優先した。

 最初に訪れたのは当然、実家。

 アイリのIDを認識して開いた玄関の戸を急いでくぐり、中に入るとあっさりと二人は見つかった。

 しかし、家にネオプラズマ団が入ってきたと勘違いした二人に危うく攻撃されるところだった。

 

「お母さん! お父さん!」

 

「アイリ! ああ、良かった……本当に良かった……」

 

 愛娘の顔を見ることが出来たからか、最初はこわばっていた父親の顔も少しずつ穏やかになった。

 

「わああああああん!!」

 

 大泣きしているアイリを抱きしめ、今度は青年達の方を向く。

 

「みなさん……本当に、ありがとう……!」

 

「いえ、私たちは何も──」

 

「ずっと、頑張っている話は聞いていた。それでも……それでもこうして顔を見て……」

 

 アイリの顔を両手を優しく包んで、一緒に訪れた仲間達を見る。

 道場破りのようにいきなり家に現れた時は3人だった。いや、一人だったのかあれは。少女二人は成り行きに任せるというような感じだった気がする。

 ……そう、彼が始めた。

 偶然出会い、図書館で調べ物を手伝い、ジャックフロストをパートナーにするのを手伝ってもらって、そして彼と共に旅立った。

 きっと、不安もあっただろう。

 その役目を押し付けた自分達がこんなことを言って良いのか分からないけど、それでも言いたかった。

 

「アイリ」

 

「う゛ん゛」

 

「良く頑張った」

 

「……う゛っ……あ゛う゛う゛…………わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

 ──────

 

 

「お久しぶりです、お父さん」

 

「そうだね、久しぶりだ──とは言っても私はあんまりそんな気はしないけどね」

 

「良く言われます」

 

「ははは……アイリからも色々聞いてはいたんだ、実は」

 

 泣き続けているアイリは妻であるアナに任せ、青年と話す。

 

「……タイミングを逃してここまで来てしまったけど、名乗らせてもらうよ。アイリの父親のグレイだ」

 

「俺はポケモントレーナー。改めてよろしくです、グレイさん」

 

 手を握り、目の前のポケモントレーナーを見る。

 雰囲気が以前から変わったような気がした。

 

「アイリだけじゃなくて君も変わったみたいだね」

 

「……そうかもしれないです」

 

 雰囲気だけじゃない。

 その容貌もだ。

 アロハシャツから覗くのは無数の古傷。

 それは彼が多くの事件に関わってきた証左。

 そして顔つきも、以前のようなふざけた空気感が減っている。

 何があったのかなんて聞く意味すらない。

 アイリから聞いていたと言ったばかりだった。

 こと彼のことに関しては、国際警察よりも詳しいだろう。

 

「君は……本当に、すごい男だ」

 

 一人の男として、尊敬せざるを得なかった。

 ここまでのことを成し遂げ──そして今も、異なる場所で彼女達とは離れて戦い続けている。

 

「普通の人間だった君が、良くぞここまで……」

 

 別世界からやってきたと聞いた。

 そこでは本当にただの人間で、闘った経験なんて無かったと。

 そんな彼がこれほど多くの傷を負い、それでも彼女達を導き、世界を救ってきた。

 

 自分ならどうなるだろう。

 目が覚めたら全く違う世界にいる。

 そこには見た事もない生き物、違う常識、読めない文字。

 そして、自分にはその世界のプレイヤーとしての才能があったと。

 確かに興奮するかもしれない。

 ああ、調子にも乗るだろう。

 …………その先は? 

 

 彼のようになる道筋が見えなかった。

 アイリの話が本当なら何度も世界の危機に出会しているそうだ。

 立ち向かえるだろうか、世界を滅ぼすような敵に。

 耐えられるだろうか、そんなプレッシャーに。

 そして、彼にアイリを託したのは、彼がこの世界に来てからたったの数カ月。

 今にして思えば結構無茶な注文だったとは思う。あの時は楽しそうだったけど、大変な事なのは間違いない。

 

「君に多くの物を背負わせてしまった……そんな状況でもアイリを導いてくれた君には、感謝だけでは足りないのかもしれない」

 

「そ、れは……」

 

 ポケモントレーナーは言葉に詰まり、上を向いた。

 

「やばい……泣きそう」

 

「…………」

 

「俺がやってきたことの意味が……すげえ実感として、なんかこう……来るな、涙腺に」

 

「私なんかの言葉では足りないかもしれないが──ありがとう、ポケモントレーナーくん」

 

「──ちょっ、マジで泣いちゃう!」

 

 青年の背後で仲間が呆れていた。

 元ジムリーダーのナギさんは顰めっ面までしている。

 やっと分かったのか、とでも言いたげだ。

 そう、彼にはいまいち自覚が足りていないが、彼がやってきたことの結果が彼女達だということは明らかだった。

 彼の背中を見てアイリ達は成長していた。

 この世界を生きているだけでは得られないモノを手にしていた。

 それが分かっていなかった。

 

「ふぅ……全く、いきなり泣かそうとしないでくださいよ」

 

「どうせ君が泣かせてばっかりなんだから、偶には良いじゃないか」

 

「何で知ってるんだ!? もしかしてエスパータイプ!?」

 

 その時、ズズンという大きな衝撃が一度。

 グレイが身構える。

 

「ま、またか……」

 

「これは一体?」

 

「分からない……ただ、ネオプラズマ団がやって来てから始まったのは確かだ」

 

「……そうか」

 

 青年は涙の滲む目を擦り、グレイに背を向けようとした。

 思わず呼び止める。

 

「行くのか?」

 

「はい」

 

 一切の迷いが無かった。

 それ以外の選択肢は無いと、その瞳は語っていた。

 

「なぜ、そこまでする?」

 

「?」

 

「今回はチャンピオンに任せてもいいんじゃないか?」

 

「確かに、それはそうですね」

 

「アイリもいるし、今回はウチで待っているだけでも……」

 

「──いや〜、おじさんもなるべくゆっくりしてたいなあ〜」

 

「……ホシノ?」

 

「私も危ない所に行くのはあんまり」

 

「ナギも」

 

「トレーナーさん達ってどこの街行っても何かに巻き込まれてるから、休むのもいいんじゃ無い?」

 

「ブルーまで……いったい何なんだ」

 

「僕も僕も!」

 

「うるさいぞノコ!」

 

「なんで!?」

 

 彼女達も偶には危ないことから離れて、彼と一緒に平穏に過ごしたいのだろう。

 私の言葉に続いて、ゆっくりしようと提案する。

 しかしどこかふざけた空気も感じて、これはどういうことなのかと考えていると──

 

「じゃあ俺だけ行くわ」

 

 親指を立ててウィンクすると、リビングから出て行こうとしていた。

 

「ちょっと待て〜い!」

 

 ホシノさんが羽交締めにした。

 

「何で一人で行こうとしてるのよ!」

 

「お兄さん、バカ」

 

「ピカチュウってノリ悪いよね」

 

 私は何を見せられているんだろうか。

 

「ええい、離せ! こんなところに居られるか! 俺は今すぐにゲーチスに会いに行くんだ!」

 

 羽交締めにされながらジタバタしているが、振り切ろうと思えば出来るのにしないのは、やはりホシノさんを気遣っているのだろう。

 ただ……ゲーチスに会いに行くとはどういう事だろう。

 倒すとかなら分かるが。

 

「やーっと知ってるワルが出て来たんだ! 生ゲーチスが見たいんだよ俺は! 離せホシノ!」

 

 生ゲーチス。

 

「暴れないでよ〜! もー! せめてチャンピオン達がネオプラズマ団のしたっぱを倒してから行こうよ!」

 

「あの制服だって俺は結構好きなんだぞう! ゲーチスに会って終わりじゃ嫌なんだ! したっぱを倒して、七賢人をボコして、Nを下した後にゲーチスと戦いたいんだよ!」

 

「バカなこと言ってないで、一旦落ち着きなさい」

 

 今の今までちょっとだけしんみりとした空気だったのに、一瞬でぶち壊れた。

 そしてリビングの扉が開く。

 

「……ししょー」

 

「お、アイリ!」

 

「行くん、ですね?」

 

「ああ!」

 

 リビングに入って来たアイリは、扉の前にいたポケモントレーナーくんに抱きついた。

 …………抱き着いた!? 

 いや、落ち着け……師弟ならこれくらい…………落ち着いていられるか! 

 ポケモントレーナーくんも何で膝をついて迎え入れる姿勢なんだ! 

 

「ア、アイリ! 彼から離れなさい!」

 

「?」

 

「い、いいから!」

 

「や!」

 

「!?」

 

 ア、アイリが抱きつく力をつ、強めめめめ……はっ!? この顔!? 

 

「ポ、ポケモントレーナーくん! 聞きたいんだけどね!?」

 

「は、はいっ」

 

「ア、ア、アイリとはどんな感じなんだい!? まさか手を出したりとか……」

 

「あ、付き合ってます」

 

「────なにぃ!?」

 

 アイリは嬉しそうに顔を彼の胸板に擦り付けていて──私の方を見た。

 

「えへへっ付き合ってるんだ、私たち」

 

「聞いてないぞ!?」

 

「うん、サプライズにしようと思って」

 

「お、驚くとかそういう問題じゃ……ポケモントレーナーくん、ちょっとこっちへ」 

 

 廊下に出て、アナと3人で話す。

 …………アナは知っていたらしい。

 何で私だけ!? 

 

「いつかこうなるって、途中からだけど私は分かってたわよ」

 

「え……じゃあ、何でそのままアイリを預けてくれたんですか?」

 

「あら、分からない?」

 

「はい」

 

「強くて、お金を持ってて、大事にしてくれる。そんな人なかなかいないわよ」

 

「お金……」

 

「稼ごうと思えば稼げるんでしょ?」

 

「まあ、はい。でもホシノ達に管理されてるんですよね……」

 

「お金遣いが荒いっていうのは聞いてるわよ? ダメじゃない、ホシノさんを困らせたら」

 

「はは……」

 

 …………そ、そうだ! 

 ポケモントレーナー君は周りにたくさん女の子がいる! 

 その子達とはどんな関係なんだ!? 

 聞かなくては! 

 

「ポケモントレーナー君! ホシノさん達とはどんな関係なんだ! まさか二股とか……」

 

「…………です」

 

「え?」

 

「よ、四股です」

 

「──キサマああああああああ!!」

 

「ぐえええええええ!! 揺らさないでええええ!!」

 

「アイリだけに飽き足らず他の女の子までだとおおおお!」

 

「ご、ごめんなざあああああ!」

 

「誰だ! 誰をその毒牙にかけたんだ! 吐け!」

 

「ホ、ホシノとナギとレッドですううううう!!」

 

 

 ──────

 

 

 青年達が去った家。

 一気に静かになったそこで、夫婦は並んでソファに座っていた──いや、グレイがアナの太ももに泣きついていた。

 

「もう、そんなメソメソしないで?」

 

「だってアイリが……」

 

「何がそんなに嫌なの? お互い好き合ってるならそれで良いじゃない……しかもあんなに良い人、この先見つかるかどうか」

 

「でも、歳が倍なんだぞ……」

 

「そんなの些細な事よ。ねえあなた、自分の気持ちばっかりだけど……それで仮に彼がアイリを置いていくってなったら、アイリの気持ちはどうなるの?」

 

「…………」

 

「私たちはあの子達に2回も失敗を押し付けているのよ? 良い加減認めないと、子供達の意思に任せるべきだって」

 

「…………そう……だな……」

 

「グズマもきっと元気にやっているわ。だから、信じましょう?」

 

「……アナ、君はやっぱり最高の女だ」

 

「ふふっ」

 

 

 ──────

 

 

「とんでもない目に遭った」

 

 頭を掻いてぼやくポケモントレーナー。

 ネオプラズマ団はここらへんにはいないのか、まだ襲撃は無い。

 それはそれとして、早く生ゲーチスを拝みたいのでグリーンスカイロッドに向かっていた。

 アイリとおててを繋いで先頭を行く。

 ホシノとナギは後ろで先ほどのことを話していた。

 

「さっきのは結局、親公認ってことになったのかな」

 

「なのかしらねえ」

 

 かつて訪れた時は人で賑わっていたこの街。

 青年が木の根を踏んだだけで牢屋にぶち込まれたのに、今の街は酷い有様だった。

 メタメタに踏み潰された根っこ、ところどころにある血の痕、向かう方から発生している地響き、そして破壊された警察署。

 

「こりゃひでえな」

 

 原型も留めぬ程だ。

 絶対に壊してやろうという強い意志を感じる壊し方。

 かつて、ここの牢屋に入れられていたポケモントレーナーとしても思うところがあった。

 

「うへ〜……懐かしいねえ、あの時はレッドちゃんが受付のお姉さんに詰め寄っててさ〜」

 

「そうなのか?」

 

「内心不安だったのかもねー?」

 

「知らない」

 

 そっぽを向くレッドを揶揄うホシノ。

 二人にしか通じない何かがあったのだろう。

 青年が捕まっている間に二人が何をしていたかなんてことは青年も知らない。

 脱走して、この警察署の前で二人を担ぎ上げて飯を食いに行っただけだ。

 ノコ達はそんなやり取りを( ´_ゝ`)フーンって顔で見ていた。

 2年以上旅していると、仲間内でも内輪ノリができるものなのである。

 

 

 ──────

 

 

 この街のマップはだいぶ忘れたからな。

 アイリが頼りだ! 

 ……よし! グリーンスカイロッドまで道案内GO! 

 道にはネオプラズマ団が倒れていて、おそらくリュウ達が薙ぎ倒していたということがわかる。

 これはつまり、俺に突き進めってことだな。

 お前らいくぞ! 

 

 マタナキタウンは広い。

 なにせ公共交通機関があるくらいだ。

 人の足で移動するような都市設計はされていない。

 だもんで、弱々ブルーがまず脱落した。

 ブルーは意外と身体が弱いというか、体力が無い。

 今は俺の背中の上で縮こまってます。

 なんか恥ずかしそうにしてるけど、体力無いの自覚してるなら運動すれば良いじゃない。

 え? そういうのじゃなくて、背中に乗るのが恥ずかしい? じゃあこれからずっと背中に乗せて移動したろ! 笑

 ……いでで! 耳を引きちぎろうとするな! 

 

 普段なら街の中でポケモンを使って移動することは禁止されているけど、今は非常事態。

 わざわざ走る必要は無いという事に気付いた。

 翔べ! リザむぐっ……

 

「リザードン、行くよ」

 

 レッドにセリフ取られたあ! 

 ……まあそれは良いか! 

 みんな、リザードンの背中に乗れ! 

 ブルーも自分のリザードンの方に……え? 今はいい? 

 ……よく分かんねえけどそれじゃあ行くぞ! 

 

 目的地に向けてリザードン達と並走していると、ブルーが背中の上で一言。

 

「すごい速いのに揺れなさすぎてキモい」

 

 吐きそうなら一旦下ろすけどどうする? 

 

「いや、トレーナーさんが気持ち悪い」

 

 俺!? 気分が悪いとかじゃなくて俺が気持ち悪いの!? 

 じゃ、じゃあやっぱりリザードンの背中に乗るか? 

 そうしたら俺も遠慮なく揺れるし。

 もうあれだ、ゲッダンぐらい揺れるよ。

 

「うーん……べつにいいや」

 

 何だお前は! 

 せめて主張に一貫性を持たせろ! 

 気持ち悪いなら気持ち悪いを貫き通せ! 

 

「気持ち悪いけど、乗るのが嫌とは言ってないし」

 

 …………なるほど! 

 ……おっ、やっとこさ肉眼で見えて来たな! 

 グリーンスカイロッド! 

 

「うん、久しぶりに見た」

 

 カムイに勝てなかったんだっけ? 

 今はどうだ? 

 勝てそうか? 

 

「今それどころじゃなく無い?」

 

 まだ戦闘音は遠いし、雑談だよ雑談。……で、どうなんだ? 

 前に戦った時と比べて、今のお前はどう変わったよ。

 

「今の私……」

 

 考えなくていいよ。勝てそうだな〜とか、まだキツイかもな〜とか、分かんないな〜とかそういうのでいい。

 本当、ただの雑談でしか無いから。

 

「……もしかしてコミュニケーション下手?」

 

 なんで!? 

 

「ただの雑談で振るにしても、もっとあるじゃん。なんで一番重めのやつを選んだの」

 

 重い………………? 

 あれか? ジムリーダーに勝つ勝たないってのはその後の人生に大きな影響を与えるから的な? 

 いつも思うんだけど、何でみんな一度負けたら辞めるんだ? 何度も挑めば良くね? 

 ポケモンなんて負けて勝ってだろ。

 

「……トレーナーさんはさ、別の世界から来たから分からないのかもしれないけど──バトルって、すごい大変なんだよ」

 

 お、おう? 

 

「パートナーがすごい勢いであっち行ったりこっち行ったり。私たちが食らったらそれだけで死んじゃうようなわざがポンポン飛び交うし、メガネが無かったら音も視界も何もあったもんじゃ無い」

 

 そういう話はあんまり聞かなかったな。

 

「何度もしてるよ〜、お兄さんが全然聞いてないでしょ〜」

 

 だそうです。

 多分俺が別のことを気にしてる時に言われてたんだろうな。そうでなきゃ覚えてないわけないし。

 ……なあ!? ホシノちゃんそうだよねえ!? 

 

「さあねえ」

 

 とりあえずブルーはカムイに勝てるのか勝てないのか言いやがれ! 

 

「……うん、勝てる」

 

 お? 

 

「絶対に勝ーつ!」

 

 いいぞ! その調子だ! 

 

「メガシンカでぶっ飛ばしちゃうんだから!」

 

 ダメだからね!? 

 そんなのフェアじゃないぞ!? 

 

「うるさーい! カムイが強いのが悪いんだ!」

 

 そもそもカムイくらい単独の力で倒せなきゃ、メガシンカしてもミュウツーに勝てないだろ。

 知らんけど。

 

「いいもーん……あっ! ネオプラズマ団だ!」

 

 

 ──────

 

 

 

 ネオプラズマ団の一団が角を曲がって出てくるのが遠目に見えた。

 こちらが何者なのか測りかねていたようだが、敵だと認定したらしい。

 ダークボールのスイッチを押し、赤い光と共にモンスターが飛び出した。

 それを見てポケモントレーナーはニイイと笑う。

 

「ハッ! ポケモンらしくなってきたなあ!!」

 

「今から突入するんだから、アナタももう少し引き締めて!」

 

 リザードンの背から飛んでくる声。

 無理な注文だった。

 ポケットモンスターを象徴する存在。

 例え悪の道に歪められたモノではあっても、それはまさに彼が思い描いていた物だった。

 三つのうちから一つをを選んで始まる大冒険。

 彼の夢想する世界が近付いていた。

 ブルーは青年の心の熱が高まるのを感じ取る。

 

「いいよなあモンスターボール……でも、伝わってくるぜ!」

 

「なにが?」

 

「苦しみが手に取るように分かる! 助けてくれと叫んでる! ──みんな! ダークボールをぶっ壊せ!」

 

「りょーかい!」

 

 青年はブルーを下ろすと、待ち構える団員達に突っ込そのまま拳を振り抜いた。

 

「──吹っ飛べやあ!」

 

「わああ! 待って待って待って!」

 

 怯えた様子の団員ではなく、その軌道はボールへ。

 精度高くボールを殴り壊し、対応する1匹のモンスターが気絶する。精神、肉体共に過負荷がかかっていたところからいきなり解放されたことによる症状だった。

 

 突っ込まれた側はたまったモノではない。

 数十メートルを一瞬で詰めて来たと思ったら、反応する間もなくボールを破壊されたのだ。

 支給されたこれは貴重なものであり、最近完成されたばかりだと聞かされていた。

 それをこんな、いきなり壊されるなんて……

 団員に緊張が走る。

 そしてそんな野蛮な事をした男の顔を見て、心中が驚愕に染まった。

 

「──ポケモントレーナー!?」

 

「……えっ、ホーリータウンにいるんじゃないの!?」

 

「なんで私達攻撃されてるの? …………ど、どうする?」

 

「どうするって……どうしよう」

 

 やけに弱腰だった。

 不安げに目を見合わせている。

 赤く目が染まったモンスター達だけが今にも飛び出そうとしていた。

 ここで、ポケモントレーナーが気付く。

 団員の顔つきから見るに14、5歳くらいだった。

 こいつら随分と若いな…………それなら、と怒鳴りつけた。

 

「てめえらあ!!」

 

「ひっ……」

 

「こうなりたい奴はそのまま構えてろ!」

 

 近くにあった金属製のオブジェクトを素手で解体していく。

 ベッコベコでバッキバキのそれを見て、少年少女の顔は青ざめていた。

 ただ、どうすればいいかが分からなくて呆然とする。

 まさかこんな事になるなんて……と頭が真っ白だった。

 それを見て、ボールを手放さないならやる気という事だなと解釈し、青い炎を纏わせる。

 

「よし! 今からお前らは病院送りだ! パートナーの分まで半年ぐらい反省しろ!」

 

「──待ってください!」

 

 少しだけ周りよりも歳が上の少女が飛び出して来た。及び腰だが、何かを伝えたいようだ。

 

「何でアナタが私たちを攻撃するんですか!?」

 

「…………」

 

「ひっ! おおお願いです! 本当に待ってください! 

 

「ん?」

 

 時間稼ぎか、と無言で攻撃を開始しようとしたポケモントレーナーにダークボールを差し出す。

 戦う意志は無いという事だろうか、青年は測りかねていた。

 ノコが肩を叩く。

 

「ねえ、話だけでも聞いてあげた方がいいと僕は思うんだけど」

 

「……それなら、ダークボールとメガネは預からせてもらうぞ」

 

「は、はい!」

 

 

 ──────

 

 

 彼女達はゲーチスの話を聞いて『目覚めた』らしい。

 子供が頑張るんじゃなくて大人が守る世界という演説に感化され、数日前に入ったばかりだとか。

 なるほど……なるほどなあ。

 ちなみにホシノ達はあの演説を聞いて、ネオプラズマ団に入りたいとか思ったか? 

 

「おじさんはあの考え方自体には少し共感できたけど……ああいうことを言う輩に碌なのっていないからねえ」

 

「私は……あの顔を見たらヒカワを思い出したから嫌いよ」

 

「よく分からないです!」

 

 うんうん、聞いて思うことは人それぞれ違う、か。当然と言えば当然だけど、あれに強く共感する子だっているよな。

 でも、あれを無警戒に信じちゃうようなのはいただけない。世の中は都合なんて良くなくて、耳障りの良いことを言うだけの大人ってのもいる。

 

「で、でも……私たちだってちゃんと考えました!」

 

 考えた結果が必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。

 それも分かるだろ? 

 

「…………ポケモントレーナーさんだって! 20歳になるまで芽が出なくて、ずっと苦労してたんじゃ無いんですか!? やりたくも無い旅をさせられて、それで……」

 

「俺は20歳になるまで旅はしてないよ」

 

「え?」

 

「20歳までは君達とは違う場所にいたからね。そもそも旅を始めたのが20なんだ」

 

「そ、そんなのって……」

 

 何となく事情が見えて来た。

 彼女達はきっと旅が嫌いなのだろう。

 いや……それは誤解を招くか。きっと彼女達はポケモンバトルに複雑な感情を抱いている。

 この世界の人間にとってバトルっていうのは必需品であり、義務みたいなものだ。

 さながら俺の世界の受験勉強みたいなもので、したくなんか無いけどしなけりゃ未来は無い。

 あったとしてもなりたい職業には就けない。

 そりゃあモチベーションだって湧かないだろう。

 そんなところにあんな演説を聞かされて、勇気がある子なら乗っかってしまうのかもしれない。

 

「……なんで私たちがこんなに頑張らなきゃいけないのよ」

 

 それが分かるようになる頃には、そんなに頑張る必要も無くなる。俺も大学までは何で勉強なんかしなくちゃいけないんだって思ってたけど……就活とかあるからな。やっぱ必要だったわ。

 

「ポケモントレーナーさん……教えてください! なんで、あんな怖い目に遭ってまで旅をしなくちゃいけないんですか!?」

 

 怯えと、必死が入り混じった目だった。

 どこかに逃げてしまいたい、そう思っているのが伝わってくる目。

 そして、俺は実際に逃げる事ができたけど彼女達にはそれができなかった。

 しかも俺が向かうのは机だったのに、彼女達が立ち向かわなくてはいけないのは現実に存在するモンスター。

 極めて大きな差があった。

 だから、元受験生として俺が返せるのは──

 

「私が言うよ」

 

「ホシノ?」

 

「おじさんの方が、良い気がするからさ」

 

「……頼んだ」

 

 少しだけ、何かを感じた。

 まあ、俺が言っても的外れなことを言いかねないしな……大人しく任せよう。

 

 

 ──────

 

 

 ホシノは少女達と比べても小さい体躯で、それでも堂々と立って話し始めた。

 

「アンチの人とかが色々言ったりしてるから、もしかしたら知ってるかもしれないけどさ〜」

 

「私って、お兄さん──ポケモントレーナーさんと出会うまではうだつの上がらない一プレイヤーでしか無かったんだよねぇ」

 

「言われてる通り、私なんか全然大したことなくて……みんなと同じで、旅に疲れて惰性で生きているだけだったんだ」

 

「フルオカタウンでダラダラと試練を受けて、あのままだったらあそこで旅を終わらせたかもね」

 

 懐かしい記憶を思い出し、その前のことも思い出し、辛い記憶の蓋を開けているホシノは、苦笑という言葉がピッタリの表情でその事を話す。

 

「でも……ある時出会ったんだ、とびきりのお馬鹿さんに」

 

「私達の事情なんか無視して、やりたい事ばっかやって……楽しそうだったんだよねえ……」

 

「世間とか、体裁とか、そんなのがアホらしくなるくらい好き勝手。ソーマで酷いことばっか言われてることもあったし……あ、それはみんなも知ってるか」

 

「それで、そんな人と出会ってから生活が一変したんだ」

 

「知ってる? おつきみやまのてっぺんに何があるか──」

 

 子供達はいつのまにか魅入っていた。

 英雄と旅をして来た少女の話す内容に。

 少女自身が放つ煌めきに。

 これまでは気付いていなかったものに。

 この世界は楽しくて、美しくて、恐ろしくて、ありえないぐらいの不思議が溢れている。

 そんな思いを抱く彼女の口から紡がれる言葉は、小説のような噂を真実に変えていった。

 そして最後に──

 

「──だからさ、何者でも無かった私が君たちに言ってあげる」

 

「旅なんかどうでも良い」

 

「バッジなんかもっとどうでも良い」

 

「好きなだけ、好きなことをやりなよ」

 

「たくさん失敗して、道を見つけて行くんだ」

 

「最後に笑えればそれが最高のストーリーなんだ! ──って、誰かさんの受け売りだけどね」

 

 誰かをチラッと見る。

 

「これが、おじさんから言えることかなっ」

 

 コクコクと、子供達は無垢に頷く。

 

「……うへぇ、なんか恥ずかしいや」

 

 柄にも無いことをしたと恥ずかしがるホシノを見ていたノコは、柔らかく笑っていた。

 誰かと出会い、世界を変えるような冒険をした。

 旅が変えるもの。

 それは本当の世界だけじゃない。

 自分の中にある世界、自分を形成する核そのものが丸ごと変わるような、そんな体験だった。

 同じようなことを経験している存在が、それを大切な記憶としているのが嬉しい。

 何だか楽しくなったので、青年に駆け寄る。

 

「ねえねえ、ピカチュウ──」

 

 全ての旅の案内人であった彼に抱き着こうとして、気付いた。

 小刻みに震えている。

 何かあったのかと覗き込もうとして、突然動き出した。

 呆気に取られて見ていると──

 

「ホシノ!」

 

「え」

 

 ホシノに詰め寄った青年は怒気に塗れていた。

 

「誰だ! そんなことを言ってる奴は!」

 

「な、なに?」

 

「お前のことをうだつの上がらないなんて言ってる奴がいるのか!?」

 

「あ……うへへへ……いやほら、ソーマでなら良くあることで──」

 

 あ、その誤魔化し方はまずいんじゃ……とノコが言う前に青年は息を吸い込んでいた。

 

「良くあるだとお!?」

 

 あーあ。

 

「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

「ちょっ!? ど、どこ行くの!?」

 

「そいつを仕留める!!」

 

「今からは無理だよ!? そもそも相手は顔も居場所もわからないんだからね!?」

 

「開示請求して全て明らかにしてやる! それで裁判所で殴り合いだ!」

 

「そこまで行って殴り合い!?」

 

「当たり前だ!」

 

 子供達は納得した。

 いきなり痴話喧嘩が始まった。

 これが好き勝手やるってことなのか。

 

 ──大きく、大きく、クリスタルが震えていた。

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