俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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その後3_紛う事無きロリコン

 ところで、俺たちは旅を続けたいわけだが。

 この世界に飛行機は無い。

 海底トンネルも無い。

 飛行船とかはある。

 ……船! 

 船で行こう! 

 飛行船で大陸間移動はちょっと気合が入りすぎてるから、普通の船で。

 

 なんか次に行く大陸は俺が決めろってよ。

 いつもは勝手に決めてたくせに、適当な奴らだな。

 うーん……なんだこのゴミみてえな世界地図もどき。

 初めて見たけど、これで何を決めろってんだ。

 グズマ、なんか良い大陸ある? 

 え? 船で海を渡るのがそもそも命懸け? 

 確かにネオプラズマ団とかクラーケンとか襲ってきたりするしな……

 

 じゃあお前はどうやって別の大陸に行って、どうやって帰ってきたんだよ。

 ……途中で船が座礁して、たまたま遭遇したコソクムシの背中に乗って運ばれた? 

 論外じゃねえか! 

 

 お前、元々は何のポケモンをパートナーにしてたんだ? 

 ワルビル? どこにいんの? 

 ……ああもう良いわ、察したから。

 尖ってたわけね、その頃は。

 悪い悪い、そんな睨まないでくれよ。

 別にお前の彼氏を責めようとかそういうのじゃない。

 今のグズマならそんな事はしねえだろ? 

 それなら良いんだ。

 パートナーを捨てるなんて、ロクデナシのすることだからな。

 

 …………あ、なに? おばあちゃんちに預けてあるの? 

 それ先に言えよ。

 捨てたのかと思ったわ。

 失礼だよって……だってこの顔だぞ? 

 見ろ、この悪人顔。

 警察が俺とグズマを見たらまず職質するのはグズマだろ、まちがいなく。

 ほれ見ろグズマ。

 お前の彼女、グゥの音も出なくなってるぞ。

 ──彼女じゃない? まだそんなこと言ってんのかお前。

 ちょっとこっち来い。

 

 お前なんなの? 

 あんな健気な女の子捕まえといてさあ……意地張ってたら碌な目に似合わないぞ? 

 捕まえてないとかそういう誤魔化しはいいんだよ。

 本当はわかってんだろ? 

 お前みたいなチンピラを好きになってくれる子はいっぱいいるけど、あの子は放っといたら破滅するって。

 

 なんで分かるのかって? 

 分かるさ。

 なにせNは英雄だ。

 より良い世界を築くための楔。

 たとえその夢がまやかしであっても、ゲーチスによってそう調整された存在だと、お前は十分理解してるはずだ。

 一緒に旅をしてきたお前が、一番あの子のことを見てきたんだ。Nとしてじゃ無く、ナチュレとしてのあの女の子のことを。

 なら、しっかりやれよ。

 あの子のことが大事なんだろ? 

 ……ユカリ? 

 いや、ユカリからは何も聞いてない。

 読心術も習ってないけど……

 

 ともかく、大事ならちゃんと口に出せ。

 人間は相手のこころなんて読めない。

 言葉にしなきゃ、ちゃんとは伝わらないんだから。

 余計なお世話だろ? 

 でも、余計なお世話がしたくなる程にはもどかしいのが今のお前達だ。

 達って言うかお前がメインだな。

 

 さーて、お説教してスッキリしたから昼飯を食べにいこーっと。

 ほらホシノ、行こうぜ。

 ああん? 

 見ていかなくていいのかって……出歯亀は趣味じゃないんだよ。

 どこかの誰かさん達と違ってな! 

 

 誰かさんとしか言ってないだろうが! 

 やめろ! 噛みつくな! 

 俺はしっかり気付いてたんだからな! 

 ……あーあ!!!! 

 ホシノとユカリ達に誰が出歯亀かってことがバレちゃったねえ!? 

 このむっつりスケべ共が! 

 

 ウギギギギ! 

 こ、凍っちゃう! 

 それ以上は凍っちゃうから! 

 も、燃えちゃう! 

 それ以上は服が丸焦げになっちゃう! 

 炎と氷で交互に攻めるのはずるいぞ! 

 熱疲労で殺そうとしてるだろ! 

 俺は金属じゃねえんだよ! 

 あっ──グ、グレイさん! 助けてください! あなたの娘さんが俺を殺そうとしています! 

 ……ちょ、どこ行くんすかグレイさん! ……グレイさん!? グレェェェェェイ!! 

 …………ふぅ、アナさんが止めてくれなかったら冒険が終わりを迎えるところだった。

 

 昼飯も終わったし、久しぶりに図書館に行くか。

 アイリ、おいで。

 

 うーん! この香り! 

 目に見える範囲では紙はあんまり無いのに、この古びた香り! 

 え? 何を探しにきたのかって? 

 そりゃあ、隕石を。

 アイリ、ここからはお前の力だけが頼りだ。

 どういうことかって? 

 

 こういうことだ。

 司書さんに探してきてもらった。

 この大量の文献を俺と一緒に読み解いてもらう。

 なお、俺は役に立たないものとする。

 代わりに俺はアイリの言うことを何でも聞くものとする。

 何でもいいぞ。

 アイスも買ってあげるし、ジュースも飲み放題だ。

 子供扱いしないでくださいって……アイリお前、図書館でいかがわしいことを……!? 

 じょ、冗談だよ。

 ほら、まずはオレンジュースでも飲んで落ち着こう。

 

 何を探したいのかって? 

 隕石だ。

 隕石とは何だったのか、それを詳しく知りたい。

 この大陸を出る前にせめて、やれる事はやっておきたいんだ。

 協力してくれるか? 

 ……ありがとう。

 

 

 ──────

 

 

「ふぇぇ……目が文字でいっぱいだよお……」

 

 ししょーのお手伝いで、たくさんの本を読みました。

 こんなにたくさんの紙を読んだのは初めてで、もうヘトヘトです。

 この日は、昼からでした。全然山が減らなかった……

 

 次の日も、その次の日もししょーと一緒に図書館に行きました。

 その間、ホシノさん達は海をどうやって越えるかを調べてくれるそうです。

 

 ししょーは私が伝えた歴史を、見たことのない文字で必死に書き留めていました。

 そして、書いたメモを並べて、じっと見つめています。

 思い返せば、ししょーが文字を書くところを初めて見た気がします。

 ……ししょーって本当に文字とか書けたんですね。

 

「赫く輝く隕石……ダメだ、まだわからないな……ククク……」

 

 笑ってます。

 分からないのに何で笑ってるんでしょうか。

 最初にししょーと出会った時は街の歴史を軽く調べただけだったのに、今回はすっっっごい昔から調べてます。だから、その量もすごくて……

 でも、たまに隕石の話が出てくると凄い勢いで手を走らせるんです。

 ガリガリと紙に書きながら、何かを考察している師匠を他の利用者さん達はコッソリ撮ってました。

 いつも通りですね。

 

「数ヶ月に亘って空に輝いていた隕石が降ってくる……そんなの、ポケモンにあったか……? トレジャーとオナーで似た感じのが……」

 

 ブツブツと呟く師匠はいつもとは少し違うけど、とても楽しそうでした。お勉強は嫌いって言ってたのに……もしかしたら歴史は好きなのかもしれないです。

 書いて、唸って、頷いて、私は頭を撫でてもらって。

 擦り切れかけてはいたけど、とても古い遺跡の彫刻の写真を見たときには大喜びで手を叩いて、司書さんに怒られていました。

 でも司書さんも、紙の本を積み上げて何かを調べている師匠が気になったのか、メモと本をチラチラと見て尋ねました。

 

「全く……何がそんなに嬉しいんですか?」

 

「おお、そうそう! レックウザ! この街に伝わる竜だ! きっとそうだ!」

 

「ええ? 何ですか? 竜?」

 

「しかも、レックウザだけじゃない! 明らかに別の奴もいた!」

 

「ええ?」

 

「隕石も違うんだ! 明らかに違う! デオキシスは確かに赤と緑ではあるけど……地表まで見えるほどの光じゃない!」

 

「は、はあ……」

 

 大興奮で捲し立てるししょーの勢いに飲まれて何も言えなくなった司書さんと、目が合いました。

 お互いに苦笑して、読み終えた本を司書さんが持っていってくれました。

 ……まだ3冊しか読んでません。

 こんなにあるのに……

 でも、ししょーが楽しそうだから良いのかな? 

 

 

 ──────

 

 

 凄い。

 聞けば聞くほどに分からなくなってくる。

 情報が増えると姿が露わになるはずなのに、俺が知らないという事実だけが確定していく。

 流星も一つや二つじゃない。

 違う種類の流星が観測されている。

 しかも、ほとんどはこの地方に落ちたわけでもないようだ。

 じゃあどこに落ちたんだよ、というと当然それは分からない。

 昔の人が流星を見て、何かが起きる予兆だと思ったのか詳しく記録していただけだ。

 その中の一つが、大災害を起こした。

 大きな人型だったらしい。

 どこまでの大きさかは分からないけど、ともかくそいつがレックウザと戦ったんだ。本当にレックウザだけなのお? 

 

 人型……ほなデオキシスやないか、とはならん。

 大きい、と明確に書かれている以上はデオキシスを想定しないほうがいいだろう。

 そして、それが落ちたところは明らかだ。

 グリーンスカイロッドの地下。

 意識してこの街を観察すると、遥かな地下から、微かに気配を感じることができた。

 でも、あの木をぶち抜くのは無理だ。

 直径も、大人数人分とかそういうチンケな単位じゃなくてkm単位だからな。

 …………

 

「──君ならば、いずれ辿り着くだろうと思っていた。そして大恩ある身としては心苦しいが、協力は出来ない。あそこだけは封印しておかなければならないんだ」

 

 それ大丈夫? 

 誰かに掘り起こされて突然復活したりしない? 

 

「うむ、あの木を掘り起こすなど不可能だ」

 

 だそうです。

 まあ俺がとやかく言うことじゃない。

 あんたがそんな顔をするんだから、そりゃあダメなんだろうな。

 でも、もしもその時が来てしまったなら、フルオカタウンにあるフレンドリィショップを訪ねてくれ。

 俺は、この大陸にはいないからな。

 ──結局のところ俺らが何者なのかって? 

 そんな事どうでも良いじゃん。

 大事なのは、力を貸してくれる奴がいるって事だ。

 この世界が結構ハードだってのは、さすがに俺も気づいた。

 でも、それだけじゃない。

 手を取り合える。

 命を繋いでいける。

 俺たちの世界と同じ人間のはずなのに、違う。

 そんなあんた達を見ていると、俺たちも熱血系みたいになっちゃうというか……力を貸したくなるんだよなあ……

 

 

 ──────

 

 

 アイリ、3週間もありがとう。

 本、めっちゃ多かったから大変だっただろ? 

 何がしたい? 

 ……一緒にこの街を周りたい、か。

 わかった。

 広いから1人だと逸れちゃうもんな。

 

 2人でマタナキタウンを巡る。

 この街に次に帰ってくるのはいつになるやら、俺にも分からない。

 グズマ達がこの大陸に楽に来られたのはレシラムとゼクロムのおかげらしいからな。

 そもそも出ていくのも命懸けになるらしい。

 俺は楽しみだけど、こいつらには故郷がある。帰れるかも分からない旅ってのは、少なからず不安にもなるだろうよ。

 

 アイリの幼馴染と会った。

 メガネをかけたおとなしそうな子だ。

 名前はゼンノロブロイって言うらしい。

 長い。

 どこまでが名字だ。

 再開した2人は、ワンワンと泣きながら抱きしめあっていた。私が悪かったとか、怪我して無いかとか。

 感動だねえ。

 俺にも幼馴染はいたなあ。

 ブロイちゃんのパートナーはウマゴンとかいうポケモン。

 知能の高い馬だ。

 しかも喋れる。

 やっぱ幼馴染だわこの子達……

 

 ブロイちゃんは本人が結構良いステータスしてるわ。

 そしてそのケモ耳! 

 君もポケモンにならないか? 

 自分が戦う事で見えてくる世界もあるぞ。

 ……一緒にしないでほしいってどういう意味だコラ! 

 俺にも繊細な心があるんだぞ! 

 繊細とは真逆? 

 そんな事ない! 俺だって泣くし笑うんだ! 

 

 とりあえず、奢るから昼ごはん食べようぜ。

 ……繊細? 

 ごめん、何の話かわからないけど、とりあえずあの店とかどう? 昼飯より大事なものなんてないぞ。

 高過ぎる? ……そんなの良いよ別に、君もいずれは強くなるんだから出世払いで。

 

 ──ちがう! 狙ってないマジで! 

 そんな目で見るな2人とも! 

 マジで俺は見境の無い男じゃ無いから! 

 たまたま仲間になった女の子達とたまたまそういう仲になっただけだから! 

 本当に! 

 俺の倫理観はマジで一般ピーポーそのものなんだって! 

 ……目つきがエロいって何!? それ、君たちの歪んだメガネのせいだよね!? 

 もっと肉眼で俺を見ろ! 

 この誠実そうな姿! 

 ……アロハシャツのことを言うのはやめろ! 

 

 と、ともかく! 昼飯が届いたから食べるぞ! 

 こんな肉食べたこともない? 

 そんな大したことないだろ。

 自分で倒して食ったほうがもっと美味しいぞ。

 ブロイちゃんは旅した事は無いのか? 

 ……中々踏ん切りがつかない、か。

 へぇぇ、そういう子もいるんだね。

 ちなみに、試練をこなしていきたいっていう意思があるのか聞いても? 

 ……おお、一応旅はしたいんだ。

 でも、どこから行けば良いかわからないと。

 良いじゃんアイリ、どんな街があるのか教えてあげれば。

 ネ、ネタバレは死罪? 

 ……ネタバレアンチだったか。

 そのくせ旅には出ないなんて、めんどくさい子だな。

 キッカケが中々無いって……キッカケは向こうから歩いてこないぞ。

 お前が歩いていくんだよお! 

 

 というかブロイちゃんの夢とかあるの? 

 なんだよ、何言い渋ってんだよ。

 じゃあ俺の夢から言うわ。

 俺は世界を旅してこの世界を遊び尽くすのが夢だ。

 はい、じゃあ次。

 なに? そんなの夢じゃ無い? 

 なんで? 

 そんなの誰だってできる……はぁ、これだから素人は。いいか? この世界に生まれたせいでこの世界の素晴らしさに気づけてないんだろうけど。こんなに不思議に満ちた世界で生きていけるなんて、すっげえ幸せなんだぞ。

 幸せはそれを奪われた人間じゃ無いと理解出来ない。だから、敢えて言おう。

 この街にずっといたら、それが何であれ君の夢は叶わない。

 

 自分の冒険を小説にしたい? 

 ……それ、いいな! 

 ついでに俺のことも載せてくれよ! 

 もしかして、絵とかも描ける? 

 マジ? ちょっと見せてよ。

 ……ガチうまいじゃん! 

 俺は模写しかできないからすげえわ。

 え? …………こんな感じ。

 写真じゃ無いよ。

 脳みその作りが違うだけだ。

 でも小説か……いつか、君の書いた話を聞かせてくれ。

 読まないのかって言われても……あいにくと俺には文字が読めない。

 脳みその作りが違うんだよ。

 

 

 ──────

 

 

 ブロイちゃんと出会っちゃったから、一旦ここで俺は別れることにした。

 昼ご飯まで連れてきたのも野暮だったかもしれん。

 昔話に花でも咲かせてほしい。

 友達と家族は大事にしなきゃな! 

 もう会えないってなった時に、言いたかったことを何も伝えられていなかったなんて事がないように、な! 

 

 あれ、君たちは確かネオプラズマ団の……

 ちゃんと更生したか? 

 ダークボールは全部捨てたんだな、えらいぞー。

 君たちも、より良い環境が自分で作れるんじゃないかって模索しただけなんだよな。

 その結果、よくない奴らに載せられちゃっただけで……若いだけだ。理屈じゃなくて感情で動くことは、時として必要だよな。

 その青さを失くさないでほしい。何かを変えようと動く事ができる自分を褒めてあげてくれ。

 そして、そんな君達に、俺から一つだけ教えてあげられる事がある。

 手を出してくれ。

 

 ……よし! 

 ははははは! 驚いてるな? 

 みらいよち。

 少しだけ先の未来を、いくつか見せた。

 それが君たちの可能性だ。

 いいや、予言じゃない。

 これはポケモンのわざだ。

 君たちのパートナーは、こんな事もできる。

 ──そう! 信じる心があれば何でもできる! 

 さっきの可能性だって、最善でも何でもない、ただの未来だ! 

 くれぐれも暗い道に落ちるなよ! 

 黄金の精神を持つ誰かがやってきて、お前達は不幸な目に遭うからな! 

 仲間を見つけて、増やしてみろ! 

 たとえ1人なら耐えられなくても、仲間がいれば大抵のことは乗り切れる! 

 死ぬとしても、1人じゃなくて2人ならマシだ! 

 じゃあな! 

 

 それにしても、何でこの世界の奴らは1人で冒険しようとするかね。

 例えばノコがリオレウスと遭遇したら、ワニノコがいても瞬殺だぜ。

 そんなの強くなるもならないもないじゃん? 

 強くなってから1人で行けよ。

 俺も最初はリオレウスなんて……チートがあったからいけたけど……そういう問題じゃないな? 

 ヒガンくんは孤児院の幼馴染2人と一緒に旅をしているらしいから感心だ。

 やっぱり俺の弟子なだけはある。

 会いてえ……! 

 ヒガンくんに会いてえよお! 

 久しぶりに一緒に風呂に入りたい! 

 あ、でもヒガンくんも成長してるし流石にアレか? 

 悲しいなあ、これが子を思う親の気持ちか……

 

 そういえば、ナギサとミカ? の2人には翼が生えてたな。

 あの場だと別のことが気になって、そっちは気にならなかったけど。

 あとで通話すっか。

 お、どうした? 

 サイン? 

 ──まあ、たまには良いか。

 

 ほら、これでどうだ? 

 ……あらら、走ってっちゃった。

 転ぶなよ〜。

 あの子はこれからポケモントレーナーって書かれた帽子を被るのか? 

 いつも思うんだけど、サインがポケモントレーナーってどうなんだ。

 ポケモントレーナーって本来は職業名だし、色紙に焼肉屋って書いてるようなもんだよな……

 いや、俺がそんなこと気にする必要無いんだけど、なんか変じゃん? 

 ……今度から焼肉屋って書いてみようかな……うおっ、なんだチミ達は! 

 ……そ、そのバッジは!? 

 おわあああああい!! 

 

 

 ──────

 

 

 久しぶりにナギちゃんファンクラブに出会った。

 3人組だった。

 厄介ファンの恐ろしさってやつを久しぶりに味わったぜ。悪意は感じなかったから許したけど、カフェに引っ張っていかれて揉みくちゃにされた。

 ナギちゃんに手を出しやがってとか、年収はおいくらですかとか、ご趣味はとか、子供は何人欲しいとか、質問攻めをされた。

 最終的に仲良くなって普通にお茶を飲んでたけど、途中でナギとノコがやってきて両耳を引き千切られそうになった。

 今は連行されています。

 ノコがブツブツ言っている内容を聞くに、浮気判定が入ったらしい。

 お茶しばいてただけじゃん……

 狙われてたって、何言うとりますのん奥さん。

 あの子達は君のファンでっせ。

 そもそも、めちゃくそに詰められてたんだぞ途中まで。

 ナギちゃんファンクラブのこと、もう忘れちゃったのね……

 男って本当にバカだあ? 

 そうだけど、何か? 

 賢くても良いことなんて一つもない。

 上を見ればキリないし、一度賢いってレッテル貼られたら賢くなきゃいけないからな。

 バカで良かった〜。

 ナギもたまには頭空っぽにしてみろよ。

 ……ナンパって(笑)

 なんか言ってら。

 敏感すぎだって、ちゃんとお肌ケアしろよー。

 

 いたい! 

 DVだ! 

 そもそも、俺の顔を見ろ! 普通だろうが! 

 どうやったら逆ナンしてもらえるんだよ! 

 俺もナンパされてみてえよ! 

 くそが! イケメン死ね! 

 あっ…………

 

 久しぶりにノコに胸ぐら掴まれてます。

 目がマジです。

 怖すぎです。

 泣きそうです。

 これが進化……? 

 

 や、やだなあ! 俺がお前らに黙って女の子と浮気するわけないじゃん! 

 ──いや違うよ!? 

 事後報告で浮気するとかもないからね! 

 ……そもそも、浮気云々を突き詰めるとホシノ以外の全てが浮気に……ええ? 

 俺が……お前らの共有財産……? 

 なにそれ、八つ裂きにされるの? 

 死後、亡骸を食われるの? 

 初耳過ぎる……

 

 まさか、こいつらが俺をハブにして俺の所有権について話していたとは。

 俺って人権無かったんだな……

 でも、合点がいった。

 ナギと風呂に入った時にホシノが言ってたのってそういう事だったんだな。

 ……しかし! そうなると一つ問題が起きる! 

 俺という存在が仲間の共有持分により成り立っているとした時、現在はそれぞれが八分の一の持分を持つことで俺は構成されている! 

 それはつまり俺が彼女を増やしても、一人一人の共有持分の割合が減るだけだから浮気にはならなくてぇぇええええええ!! 

 脇腹がちぎれる! 

 やめてください! 

 

 

 ──────

 

 

 いやー、お久しぶりです博士。

 そらをとぶでひとっ飛びしてきました。

 あの後、あいいろのたまはちゃんと封印されてますか? 

 …………うおおお!? 

 な、なんっだこの機械!? 

 これ、封印っていうかデータ取ってますよね!? 

 ワハハハじゃなくて! 

 もちろん、俺には口を出す権利なんて無いけど、下手うって暴走とかさせないで下さいね!? めっちゃ頑張ったんだから! 

 ……え? ブルーの首飾りが気になる? 

 あ、あはは……なんでしょうね。

 

 実は久しぶりにここに来たのは、ユカリ達の里帰りもあるんですけど、博士に相談があったんですよ。

 世界を旅した博士から何か良いアドバイスがもらえないかって。

 どうやって大陸の外に出たのかとか、教えてもらえませんかね? 

 マタナキタウンで何があったのか教えればって……まあ、それくらいなら。

 

 

 ──────

 

 

「相変わらずだのお……」

 

「いやいや博士こそ! ダイゴくんに聞きましたよ、世界中を旅して多くの遺跡を発見したって。何で教えてくれないんですか」

 

「ワシのことは良いんじゃよ。でも、そうじゃな……良い旅路じゃった」

 

 研究所に据えられた巨大なガラス管に収められているあいいろのたまをチラチラ見ながら、ポケモントレーナーは久しぶりに濃い顔の博士と直接話していた。

 時の果て、カイオーガが死ぬまでこの世から消えることはないであろうアーティファクト。

 そんなものをこんな目立つように置いておく。

 

 大丈夫

 そう言われても

 不安です

 

 アクア団がいたらすぐ持ってかれてるだろうな……そんなことを思いながら、オーキドカズユキが楽しそうに語る内容に耳を傾ける。

 研究者は、どこか遠い目をしながらも優しい顔で旅の思い出を語った。

 

 

 ──────

 

 

 彼が若かりし頃、それこそ20と幾つかの年齢だった。

 今のポケモントレーナーとほぼ同じ年齢。

 そこそこ出来る。でも、今のレッドみたいな優秀なプレイヤーだったわけではない。

 自負の通りそこそこの成績を残して、普通に就職をしていた。

 その職業は研究職では無かった。

 

 でも、何故だろうか。

 幼少のときからそうだった。

 カズユキはモンスターに対する強い興味があった。

 他の皆が旅を嫌がるなか、彼だけは強い好奇心を持って試練を続けていた。

 20ギリギリまで。

 何故か。

 それは、この歳になってようやく理解できた。

 大昔からそうだったのだ。

 古い、とても古いご先祖さま。

 家系図ですら追い切れないほどの人。

 ただポツンと、名前が残る人。

 その人がそうだったのだ。

 

 仕事の傍らにモンスターの生態研究を行っていた。それはあくまで趣味みたいなモノだった。仕事を終わらせて家に帰る途中、モンスターを観察して絵に残す。

 その時間に何をしているか、どれくらいの数がいるか、どんな手触りか、歯は、爪は。

 少し街を出れば至る所にモンスターがいた。

 ソーマで調べれば、すぐに分かるようなことだ。

 でも、それじゃあ味気ない。

 何も楽しくない。

 何も面白くない。

 自分でやるんだ。

 カズユキは、そんな性質を持っている人間だった。

 

 ある時、地元にいるモンスターの正体が気になって、文献を探したり、研究者に手紙を送ってみたりしたが何の進展も無かった。

 名前すら出てこない。

 これはおかしいぞ、と。

 こんなに膨大なデータがソーマにはあるのに、資料になるようなものが何も出てこない。

 動画や写真はあるが、そんなもの何の手掛かりにもならないのだから。

 証拠になるとすれば、ソーマが世界に広まってばかりの頃にも同じ個体と思われるモンスターが撮られている事だ。

 何故、誰も気にならないのか。

 カチリと、歯車がハマったような気がした。

 本当に自分がしたいことって何だろう。

 その答えが見つかった。

 

 次の日、スーツを捨てた。

 

 この大陸を飛び出すために動き始めた。

 モンスターとは、土着であっても単一では無い。別の地方に同種が生息している可能性を考えた。

 しかしその前に、この地方にある文献を網羅した。

 それをしないで飛び出るのはアホとしか言いようがない。

 そして、文献には見つからなかった。

 

 ならば次は何だ。

 そう、実地探索だ。

 世界中に莫大な面積の未探索領域がある事は有名な話だ。

 その地域にこそ答えがあるのでは無いかと、ワクワクが抑え切れなかった。

 

 この地方の未探索領域の一つ、フライヤ山脈へと足を運んだ。近いからだ。

 しかし、所詮は素人。

 モンスターと出会うまでもなく寒さにやられ、倒れてしまった。

 夢現の中、猫? のような鳴き声が聞こえて、気が付いたら麓のキャンプ地で寝ていた。

 今でもあれは何だったのかと時折気にしている。

 

 2回目は流石に綿密な計画を練り、探索を一応成功させた。

 一応というのは、何も無い事が分かったからだ。

 少なくともあのモンスターに繋がることは。

 氷漬けにされた、未発見のモンスターの遺骸。

 四足歩行の凶暴なモンスターと出会ってしまった時は本当に死を覚悟したが、謎の剣士が助けてくれた。

 戦いが終わったあとに話を聞くと、未発見の村があるようだった。

 彼女は、狭間の道を通ってフライヤ山脈にやってきたと言っていた。

 それ以上は教えられないとも。

 山地全体を調べても、あのモンスターの痕跡や遺跡などは無かった。カズユキは彼女に絵を見せたが、こんなモンスターは知らないと言っていた。

 ならばと立ち去った。

 勿論、このすべての情報は誰にも明かしていない。

 

 フライヤ山脈だけでは無い。

 数年かけて、各地の未探索領域を探った。

 領域の全てを探索できたわけでは無い。

 フライヤ山脈だって、氷河のある場所に踏み込むことはできなかった。

 それだけはやめた方がいいという彼女の忠告に従った形だが、あの地形では、仮にあの場所に何かしらの遺跡があったとしても探すのは実質的に不可能だっただろう。

 そしてアトラス大陸を探した後、いよいよ……

 

 

 ──────

 

 

「というわけで、ワシは彼女の仲間達と共に導きの船で行ったんじゃよ」

 

「導きの船?」

 

「彼女達の部族に伝わる妖精の力を借りた船じゃ。行くべき先へと導いてくれる妖精のおかげで問題なくたどり着くことができたのお」

 

「……俺は用意できますかね」

 

「無理だのお」

 

「くぅ〜! (笑)」

 

「君には君なりの道筋がある。ワシの道を真似る必要などどこにも無い」

 

「とは言ってもなあ……」

 

「道なき道を進むのは大得意じゃろう?」

 

「そりゃあオーキド博士のことでしょ」

 

「──わっはっは! お互い様じゃのお!」

 

 真剣ながら楽しそうに話をする2人の他に、この場にはもう1人だけいた。

 リンだ。

 ソファに座り、出されたお菓子とお茶を頬張っている。

 両親への挨拶は済ませたので、どこにいるのかと探しにきたのだ。

 これで2回目のはずなのに、和気藹々と盛り上がる青年と博士を見る。

 

「本当、トレ君と博士って似てるなあ……そうだ!」

 

 徐に立ち上がると、2人の元へ。

 

「ねえトレ君」

 

「んあ?」

 

「2人で写真とか撮れば?」

 

「え?」

 

「何の話じゃ……?」

 

 青年達が顔を見合わせる。

 いきなりなんだ? というのが正直な所だ。

 そんな反応をされると少しだけ恥ずかしくなるのが提案者というもので、少しだけ強めに言う。

 

「そ、それだけ仲良いんだから、記念に写真くらい撮っておけばいいじゃん! ほら、博士も歳なんだし!」

 

「リン君!?」

 

 そんな酷いこと言う!? と、顔をショックの色に染め上る博士。

 青年は、俺しーらね、と顔を逸らして、あいいろのたまを封印している機械を見る。インジケーターには何かしらのパラメーターと思しき曲線や数値が表示されていた。

 

「あっ、ち、ちが……」

 

「ナンカスゲエナー」

 

「リン君、ワシは確かに年寄りだが……もうすぐ死ぬよね? みたいに言われるとすごく悲しいぞ……」

 

「ご、ごめんなさいごめんなさい! ……ト、トレ君も謝って!」

 

「!?」

 

「リン君……」

 

 慌ててよくわからないことをしでかす、そういうところは治ってないな。

 そんな感想を抱き、青年も隣で頭を下げた。

 

「すいません博士。ご存知の通り、慌てるとコイツはポカをやらかすんで……許してあげてください」

 

「いや、君が謝ることでは無いんだがね……」

 

「まあその……身内なんで」

 

「…………おお! ロマンス、というわけじゃな!」

 

「そ、そういう感じです……」

 

「若いのお! ワシもかつては彼女と──」

 

 ぺちゃくちゃと恋愛遍歴を語りだしたジジイを他所に、リンはシュンとしていた。

 

「リン」

 

「わ、分かってるよ」

 

「そうじゃなくて、ありがとな」

 

「へ?」

 

「写真、撮ってくれよ」

 

「……うん」

 

 青年がモジモジしながらくっついてくるリンの頭を撫でていると──

 

「ごほん!」

 

「っ!」

 

 バッ、と体を離す。

 目を右往左往させて俯いた。

 

「仲睦まじいのは良いがね、ワシも別に目が見えてないわけじゃ無い」

 

「さーせん」

 

「うぅ……ご、ごめんなさい……」

 

「……はぁ、それで写真を撮るのか?」

 

「是非!」

 

「お、おお、意外と乗り気なんじゃな……ワシ、びっくり」

 

 2人で写真を撮った。

 あいいろのたまがバックに写っていて、なんか凄い怪しい感じになっているが、それもまた一興というものなのだろう。

 ポケモントレーナーはと言えば、写真を見て感動しているようだった。

 

「おぉ〜! オーキド博士と写真撮っちゃったよ……文字に表すとすげえな!」

 

「な、なんか照れるのお……」

 

「博士はこういうの慣れてるじゃないですか。インタビュー映像いっぱいありますよ」

 

「それはそうなんじゃがの? なんか、大昔の人間に褒められるというのはまた違った感動が……」

 

「え?」

 

「ん? 違うのかの?」

 

 それは、推測から導き出された答え。

 本当になんでもない青年が、30年以上をかけて辿り着かなかった自分の研究の答えを知っているとは思っていなかった。

 どこかにカラクリがあるはずだと、出会った当初から予想はしていた。

 そして一つ思い出したのは、時を超える力。

 詳細はともかく、そういった力を持つモンスターがいるという伝承は認識していた。

 ならば、そうなのだろうと。

 歴史が擦り切れるほどの太古からこの時代にやってきたのだろうと結論付けた。

 

「……どうしようか」

 

「どうしようね……」

 

 2人で顔を突き合わせる。

 話しても良いんじゃないかという気分ではあるが、話すと後が怖えなあ……

 気持ちが一致していた。

 

「リン、お前が決めろよ」

 

「な、なんで私なの……!? やだよ、ホシノさんに詰められるの……トレ君が決めて!」

 

「俺も嫌だよ、機嫌損ねるとアレだし……」

 

「……アレってなに」

 

「あ、いや、なんでもないけど」

 

「何隠してんのさ! どうせいかがわしいことでしょ!」

 

「バッ、ちょっ、お前……! ここ研究所だっつうの……!」

 

「あ、そ、そだった……えへっ?」

 

 勢いよく声を出したリンは、オーキド博士から面白いものを見る目付きを向けられていた。

 誤魔化そうとするも、すでに遅い。

 

「ポケモントレーナー君」

 

「あ、はい」

 

「先ほどの話は忘れてくれ。無いはずだった答えを持ってきてくれたのだから、それで良いのじゃよ」

 

「……お役に立てたなら、はい。良かったです」

 

「それにしても……」

 

 目を細めてリンを見る。

 それを受けて、リンは首を傾げる

 

「本当に、このお転婆娘がのお」

 

「お、お転婆ってどういうこと!?」

 

「そのまんまじゃよ。ワシはてっきり、行き遅れルートかと……」

 

「いきおくれ!?」

 

 あんまりな言い分に憤慨したが、ハッと思い付いて青年の腕を掴む。

 そして、万歳のように掲げた。

 

「え? なに? なにこれ?」

 

「じゃーん! ト、トレ君と付き合ってるから行き遅れませーん!」

 

「ぶふぉっ!」

 

「トレ君!?」

 

 青年は吹き出して、そのまま咽せた。

 

「げっほげっほ!」

 

「ど、どしたの? ……ま、まさか、付き合って……ないの? 私たち……」

 

「げほっ! 誤解を招く言い方はやめろ! 付き合ってるから! ……でもお前、なんだよこれ……」

 

「どれ?」

 

「何この体勢、なんで俺たちバンザイしてんの?」

 

「ち、ちがうよ! イェーイって博士に見せてるの!」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

「何ってなにさ!」

 

 プンスカと頬を膨らませるリンと青年のやり取りを、老人は優しく見守っていた。

 

 

 ──────

 

 

「待っていたぞお! 息子よ!」

 

 圧倒的圧。

 扉を開けた瞬間からシニカルな笑顔が飛び出してきた。

 そうそう、これこれ。

 こんな感じだった。

 

「お父さん! 恥ずかしいからやめてよ!」

 

「何を言うんだリン! お前の旦那さんなんだから、俺の息子だ!」

 

「ま、まだ気が早いよ!」

 

「早く無い! ポケモントレーナーくんは23、もう直ぐ24だろう? 少し遅いくらいだ!」

 

 ちょっと? ショックなんですけど。

 確かに結婚はできるけど、遅いかと言われると全然そんなことないと思う。

 むしろこの年齢で結婚してたら早い方だろ。

 行き遅れじゃないやい! 

 こっちの世界の話は知らん! 

 

「もーうるさい! あっち行って!」

 

「あっ、ちょ、押すなリン! ……ポケモントレーナーくん、あとでゆっくり話そうな!」

 

 怪異を追っ払って家の中に入ると、意外な事に他にはユカリと、お母様しかいなかった。

 あいつらはどこ行ったんだ? 

 

「ポケモントレーナーさん、お久しぶりです」

 

 これはご丁寧に。

 すいません、久しぶりなのに挨拶が遅れて。

 

「いいのよ、話は聞いてるから……それにしても、ますます男前になったわね……ねえ? リン」

 

「別に変わらないんじゃない?」

 

 ショック! 

 なんでそんな興味なさそうなの!? 

 せめてなんか褒めるとか! 

 

「照れちゃってるのよ、リンはツンデレだから。……それとも、前からこれくらいかっこよかったとか〜!?」

 

「うるさい!」

 

 リン……

 

「や、やめて! ……もうー! なんなのみんなして! そんなに私のことをいじめるのが楽しいの!?」

 

 o(`ω´ )oな感じで怒っているリンを膝の上に座らせて大人しくさせた。

 ……お母様がいるのにやってしまったが、仕方あるめえ。

 話が進まないからな。

 

「お母さんが見てるんだからやめてよぅ……」

 

 顔真っ赤で草。

 いい子いい子。

 

「み、みみもとでしゃべるなあ……!」

 

 フニャフニャになってるリンは放っておいて……ユカリ、こっち来てくれるか? 

 

「はーい」

 

 お母様に大事な話があります。

 

「そんな畏まらなくても……」

 

 俺は今、パーティーの仲間たちと付き合っています。

 全員ではないのですが、ほぼ全員です。

 勿論、それが倫理的に褒められたことでは無いのは承知の上ですが……

 改めて、ユカリとリンを俺にください! 

 

「うん? 今更? ……いいわよ〜」

 

 …………そんなあっさり? 

 

「だって、前に来た時からそうだったじゃない」

 

 え? 

 前回? 

 ……前回に来た時はどうでしたっけ。

 

「その時はノコさんとブルーさんはいなかったけど、実はあの時から6人とは付き合ってたでしょ?」

 

 違います。

 

「ええ!? あんなにベタベタしてたのに!?」

 

 いやいや! あの時は本当にみんなただの仲間でしたよ! 

 

「…………リン、どうなの?」

 

「うーん……分かんない」

 

 当人がそうだって言ってるのに!? 

 

「ユカリたちから聞いてても分かるんだけど……君の感覚って側から見ててあんまりアテにならないのよね……」

 

 おかあさま!? 

 

「あんなにベタベタしてて付き合ってないは無理があると自分で思わない?」

 

 仲間とコミュニケーションを取るのは必須だと思うんですけど。

 ポケモントレーナーってそういうもんだし。

 

「あーもう、何言ってるのか私にはよく分からないわ……そもそも、付き合ってないなら女の子を誑し込んでるってだけの話になるわね」

 

 ちょっと待ってください。

 俺は仲間に対してそういうタラシ的なコミュニケーションを取ったことはありません。

 そもそも、着いてきてくれた子を放って、話もしないなんてのはあり得ないでしょう? 

 コミュニケーションを取ることで円滑な旅がですね……

 

「あなたがどう思ってるかっていうのは、この場合関係ないのよ」

 

 うぉーん……

 

「モンスターには詳しくても、思春期の女の子たちへの理解は足りないみたいね」

 

 それは自覚してます。

 だからこそコミュニケーションを取ってるんですよ。

 でも、何だかんだこのスタイルで今までやってこれたんで、今更変えられないというか……コミュニケーションを取らないというわけにもいかないし。

 

「……あんまり増やしすぎちゃダメよ?」

 

 いやっ! あー……はい。

 増やすつもりは無いです、元から、ハイ。

 

「お母さん」

 

「なあに?」

 

「────―」

 

「…………ああ〜」

 

 え、なに? 

 なんでユカリはコソコソ耳打ちしてるの? 

 なんでお母様も頷いてらっしゃる? 

 なんでか分かるか? リン

 

「お、おしえない」

 

 ふぅ〜〜

 

「ひぅっ」

 

 おせーてよー

 

「や、やだっ」

 

 教えてくれないうちに2人の話が終わってしまった。

 けちっ! 

 

 

 ──────

 

 

 親父さんと地元の温泉に入ってます。

 レッドが一緒に入ろうと誘ってくれたけど、先約がいるからしょうがない。

 プクッーてほっぺ膨らませてて可愛かったので、後で相手してあげると約束した。

 

 岩を削り出して作られた巨大な湯船から山を見上げると、親父さんが隣に腰を下ろした。

 

「ムキムキだなあ……」

 

 自分のお腹を見下ろして少しだけションボリしている。

 年相応なので俺は全くなんも思わないし、運動すればいいと思うんですけど。

 

「今からとなると……夜の運動会だな」

 

 うん、オッサンだわ。

 この世界って結婚とか早いから、言うほど歳もいってないはずなのにオッサンだ。

 ところで話って? 

 

「うん……君がいなくなったって聞いた時、リンはとても取り乱したよ」

 

 そうですか、リンが……ユカリは? 

 

「ユカリも不安そうではあったけど、信じてると言っていた」

 

 あー……あの子はなんというか──

 

「そうだな、ちょっと盲目的過ぎるところはある……でも仕方ないだろう? 地獄から助けてくれたんだから、それくらい当たり前だよ」

 

 ……俺がユカリとリンと付き合ってる事については、その、許して下さるんですか? 

 

「俺も、少しだけ複雑な気持ちはある。なにせ娘だ。でもさ、君が責任を取ってくれるんならそれ以上って無いんじゃないかな」

 

 そう、なのかなあ……

 

「逆に、どんな男なら託せると思う?」

 

 俺からは何とも言えるもんでも……無いっすね。

 

「そうだろう? 君以上の条件って出てこないだろう?」

 

 そんなつもりでは言ってないですけど……

 

「好き合ってて、甲斐性もある。どうやって反対するんだ?」

 

 甲斐性……甲斐性はちょっと保証があんまり……

 

「なーに言ってんだ! 十分稼いでるんだろ?」

 

 まあそうですけど、就職がちょっと……

 普通の職じゃあ養えないっすよねえ。

 

「……君は就職する必要あるのか?」

 

 はい? 

 必要が無いとかあるんですか? 

 

「仕事とかそんなことより、子供を作るために君は家にいた方が……」

 

 …………え

 

「実際どうなんだ、そこら辺は」

 

 いや、まだ旅の途中なんで考えてないですけど。

 

「勿論それは分かってる、旅の後の話だ。今はアイリちゃんとかは子供だけど……そのうち、なあ?」

 

 セクハラやめてください! 

 

「孫の顔が見たいの! 早く孫見せてくれよ! 今だってしっぽりやってるんだろ! この幸せ者め!」

 

 あーあー! 聞こえなーい! 何も聞こえなーい! 

 

「──真面目な話、そこら辺はちゃんとしないと女の子達に対して不平等になっちゃうからな」

 

 くそっ! 本当に真面目な話だ! 

 でも俺も、そこら辺は色々考えてるんですよ! 

 

「じゃあ……例えばだけど、下の2人はともかく、レッドちゃんの事はどうなんだ?」

 

 まだ早い! 

 レッドにはまだ早い! 

 

「……もう16なのに? 全然早くないだろ」

 

 ええ……? 

 

「ポケモントレーナーくん、あんまり子供扱いするのはやめてあげなさい。ちゃんと1人の女性として見てあげるんだ」

 

 え、でも──

 

「これは、君たちに幸せになってほしいと願う男の頼みでもある、聞いてくれないか?」

 

 ……は、はい。

 肝に銘じておきます。

 でも……まだ年齢が……

 

「年齢はともかく、ホシノちゃんには手を出してるんだろう? それで、体格がホシノちゃんより少し大きいレッドちゃんに手を出さないのは逆にいかがなものかと思うぞ」

 

 うぐぐ……

 

「そんな風に扱われたら、自分に何か問題があるんじゃないかと思ってしまうはずだ」

 

 ……あっ。

 

「思い当たる節はあるみたいだな」

 

 そうか……だから結婚がどうとか……

 

「お節介ですまない。だけど理解してくれたようで安心したよ! そもそも16と23ならおかしく無いしな!」

 

 ありがとうございます。

 ……俺は先に失礼します! 

 

「おう! フハハ!」

 

 

 ──────

 

 

「トーヘンボク」

 

「はい……」

 

「にぶちん」

 

「仰る通りです……」

 

「ロリコン」

 

「ま、まあそれは……」

 

「浮気性」

 

「ぬぐっ……」

 

 何でこれまで手を出さなかったのか、きちんと説明をした。

 結果、レッドの尻の下で椅子になっていた。

 レッドは最初、そんな事で、と愕然としていた。

 我を取り戻すと、椅子になるように要求された。

 こんなのは初めてだ。

 完全におこです。

 今もバシバシと頭を叩かれている。

 

「私、何も悪くない」

 

「俺が悪かったです」

 

「何で言ってくれなかったの」

 

「……常識過ぎて、言うって発想が無かった」

 

「そもそも、ホシノだって17だよ」

 

「ホシノは良いかなって……」

 

「むぅぅぅ!」

 

「ごめん」

 

「ばかばかばか、ばーか」

 

「本当にごめん」

 

「はぁ…………」

 

 あぁ、レッドにため息をつかれてしまった……心が削れる……

 背中の柔らかい感触と体躯相当の重みがなくなり、トサッと布団に身体を載せる音がした。

 失望させちゃったな……

 

「こっちきて」

 

 ポンポンと横を叩くので、椅子の状態から立ち上がって隣に腰を下ろした。

 一体どんな罰が──

 

「──んっ、ちゅっ」

 

 何かを言う暇も無く襟を掴まれて、唇を奪われた。あまりの男らしさに反応をする気が起きなかった。

 隣から膝の上に移って、一生懸命吸い付いてくる。

 小さな身体を抱き締めると、同じようにしがみついてきた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 暫く続いた後に離れたら、興奮のせいか顔が紅潮し、息も上がっている。

 寝巻きも少し乱れているので、落ち着かせようと声をかけた。

 

「レッド、ちょっと落ち着いた方が──」

 

 今度は言葉の途中で唇を塞がれ、そのまま布団に押し倒された。逃げることは許さないと脚が絡まり、両頬には手が添えてある。

 余計な話をさせる気はないらしい。

 先ほどよりも長い口付け、拙く舌を伸ばすレッドに付き合っていると、観念したと見たのか顔面が解放された。

 そして俺の腹に跨ると、乱れた寝巻きを直すどころか脱ぎ出した。

 

「──もう、逃さない」

 

 

 ──────

 

 

 お兄さんの身体は、とても熱かった。

 

「うぅ……けだもの……」

 

 か細く、自分とは思えない声が漏れた。

 お兄さんはケダモノだ。

 鬼畜だ。

 ロリコンだ。

 それに、わたしが初めてなのに、お兄さんが初めてじゃないのは不公平だ。

 

 冷静でいられるはずがなかった。

 たかが年齢だけで、お兄さんはわたしに手を出してくれなかったなんて、許せなかった。

 キスまでして、お風呂だってわたしが最初に入った。

 それなのに、歳が15だからっていう理由だけでわたしを除け者にしていたんだ。

 ──あんなに興奮していたくせに。

 

 思い返すだけで顔から火が出そうだった。

 あ、あんな恥ずかしい事を……何度もされて……何度も、何度も……

 今も体が火照っている。

 すごく熱い。

 逃さないって強気でいったはずなのに、すぐにひっくり返されてしまった。

 ──でも、身体がふわふわしていた。

 少しだけヒリヒリしているけど、心がとっても軽い。

 これで、わたしも一人前の女だ。

 ……今なら、あの時の質問も。

 抱き締められた胸元から抜け出し、ん? という顔をしているお兄さんに顔を近付ける。

 

「どした?」

 

「…………うん」

 

「甘えん坊さんだな」

 

 いつもの100倍くらい優しい顔で、髪を撫でられた。

 それだけで、どうでも良くなってしまった。

 意識がぽやーって浮かんでいくような心地だった。

 幸せだなって気持ちが溢れてきて、首筋を眺めていると一つイタズラを思いついた。お兄さんがさっき、わたしの胸につけた痕を真似しよう。

 ──首を強く吸った。

 

「あ、こら」

 

 途中で気付いたお兄さんは、でも強くは止めずに背中に優しく手を添えてくれた。

 チュパッて音が鳴り、首を見ると一つ痕が残っている。

 ゾクゾクって背筋を上るものがあった。

 

「これ、なんて誤魔化せば……」

 

「ふふ、そのまま言えば良い」

 

「……はは」

 

 わたしのことを放っておいたのが悪い。

 

 

 ──────

 

 

 壁が薄い宿だったらしい。

 \(^o^)/オワタ

 2人でゆっくり歩いてきたところ、なんかホシノ達が気まずそうな、恥ずかしそうな顔をしていた。

 何だと思って聞いてみたらそんな答えが返ってきた。

 ホシノとナギとアイリ、ノコとブルー、俺とレッドの部屋だったんだけど、両脇の部屋に音が漏れとったんや。

 もう終わりだねこのパーティー。

 

 食堂に来た時、他の7人はもう席に着いていた。

 こいつら、ウマぴょいしたんだ……って目線にはさしものレッドも耐えられなかったようだ。その名に恥じぬ赤さになってしまっている。

 ジャンケンで席順を決めたらしく、俺はノコとアイリの間に座った。ラック高そうな2人だな……

 レッドはブルーとホシノの間に座った。

 

 ノコがすごい目で見てくるので、その目線が何なのかと探ってみると、首を見ていた。

 あっ……

 いまさら弁明の余地とかないので、気にせず朝飯を食べようと試みた。

 両側から、つぶさんばかりに脚を踏みつけられた。

 俺にどうしろと。

 ……いや、わかってるけどさ、待ってくれよ。朝飯なんだよ今。

 朝飯食わせてくれよ。

 というか、アイリまで……

 

 いつもと違って、モジモジした朝飯だった。

 時折、レッドがポーッと見てくるのはまだ良い。

 良いんだけど……その様子を見たホシノ達がジトーッと見てくるし、またその様子を見た他の客が、あらあらまあまあろりこんねえ、と見てくる。

 勘弁してくれさい。

 マサゴタウンはすごい観光地ってわけじゃない。

 客もそんないない。

 だから基本は民泊みたいな感じだ。

 俺たちが泊まったのは結構でかいところで、旅館と呼んでも良いところだけど。

 んで、都合の悪いことに俺たちは名前と顔が知られている。

 そう、俺の悪評が轟いているんだ。

 みんなが俺の事をロリコンとかゴキブリとか言うから……

 ロリコンに関しては、今となっては何も間違ってないけど。

 

 朝飯後、それぞれが一旦自分の部屋に戻った。

 レッドの歯を磨き終えると、ふらふらと布団に突っ伏した。

 大丈夫かー

 ……もうお嫁に行けない? 

 …………

 な、何だよ。

 あの時、誤魔化した理由? 

 いや、誤魔化したわけじゃなくて、本当に年齢の問題だって思ってたから。

 ……今? ……う、うるへー! くらえ! のしかかり! 

 うりうり! ここ擽られるの弱いだろ! 

 しばらく旅するっつってんのに結婚とか早えんだよ! そもそも、結婚してから旅したら新婚旅行になっちまうだろうが! 

 俺はそういうのじゃなくて、普通に旅がしたいの! 

 良いだろ! 形に拘らなくて! 

 大体だな……いつも言ってるだろ? ずっと一緒って。

 …………だから、な? 

 

「……うんっ」

 

 

 ──────

 

 

 じゃれ合いは返事を皮切りに形を変え、青年の胡座の上で少女がメガネを装着して何かを始めた。

 

「──記録の整理?」

 

「うん、写真とか」

 

「そういうやつね」

 

 黙々と整理を進める。

 しかし、自分の脚の上で忙しなく手を動かす少女の頭を見て、我慢できないのがこの男だった。

 後頭部に鼻を突っ込むと、スンスンと匂いを嗅ぐ。

 

「わっ、わっ、なに」

 

「良い香りだ……あたっ」

 

「やめて」

 

 レッドはペシッと後ろ手に頭をはたき、変態を撃退した。

 

「邪魔」

 

「やれやれ……」

 

 反抗期だぜ……みたいなノリで肩をすくめるが、レッドは無反応。

 真面目に整理しているのだから邪魔しないでほしい、そんな空気がアホ毛から出ている。

 しかし、そんなアホ毛に待ったをかけるのが青年の内心だった。

 暇なのだ。

 胡座の上に少女が乗っている状態で、それを無理やり退かすなんてのは基本しない。

 しかし、少女は構ってくれない。

 つまり、やれる事がない。

 タブレットもアイリに預けてあるし、青年は手持ち無沙汰極まっていた。

 しょうがないので、適当に買っていたボールを壁にぶつけて遊ぶ。

 気分は古典映画のエージェント。反射に反射を重ねて手元に戻ってくるボールを、いろいろな角度で窓枠や扉に当てる。

 当然、バインバインと音がするわけで……

 パシッと、小さな手に掴み取られた。

 

「うるさい」

 

 今度こそ何もなくなった青年。

 そう、彼には何もない。

 本も動画も、何もできない。

 娯楽が消えた。

 青年は塵と消えそうになっていた。

 

「……手はこう」

 

「レ、レッド!」

 

 少女が、青年の腕を引っ張って自分の胴体に回させた。

 嬉々として抱きしめる青年は、漂ってくる少女の匂いを嗅いで暇を潰していた。

 ちなみにリザードンは部屋にはいない。

 鼻が良いのだ。

 昨晩からずっと、ブルー達の部屋にいた。

 

 

 ──────

 

 

 海の奥底、まどろんでいる者がいた。

 一年前に届いた大海の心臓の鼓動に今更反応して、薄く目を開けたのだ。

 いや、目を開けるか開けないか、その程度。

 その程度の事象の影響が、海を広がっていく。

 尖った黒岩が降り注いだ。

 海底が隆起し、新たな陸地が生まれた。

 呼応する者がいた。

 

 アローハ地方と呼ばれる群島地帯。

 カプを冠する神、そしてとある一柱が太古から護ってきた地域。

 島めぐり。

 アトラス地方であれば旅と呼称される試練を乗り越えて、若き人間が神に謁見する。

 それがアローハだ。

 

「──嫌な予感がしますね」

 

 そんな群島地帯の最高峰、ラナブル山の頂上にある大試練場の入り口で、女がつぶやいた。

 空は快晴、気持ちいいくらいに澄み渡っている。

 どこにも異常なんて無い。

 傍の相棒が何のことやらと首を傾げている。

 女自身も、実際には何も感じ取れない。

 それなのに、背筋が凍るような悪寒が治らなかった。

R18って要りますか?

  • いる
  • ポケモンは全年齢対象なのでいらない
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