俺はポケモントレーナー   作:goldMg

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6_ただようこじま(人物紹介あり)

 ポケモン

 その単語は、とある街で使われ始めたという。

 それは古参のジムリーダー、不動のテッセンが治める街、でんきタイプのフルオカタウン。

 そのちょうど良い語感の単語の元祖を主張する者はソーマ上にたくさんいた。インフルエンサー、八百屋、プレイヤー、一般人、ヤニカス。

 何故かは分からない、何故か多くの人が主張した。

 

 ―多分最初はチャンピオンとかだろ―

 

 ―レッドかもよ? ―

 

 ―四天王に負けたあの? ―

 

 ―じゃあお前バッジ全部集められんのかよ―

 

 ―ポケモンってのはポケットモンスターの省略だから。そんなことも知らないの? ―

 

 ―出た、ヤニカス垢―

 

 ―そもそもポケットモンスターってなんだよ―

 

 ―私が最初にポケモンって言いました。根拠はこれです―

 

 ―はいはいスパムスパム―

 

 ただ、ある一つのライブが拡散された。

 それは、マタナキタウンでのライブ動画だった。

 ジムリーダーでも指折りの猛者、カムイ。彼がある青年と戦っていた。

 もっと言えば、二つ名持ちのドダイトスと金冠パックンフラワーキングが戦っていた。

 

 ―二つ名持ちのドダイトスって100年ぐらい倒されてないって噂あったけど―

 

 ―どうせ額に刺青入れただけだろ―

 

 ―はあ……はあ……ドダイトスきゅん……―

 

 ―やべーぞ、ケモキチだ! ―

 

 ―パックンフラワーいつ見てもこえーよ―

 

 ―群生地帯でトラウマになりました―

 

 ―マタナキのナバルデウスまた観に行きてえなあ―

 

 ―あいつもこえーよ―

 

 ―あそこの植物園、珍しいモンスターがいるから今度行ってみようかな―

 

 ―あそこで木の根踏んだやついいねで教えて──

 

 ―いまだにカムイが木を操る方法よく分からん―

 

 ライブコメントも最初は関係の無い事を好き勝手話していたが、戦闘が始まるとその激しさに目を奪われる。

 最初は青年がピンク髪の少女に指示を出し、少女が更にドダイトスに指示を出すという極めて非効率な戦い方。それでも二つ名持ち故のスペックでカムイに喰らいつく。

 そして、少女が青年にバトンタッチをした。

 

『もう、実力は十分見せた気がするんだけどなあ……』

 

『まだだ……もう少しだけ付き合ってもらうぞ! ポケモントレーナー!』

 

『ホシノ、もう少しだけ後ろに下がってな。……ドダイドス、くさむすび程度で倒れるなら二つ名なんかもらってねえだろ?』

 

 その声に、目を閉じて伏せていたドダイトスはムクリと起き上がる。

 通常のドダイトスよりも遥かに濃い体色を堂々と見せつけ、何の指示も無しにその場で高速スピンを始める。

 

『速度は全てを制する……よく理解しているやつだ』

 

『ならば我は、敢えて受けよう! パックン、ハードプラント!』

 

 同じくさタイプ、同程度の体格、同程度の技量、そんな両者が戦えば当然、その周囲は嵐が通り過ぎたかのような惨状になる。

 激しい衝突は衝撃を撒き散らす。四天王レベルの戦いなど一般プレイヤーからすれば早々拝めるものでもなく、その場に居合わせた人々も、ライブ映像からの人も食い入るように見ていた。

 

 あいつ結局小手調べどころじゃ済まさなかったな。二つ名持ちのドダイドスがそんなに気になるかよ。ジムリーダーなんだからさっさと捕まえとけばいいだろ。

 あの後、人混みでホシノもレッドもアイリももみくちゃにされそうだったので緊急離脱し、その後3人に叱られた。

 わあ……あ……ってちいかわみたいな流れで許してくれるかと思ったが余計にブチギレさせただけだったわ。

 なんかソーマが騒がしいらしいけどそれは間違いなく俺のせいじゃない。

 とりあえずカムイにはレッドを通じて厳重に抗議をし、今日も今日とて2人と特訓。

 

 なんか外野がうるさい気がするが、bgm代わりにさせてもらおう。え? なんか答えた方が良いんじゃって……お前らカムイに勝つ気あるのか? 集中しろ。

 シンプルに強いぞ、あいつ。

 パックンフラワーキングを見たら分かる通り、ドダイドスがいなきゃとても太刀打ちできん。

 アイリは今回でのバッジ入手は諦めろ。

 理論だけ積んでもアレだし、そろそろ実地でやるか! 

 おら、どけ! 生垣みたいに集まってんじゃねえ! 

 2人とも、自分に適正な試練より少し上を選べよ。あと、ドダイドスはお留守番な。

 なんでショック受けてんだよ当たり前だろ、地力を高めるための実地だよ。

 

 そういうわけでおつきみやま方面での試練を経た2人はだいぶステップアップした。

 俺の指示に対するレスポンスがかなり早くなり、持久力も上がった。

 やはりドダイドス狩りは至高……! 

 余談だが、ピッピの動画付きでおつきみやまの事を報告したレッドには勲章が授与された。

 またレッドの伝説が増えてしまったな……

 今はホシノとヒーホー君に組み手をさせている。別に武道的な話じゃない。相手の攻撃が来た時に反射で引き出せるわざを増やしているだけだ。

 レッド、勲章と一緒に報酬とかもらったのか? 

 ……へー、結構貰ったな。寄付は送ったのか? そうかそうか……リザードンも少し体が鈍っているみたいだし、ドダイドスと一戦やるか? 

 おーい、ドダイドスー、出番だぞー! 

 ノシノシと歩いてくるドダイドスは気怠げだが、それは余裕故だろう。リザードンは気炎万丈、文字通り炎を吐いている。

 とりあえずドダイドスはどんな時でも高速スピン、はっぱカッター、ハードプラントのサイクルを崩さずに攻撃を凌ぐ練習だな。

 いやいや、レッドを舐めてるわけじゃないぞ。カムイはこっちの手を狭めるのが得意みたいだからさ、敢えて狭めた状態で対処する訓練だよ。

 そもそもこれは特訓なんだから、テーマを決めないと意味が無いだろ。

 じゃあお互いに向かい合ったところで……

 

「リザードン、かえんほうしゃ」

 

「ドダイドス、こうそくスピンで炎を撒き散らせ!」

 

 

 ──────

 

 

 はぁ〜ん、もう、忙し忙し! 起きて、朝飯食って、追いかけられて、特訓して、追いかけられて、昼飯食って、追いかけられて、夕飯食って、寝る。

 訳のわからんストーカー達が多すぎて怖いからドダイドスになんとかしてもらったわ。

 ハードプラントで根こそぎ捕まえて警察に放り投げといた。

 静かになったが、ソーマはうるさいらしい。俺には関係無い話ですね……

 

「ねえお兄さん、おじさんも結構強くなったんじゃないかって思うんだけど……まだ挑めないかなあ?」

 

「師匠私も! 私も結構強くなったと思います!」

 

 確かに……でもアレだぞ? 挑む時を決めるのは俺の役目じゃ無いぞ? 挑戦ってのは、誰にも邪魔されず、自らの意思で始めるものでなきゃいけないんだ。

 

「つまり〜?」

 

 その時を決めるのはお前達自身って事だ。一年後でも、明日でも、今日でも良い。俺は待ち続けるだけだ。お前たちがその気になるのを。

 特にホシノに対して、俺はその義務がある。パートナーだからな。

 

「うへー……お兄さんだって私のトレーナーなんだから決めてくれてもいいじゃ〜ん」

 

 そしたら今行くぞ、俺はいつだって覚悟してる。いつやろうが変わらねえよ。

 

「おぉ〜」

 

 拍手してんじゃねえよ、それで、やるのかやらないのか。どうだ? 

 

「…………うん、分かったよ。私も覚悟を決める」

 

 なんとなく気づいたんだが……ホシノ、お前は以前、カムイと会った事があるな? 

 

「おそ……」

 

「ほんとにね〜、気付くの遅すぎるよ〜」

 

 言ってくれればもっと早く気づいたんだけど。

 まあそれは良い、挑む覚悟ができたら、あとはやるだけだ。

 ドダイドス、起きろ! 

 え……ドダイドスじゃなくてドダイトス? おいもっと早く言えよ、ずっと間違ってたじゃん! 

 ま、まあ良い……カムイとやりに行くぞ! 

 

「あ、ドスニキだ」

 

「ドスニキどこ行くのー?」

 

 ドスニキ……? 

 

「ドスニキは今からカムイさんと戦いに行くよ〜」

 

「師匠の活躍を皆さんちゃんと見ていて下さいね!」

 

 ドスニキ……? 

 

「ドスニキがんばれー!」

 

「ドダイトスも頑張れー!」

 

 なあ、ドスニキって……? 

 え……俺がドダイドスって言い間違えてる動画が無限に拡散してる? 

 ……汚名はここで挽回してやる! 

 神様からチートをもらった俺がジムリーダーに負けるわけがないんだよ!? 知らないの!? 

 ……スタジアムがそこにあるからグリーンスカイロッドに登っちゃったあ! 

 

「この瞬間を……心から楽しみにしていた!」

 

 好きな仕事ができて羨ましい限りですね! ぺっ! 

 こちとら就職もできねえのによ! 

 

「いや出来るだろう……」

 

「今ちょっと荒んでるからさ〜、放っといてあげて〜」

 

『うおおおお!!!』

 

『早く始めろーーー!!』

 

「挑戦者との戦いによってこのスタジアムがこれほどに埋まるなど……初めての事だ」

 

「うへー……お兄さん、すごい注目されてるよ〜」

 

 なんだ緊張してんのか、ドダイトス! を見習え。

 ドダイトス! をな。

 

『ドスニキーー!!』

 

 うるせえ!!!! 

 さっさと始めるぞ!! 

 ホシノ、準備はいいか! 

 

「うん! おじさんはいつでもいけるよ!」

 

「来い! パックン!」

 

 空高くからパックンフラワーキングが落ちてきてバトルは始まった。

 

 

 ──────

 

 

「見事……!」

 

 崩れ落ちるパックンフラワーキングを背に、ホシノが指を掲げる。

 長く苦しい戦いだった……

 バトル後、興奮冷めやらぬ観客とホシノを置いて、後ろのベンチに座って見ていたレッドの元にいく。

 隣に胡座で座る。

 

「どうだ、なんか掴めたか?」

 

「ん……まだ」

 

「そうか……どうだ、今のバトルを見てなんか感じた事はないか?」

 

「……分かんない」

 

「目立っただろ」

 

「それは、うん」

 

「どれだけ目立てばいいか分からないけど、こうやって衆目を集め続ければ、いつかピカチュウの所にも届くんじゃないか?」

 

「あ……」

 

 バッ、とこちらを見るレッドの頭を撫でる。

 

「ピカチュウ探しを俺が忘れてるとでも思ったか?」

 

「……ちょっとだけ」

 

 ヒョイとレッドを持ち上げて胡座の間に座らせる。

 

「目立つのはお前らにとってストレスも大きいだろうから、もし嫌ならこういうやり方は今後しないけど、どうする?」

 

「決めていいの?」

 

「ああ、これはお前の旅だからな」

 

「…………2人とも話したい」

 

「じゃあ、宿に戻ったらみんなで話そうか」

 

「うん」

 

「今日は美味しい物食べような」

 

「うん」

 

「あーー! 師匠、何してるんですか!」

 

 アイリがシュバッてきてやかましく騒ぎ始めたのでレッドが胡座の上から退いてしまった。

 カムイとホシノもやってきた。

 

「見事にしてやられた……さあ、スタジアムの中心に来てくれ、このバッジを授けなくては!」

 

 2人に着いていく。

 ベンチから抜けると音の塊が全方位から叩きつけられた。

 

『うおおおおおおおおおお!!!!』

 

『凄かったぞおおおおおお!!!』

 

『ホシノーーー!! 結婚してくれーーー!!』

 

 誰だ今の、ぶっ飛ばすぞ! 

 

『ドスニキィィィィ!! 結婚してくれーーー!!』

 

「ははは! 胸踊る一時だった! さあ、ホシノ君! このバッジを受け取ってくれ!」

 

「おじさんだけの力じゃないんだけどな〜……」

 

 バッジをカムイからひったくり、ホシノの首元につける。なんかうだうだ言ってるので肩車してさらに目立つようにしてやった。

 

「ちょっと、下ろしてよ!」

 

 下を見るな! 観客を見ろ! 

 

『ホシノちゃーん!! こっち見てー!!』

 

「あ……」

 

 そうだ、主役はお前だ、胸を張れ! 

 

「……いぇーい!」

 

『うわああああああああ!!!』

 

 なあ、カムイさん。

 

「なんだい」

 

 今回はズルで勝ったからよ、次は正々堂々とやろうや。俺だって時間が許せばドダイトスなんて捕まえてこなかったぜ。

 

「二つ名持ちを捕まえておいてなんて贅沢な言い分だ……だが、承知! 再戦を楽しみにしておこう!」

 

 ああ、ポケモントレーナーってのは色々なポケモンを使うんだ。次は全く違う面子で挑むぜ、ホシノ次第だけど。

 

「ふふ、我が挑む側だろうに」

 

 けっ……就職出来ない俺に対する当てつけかあ? 

 

「君はなぜいきなり卑屈になるんだ……」

 

 

 ──────

 

 

 いやー! ボスもぶっ倒して文字通り、この街で1番強いのはホシノ、お前だ! 

 え、俺? 俺はどうでもいいからそういうの。次のジムが気になってるんだけど、どっか目星ついてんのか? 

 ……は? 取材? いや、興味無いんで……

 いや、興味無いから……築地市場は閉場しています! 

 おいおい、お祭り騒ぎだな、ジムリーダーなんだから負ける事だってあるだろうよ。毎回こんなんなのかあ? 

 おっ、アレ出店じゃん! ……なんだこの仮面……これホシノじゃね? もう作ったの? すご

 そういやジムに行けばなんかもらえたりしねえのか? 

 

 うわ、すげえ人、なんでこんなにジムに人がいんの? え? みんなドダイトス捕まえるために試練を探してる? 

 そうなんだ……

 いや、俺関係無いから。

 あれ、受付の姉ちゃんどうした? へ? 俺のせいでこんな事になってる? 人のせいにするのは良く無いよ(笑)

 ジムリーダーをドダイトスで倒したから? 

 いや、二つ名持ちでも捕まえるならともかく普通のじゃ大して意味無いでしょ。

 うん……うん……いや、だから俺関係無いでしょ。

 あ、なに? サイン? ホシノ、サインだって! 

 あれ、なんかさっきの取材のやつらまた来てね? 

 おいまだ追いかけてきてんのかよ……一言? ホシノ、なんか言ってやれ! 

 受付の姉ちゃんがキレて本日の営業を終了させたので強制的に追い出され、ジム前の路地が人でごった返す。

 おい、どんだけ来てんだ! 

 ああ!? そんなん言われてもドダイトスなんか鈍いんだから捕まえるのにコツとかいらねえよ! 

 ……あぁ……ホシノも握手会みたいなの開かれちゃってる……

 警察まで来た! もうぐちゃぐちゃだあ! 

 ……誰だよ馴れ馴れしいな。

 ……ああ、ヤニカスじゃん。近寄らないでもらっていい? 子供達に副流煙かけたらお前2度と人前に立てないようにするからな。

 ほら、3人とも、一旦宿に帰るぞ。

 

 着いてくる奴らを撒いてから宿に戻り風呂に入ってサッパリする。

 

「いやーお祭り騒ぎだったね〜、おじさんも結構楽しかったよ〜」

 

「師匠、私もアレくらい人を集められるようになりたいです!」

 

 俺に聞かれても無理でしょ……二つ名ブーストありきでしょアレ。

 そこら辺レッドはどうなんだ、お前ならこれまで全部のジム回ってきてんだからある程度わかるんじゃないか? 

 

「わかんない」

 

 そっか……しょうがないな、アイリ、諦めろ! 

 

「……師匠ってレッドさんに甘くないですか? 今だってレッドさんだけ背中にもたれかかってるし」

 

 だって目に入れても痛くないもん。

 こんなに甘えてくる子を邪険にするとか人間的に終わってるだろ。

 

「私も乗っかります!」

 

 どうぞ

 

「わーい!」

 

 ぐぇぇ! 

 俺は死んだ。

 寝転がっているとちょんちょんと右腕を突かれる。

 なんだ? 

 

「今日、おじさんは結構頑張ったんだけどな〜……チラッ」

 

 よーしよしよし!! 偉いぞー!! これからも頑張ろうな! 

 30分ぐらい抱きしめて撫でくりまわしてたらゆでだこになって気絶したので解放した。

 

「変態」

 

 ホシノがやってくれって頼んできました、嫌なら振り解けばええんや! 

 さーて、飯の準備すっか! 今日は豪華にな! 

 

 ホシノが起きるまでにケーキやら何やら手配を終え、また居場所を嗅ぎつけたリポーターどもを蹴散らし、アイリのタブレットでソーマのあーだこーだを見て俺がダメージを受け、楽しい夜を過ごした。

 

 次の日、アイリはカムイに挑まなくていいのか聞いてみると、やっぱりちょっと早いと感じたので今回は見送るそうだ。

 まあ俺はどっちでもいい、好きなようにやりな。

 それで……そろそろ次の街へ行くわけだが、なんか目星ある? 

 ……コトリタウンってとこに行くのか、じゃあその前にやり残したことをやらなきゃな。

 え? そんなの決まってるだろ。

 グリーンスカイロッドに登るんだよ! スタジアムもそこまで高階層にあるわけじゃなかったし、ちゃんと展望台に行こうぜ! 

 

 

 ──────

 

 

 うおー、くっそ高え〜

 

「私は何度も登ったことあるけど師匠は初めてなんですか?」

 

 流れるようなマウント、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。そもそも俺はマタナキに来たの自体が初めてだからな、そりゃあ初めてだよ。

 展望台に登るってのは……そこまで楽しいことじゃねえけど、特別な意味はある。

 スカイツリーとかの事を強く想起させてくれるからな。

 …………あれは、ムーミン!? 何故ムーミンがこんなところに、世界観が違いすぎないか!? 

 おーいそこのプレイヤーさーん! ちょっとムーミン触らせてくれよー! 

 え? 確かに俺はポケモントレーナーだけど……握手? まあムーミン触らせてくれるなら……

 

「ふふっ……変な人ですね」

 

「うへー、いっつも振り回されてばっかしだよ〜」

 

「そこがいい」

 

「レッドちゃん、趣味悪くない〜?」

 

「楽しいから」

 

「……それもそっか〜!」

 

 結局、スカイロッドでは何も変なことは起きなかった。これで良い、と思う。余計な心配、それで処理される事が誰にとっても1番良い。

 ホシノ、俺、レッドの旅には新しくアイリが加わり、4人旅だ。なんか修学旅行の引率にでもなった気分だよ。

 ピカチュウの捜索、グズマの捜索、なんか、探してばっかな気がするけど悪くねえ。

 

 

 ──────

 

 

「早いな、もう行くのか」

 

 カムイがお見送りに来ていた。vip待遇で非常に心地が良い。どうせならいつも最初からこれくらいの対応であってほしい。

 

「それで……あのドダイトスは本当に?」

 

 そう、二つ名持ちのドダイトスは野に解き放った。そもそもアイツとはそういう約束だったしな。出会い頭、戦う直前のアイツの目、森の奥で主として退屈しているのが分かったし、たまには外に出てみようぜーって説得しただけだ。別に俺の手持ちでもなんでも無い、友人みたいなもんだ。

 ちゃんと報酬も支払ったぞ、森だとあんまり手に入らない飯とか。

 大体、森の主がいなくなったら生態系が大混乱だろ。

 

「その感性はよく分からないが……君は知らないのか?」

 

 何を? 

 

「ドダイトスの需要が異常に高くなっている。我もソーマは見ているが、ここまで人気になったのは久しぶりだぞ」

 

 そんな事もあるだろ、一過性のブームに一々反応してたらキリないし。そもそも、こちとらソーマなんか使えねえんだから関係無いぞ。

 さて、お暇するよ。ひりついた良いバトルだった、あんたもやっぱりポケモントレーナーだ。

 

「……結局、ポケモントレーナーというのはなんなんだ?」

 

 分かり辛いことを言うことになるが……俺にとっては憧れだった。

 

「?」

 

 伝わるとは思ってないけどな。

 

「君は、ポケモントレーナーなんだろう?」

 

 まあそうだけど、ひとつ、致命的に足りない部分があるからな。

 さて、そろそろ行くよ。3人とも、準備は良いな? 

 

「さらばだ!」

 

 前よりも重くなったリュックを背負い、街を出る。

 4人分の荷物だからな。

 

「や、やっぱり師匠に荷物を持たせるのは……」

 

 いや、アイリは旅の初心者なんだからそんな甘えた事言ってる場合じゃないでしょ、旅に慣れなきゃ。

 え? 俺よりはできる? どういうこと? 旅の基礎訓練? あー……前にホシノが言ってたやつか。じゃあそれは野宿の時に存分に活用してくれ。

 こういう荷物は俺が持つのが一番効率いいから。

 なんせ力が有り余ってるし。

 戦うわけでもないしな。

 ……ちょくちょく戦ってるって? それはそれ、これはこれだ。お前らにはバトルで常に最高の状態でいてもらわにゃならんからな、こんな些事で疲れさせるのは意味が無い。

 ほら、あの2人を見てみろ。俺の事なんか無視して普通に話してる、お前もそのうち慣れるから気にすんな。

 暫くは舗装された道を歩けるようだし、スイスイ進めるだろ。俺は全く道を知らないから案内は2人に任せて景色でも楽しみながら行くぞ。

 

 横を通り過ぎるチャリを見て、グヌヌと腹立たしいものを感じる。

 コトリタウンまでずっと舗装されてるなんて知らなかった……! 

 なんでお前ら教えてくれないんだよ! 

 マタナキで自転車買ってくればよかったじゃん! 

 え? 旅の初めはそんなの買わない? アイリのことか? ……そんな慣習どうでも良いだろ! 必要の無い苦労とかする必要無いぞ! 

 うわー自転車がほしいー! 

 ……途中で色んなところに寄りたい? うーん、じゃあしょうがないか……

 いや、騙されないぞ!? 自転車乗ってても寄れるだろ!? 

 そこら辺に置いといて探しに行けば良いだろ! 

 盗まれる? そんな駅前じゃ無いんだから……あ、モンスターにね……

 光り物を集めるドラゴンかな? 

 普通に餌として? ええ……まあドガースみたいなやつなら食える、のか? 

 お、おお、なんでいきなり興奮してんだレッド、ドガースがどうした……え……数十年前に絶滅した!? どういうこと!? 

 見た事あるのかって? ほら、俺は記憶喪失だからそういうこともあるんだよ。

 というか絶滅についてもう少し詳しく……環境が浄化されすぎて、適応できずに? おお、シンプル……まさしく水清ければ魚住まず、だな。

 ん? 綺麗すぎる川には魚が住めないって意味だよ。

 ドガースも人類がある程度の環境汚染を行うからこそ、ゴミとか大気の状態とかで生きていられたんだろうな。まさに、共生関係だったわけだ。

 ……ってーことは、他にも絶滅しているポケモンとかいるのか、悲しいなあ。

 ポケモン図鑑全種類登録の夢は絶たれてしまったようだ。

 ええい、質問には答えただろ! なんでまだ引っ付いてんだ! ええ? ドガースの面白い話? なんかあったっけ……ロケット団の団員はよく持っていたと思うけど、それくらいだな。

 ていうかアレだ、でかい荷物持ってアスファルト歩いてるだけだと全然旅してる感じがしねえ! 

 この道沿いには何があんのよ? 

 そろそろ牧場がある? 

 へー、牧場か……なんの牧場? 

 ……ミノタウロス? どういうこと? 迷宮牧場みたいな? え、牛肉とキノコ生産? やってる事ヤバいでしょ。

 

 牧場の主はスティーブと言うらしい。挨拶して牧場の見学をさせてもらう。牧場の名前は黄昏牧場だった、無駄にカッコいいな。そして牧場の工場はやっぱり迷宮みたいだった。

 背中からキノコが生えた赤い牛を育てていて、危ないから出て来れないようにしているらしい。

 そんなモンスターでよくもまあ採算を取れると踏んだな。

 やたら四角い顔をした牧場主の説明を受けながらミノタウロスの元に辿り着く。

 すげえ絵面だ、牛の背中にキノコが本当に生えてる…………

 毛皮とか使えないの? 

 殺す時に暴れすぎて傷が付くから出来ない? スティーブさん、あんたクレイジーだねえ! 

 

 昼飯にはミノタウロスの肉とキノコを堪能して、燻製肉を買い、牧場を後にした。

 はー……また違う感じの世界観だったな。いや、こっちの話。別に隠してねえよ、ほんとうほんとう。

 こういう感じでちょくちょく店とかあったりするのか? ここから先はほぼ何も無い? あーあ、落差がえぐい。

 廃墟がどこかにあるって噂はある? ふーん……前々から調べてたんだ? 

 でもその廃墟を見つけられたやつはいない? なるほど……面白くなってきたな……! 

 

 

 ──────

 

 

「目の色が変わったねえ〜」

 

「え? どういう事ですか?」

 

「んふふ〜、おじさんも良くは分からないんだけど、あの眼をしてる時は大抵何か面白いイベントが起きる時なんだよね〜」

 

「イベント……ですか?」

 

 アイリは誕生日やお祭りを想起した。

 ホシノはそれを否定して説明する。

 

「おつきみやまの動画を見せたでしょ〜? あの時もこんな感じに、脇目も振らずにそこに向かって行ったんだよね〜」

 

「そうだったんですか!?」

 

「お兄さん、早く行こう」

 

 レッドもワクワクした様子で青年の服を揺さぶっている。

 

「予知能力とか、でしょうか……」

 

「本人は残り滓とか言ってたよ〜」

 

「ええ……」

 

 

 ──────

 

 

 ポケモントレーナーは考え込みながらアスファルトをズンズンと進んでいく。時折、通りかかるサイクリストらに声をかけられたり写真を撮られたりしているが、全く気にも留めていないようだ。

 一週間ぐらいそうして進み続け、湿地帯にたどり着いた。

 泥炭で形成された大地にはアシ類が多く生えており、透明度の高い水があちこちから湧き出ていた。

 所々で観光客だろうか、湿地帯を背にポーズを取ってるのもいる。青年にはそれが見えないため分からないが、おそらく仮想カメラとやらで写真を撮ったりしているのだろう。

 オタチやヌオー、青年が知らないポケモンもたくさんいて、ここが豊かな土地であることを示していた。

 聞いてみると、豊かな土地ではあるが、激しい土地でもあるらしい。

 強大なモンスター達が争っており、時折彼らの戦闘音が湿地帯の奥の方から聞こえてくるとか。

 熊注意! みたいな看板があり、聞いてみると嵐が頻発するらしい。

 一説には嵐を巻き起こしているポケモンがいるとか。

 知らないけど、それはもう伝説のポケモンだよな? 間違いなく。

 三人に説明を求めると、この土地は太古の昔からそんな感じだそうで、この道路を通す時も並々ならぬ苦労があったって。

 ちなみにそのポケモンの出現頻度は決して高くはなく、数年に一度目撃されるらしい。ただ、マニアが粘っている姿はよく見られるとか。

 オーロラみたいなもんか。

 

 危うく土砂降りの雨に晒されるところだった。

 三人の分のテントを先に組み立てて中に追いやった後に、雨に打たれながらも自分のテントを張っていく。

 

「中、入りなよ〜」

 

 荷物は預けたし、もうびしょ濡れだから変わらないと断り、テントを張った後も空を見上げて考える。

 探した人間は多くいるのに見つけられなかった。それは、メタ的な視点で言えばフラグが立っていないという事だ。

 気象条件が最も分かりやすい。霧がかかった日だけ、雨が降った日だけ、虹が見える日だけ、そういう条件が廃墟の主によって付けられている。あるいは、探そうとするものの意志によって隠れてしまう。

 ただ、それを推測する事にはあんまり意味が無い。それらを全て実証するほど長居したら、逆にずっと見つけられないままになるだろう。なんとなくそう思った。ただ、過去に見つけた人間がいるのは間違いない。だからこそそういう噂があるのだから。

 そして、ホシノの調べによれば都市伝説みたいな扱いらしいけど、何となく、それはここにあるだろうと感じる。

 とはいえなんの手掛かりもないと、考古学者でもなんでも無い俺にはお手上げだ。

 一際強くなる嵐に、バタバタと揺れるテントの中に入ろうとした瞬間、雷によって照らされた雲間に何かが見えた。いや、明らかに建物の形をしていた。え……そういうこと? ラピュタ的な? 

 それは……無理では? 

 空を飛べるのはリザードンだけ、そして運べるのもそんな多く無いだろ。

 ……一応聞いてみるか、リザードンも空を見上げているし。

 リザードン、お前って俺たち4人を抱えたまま飛べたりする? 

 え、マジで? すげえな……ちなみにあの嵐の中に突っ込むのは? 

 まあ無理だよな、危ないし。

 え、どうした首を振って。

 …………嵐が危ないわけじゃ無いのか? なるほど。

 そうなると……高レベルのリザードンが明確に恐れるのは、野生の勘で避けようとするのは……自らより遥かに格上のポケモン? 

 ここには強大なポケモンが沢山いるという話で……そいつらが、あの中で争っている? 

 いや……伝説のポケモン? 

 つまり、あそこには伝説のポケモンがいて、廃墟はそこにある? 

 ……

 

 

 ──────

 

 

 雷雲の中にリザードンが突っ込み、降り注ぐ雷を避けながら4人を抱えて空を舞う。

 

「うわわわわ……」

 

「ねえ! 本当にここにあるの!? おじさんちょっと信じられないよ!」

 

 なんか言ってるが、雷を避けるためにリザードンに指示を出すのが精一杯だ。

 さすが大自然、ポケモンとは比べ物にならないくらいに無慈悲で高威力な雷を使いやがる。

 

「寒い……」

 

 防寒着と雨ガッパは着込むように言ってあるが、それでもこんな上空で、こんな速度で雨を浴びていたらそりゃあ寒いだろう。

 …………! 

 リザードン! 急降下しろ! 

 指示の直後、目の前を壁のような雷が通過する。

 

「あっ……」

 

 おっと……危うくアイリが落ちるところだった。

 もう震えでリザードンにしがみつくことすらできないアイリを強く抱き寄せて保持する。

 びしょびしょで分からないが、全身冷や汗だらけだろう。本当に肝が冷えるぜ。

 縦横無尽に空を駆け巡れるリザードンがいて良かった。

 

 雨、霰、雷、風、あらゆる気象が俺たちを襲ってきて、その間隙を縫って移動する。そんな自殺行為を幾度となく繰り返し、感じるものがあった。

 導かれている、明らかに、一定の方向に向かって行くように誘導されている。

 嵐を起こすポケモン、どうやらそいつは俺たちを歓迎してくれているようだ。

 もう少し穏やかな歓迎方法でも良いんじゃないかと思わないでもないが、乗り越えられないなら死ね、ぐらいの感覚なのだろう。

 

 もうしばらく飛び、明らかに雲の色が変わる境目があった。

 そこを越えた瞬間、ぞわり、鳥肌が立つ感覚があった。どこかから確実に見られているこの感じ……ナバルデウスと同格ってことかよ! 

 

「う……」

 

「あひゃー……脚が震えてるよ〜」

 

 2人とも感じたか! いよいよもって、奴さんのテリトリーに踏み込んじまったようだな! 

 おつきみやまでは機会を逸したけど、今回は俺もその面ァ拝ませてもらうぜ! 

 振り落とされないようにしっかりしがみついてろよ! 

 

「ひ、ひいいいい!!」

 

 腰が抜けながらも半狂乱状態のアイリを抑え込み、先ほどよりもキツイ軌跡を描いて、俺たちの命を狙って放たれる絶え間のない雷を避け続ける。

 

「せ、世界の果てどころか……こ、こんな街と街の間で!」

 

 そうだよ! お前らは気付いてないだけだ! この世界は神秘に満ち溢れてて、こんなにも激しく生きているんだ! 

 

「やっぱり……すごい」

 

 さあ、抜けるぞ! 

 

 ………………っしゃあ! 

 ようやく、その面を拝めたなぁ! 伝説! 

 羽衣を纏ったような肉体をユラユラと宙に漂わせてその龍の如き巨体を見せつけるポケモンと、まさに雷神様のような姿をしたポケモンが寄り添ってこちらを見ていた。

 まさか、2匹でここの主をやっていたなんてなあ。

 お前ら、あの2匹についてなんか知らねえか!? 

 …………おい、どうした? 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 びびって答えられないらしい。

 しゃあない、俺も1人でアレを相手取ることになったら絶望してる。だが、ここまで辿り着いた俺たちを無碍にすることは無いだろう、そんな確信があった。

 そしてぽつねんと宙に浮かんでいる、小島とも呼べない小島、そしてその上に建つたった一軒の家

 廃墟と呼ぶにしても小さすぎるそれが、廃墟の正体だと理解した。

 名付けるなら、ただようこじま、といったところだろうか。

 2匹を刺激しないように、ゆっくりとその小島に降り立つ事をリザードンに指示する。

 リザードンおつかれ、いてっ。

 ペシリと尻尾で叩かれた。

 まあだいぶ無茶言ってたからな。

 無言のままの三人を引き連れて、家を訪ねる。扉を開けようしたら、雷神様に止められた。

 ノータッチってことね、開けてもらっても? 

 どうやらこの島でのルールは、俺たちが物に触れない事らしい。

 靴を脱ぐように指示されて中に入る。

 雷神様に一部屋一部屋丁寧に見させてもらった。

 家具などを見ると、至って普通の一軒家である事が分かる。

 ただ、綺麗だった。

 ベッドのシーツは丁寧に折り畳まれ、食器棚の中は大きな食器から順に一つ一つ重ねられている。机にも棚にも埃はなく、定期的に清掃されているようだ。

 ただ、モデルハウスのような無機質な綺麗さでは無かった。何か、思いをそこかしこから感じ取れた。

 

「……」

 

 静かにしていたレッドにちょいちょいと裾を掴まれる。あるものを見つけたようだ。

 それは、うつ伏せに倒れた写真立てだった。

 倒れているソレを見た雷神様は少し慌てたようにすると元通りに立たせて、風に乗って運ばれてきた布で丁寧に拭いた。拭き終えると、雷神様は家から出て行く。

 そうか、雷神様がここを掃除していたのか。

 写真立てには、当然のように一枚の写真が収められていた。仮想カメラで撮られたものではない、俺が知っているカメラと同じもの。明らかに旧時代の遺物だった。

 写真には雷神様と、画角に収まる為だろうか、だいぶ引いた場所にいるあのデカいやつと、1人の老人が写っていた。

 優しい笑顔をしていた。

 つまり、ここはこの老人の家なのだろう。どうしてこんな場所にあるのか。

 

「師匠……」

 

 何故かアイリが泣きながら俺を呼んでいた。

 何かあったのかと思って急いで駆けつけると、家の裏手だった。

 そこには質素な墓があった。

 雷神様とアイリがそこにいて、雷神様はジッと墓を見つめていた。

 家の裏にあるソレが意味するものは明らかだった。

 そして、それ以上に俺に衝撃を与えたものがあった。

 その墓には日本語が刻まれていた。

 

『この世界に来て60年、終ぞ帰ることは叶わなかったが、家族を得ることが出来た。アイツらに家の事は任せたし、もう悔いは無い。

 p.s.俺は負けなかったぞ、次はお前の番だ』

 

「あの2匹は、ここを守り続けていたんだね〜……」

 

 日本語を読めないアイリ達にも、何故2匹がここにいたのか、何故こんなところに家があるのかは理解できたようだ。

 俺は、何故ここに立ち入ることを許されたのか理解できた衝撃で何も言えなかった。

 俺以外にもこの世界に飛ばされたやつがいる、どれほど長いスパンかは分からないが。

 

 お墓にお供え物をした後、2匹に丁重に礼を言い、小島から去る。

 行きの荒れ狂う天気はなんだったのか、穏やかそのものの空を降りて行く。

 意外にも3人はそこまでテンションが高くなかった。そんなに怖かったか? 

 

「いや〜誰にも話せないな〜って」

 

「うん」

 

「はい……とても嬉しいんですけど、はしゃぐ気分にはなれなくて……」

 

 もう少し聞くと、3人ともあの2匹を見た時からあの場が持つ、清くて犯しがたい空気とやらにあてられていたらしい。

 侘び寂びだねえ……

 でもどうやら満足できたらしい。

 アイツらの名前だけでも教えてくんねえ? 

 雷神様の方はボルトロスというらしいが、もう1匹の方が全く分からないらしい。

 どっかの図書館とか古書に載ってるだろうし、そのうち調べるか。

 

 

 ──────

 

 

 いつものテンションに見せかけて少し違う青年の様子を、3人は敏感に感じ取っていた。

 そして、それがあの墓に刻まれていた謎の言語によるものである事も理解していた。

 上の空で一人、先を歩く青年に隠れてコソコソと話す。

 

「多分、あの文字がお兄さんの故郷の文字なんだろうねえ〜」

 

「私は全く見たことがないんですけど、お二人は分かりましたか? あの文字」

 

「知らない」

 

「おじさんも見た事無いかな〜」

 

「実はさっき、世界中の文字と自動照合させてみたんですけど……当てはまるものが一つもありませんでした」

 

「うへー……とんでもなく辺境なのか、昔なのか……」

 

「どうでもいい」

 

 レッドの一言に2人はやや驚いた。あんなに懐いている青年の過去に興味が無いのだろうか。

 

「お兄さんが言わないなら、良い」

 

 ハッ、と2人も気付く。レッドはこう言っているのだ。自分から言わない事をあれこれ詮索するのはマナー違反だ、と。

 

「は、反省します! さすがレッドさん……そうですよね! 仲間だからってなんでも知ってなくちゃいけないわけじゃないですね!」

 

「そうだね……お兄さんも私たちの過去の事とか無理に聞き出そうとしないもんね〜、反省反省」

 

「ん」

 

 話し下手の自分の言いたい事を分かってくれる人が増えて、レッドはとても嬉しかった。

 

 3人はとても気まずい気持ちになっていた。

 実はさ〜、とか言いながら青年があの文字についてペラペラ喋り出したのだ。

 先ほど仲間は〜とか言っていただけに、非常に台無しであった。

 3人とも俯きながら青年の言う事を聞き流す。

 青年も青年で人が聞いているかどうかなどあまり気にしないタチな為、延々と喋り続けていた。

 そのくせ、地名とか重要な固有名詞は言わず、己が記憶喪失であるという設定は守ったまま話すので、その先が知りたい3人からすれば非常にモヤモヤする話となってしまった。

 

 

 ──────

 

 

 悪い、やっぱつれぇわ。

 延々とアスファルトを歩いていると、自分がどれくらい歩いたのかの感覚が無くなってくる。

 廃墟を見つけてからここしばらく森だらけで、周囲の光景も変わらないからな。レッドも前来た時はこんな感じだったのか? 

 

「リザードンで飛んだ」

 

 ですよね―。

 ……そういえばコトリタウンってどんな街なんだ。俺は全く調べてないんだが、マタナキみたいな意味の分からないルールとか無いよな? ジムリーダーが誰とかも全く調べてないんだわ。

 

「しょうがないなあ〜、おじさんが……」

 

「ふっふっふ……そんな事もあろうかとこの私が!」

 

「調べたよ」

 

 おお、3人とも予習してあるのか、偉いな。じゃあ誰が教えてくれるんだ? 

 ……ん? 誰が──

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 3人は向かい合ってジリジリと回っていた。

 何してんだこいつら……

 

「これはパートナーの私の役目じゃ無いかな〜」

 

「いいえ、師匠に教えるのは私の役目です!」

 

「私はバッジ持ってるから詳しい」

 

 誰でも良いんだけど……おお、見ろ! 間違いねえ! コトリタウンだ! 

 よく考えたら俺は説明書読まないでゲーム始めるタイプだったわ! 

 コトリタウンには俺が一番乗りだ! 

 

「リザードン、邪魔して」

 

「おじさんも負けないよ〜!」

 

「ヒーホー君! 師匠にブフ!」

 

 本当にこいつら俺のこと仲間だと思ってる? 俺じゃなかったらかえんほうしゃと銃弾と氷柱の連携攻撃とか避けられないだろ。

 だが……ふはは! その程度で俺に追い付けると思うなよ! 

 

「2人とも、リザードンに乗って」

 

「おっけ〜」

 

「はい!」

 

 おい、ずりいぞ! 

 

「お兄さんを追い越して」

 

「行け〜!」

 

「師匠、ごめんなさい!」

 

 ……お前ら、ポケモントレーナーを舐めているな? 

 言っただろ、一番乗りは俺だってよお! 

 

「えぇぇ……」

 

 街に近付くにつれて人が増えてきた。リザードンは空を飛んでいるため障害物は無い。一方で俺は先読みをして最適なルートを読まなきゃならないのが手間だが……絶対に負けん! 

 

「あの人、リザードンと並走してる……」

 

「あれってドスニキじゃ……」

 

「とりあえず動画撮っとこ」

 

 結局最後は門番に止められて負けました。

 チキショー!




ポケモントレーナー
20歳
法律と監視の目が緩い事に気がついた無敵の人。
ドダイトスが大好き。
盗撮は嫌い。
これはマスコミの権利……?



     お前それドダイトスの前でも
           同じこと言えんの?
         ,、,, ,、,, ,, ,,
       _,,;' '" '' ゛''" ゛' ';;,,
      (rヽ,;''"""''゛゛゛'';, ノr)
      ,;'゛ i _  、_ iヽ゛';, 
      ,;'" ''| ヽ・〉 〈・ノ |゙゛ `';,
      ,;'' "|   ▼   |゙゛ `';,
      ,;''  ヽ_人_ /  ,;'_
     /シ、  ヽ⌒⌒ /   リ \
    |   "r,, `"'''゙´  ,,ミ゛   |
    |      リ、    ,リ    |
    |   i   ゛r、ノ,,r" i   _|
    |   `ー――----┴ ⌒´ )
    (ヽ  ______ ,, _´)
     (_⌒ ______ ,, ィ
      丁           |
       |           |

タカナシホシノ(原作:ブルーアーカイブ)
15歳
魚が大好き。
泣けば言うことを聞いてくれる事に気付き始めた。
手を繋げるようになった。
バッジ保有数5個

レッド(原作:ポケットモンスター)
13歳
おつきみやま以後、ちょっとだけ周りに興味を持つようになった。
お姉さん風を吹かす準備をしている。
おんぶが好き。

アイリ(原作:ポケットモンスター)
10歳
パートナー:ヒーホーくん(ジャックフロスト)
ポケカのおじょうさま(TR)を金髪にした見た目。
ですわ口調は母親に行儀よく見られる為。
母親があんなふうになったのはグズマのせい。
許せねえ……
ヒーホー君をスタンガンで痛めつけてパートナーにした。
心が強い。
ヒーホー君が大好き。

シンリンカムイ(原作:僕のヒーローアカデミア)
27歳
パートナー:キングパックンフラワー(ボスパックン)
テッセンを尊敬している。
グズマが出て行ったのはこの人のせいでもある。
許せねえ……
パックンフラワーは怪しいおじさんからもらったのを大事に育てていたらこうなった。
植物を操る能力を持っている。
マタナキタウンのジムリーダー。

ヤニカス
裏の事情に詳しい。
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