東方祟り傘   作:bver

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5. 新鮮な驚き

柄にもなく、悲鳴を上げてしまった。

 

守矢神社からの帰り道、どこをどう通ったかは忘れてしまったが、魔法の森に近づいたところだった。

雨が遮られるほど鬱蒼とした森に入って、何とはなしに箒から降りた。

体に当たる雨が無くなって、よく聞こえるようになった耳から入る音は、あの境内とそっくりだった。

雨の帳に閉ざされて、優しく、あるいはしつこく説かれたあの境内と。

こちらを見つめる爬虫類の目が、無感動に大きく見えて。

そして――。

 

「おどろけ~!」

 

横から飛び出した唐笠お化けに、絶叫と言えるほどの悲鳴を上げてしまったのだ。

ばくばくと鳴る心臓を押さえて、魔理沙はへたりこんでしまった。

その様を見て、逆に驚いたように固まる小傘。

しばらくして、徐々に緩んだ表情は、爆発したような喜びの声と共に踊り出した。

 

「ごちそうだ~!」

 

やったやったと小傘が跳ねる。

先ほどの魔理沙から食べた感情が、長らく無かったほどの驚きだったのだろう。

いつぶりだろうか、過去のものと比べてどうだったかと、ぶつぶつと嬉しそうに賞味している。

そうして自慢げに「珍しいね、魔理沙がこんなに驚くなんて」と話しかけてきた。

 

「ああ、いや……すまん」

 

そんな小傘に、思わずと言った形で魔理沙が返す。

何で謝るの?と笑う小傘に、魔理沙も混乱してうまく返せない。

はて、何故自分は今謝ったのか。

これだけ喜んでいるのだし、「どういたしまして」とでも言うのが正しいのではないか。

もしくは「してやられた」と、何か仕返しをしてやるべきではないのか。

そんなことを思って、しかしあまりの驚きに、毒気が抜かれたように体は動かなかった。

 

「ありがと!またよろしくね!」

 

調子がいいから次に行くのだと、はた迷惑な宣言を残して小傘はカランコロンと去っていった。

下駄を小気味よく響かせる後ろ姿を見送って、そういえば雨も静かになったのかと気付く。

辺りを見渡して、家路につくための道を見繕って。

そうして何をするのだったかと考えた魔理沙は、驚きで真っ白になっていた頭で、最初に思いついた行動を口に出していた。

 

「パチュリーに謝ろう」

 

そんな自分に驚いて、しかしすぐに苦笑して、魔理沙は帰路に就いた。

 

 

しばらく後、何故かノート片手に謝罪に訪れる魔理沙の姿が幻想郷の方々で見られた。

図書館に本は戻り、つけで払うことも滅多に無くなった。

アリスとの魔法の研究も進み、近く紅魔館に訪れる予定だという。

 

ただし、少しばかり驚きやすくなったせいか、唐笠お化けや小妖精にやけに好かれるようになったそうだ。

そう、不本意そうに語っていた。

 

「良かったのですか」

 

巫女は問う。

 

「どうせ遠くないうちに消えていたさ」

 

神は答える。

これも一つのめでたしだろうよ。

そうつまらなそうに言って、小さな祟りを押しつぶした。

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