モンスターパニックが起きたらクラスメイトに追放された 作:創作修行者
「真面目にやれや」
「わ、わかりました」
臣又さんは今ではすっかりとおとなしくなっていた。クラスメイトの冷めた視線が身に染みているのか、自身の評価を下げるのを恐れているのか、いずれにせよ先の横柄な態度が嘘のように思える。
「こ、これは——」
臣又さんは隠された秘密を暴くべく鑑定眼を僕に向けていると、赤い瞳が広がって口が半開きになった。時間が経つにつれて苦い顔……悲しげに歪んでいく。
まるで予想外の真実で戸惑っている表情で、今にも泣きそうだ。どこか偉そうな臣又さんの思いがけない反応に、クラスメイトも困惑している。
「おい、どうしたんだ」
「区元くん、区元くんが……」
「区元の身に何かがあったのか」
臣又さんの様子からただならぬ予感がする。僕に隠された秘密は恐ろしいのか。もしやすると世界の運命を左右するかもしれない。
いや待て。一般人の僕に大層な秘密を抱えてるはずがないだろう。いかにも重要な役目を背負ってそうな勇者と聖女を差し置いて、物語の重要キャラぶるのは絶対におかしい。
テンプレと言われればそこまでだが、正直な話だと世界の運命とか背負いたくない。臣又さんに言われたら最後、死ぬまで恐怖で震える自信がある。
いや、しかし——こんな感じで思考の泥沼に沈んでいく。不安で僕は落ち着かない。理由は違うだろうけど僕以外のクラスメイトも表情が硬い。
「教えてくれ、一体何があったんだ」
一人のクラスメイトがおそるおそる尋ねた。場の空気の重さに誰も彼もが息を呑んでいる。
臣又さんは暗い顔で答える。今までの彼女から考えらない表情だ。
どれほど恐ろしい事実が発覚するのか考えたくない。もしかしたら緊張のあまり僕は布団に引き篭もってしまうかもしれない。
「私が楽しみにしていたコンビニ限定スイーツを区元くんが食べてた」
……聞き間違いだろうか。凄まじくどうでもいい事実が聞こえた気がする。プレッシャーでやられた僕が幻聴でも聞いてしまったのだろうか。
「すまない。もう一度答えてくれないか」
「ロイヤルハワイアンクッキーの最後の一つを区元くんが食べてた……ううう、食べたかったのに」
「どうでもいいことで泣き顔になるな! ややこしいわ!!」
クラスメイトの鋭い一言が響く。この場の思いを代弁しているだろう鋭い一言だ。
ちなみに件の菓子、昨日の学校帰りに気まぐれで買ったロイヤルなんたらは、僕の胃袋を超えて腸の中なので彼女に渡せない。
「あと世界の運命は区元くんが握っているようです」
「な、なんだってぇ!?」
「ハワイアンなんたらより、そっちの方が重要じゃねえか!!」
世界と僕の運命は臣又さんにとって菓子以下らしい。
右往左往していた僕は例えようのない悲しみが胸に満ちた。