どうもお久しぶりです。89式小銃です。
話が纏まらないうちに前話から14日も経ってしまいました…誠に申し訳御座いません…
今回の話の内容は宮部の世界に行った信濃の体験話です。アズレン要素がだいぶ薄いのでご注意下さい。
それではどうぞ
重桜航空母艦信濃
もともと大和型戦艦三番艦として計画、建造された彼女はある特殊な能力を持っている。それは現世とは違う世界を渡ることができることである。
違う世界というものを具体的に言えば、今いる世界の未来や過去、違う道を歩み進んだ平行世界、そして現世とは違う異世界など様々である。
眠ることや相手の身体に触れて心の中に入ることで起こる能力だが、自身の能力を誰よりも一番理解している彼女ですらいつ何処の世界に行くのかすら分からない。
そして、飛ばされた世界の殆どが悲痛な最期を迎え、観ることしかできない信濃は自身の無力さを嘆くしかなかった。
彼女はそんな自身の能力が苦手であった
信濃「…んっ……此処は…」
目を覚ますと彼女は知らない路地裏へと立っていた。周囲に立つ民家はどことなく重桜のような雰囲気を醸し出している。
信濃「ここがあの者の世界…」
周辺の風景や雰囲気から、今いるここが宮部の居た世界だと確信する。
「おーい照子ー!!早く来いよー!!」
「待ってよお兄ちゃん〜!」
すると路地の奥から二人の子供が走ってくるのが見え、信濃のすぐ横を通り抜けていく。
信濃「(あちらの方に何かがあるのであろうか…?)」
子供の後をついて行くように信濃も子供が走り去った方向に歩み出す。
信濃「おぉ…これは…」
眩しい日光と共に信濃の目の前に現れたのは近代的な外観の市街地。
コンクリート製のビルが立ち並び、車が行き交う交差点。
周囲の歩く人々の顔立ちは重桜人と非常に似ていたが、獣耳や尻尾など動物的な特徴が無い。
和洋折衷の様々な服装をした者達が忙しそうに行き交い、活気に溢れている。
信濃「良き世界かな…」
重桜とは違う、戦いに明け暮れていない平和な光景に口角を上げて微笑むが、次の場面でその光景は地獄へと変貌する。
信濃「なっ…」
白や灰色の綺麗な建造物は半壊・崩壊して黒く焦げ、辺りは真っ赤な炎の壁が立ち昇っている。
ウゥゥゥゥゥゥ
町中を不気味な空襲警報のサイレンが鳴り響いており、そして漆黒の空を埋め尽くす無数の爆撃機がおびただしい量の爆弾を投下しながら飛行している。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
「助けてぇ!!助けて下さぁぁい!!」
「うえぇぇぇぇん!!お母ちゃぁぁぁぁん!!」
「は、はは……ははははは!!」
信濃「うっ…なんと酷い光景…」
身体に纏まり着いた炎に悶え苦しむ人、黒焦げになった母の名を泣き叫びながら呼ぶ子供、地獄の光景を見て気の狂った人…あまりにも酷い光景に信濃は吐き気を催す。
手を差し伸べたいが、今いる世界は夢に近いため人々や物との接触は殆ど不可能であるためできない。
苦しむ人々が居るのに助けることができない事に、彼女は苦悶の表情を浮かべ歯がゆい思いをする。
しばらくすると自身の周りを白い霧が包み込み、数秒経つと霧が晴れ見知らぬ土地が目に入る。どうやらそこは戦場のようだった。
信濃「(硝煙の匂い…)」
砲撃によって空いただろう無数の砲弾跡、散らばる空薬莢、立ち込める硝煙の匂い、そして幾重もの死体。
滅多に戦闘に出ない信濃は、異世界だが初めて目にする凄惨な戦場の光景に言葉が出ないでいた。
信濃「…?あれは…」
海側の方を見るとユニオン人の出で立ちをした兵士達の姿があった。彼らの居る場所は陣地化されており、陸側にその鋭い視線と銃火器の銃口を共に向けている。
そして陸側に視線を移すと、銃剣を装着したライフル小銃を持つ日本人の兵士が匍匐前進をしながらアメリカ軍の陣地へと近づいていた。
信濃「っ…!その先に行ってはならぬっ…!」
このままでは皆が殺されてしまう。そう直感的に感じ取った信濃は陣地に接近している日本兵達に警告するが、当然彼らには聞こえない。
「突撃ぃぃぃぃ!!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「天皇陛下万歳ぃぃぃぃ!!!!」
現実は非情かな。信濃の懸命な警告虚しく、日本兵達は立ち上がり敵陣地に向かって突撃を敢行してしまう。
ドンッ ドンッ ドンッ
ダダダダダダンッ!!
「ぐあっ…!」「ぎゃっ…!」「ゴハッ…!」
雨あられと放たれた銃弾の嵐によって、日本兵達は敵陣に辿り着く前に次々と倒されていく。
信濃「ああっ…」
僅か数ミリの鉛弾の雨によって、いとも容易く消えていく無数の命の灯火。それは彼女にとって見るに耐えない光景であった。
「ゴホッ…かあ…さん…ごめ…ん…」
近くに倒れている若い兵士が腹部の貫通跡を抑え、血を吐きながら母親に対する謝罪の言葉を呟いている。
信濃「ッ…すまぬ…妾が無力なばかりに……」
また救うことができなかった…
一人の命すら救えない自身の無力さに嘆き、胸が苦しくなる。
また彼女を白い霧が包み込み、先程と同じ時間が経過すると徐々に霧が晴れていく。
信濃「(これは…空母の甲板…?)」
次の場面では、海上を航行する空母の飛行甲板上に立っていた。
重桜海軍の空母とは違う煙突と一体化した大型の艦橋、多数の対空火器、そして乗員達の姿からユニオンの空母だと彼女はすぐに分かった。
信濃「あれは…」
近くのスポンソンに目を遣ると、高角砲周りで休憩していたアメリカ兵達が雑談を交わしている。
『おい聞いたか、もうすぐ戦争が終わるってよ』
『ああ、本当に長い戦争だったな。早く国に戻って生まれたばかりの娘と会いに行きてぇな〜』
各々が戦争が終わった後の予定を話していると、そのうちの一人が日本を話題にした話を始めた。
『ほんと、ジャップの奴らは馬鹿だぜ。どうせ負ける戦争に無謀にも挑んだんだからな!加えて、負けても負けても懲りずにまたやって来るんだからな。失敗から全く学ばない日本人はまるで七面鳥だぜ!』
『ははは!ちげえねぇや!』
信濃「………」
思わず耳を塞ぎたくなりそうな会話を聞いていた信濃はアメリカ兵の差別的な言葉に眉をしかめる。
大切な故郷を家族を守る思いで必死に戦いその命を散らしていった者達に対して冒涜の言葉を発したアメリカ兵に、普段大人しく冷静な彼女でも腸が煮えくり返る思いを感じていたその時だった。
「ゼロだっ!!」
アメリカ兵の悲鳴のような叫び声が甲板に響き渡り、 周りの兵達が騒ぎ始める。1機の零戦が猛スピードでこちらへと向かってきていたのである。
信濃「(あの機の者は一体なにを…?)」
空母のような大型艦には通常、爆弾や魚雷を積んだ爆撃機か攻撃機で攻撃する。だが、今向かってきている機は対艦攻撃に不向きな戦闘機である。そして下部には爆弾らしき物を搭載している。
相手の意図に理解しあぐねている間にも零戦はこちらへどんどん近付いている。
『クソッ!!迎撃部隊は何をやってたんだ!!』
『口を動かすよりまずは手を動かせ!!』
アメリカ兵達は急いで戦闘配置に着き、向かってくる零戦へ射撃を開始するが―
『チイッ!!全く当たらねぇ!!』
『マジックヒューズはどうなっているんだ!!』
撃っても撃っても一発も当たらない。まるで弾除けの魔術がかかっているかのようだった。
全力で迎撃を行っているアメリカ兵達は焦り始めるが―直後、零戦が主翼から火を吹いた。
『よし!!当たったぞ!!』
攻撃がようやく当たり、アメリカ兵達は歓喜の声を挙げるが、突如として零戦が燃えながら急激に上昇する。
『なっ!?まだ動けるのかっ?!』
奴は不死身なのか?
この時の甲板上のアメリカ兵全員がそう思ったことだろう。
零戦は空母の上空で宙返りをし、垂直に近い角度で突っ込んでくる。そして―
ガシャァァァン!!!!
寸前に主翼の片方がもげたが機は時速620km/hの速度を維持しながら甲板に衝突し、強烈な衝突音が辺りに響き渡る。搭載していた250kg爆弾は不発だった。
『あ……あぁぁ…』
あまりの恐怖に甲板上のアメリカ兵達は震えて動けないでいた。
『ク、クソッタレがぁ!!』
パァン! パァン! パァン!
そのうちの新兵の一人が飛行甲板に転がる遺体に向かって下士官から取った拳銃を、弾が無くなるまで乱射する。
『おい!止めろ!!』
それを見た近くの下士官が撃ち切られた銃を新兵から奪い取る。
しばらくして、落ち着きを取り戻した兵達が士官からの命令を受けて、被害状況を確認したり甲板に突き刺さった零戦の残骸と転がっている不発弾の処理に取り掛かる。
『この日本人があのゼロに乗っていたのか…』
『マジックヒューズが反応してしまう低さで飛行してきたなんて、なんて腕なんだ…』
作業の途中に何人かの兵が遺体の周りに集まり、パイロットについて話している。
今まで何十、何百もの敵機を迎撃した彼らだったが、あそこまでの腕を持つパイロットは初めてだった。知らない内に彼らは、たった一人で機動部隊に挑んできた日本人搭乗員に敬意を抱いていた。
『おーい!こっちを手伝ってくれ!』
『ああ、今行く!!』
集まっていたアメリカ兵達が甲板に突き刺さった零戦の残骸撤去の応援に向かい、遺体の周りに誰も居なくなった。
信濃「………」
一瞬の出来事に信濃は思い付く言葉が無かった。
回避する素振も爆弾を投下する素振も見せずに、ただ敵艦に向かって突撃する攻撃?は信濃の世界では考えられなかった。
そして彼女は遺体に近づき、上半身だけとなった搭乗員の顔を覗き込む。
信濃「…!!」
搭乗員の顔を覗き込んだ信濃は酷く驚いた。それは紛れもなく神社で出会った男―宮部 久蔵の顔であった。
信濃「宮部 久蔵…これがあの者の最期…」
彼の壮絶な最期に、彼女はアメリカ兵と同じく思わず敬服した。
敵の索敵網に引っ掛かることなく海面スレスレで至近距離まで接近し、あれほどの弾幕を衝突寸前まで掻い潜るのは熟練搭乗員でも至難の業である。
だがそれを宮部はやってのけたのだ。
信濃「…よくぞここまで辿り着いた…」
宮部の傍にしゃがみ込み、労いの言葉を送ると右手で宮部の開いていた目をゆっくりと閉じる。彼の強張っていた顔が最初に出会った時と同じ優しい顔へと戻った。
信濃「(っ……急に…眠気が…)」
突如として激しい睡魔に襲われて意識が遠のいていき、そのまま眠りに堕ちる。
「まったく、あの人はすぐに無茶をするんですから…」
気が付けば信濃ら何も無い白い空間に立っており、目の前に一人の女性の姿があった。
信濃「…?そなたは…」
「失礼しました。私は貴方方にお世話になっている宮部の妻です」
信濃「宮部の…?」
にこやかな笑みを浮かべながら宮部の妻と名乗る彼女は信濃に深々とお辞儀をし、話を続ける。
「主人が特攻で亡くなる前、私と産まれたばかりの子に必ず生きて帰ると約束しました。…けどあの人は嘘をつきました。一時はなんで家族を残して先に逝ってしまったのかと少し憎んだ時もありました。」
信濃「………」
宮部の妻が語る話を耳を傾けて静かに聞いている。
「…ですが、あの人が必死に守った戦友さんの方々のお話、そして貴方方の世界に来ても私と清子との約束を守ろうとしてくれていたことが私は嬉しかった…」
彼女の目からは小粒の涙が頬を辿って流れ出ていた。
「…信濃さん、貴方と重桜の皆さんにお願いがあります」
涙を手で拭きながら、信濃の方へと振り返る。
信濃「願い事…?」
「はい。彼は優しい人ですが、いろいろな事を自分だけで抱え込んでしまう性格です。その時はどうか傍で彼を支えて上げてくれませんか?」
信濃「…心得た…約束しよう」
「…ありがとう御座います。これで安心して向こうに行くことができます」
信濃に感謝の言葉を伝えた彼女は細かい桜の花びらとなって消えていった。
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信濃「…んっ……ふぁぁぁっ…」
目を覚ますと、自身は畳に敷かれた布団の上に寝転がっていた。
扶桑「あら、やっとお起きになられましたか信濃様」
隣には正座している扶桑の姿があった。
信濃「…少し寝すぎてしまったようだ……此処へ運んだのはそなた達か?」
扶桑「いえ、私達では無く宮部さんが運んできました。誰かを背負っていると思っていたら正体がまさか信濃様だったなんて驚きましたよ」
実は信濃、あの赤城や加賀、天城よりも位の高く、長門に近い実権を持つ重鎮なのである。軍の階級で表せば少将から中将クラスと、まさに雲の上の人である。
掃除を終えて社務所を訪ねた宮部がそんな人物を背負っていたことを彼女は予想できなかっただろう。
信濃「そうであるか……」
扶桑「どうかされましたか?」
信濃「いや…何でもない…」
そう呟きながら、開いた窓から覗く雲一つ無い夜空に光り輝く満月を眺める彼女であった。
to be Continue
茶碗からこぼれた米粒さんから☆9を頂きました!!評価、ありがとう御座います!!
かなり急いで書き上げたので文章的に変な箇所があったり、誤字や脱字があるかもしれません。その時はご報告よろしくお願い致します。
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