異空のゼロ   作:89式小銃

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読者の皆様、どうもお久しぶりです89式小銃です。

諸々の都合で更新期間が大幅に伸びてしまい、誠に申し訳ありませんでした…!自分としては、この回を始発点に1ヶ月か半月に1話のペースで書き進めていきたいと思っております。

お気に入り登録を解消せず、長らくお待ち頂いていた読者の皆様。これからも本作品をよろしくお願い致します。

それではどうぞ


29 復讐者の影

 

 

ある日の深夜

 

 

横須賀郊外の人気ない山々の中に、一つの施設が存在した。

 

幾重にも張り巡らされた鉄条網、厚さ数メートルの重厚なコンクリート防壁、そして無数の監視塔とサーチライトに守られるその施設は、世間からは軍刑務所と呼ばれている。その名の通り不祥事を起こした兵士を収監する軍隊の刑務所であり、収監される囚人の罪状は資金の横領から同僚殺しなど多岐にわたる。

 

そんな凶悪犯達を収監する軍刑務所は、必然的に陸軍の駐屯地並みの警備・監視態勢を敷いており、内外からの如何なる攻撃に耐えうるものだったが……たった今、それは崩れ去ってしまった

 

第2防衛線が崩壊!敵は第三収容棟へと向かっている模様!

 

敵は数人だぞ!?阻止部隊は何を手間取っているんだ!?

 

第一収容棟にて脱走事案の発生です!数十人以上の囚人が正面出入り口へと向かいます!

 

施設の各所から続けざまに立ち上がる爆炎、そして銃声や怒号が途切れることなく響き渡る。

 

「所長、近隣の陸軍部隊に応援を要請しましたが…到着は早くても20分はかかるそうです。これでは事態の収拾が…」

 

「…やむを得ん。現状の装備で守り通すしかあるまい」

 

「ですね。せめて最期は、重桜人らしく華々しく散ってみせますよ」

 

警備部隊の殆どが侵入者によって壊滅させられ、施設の半数以上が脱走した囚人に掌握されている四面楚歌の状況下、頼みの応援部隊も間に合わないとなったことで絶望感が漂っていた。

 

だがしかし、特別収容区画に投獄されている国家反逆罪という大罪を犯したあの者を逃さないためにも、彼らは殉職覚悟で脱走事案の沈静化を最後の責務として臨むのであった。

 

 

 

   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

一方その頃、他施設とは隔離された場所に建つ特別収容区画の一室には、騒動の中でも落ち着き払った様子で男が一人くつろいでいた。

 

「この日まで1年間を無駄に過ごしたが…やっとだ…やっとあいつらKAN-SENに復讐できる…!」

 

不気味な薄笑いを浮かべ、その目には決して冷めることがない復讐の炎が灯っている。

 

???「そこまで彼女達が憎いのね。人類の守護者であるKAN-SENが、守る存在であるはずの人類から敵対視される―皮肉なものだわ」

 

視界の端に移る暗闇から妖艶な声がかけられる。

 

襲撃による停電で独房は真っ暗闇である中、姿までは視認できないものの、暗黒に浮かぶ金色の瞳孔によって声の主はセイレーンであることが分かる。

 

???「でも良いのかしら?犯罪者とはいえ、元指揮官である貴方が人類の敵である私達セイレーンに協力するのは?」

 

「ハッ、人類の殲滅だかなんだが知らないが…お前らの目的のことはどうだって良い。俺の復讐劇が果たされるので協力している―ただそれだけだ」

 

軽蔑するように辛辣な言葉を吐き捨てる。

 

自分の全てを奪った当事者を断罪できるのであれば、悪魔にでもセイレーンにでも魂を売ってやる。

 

「天城……栗田……お前達のせいで、俺は全てを失った」

 

ありったけの憎悪を含んだ声で、二人の名を噛み締めるように呟く。

 

「次こそは失敗しない。必ずこの手で地獄へ送ってやる……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海軍航空隊基地 出入口前

 

 

翌日、基地視察のため上層部から一団の来客が訪れていた。

 

正門前には1台の公用車、護衛の小型乗用車およびサイドカー数台が停車しており、その一群を栗田達が出迎えている形となっている。

 

栗田「上層部の人達と話すのは面倒くさいし、苦手なのよねぇ…まぁ今回来てくれた団体様に()()()が居るから、多少は気が楽ね」

 

天城「指揮官様、上官の目前で失礼な言葉遣いはいけません。如何なる理由であっても、礼節を重んじた振る舞いをとるべきです」

 

小声で会話を交わしている途中、公用車の前後扉が開き、純白色の将官服を着こなし綺羅びやかな短剣を携えた一人の男が降車する。

男は脱いでいた軍帽を被り直すと、堂々威風たる足取りでこちらに向かってくる。

 

栗田「お待ちしておりました。第25海軍航空隊基地司令ならびに臨時指揮官の栗田中佐です」

 

一糸乱れぬ完璧な敬礼で来客を出迎える。

そして、向かってきていた壮年の将官は栗田の前に立ち、同じく敬礼とにこやかな笑顔で応える。

 

「うむ、相変わらず元気そうで何よりだ栗田くん。天城くんも元気かね?」

 

天城「お気にかけて頂きありがとう御座います、山本さん。ここ最近は特に問題なく過ごせております」

 

山本「それは良かった。君達KAN-SENは重桜国防の重要な担い手でもあるが、同時に1人の大和撫子であるからな」

 

山本 五十郎

軍令部総長という重桜海軍の頂点に立つ者であり、階級は大将。温厚な性格と鋭い洞察力で周囲から多大な信頼を寄せられる人格者かつ戦略家として知られ、また海軍内で随一の親ユニオン派である。

 

栗田「さっそく基地を案内致します。話は歩きながらでもよろしいでしょうか?」

 

山本「それは問題ないのだが…栗田くんと天城くん、君達に重要な話がある。人目の少ない場所で話そう」

 

栗田「…かなり悪い話のようですね」

 

その言葉に山本は軽く頷き、同行していた護衛に待機を命じると、栗田と天城の二人を連れて近くにある休憩所に向かう。

 

山本「ここなら問題ないだろう。さて、話の内容だが…先日の深夜、横須賀郊外にあった軍刑務所が何者かの襲撃に遭い、収監していた囚人多数が脱走した。この件は君達も周知の通りであるだろう」

 

栗田「えぇ、既に聞き及んでおります。しかし脱走した囚人の殆どは数時間以内に捕縛したのでは?」

 

山本「"殆ど"はな。極少数だが未だに捕縛に至っていない脱走者が存在する。そのうちの一人がかなり厄介でな…」

 

海軍のトップをこれ程までに唸らせる人物の正体に、二人は自然と身構える。

 

山本「…梶原 敬斗。元海軍大佐であり、栗田君の先代指揮官でもある」

 

その名前を聞いた瞬間、二人は時が止まったかのように硬直し、しばらく沈黙が続いた。

 

栗田「……これは悪い話どころではないですね…」

 

山本「梶原元大佐の行先や目的は不明だが、一番考えられる可能性としては、恐らく君達二人への復讐だろう。その場合は特に天城くん、君が真っ先に狙われると私は思っている」

 

天城「…存じております。あの事件で全てを失った彼の気持ちを思えば、私を一番に狙うのは至極当然ですから…」

 

顔を俯かせ、暗い表情を浮かべる。その紫色の瞳には贖罪、後悔、恐怖といったあらゆる負の感情が渦巻いていた。

 

山本「…そこで、梶原元大佐が捕縛されるまでの間、今週末に予定しているユニオンへの長期派遣演習に天城くんも参加してくれたまえ」

 

栗田「なっ!?ま、待って下さい!

 

あまりにも突然の決定に、栗田は思わず大きな声をあげる。

 

栗田「あっ…申し訳ありません興奮し過ぎました…ですが、天城は未だに癒えぬ傷心の身であり、艤装の展開ができません。厳重な護衛が付くことは承知しておりますが、太平洋の向こうにあるユニオンに彼女を送るのは承認しかねます」

 

山本「君の言い分はごもっともだ。しかしだな…」

 

疲れたように深く溜め息をつく。

 

山本「私も色々と面倒事に巻き込まれているのだよ…それに彼が指揮官になる前は情報将校だった。重桜広しと言えど、逃げ切るのはかなり困難だ。天城君だけでなく他のKAN-SENや基地に駐屯する兵士のためにも、海外へ逃れるほうが良いだろう」

 

栗田「し、しかし…天城の状態では…」

 

山本大将の判断は決して間違いではない。だが理屈と感情は別である。

 

艤装を展開できない天城を海の向こうへ送り出すことに、不安を抱かずにはいられなかった栗田が再び反論しようとしたところ、天城が静かに制止する。

 

天城「よいのです指揮官様。それに私の命が狙われることで赤城や他の娘達、基地の方々に危害が及ぶ可能性があるのであれば、これを断る訳にはいきません。私も長期派遣演習に参加させて頂きます」

 

栗田「天城…」

 

こうなっては、誰よりも仲間思いで妹思いでもある天城の決断を変えることは限りなく難しく、渋々ながら当人の意思を尊重する他ない。

 

天城「それと山本さん、話の最後に1つお願いが。基地航空隊に所属する戦闘機搭乗員に宮部 久蔵という者がいます。その方を演習に同行させて頂きたいのですが、問題ないでしょうか?」

 

天城は、静かに宮部の名を口にした。

 

彼は別世界からやって来た客人である。元の世界への帰還を望む当人を、自分達の厄介事に巻き込む訳にはいかない。

 

山本「ん?あぁ、噂に聞いているエースパイロットか。もちろん構わんさ。他国との演習は滅多に無いから良い経験になるだろう」

 

天城「ありがとう御座います、山本さん」

 

山本「礼はいらんよ。さぁ、本来の目的である基地視察に戻るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、天城の屋敷にて…

 

 

栗田「ということで宮部少尉。今週末のユニオン遠征に貴方も参加して頂きたく」

 

宮部「は、はぁ…」

 

加賀「指揮官…それはあまりにも突然過ぎでは?宮部も返答に困っています」

 

彼女からの知らせに宮部は困惑し、その時思った言葉を加賀が代弁する。

 

宮部「何から話せば良いか…その、なぜ自分がユニオン遠征に?」

 

しがない一介の戦闘機搭乗員でしかない自身が、なぜ外国への大規模遠征に参加するのか、それが気になって性がない。

 

栗田「まぁ結論から言うと、"宮部少尉が元の世界に戻る手掛かり"を掴めるかもしれないと踏んだからよ」

 

宮部「!…それは本当ですか?」

 

その言葉に宮部の心臓が大きく跳ねる。

 

栗田「えぇ。ユニオンは、鉄血には深く及ばないけれどセイレーン技術の研究・解析に長けているわ。以前から天城と一緒に、貴方がこの世界に転移してきたことにセイレーン技術が関与しているかもしれないと考えていて、今回の遠征はそれを調べることができる絶好の機会なのよ」

 

当然ながら、これらの理由は仮初めである。

 

天城含め自分の命が狙われていることを馬鹿正直に話してしまうと、赤城や加賀達、そして宮部までも遠征への参加を拒否し重桜に残ってしまうだろう。

 

赤城と加賀もまた、あの件の当事者に近い存在であるが故に、梶原元指揮官の標的になる可能性は十分に考えられる。

だからこそ、彼女は真実を伏せることにした。

 

栗田「補足しておくと、転移に関する情報が得られるとはまだ確定した訳じゃない。だけど行ってみても損はないと思うわ。どう?行ってみないかしら?」

 

宮部「―では、私もユニオン遠征に参加させて頂きます」

 

当然ながら、一刻も早い地球への帰還を望む宮部がそれを断る訳がなく、迷いもせず即座に参加を表明する。

 

長らく進展が無かった"元の世界へ戻る方法"に関する情報を掴めると思うと胸が高鳴り、愛する妻と子供との再開が待ち遠しくなる。

 

栗田「じゃあ私は、天城との遠征行程の最終調整があるからこれで失礼するわ」

 

彼女には、本日も残業業務が残っているため足早に部屋を立ち去ろうとしたが、ここで一つの違和感を感じ取る。

 

栗田「…ところで、やけに部屋が静かだなと思っていたら赤城が居ないわね?いつもなら宮部少尉の傍に居座っているはずだけど」

 

土佐「腰巾着なら上機嫌な様子で宮部の部屋に向かっていたぞ。まぁ大方、演習に参加することになった宮部の荷物を勝手に取りまとめているのだろう」

 

縁側で日向ぼっこをしていた土佐が呆れたように、栗田の問いに返答する。

 

宮部「赤城さんが自分の部屋に…?鍵は施錠していますよ?」

 

土佐「宮部、遅くなったが忠告しておく。腰巾着にはあらゆる防犯設備は意味を成さず、例えば合鍵を作ることぐらいなら造作もない。今頃は身支度以外にも部屋に残った宮部の匂いを嗅いだり、私物を鑑賞用に回収しながら至極の時間を過ごしているだろう」

 

宮部「ゑ゙?

 

理解し難い謎行為に戦慄し、少なからず恐怖を感じてしまった。

 

加賀「はぁ…また姉様の不法侵入癖が出てしまったか…」

 

栗田「プライバシー保護の欠片も無いわね。あっ、そもそも()()()K()A()N()-()S()E()N()()()()()()()()()()()()()()()()わね」

 

土佐「おい指揮官、それは聞き捨てならないぞ」

 

宮部「ははは…」

 

苦笑の中で、重桜の空母系KAN-SENはやや個性的な方が多いんだなとそう思う宮部であった。

 

 

 

 

 

to be Continued…

 





久しぶりの投稿によって、内容やキャラ設定に不備があるかもしれないので、その場合はご指摘を頂けますと幸いです。

また作品の更新停止期間中に評価して頂いた方々、八咫烏0824さん、はんこん3さん、ふくよかな体型さん。
そしてお気に入り登録を継続・新規登録してくれた皆様、本当にありがと御座います!!

筆者のモチベーション維持にも繋がるかもしれないので、お気に入り登録、評価、そして感想をお待ちしております!

それではグッバイ

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