戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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01 覚醒める(めざめる)剣

 

今から約10年前。

私が6歳の時に両親と妹の結衣の4人家族で都内の一戸建てに住んでいた。

父は聖遺物と呼ばれる遺物の研究者、そして母は父の研究を補助していた。

だがある日を境に2人は帰って来なくなった。話によれば、聖遺物の起動実験中に亡くなったのだという。

残された私と結衣は両親の親戚から拒絶され、結衣だけならという条件の元引き取られて行った。残された私は1人で孤児院で育った。そして16歳になったあの日・・・私の運命は大きく変わった。

 

ー私の名前は奏宮 颯。シンフォギアの装者に選ばれてしまった存在ー

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

朝、颯は普段通りに目を覚ました。

髪型は赤いショートヘアと透き通った紫色の瞳。

普段寝てるのは2段ベットの下側。

年頃の女の子らしい物は自分の小遣いで買ったCD位と小型の音楽再生機器。それも流行りのアーティスト、風鳴翼のCD。元は天羽奏と共にツヴァイウィングとして活動していたが解散。以後は彼女1人のソロ活動という形になった。

突如としてライブ会場に現れた認定特異災害ノイズによる惨劇により大勢の観客が命を落とした。それだけは報道されている。そして自分と同い歳で生き残った子が居るという事も。

 

「んん…はぁあ…もう朝だよ…。」

 

身体を起こしてベットから降りた。既にバタバタと廊下から足音が聞こえる。

机には参考書とノート、シャーペン、それから消しゴムが散らばっていた。

もうこの歳になると進路の話で持ち切りになる。志望校とかそんな事言われても颯には解らない。自分のしたい事も、やりたい事も、将来の夢も。

 

「颯ねーちゃん、おはよー!」

 

ドアを開けるとすれ違った小学生位の男の子に挨拶される。それに対して面倒そうにおはようと返す。そんなのが日常茶飯事。孤児院とは言え、年齢層は幅広い。此処に居られるのは18歳迄。

 

ここ、天野ヶ原孤児院は認定特異災害により親を亡くした子や両親が蒸発したか或いは育てるのが困難になった子、親による虐待による保護等、事情は様々。颯も居られるのは再来年迄。未だに引き取り先が見つからないのは事実だった

 

「颯お姉ちゃん、その…コーヒー入れといたから…。」

 

 

「ん…いつもありがと。真依は優しいね。」

 

リビングへ来ると近寄って来た大人しめの小学生の女の子。長い髪をツインテールにしていた。そっと彼女の頭を撫でてやる。正直な話、そこまで気を遣わなくて良いとは思う。彼女は人に馴染むのが難しいとの事。特に誰かが怒鳴ったり大きな声を出したりするのが嫌いらしい。

 

「…また朝から賑やかだね、ホント。」

 

椅子へ腰掛けるとコーヒーを少し飲んだ。味は少し薄いがそれが癖になる。少し経つと人数が増えて余計騒がしくなった。静かな朝なんか滅多に無い

そして時間になると自分達の朝食を取りに行った。

 

「今日は目玉焼きに…スクランブルエッグ、ポテトサラダに…パンか。」

 

颯は献立を見ながら呟く。食事も何かとカロリーや栄養バランスが考えられた物になっており、インスタント類なんか出ない。そして料理をトレイへ並べ、それを持って再び席へ座る。

 

「頼むから、食事は座って食べてよね?朝から色々言うのは疲れるのー。」

 

食べる前に颯は男子らをじろりと見た。騒がしいのは主にそこの3人。圭太に裕貴、悟志。またの名を悪ガキ三人衆。何れも小学生だった。先程挨拶して行った子は真斗。同じ小学生なのだが大人しめの方。

 

「颯姉、またコーヒー飲んでる…。」

 

 

「別に良いでしょ?大人のトッケン…って奴?」

 

 

「まだ16じゃん…。」

 

横に座ったのが優里。自分の一個下の年齢であり中学3年。高校受験が控えている事もあり、毎晩勉強で忙しいらしい。

歳が近い事もあり姉妹の様な付き合い方をしている。彼女の受験勉強が忙しい為、悪ガキ三人衆と他の子の面倒は颯が見ている。

 

そして朝食を済ませると颯は一旦部屋へ戻った。この孤児院には小学生男子4人、小学生女子1人と女子中学生1人、高校生女子1人。ホントは小学生女子がもう1人居たが、ついこの前引き取られて行った。里華というショートヘアの子。男の子並の活発さを持っていた。

 

「あ…そろそろ行かないと。」

 

颯はカバンへ筆記具と教科書を詰め込む。私服で行ける高校の為、茶々っと着替えてしまえば直ぐに済む。

部屋から出ればまたバタバタしている。

例えるならTVで見る大家族の子供達の様な感じ。

 

「颯ちゃん、志望校決まった?やりたい事とか…その、見つかった?」

 

この人は裕香さん。ここの責任者で何かと私を気にかけてくれている。

 

「んー…中々決まらなくてさ。歌とかは興味有るけど…シロウトが音楽なんて難しいでしょ?」

 

 

「あと2年したら此処出ないとだし、早く引き取り手が見つかると良いけど…あと、これ、颯ちゃんに渡して欲しいって。多分…亡くなったお母さんの知り合いの人だと思うけど……。」

 

 

「…何これ?まぁ、その頃までには見つけるから大丈夫。だから安心してよ…それじゃ、行ってきます。」

 

受け取った箱をカバンへしまう。

此処から歩いて約30分の所に通っている高校がある。本当なら此処に行きたいとか幾つか希望を出そうと思ったが、良い高校はやはりそれなりの学費が掛かる。

それを負担させるのは忍びないという理由から今の高校を選んだ。

 

学校側から特別にアルバイトも許可されているから、それを利用して給料の半分は孤児院へ渡している。そんな事をしているせいか財布の中は寂しい。

 

「今どきの子は皆、携帯持ってるんだよな…羨ましいや。」

 

歩きながらふと考えてしまった。颯は16なのに携帯電話すら持った事も無い。本当は欲しいと思った事も有るが、やはり無理を言うのは良くない。

自分より年下の子は玩具やら何やら買って貰っているが、颯だけは自分より他の子を。と言って避けてきた。

最年長が物を強請るのは恥ずかしいし、アルバイトも出来るのだから自分で何とかする。その方が気が楽になる。

 

そして高校へ着くと靴を玄関で履き替え、そのまま教室へ。仲の良い子は居るが連絡先とかは知らない。

 

「…おはよ。」

 

一言残して自分の席へ座る。

 

「お、今日もクールな颯様のご登場だ!」

 

「うっさい…気が散る。」

 

この子が星那。男っぽい髪型をしているし、一人称はオレ。

 

「相変わらず星那さんはお元気ですね。おはようございます、颯さん。」

 

ニコニコと微笑んでる子髪の長い子が優季。家はそれなりに裕福らしい

 

「颯ぇ!アレ見た?昨日のオカルト特番!すっごかったよー?UFOだよ、UFO!」

 

そして最後に来たのが玲奈。特撮とオカルトが大好き。

そんなこんなで今日も賑やかに過ごしている。1人が好きな颯にとっては複雑な気分だった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー放課後ー

3人と学校の外で別れてから颯は1人バイト先へ。バイトしているのはチェーン展開している人気のファミレス。出勤すると今日も賑わっていた。此処で夕方の20:00頃まで働いている。

 

「…いらっしゃいませ、ご注文決まりましたら呼んでください。」

 

フロアへ出て接客を始める。

あまり笑顔を見せないクールっぽい為か一部の男性客からは人気らしい。実際は笑うのが苦手なだけなのだが。オーダーを取ったり、食器の片付けから清掃、それらが主な仕事だった。

 

「調、今日はハンバーグな気分なのデスッ!だからこのハンバーグセットを…!」

 

 

「ダメだよ切ちゃん、これ食べたら夕飯が入らなくなっちゃうからッ…!」

 

入ってきたのは変わった子。自分より歳が下に見える。1人はツインテール、もう1人は金髪の子。頭にバツ印のヘアピンをしている

 

「あの、赤髪のおねーさん!注文をお願いしたいのデス!」

 

 

「え!?あ、はいはい…どうぞ?」

 

 

「このハンバーグセット、それからご飯を大盛りと…フライドポテトと…。」

 

 

「切ちゃん…はぁ…仕方ない…。」

 

 

「およ?調は食べないんデスか?ほらほら、パフェも有るデスよ!」

 

 

「…ごめんなさい、お姉さん。ハンバーグ以外はキャンセルで。あと、ハンバーグはこのお手頃食べ切りサイズに変更を…。」

 

 

「およよーーー!!?ハンバーグにライスは付き物デスよ、調ぇ!?そんな節操な……!」

 

 

「じぃーーー。」

 

 

「う、うぅ…解ったデス……。」

 

 

「…じゃあ、ハンバーグの食べ切りサイズで良いですか?」

 

 

「デス……。」

 

「お願いします。後は大丈夫ですから。」

 

 

「…畏まりました。」

 

颯は注文票を手にキッチンへ向かった。そしてそこでオーダーを伝えると今度は別の仕事へ。それから出来上がった小型のハンバーグを運んだ。

 

「ごゆっくりどうぞ…。」

 

金髪の子は嬉しそうにハンバーグを食べており、片方の子はそれを見ているだけ。他に何か頼む様子は無く、食べ終わると会計だけ済ませて此方へ手を振りながら帰って行った。

そして気が付けばもう退勤時間。颯は店長に挨拶だけするとバイト先を後にした。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

既に夜の20:00。外は真っ暗だった。

そして店から離れて街の方へ向かう。孤児院迄はちょっと遠い。事実、この辺も漸く復旧したばかりだった。認定特異災害、またの名をノイズ。種類形は様々だが人間を消す為の存在である事は明確だった。颯は歩きながら耳にイヤホンを付け、再生機器で音楽を流す。翼の透き通って凛とした歌声が流れて来る。

 

「…こうしてる時が1番幸せ。誰にも邪魔されないで静かに過ごせる。」

 

そう思いながら歩いていた時、何やら街中が騒がしい。ふと足を止めると此方へ人が走って来る。しかも大勢。思わずイヤホンを外して立ち止まる。

 

「は?ちょっと……な、何!?」

 

人々が口々に叫ぶ。ノイズが出たと。

悲鳴と叫び声が辺りに響き渡る。ここ最近はノイズなんて出なかった。出る気配すら無かったのに。それが何故?

 

「ッ…!!」

 

颯もその場を離れようとする。だが、建物の近くで蹲って泣いている女の子を見つけた。ふと視線を奥へ向けると人型のノイズが数体ほど此方を見据えていた。

 

「ちょっと…冗談でしょ!?ねぇ、大丈夫?ほら、お姉ちゃんと一緒に逃げよう?」

 

女の子の手を引いて颯も走る。そして普段、帰り道で通り抜けているアーケード街の通路を右へ左へと抜けて行く。どんどん孤児院の方向からは離れて行ってるのが自分でも解る。

 

「はぁ…はぁ…ここまで来れば…ッ!ねぇ、痛い所は無い?大丈夫?」

 

立ち止まると連れて来た女の子を気遣う。怪我はしてないらしい。先程居た辺りからは火の手が上がっているのが解る。携帯が無い為、連絡すら取れない。オマケに公衆電話もこの付近には無い。

 

「お姉ちゃんッ、あれ!」

 

少女が指さした方向からノイズが再び現れる。どうやら2人を追ってきたらしい

 

「くそッ…走るよ!」

 

少女と共に再び走る。だが少女は何かに躓いて転んでしまった。

 

「ッ……ほら、乗って!お姉ちゃんが必ず守ってあげるから…! 」

 

泣いてる少女を背負ってひたすら走る。

だが颯も体力が限界に近付きつつあった。逃げ続けて次の角を曲がった時、そこは行き止まりだった。

 

「行き止まり!?嘘でしょ…冗談じゃない…!」

 

壁はどう見ても乗り越えられない。高過ぎる。辺りには店の看板やゴミ箱が置かれている。そしてノイズは2人の逃げ道を塞ぐ形で立ちはだかる。もはや袋のネズミだ。颯は少女だけでも逃がそうと考える。

 

「…いい?もしお姉ちゃんが居なくなっても、ちゃんと逃げるんだよ?そしたら大人の人に助けてって言えば助けてくれるから。解った?」

 

少女を下ろし、持っていたハンカチで擦りむいた膝を手当してやると少女の前へ立つ。そして落ちていた傘を拾うと構えて見せた。

 

 

「来るなら来なさいよ!!このバケモノッッ!!」

 

ノイズの1匹が颯へ白い腕を放った。それを傘で防ぐのだが途端に傘が炭化し、枯葉の様に崩れ落ちてしまう。

 

「何も出来ず…何も叶えられないまま…此処で死ぬの?…ふふッ、それでもいいや。私は自分の夢も希望も何も無い空っぽな人間だもん…。けど、この子だけは死んでも護る……絶対に!!」

 

ゴミ箱や石を投げ付けてみるがやはり効果が無い。じわりじわりと距離だけが詰められていく。もう打つ手が無いと思った時だった。ふと今朝渡された箱の事が気になった。そしてそれを取り出し、開けてみる。そこには赤く細長い石が付いたペンダントだった。一緒に入っていた紙にはメッセージも添えられていた。

 

[これを貴女に。私はいつでも傍に居る。]

 

こんな物が何かの役に立つのか?けれど手放してはいけないと直感が告げている。そしてノイズによる攻撃が再び繰り出され、近くのガラスが割れる。咄嗟に少女を庇うのだが飛沫して来たガラスにより右手を切ってしまう。そして血がペンダントへと垂れた。

 

「お願い…私にこの状況を覆せるだけの力が有るのなら…神様でも何でも良い…私を、私達を…救ってぇえッッッーーー!!!!」

 

力の限り叫び、颯は右手を空へ掲げた。そして数体のノイズは颯目掛けて攻撃を繰り出した。だが紅い障壁がそれを阻んでいた。そして颯は無意識にソレを纏った。

 

身体には赤と黒のギアインナー。そして両腕には紅いガントレット。両足には黒いブーツ。両耳にはヘッドフォンを象った装備品。同じく赤い。腰辺りにはリボンを象ったブースターが備わっている。

 

「これなら……戦える…!アイツらと!!」

 

颯は構えると右腕のガントレットから剣を引き抜く。黒い刃を持った剣。そして両手に持って構え、突撃する。

 

「はぁあああッッーー!!!」

 

目の前の1体目を斜めに斬り倒すと消滅、そして2体目を横一線に斬り裂いて消滅させた。そして3体目のブドウ型ノイズが遠距離から攻撃を繰り出して来る。

 

「ッ…危ないッ!!」

 

少女の前へ立つと左手を前へ突き出す。障壁を生み出すと攻撃を防いで見せた。

 

「そうだ、諦めちゃいけないんだ…どんな時でも…どんな状況でも…!!私の心が折れない限り…私は抗い続ける…私は生きる事を…自分自身を…諦めないッッ!!」

 

障壁を消すと剣を握り締めて正面へ突き出す。そして走り出すと同時に炎へ包まれ、まるで火の鳥の様に駆け抜けて行った。そして立ち止まるとノイズは全て消滅していた。

 

「はぁ…はぁ…ッ」

 

纏っていた何かが解かれ、普段着へ戻る。そして颯はその場に座り込んでしまった。

 

「私がやったの…?」

 

先程、ノイズが居た場所は何かが燃えた様な後と壁には刃物で出来た傷が。

間違い無く自分がやったらしい

 

「お姉ちゃんすごい!ヒーローみたいでカッコよかった!」

 

少女は無邪気に笑っていた。

颯は少し笑うと立ち上がり、彼女と共に近くの交番へと歩いて行く。

少女がはぐれてしまった親を探す為に。

 

 

 

これが全ての始まりだった。

 

 

ーアナタの想いは誰かを繋ぐチカラになるー

 

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