戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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10わたしのおねえちゃん

今からもう何年も前の話。

私が物心付いた時には両親は居なかった。唯一、傍に居たのは姉だけ。

両親の葬式の時もずっと泣くのを我慢してたのを覚えている。それから私は別の家に引き取られた。

 

私は姉と離れたく無かった。

ずっと一緒に居たかった。

でも、姉は私から離れて行った。

あの日、姉は私を捨てた。

 

引き取られた先で私の居場所なんか無かった。その家の同い歳の子は私の事を避け続けていた。けれど科学者である義父は優しい人だった。私はその人の為に生きようと決めた。

義父が提唱する説の証明の為、自ら進んでシンフォギアシステムの被検体となった。

戦闘データを元に造られたイチイバルの模造品。これを纏う為に。

 

 

義父の目的は世界を覆す程の力を手に入れる事。力無き者は力有る者に従うのが正しいという事を世の中へ知らしめる為だ。その為に風鳴機関とも関わりを保って来たのだという。

私の義父、纏井総一郎は長年それに拘ってきた。

 

 

「私の名前は纏井結衣。力を望み、シンフォギアシステムに適合するべく自ら被検体となった者。」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

颯は寮へ帰ってからもずっと憔悴していた。食事も殆ど残し、塞ぎ込んでいる様にも見えた。すると美結は突然立ち上がると颯へバスタオルを放った。颯の頭へパサッと掛かると彼女は不思議な顔をして美結を見ていた。

 

 

「お風呂、一緒に入るわよ。」

 

 

普段なら別々に入っているのに珍しい。

美結は先に風呂場へと向かい、彼女の事を待っていた。

 

 

「心配しなくてもお風呂なら自分で入れる…だから……。」

 

 

 

「違う。私が颯と入りたいだけ…良いじゃない、変な意味なんて無いんだから!ほら、さっさと脱ぐ! 」

 

 

 

「え?あ…うん……。」

 

 

颯は促されるまま衣類を全て脱ぐと美結と共に浴室へ。掛け湯を済ませると互いに向かい合った状態で湯船へ浸かっていた。

 

 

「…颯はパパやママとお風呂に入った事は?」

 

 

 

「覚えてない、もう随分と昔の事だから……結衣となら有ったかも。1回だけね。」

 

 

 

 

「その結衣ちゃんって…誰?」

 

 

 

 

「歳の2つ離れた妹。今は別の家に引き取られてるから…もう苗字は私と同じ奏宮じゃないけど。」

 

 

颯は少し顔を俯かせた。思い出すのは結衣の事ばかり。あの時、彼女に浴びせられた言葉の方が重たいが、それでも彼女は颯にとっては大切なのだ。

たった一人の妹だから。

 

 

「……そっか。私はパパとママと代わる代わるに入ってたなぁ。一緒に数字とか数えたり、何気無いことを色々話したりして。」

 

 

 

 

「仲良いんだ…羨ましい。」

 

 

 

 

「そう?かなり心配性よ、ウチの親。此処に入学するって言ったら色々心配されたし……今も元気か?とか具合は大丈夫か?とかさぁ、色々聞かれるの。」

 

 

 

 

「それ程、美結の事が心配なんだよ。過度な心配でも、愛されてるって事に変わりは無いんだもの。」

 

 

 

颯は少し笑うと背伸びをする。

美結が颯の方へ距離を詰めると自然に寄り掛かって来た。

 

 

「……何?」

 

 

 

 

「前にも言ったけど、颯は1人じゃない。私が傍に居る…だから安心して良いんだからね。」

 

 

 

「…解ってる。美結は私にとって羽根の休められる場所だって思ってるから。」

 

 

 

「ねぇ…颯?」

 

 

 

「今度は何…んッ……!?」

 

 

 

颯が振り向くと不意に美結の顔が近くなった。そのまま自分の唇に柔らかく、温かい感触が伝わって来る。

ゆっくりと美結は颯から離れた。

 

 

「前々から言えなかった…嫌われると思って。私は颯の事が好き…他の誰よりも。響だろうと、未来だろうと……颯を取られたくなくて。正直、羨ましかった…颯があの2人や調ちゃんと切歌ちゃんとも仲良くしてるのが。だから…このまま颯が何処か遠くに行っちゃうと思って……ッ!」

 

 

美結は向き直ると少し苦しそうに嗚咽を漏らしながら話始める。薄らだが泣いている様にも見えた。

 

 

「……美結の気持ちは凄く嬉しい。前の私なら絶対、断ってたか邪険に扱ってたと思う。他の誰とも関わりたく無かった私を変えてくれたのは美結なんだよ?孤児院だけが私の世界の全てだと思ってた。でも、それは違った。本当は世界はもっともっと広いって事に気付けたから。」

 

 

颯は美結へ近寄ると指で彼女の目元を撫で、涙を拭う。膝立ちの姿勢になると彼女をそっと抱き締めた。

 

 

「…ありがとう、美結。私は何処にも行かない。ずっと傍に居るから。美結の気持ちは素直に私も嬉しい。」

 

 

 

「えッ…?」

 

 

 

「良いよ、美結と付き合ってあげる。まぁ…友達の上位の関係だけど…?」

 

 

 

「ぷッ…何それ?あーあ、励ますつもりが変な事になっちゃった!逆上せる前に洗って出るわよ…本当、変なの!」

 

 

颯は少し頬を赤らめながら美結へ伝えた。彼女もそれを受け入れるとお互いに笑いながら離れる。

その日、風呂を済ませた2人は颯のベットで互いに寄り添いながら眠ったのだった。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

翌朝、颯達は本部のブリーフィングルームに居た。

何でも宣戦布告して来たイノベイターというテロリスト集団をどうするか。

それを1度話し合う為だ。

現状は目立った事をしていないが何が起こるかは解らない。彼等のアジトも人数も掴めていない事から対策の打ち様が無いのは事実。それでも、出来る事をしなければならない。

 

 

「世界を変革する…でも、どうやってそれを成し遂げる気?」

 

 

 

「うーん…私には解らないなぁ。」

 

 

 

「アタシもデス!難しい事はさっぱり解らないデスよ…およよ…。」

 

 

 

「変革とは…新しく変える事……。」

 

 

調がブツブツ言いながら携帯を見ている。どうやら単語を調べていたらしい。

すると何かを思い付いた様子だった。

 

 

「あの時の私と…マリアや切ちゃんと同じかもしれない。あの人達のやってる事!」

 

 

 

「……それだけを正しいと信じて進んで、目的の為なら構わないと誰かを傷付けて突き進んで。…そういう事デスか。」

 

 

2人は響達の方を少し見ると小さく頷いた。2人は元武装組織フィーネの一員だった。無論、此処には居ないがマリアも同じ。嘗て響、翼、クリスとも対峙した事さえあった。元テロリストの2人だからこそ解るのかも知れない。

すると4人が居るブリーフィングルームに弦十郎が入って来た。4人を見据えると自ら話を切り出す。

 

 

「…熱心な話し合いの所、済まないが颯君。キミには本作戦から外れてもらう。」

 

 

 

「え…何故ですか?テロリストが何して来るか解らないのに!?私は……戦力外という事ですか?」

 

 

 

「そうじゃない…キミの心には未だ迷いがある。そうだろう?取り返しが付かなくなってからでは遅い、かなり重要な迷いがある筈だ。」

 

 

 

「ッ……お見通しという事ですか。」

 

 

 

「あれから色々、キミの事を調べさせて貰った。聖遺物研究者、奏宮結弦博士とその妻である詩音博士。キミはその2人の娘だ。…同じ研究者だった櫻井了子君ともキミの両親は面識が有った。そしてキミが纏うギア…SGr-07、レーヴァテインは両親が造った物だという事も調べて解った。」

 

 

 

「……やっぱり、父さんと母さんがコレを。」

 

 

 

小さく弦十郎は頷くと更に話を進める。

 

 

「そしてキミには妹が居る。それが奏宮結衣……。この間、此処から脱走した少女が結衣という名前だった。今は纏井結衣と名を変えている。彼女を引き取ったのが纏井機関…聖遺物研究にも噛んでいる秘密組織……あの黒いイチイバルも此方の持つイチイバルの戦闘データを元に造り出された物である事も判明した。既にデータを流した職員は拘束している。」

 

 

纏井機関というのは颯も初めて聞いた。 引き取られた先で結衣に何があったかは解らない。しかし、アレを纏っているという事は恐らく彼女は実験体にされたのかもしれない。

 

 

「…颯君。此処まで話したがキミ自身はどうしたい?此処から先は俺が決める事でも、此処に居る装者達が決める事では無い。キミ自身が決める事だ。」

 

 

 

「私は……結衣を助けたい。例え解って貰えなくても、拒絶されたとしても…それでも私は手を差し伸べ続けます。」

 

 

颯は一度深呼吸し覚悟を決めると弦十郎を真っ直ぐ見つめていた。

 

 

「…解った。響君達は街で警戒を、颯君は俺と共に来て欲しい。」

 

 

 

指示を出されると響達は立ち上がり、ブリーフィングルームを後にした。

颯は弦十郎と共に部屋を出ると彼と共に研究室へ。そこに居たのはエルフナイン。待っていましたと言わんばかりの顔で颯へ近寄って来る。

 

 

「…ギアペンダントを貸して貰えますか?」

 

 

 

「ん?はい…。」

 

 

颯はペンダントを外すと彼女へ手渡す。

エルフナインが何かを施すと直ぐに返却された。

 

 

「これは…?」

 

 

 

「この前、颯さんのギアをメンテナンスした時に修理次いでに造ってみたんです。イグナイトモジュールを!」

 

 

 

「イグナイト…モジュール?」

 

 

颯は首を傾げると弦十郎が説明を加える。言ってしまえばシンフォギアの強化システムなのだと。今回は突発的な為、装着型だと付け加えて。

 

 

「…要点は解りました、ありがとうございます。」

 

 

 

颯が出て行こうとすると忘れ物だと言われ、弦十郎からメモ書きを手渡される。そこには事細かに書かれた地図が。

それを受け取るとポケットへしまった。

 

 

「…行って来い、キミ自身の戦いを終わらせる為に。世界が終わってからじゃ解決出来ない事も有る。それに俺達は何度も世界の終わりを覆して来た。だから安心して良い!」

 

 

 

「颯さんッ、イグナイトモジュールは999カウントの制限時間が有ります。セーフティは3段階、ニグレド、アルベド、ルベドのそれぞれで、段階を上げるとカウントの消費も併せて早くなるので…忘れないで下さいね。もし、カウントを過ぎればギアは強制的に解除されてしまいます。十分に気を付けて下さい。」

 

 

エルフナインは颯へ最後の説明を行うと、颯は頷いてみせた。

 

 

「…どうしてそこまでして私の事を?」

 

 

 

「決まっている。例え本当の肉親が居なくてもキミは1人じゃない…俺が、此処に居る皆がキミの家族だ。今は離れているが後の3人の装者達も含めてな。家族の心配をして何が悪い?それに見守る事も、送り出す事も大人である俺の役目だ。それくらいはさせて欲しい…奏宮博士夫妻の忘れ形見であるキミに。」

 

 

 

「……行ってきます。結衣を必ず連れて帰って来ますから!!」

 

 

 

「うむ!!行ってこいッ!!」

 

 

送り出されると研究室から走って外へ出る。渡されたメモを見ながら颯は現地へと急いだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

メモに書かれていた住所、そこへ向かうと唯の広い場所だった。でも颯には何故か懐かしい気がした。

 

 

「此処って……?」

 

 

 

 

「公園よ。もうだいぶ前に無くなっちゃったけど……。」

 

 

 

声がすると颯は振り向いた。そこに居たのはギアを纏っていない結衣の姿。

腰辺りまで伸びた赤い髪は結ばれずに風で靡いていた。紅く透き通った目が颯の方を見ている。

 

 

「……やっぱりそうだった。2人でブランコに乗ったり、滑り台で遊んだりしてた。」

 

 

 

「でも、此処で遊んだのはそれが最後。貴女は私の前から姿を消し…。」

 

 

 

「結衣も私から離れて行った。私は結衣が嫌いで離れた訳じゃない…結衣だけでも幸せになって欲しかったからそうしたの。気付いてあげられなくてごめんね……。」

 

 

 

「…もう過ぎた事。今更、足掻いたって取り戻せる訳じゃない。私は貴女を殺して義父様の為にそのギアを捧げる。既にイノベイターと結託するともう決めているの。貴女は大人しく死んでくれれば良い。さっさと私の前から消えて。」

 

 

 

「そんな事させない。私は結衣を絶対に連れて帰る。そう決めたから…名前が変わっても、結衣は結衣なの。私のたった一人の大切な妹。それに変わりは無い…だからッッ!!」

 

 

 

「お喋りは飽きたわ…さっきからくだらない事ばかり言って。いい加減ケリをつけましょう?あの時、初めて会った時からずっと気に食わなかった。」

 

 

 

「…そうだね、そろそろケリを付けないと。世界の変革の阻止だとか…未だ色々やるべき事は残っているから。」

 

 

 

互いに向かい合ったまま、ギアペンダントを掲げる。そして。

 

 

「Saver all-revantin……」

 

 

 

 

「Get rid of-ichival……」

 

 

 

「…tronッッ!!」

 

 

 

「…zizzlッッ!!」

 

 

詠唱を終えた2人は紅いギアを、黒いギアを互いに纏うと決戦が始まった。

剣による斬撃が、銃による銃撃が交錯していく。ぶつかり合う金属音を辺りに響かせながら。

 

 

「さっさと消し飛べッッ!! 」

 

 

 

「誰が…ッッ!! 」

 

 

 

放たれた巨大なミサイルを剣で両断すれば、そのまま刃を振り下ろす。しかしそれをリフレクターで弾いて受け止め、ハンドガンによる銃撃で反撃。颯へ数発着弾すると血が飛沫し、足元の草を赤く染めた。それでも颯は攻撃の手を緩めない。一撃が防がれればもう一撃と淡々と攻撃を繰り出していく。翼の様には行かないが彼女も剣を扱う者の端くれ、その剣さばきは確実に様になっていた。

 

 

「くッッ…何なの…アンタはッッ!!」

 

 

 

 

「私はお前の姉だッッ!!お前を捨てて、自分1人だけの世界で生きようとした愚か者ッ!!でも…人は1人じゃ生きていけない!!誰かに支えて貰って…助けて貰って……生きていける事を知った!!だからッッ!!」

 

 

 

「アンタの考えを、思いを…私に押し付けるなぁあッッ!!」

 

 

 

結衣は颯を振り払うと空中へ飛び、ミサイルを撃つ。しかも今度は分割する他弾頭式。数多くのミサイルが颯目掛けて降り注いだ。結衣はこれで間違い無く終わる。そう思っていた。

 

 

「私はこんな所で死ねない。いや、死なない。貴女の…結衣の…手を握る迄はッッ!!この剣は唯の剣なんかじゃない…迷いを…負の連鎖を断ち切る為の剣だぁあああッッッーーー!!!」

 

 

颯は首元のギアを外す。そして叫んだ。

 

 

 

「イグナイトモジュール…抜剣ッッ!! 」

 

 

 

[Dainsleif.]

 

 

掲げたギアが展開され、三方へ開くと颯の胸元へ突き刺さる。凄まじい激痛が彼女の身体を駆け巡った。

 

 

「ぐッッ…うぁああッッ…あッ…がぁあああッッーーー!!?」

 

 

颯の中を様々な感情が駆け巡る。

痛み、苦しみ、怒り、そして憎しみ。

自分がされた事や自分が感じた事。

あまりの辛さに逃げ出したくてたまらない。それでも、彼女は苦しみながら前へ進む。自分が守りたいと、大切にしたいと思った事を信じて。

 

 

「ッッ……!!」

 

 

ミサイルが着弾し、辺りに硝煙と炎が立ち込める。結衣は息を切らしながらその光景を見ていた。間違い無く今の一撃で死んだ。すると煙が晴れ、何かが立っているのが解る。そこに居たのは黒いギアに身を包んだ颯が。先程と違うのは腰周りのインナーの一部が無くなり、レオタードの様な姿に変化した事。更に胸元の装甲の上部も胸の谷間が見える程に変化していた。そこから下は目を象った様な装甲が追加されていた。

ブーツも足首の部分にそれぞれひし形の装甲が纏われている。握り締めていた剣も刃は黒く変色していた。

 

 

「……私はもう迷わない。そう決めたからッッ!!」

 

 

 

「ッ…死に損ないめぇええッッ!!」

 

 

 

 

「だぁああッッーー!!!」

 

 

 

結衣は左右のスカート部を展開しミサイルを放った。それを颯は剣で一つ一つ斬り裂いて突き進む。間合いを詰めるがやはり、リフレクターにより阻まれてしまう。が、左手にも同じ剣を持つとそれを障壁へ突き立てると刃を侵入させ引き裂いた。

 

 

「嘘!?この絶対防御を超えるなんて…ッッ!?」

 

 

 

「こんのぉおおッッ…!!」

 

 

引き裂くと右手に握っていた剣を逆手に持ち、結衣を殴り飛ばした。衝撃と共に結衣は吹き飛び、地面へ勢い良く倒れ込んでしまった。

 

 

「はぁッ…はぁッッ……!!」

 

 

 

 

「ッ…どう…してッッ……!?ギアに強化を施した筈なのに……ッ!!」

 

 

 

 

「そんなモノで私を倒せると思う…?私の思いは…覚悟は……そんなモノじゃ打ち砕けないッ!!」

 

 

剣を構えると颯は鋭く結衣を睨み付ける。向こうは未だ戦闘意思が有る。だから油断は出来ない。

 

 

 

「そう……ならこれも…跳ね除けてみなさいよ……颯ぇえッッ!!」

 

 

結衣は血を吐き捨てると睨み付ける。

これで最後だと言わんばかりに。

するとニヤリと微笑み、颯を指さした。

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl……。」

 

 

その歌と共に結衣はイチイバルのレールガンを展開する。電撃が数回走ると、それは放たれた。

 

 

「ぐぅうッッ……結衣ぃいいいッッーー!!」

 

 

 

颯はイグナイトのリミッターを2回外し、光の中へ突撃した。焼き切れた剣を投げ捨てて彼女の元へ目掛けて。

何とか辿り着くと、そこには悲しそうな笑みを浮かべた結衣の姿があった。

 

颯へ向けられた閃光は彼女の手で射線を変えられ、空へ解き放たれた。それでも降り注いだ光は辺りの木々や建物を焼いて行った。

 

 

「結衣…ねぇ……起きてよ…結衣ッッ!!」

 

 

 

ギアの出力を超えた事でギアが強制解除され、颯は裸のまま結衣を抱き締めていた。すると薄らだが結衣は目を開けた。

 

 

「負けたんだ…私……。全力を出したのに……。」

 

 

 

「そんな事はどうでも良い…!!もう喋らなくて良いから……!」

 

 

 

「……ずっと謝りたかった。けど、出来なかった…許したら……私が私じゃ無くなる気がして……。私は…ずっと恨んでた……私の事を1人にした…お姉ちゃんを……だから…あんな事を……してしまった…。」

 

 

 

「ごめんね…辛かったよね…苦しかったよね……私が、私があんな事…言わなければ……ッ!!」

 

 

颯は泣きながら結衣を抱き締めていた。

彼女の背中を擦りながら。

 

 

「もう…自分を…責めないで…?私には…お姉ちゃんとの思い出は…あまり無いけど……それでも…貴女が私のお姉ちゃんで良かったと思う……。」

 

 

 

「ッッ……!!」

 

 

 

「ごめんなさい…そして…ありがとう……私の…お姉ちゃん……。」

 

 

その瞬間、ぱたりと彼女の手が力無く地面へ落下した。颯は何が起きたのかを瞬時に悟った。彼女の事を強く抱き締めながら颯は泣いていた。

 

 

「……顔を上げなさい。未だ生きてるわ、彼女。」

 

 

声を掛けられると、そこに居たのは金髪の女性。あの時見た人と全く同じ。

 

 

「貴女はあの時の…?」

 

 

 

「……本当に大切なのだと思うなら、握った手を絶対に離さない事ね。絶唱を使えばどうなるか、その子も解っていた筈よ。コレをあげるから、早く仲間を呼ぶなりして助けてあげなさいな。」

 

 

ポイッと颯の近くへ携帯を投げ捨てる。

女性は結衣へ近寄るとそっと何かを施し、背を向けて歩き出した。

 

 

 

「貴女は…誰なんですか……?」

 

 

 

「それはあの人が1番良く知ってる筈よ。」

 

 

 

「あの人って…ちょっと、待って下さいッ…!」

 

 

呼び掛ける颯を他所に女性は歩みを進めて行く。

 

 

 

「奏宮颯……あの子と同じ、貴女は真っ直ぐで強い子。迷ったら胸の歌を信じて前へ進みなさい…そうすれば自ずと答えは見えて来るから。」

 

 

こうして結衣と颯の激闘は幕を閉じた。

絶唱による重傷を負ってしまった結衣だったが、様態は安定し回復へと向かい始めた。不思議な事に結衣は致命傷だったのにも関わらず、大きな怪我は無かったのだ。

 

あの時からずっと離れていた姉妹は長い時を得て、漸く一緒になる事が出来た。 シンフォギアという未知のテクノロジーの力、そして颯自身の強い思いによって。

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