戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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11 偽りの旋律(メロディ)

古い日本家屋の様な屋敷。

人の出入りは殆ど限られているのだが、一人の女性がそこを訪れていた。

テロリスト、イノベイターの主格であるシャーロット。彼女は交渉の為に此処を訪れていた。長い廊下を歩くと通されたのは縦に長い畳の部屋。その襖が開かれるとそこに居たのは和服を着た白髪の男。この家の持ち主だった。名を纏井晃全と言う。彼女は座ると頭を下げた。

 

 

「……来たか、異国の者よ。」

 

 

 

「ええ。それで…私に何か用ですか?Mr.コウゼン。」

 

 

 

「…計画は如何様に進んでいる。儂が世界をその手に収める為の計画は。」

 

 

 

「順調に進んでるわ……貴方が欲しいのは不老不死の力。それに似合った国を支配する力。」

 

 

シャーロットは彼の方を見ながら呟いた。彼らの目的は一度世界を全て破壊し、その上で再度作り直す。全てが灰と化した時に強き者が世界を統べ、新たな形の世を築く事。

 

 

「この国は弱い…多少の犠牲など構うものか。変革には常に痛みが伴う……壊すのだ。弱者が蔓延るこの世界を!!儂が一からこの国を建て直す…神の力を持ちいて!」

 

 

 

「…フドウが貴方を切り捨てた理由も解る気がするわ。国を護る風鳴…そして国を壊し、立て直す事を理想とする纏井。私達と組んだ事で貴方は完全に敵に回った。」

 

 

シャーロットは淡々と話を続ける。

この国を護る存在が風鳴、壊す存在が纏井。壊す者と護る者の互いが存在している事になる。矛盾が生じているのは確かだ。

 

 

「……訃堂殿はこの件を見て見ぬフリをする。纏井が破壊した国を建て直し、建て直した国を風鳴が護る。それだけの事。儂を切り捨てたのはわざとだ。」

 

 

 

「年寄りはそこまでして国を私物と化すか……ところで、貴方の義娘はどうする気?」

 

 

 

「シンフォギアという玩具に頼り、敗れた小娘など…我が孫では無い。オマケに敗れた相手が奏宮の忘れ形見と来た……あんな無能な科学者の娘如きに敗れるとは何と情けない事か。総一郎も総一郎だ…儂の理想を叶える為に動けば良いモノを……アイツも儂にとっては理想の為の布石にしか過ぎんというのに。」

 

 

 

彼は結衣の事を端から良い様に利用する事しか考えていない。彼女は悪魔で総一郎の義娘、つまり自分から見れば孫になる。だが愛情だとかそういう在り来りな感情は結衣に対しては無かった。

この家に居る以上、彼女もまた纏井の人間。役に立たなければ切り捨てる、それだけの事でしか無い。

 

 

 

「愛情など端から無かった…所詮、彼女は唯(ただ)のモルモット。なら、処分は私が引き受けさせて貰うわ。新兵器の実験もしたいしね。」

 

 

 

「…好きにせい。早う変革の引き金を見つけろ。」

 

 

 

 

「では…また近い内に。」

 

 

シャーロットは頭を下げ、立ち上がると部屋を後にした。テロリスト、イノベイターのバックアップとして付いているのがこの纏井という機関。資金援助も彼らが行っている。

目的の為ならどんな手段だろうと構わない、まさに卑劣という言葉が似合う。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「コイツ…強いッ!?」

 

 

 

「やぁああッッーー!!!」

 

 

 

「ぐぁあッッ!!?」

 

 

少女の放った鋭い蹴りを食らうとローブを纏った男はバタリと倒れる。あれからイノベイターと名乗る集団が関わる事件が日増しに増えているのだ。そしてこの廃墟でも戦闘が繰り広げられていた。赤いシンフォギア、SGr-07レーヴァテインを纏う少女、奏宮颯。そしてSGr-03´ガングニールを纏う少女、立花響の両名によりアジト壊滅作戦が決行されていた。

 

 

「シンフォギアが何だってんだ…こっちには虎の子のアルカノイズが有るんだぞ!?」

 

 

 

「なら、出してみなよ…全て斬り裂いてあげるからッッ!!」

 

 

 

バラバラと撒かれた小型装置からアルカノイズが出現すると、颯はノイズへ立ち向かう。一方の響は抵抗する錬金術師らを相手に格闘戦を繰り広げていた。

 

 

 

「この野郎ッ!!」

 

 

 

「はッ!だぁあッッ!!」

 

 

相手の攻撃を躱し、蹴りやパンチを数発叩き込むと相手をノックアウト。今度は別の錬金術師が攻撃を仕掛けるとそれすら飛び越えて避け、左足を用いた蹴りを放って倒してしまった。こうしてこのアジトに居た錬金術師らは全滅。

新たな事件は止める事が出来た。

 

 

「ふぅ…やっと終わり!颯ちゃん、そっちは?」

 

 

 

 

「今ので最後。はぁ…これで何件目なんだか。数えたらキリが無い……。」

 

 

 

2人は辺りを見回す。辺りはアジトという割には非常に簡素だった。

だが肝心な主犯格の人物は居ない。

 

 

「帰ろっか、私お腹空いちゃった……。」

 

 

 

「ここ来る前にお弁当食べなかったっけ?」

 

 

 

「動くとお腹減るんだよねぇ…あはは。」

 

 

 

「はいはい……何か食べて帰ろう、私もお腹空いた。」

 

 

2人はアジトの外へ出るとギアを解く。

本部へ作戦完了と伝えると現地で解散となった。これだけで既に5件程。

そして最近ではコレに合わせて異様なエネルギー反応が観測され始めた。

それは現在も解析が進められているが、それ以上の事は未だ何も解ってはいない。

 

 

響と颯は街中に有るファミレスへ入った。響はニコニコしながら席へ座るとメニューを見ながら楽しそうにしていた。

世界が終わるかもしれないという事態に何ともご機嫌なのが不思議な所だ。

 

 

「ハンバーグ…スパゲティ……グラタンも良いなぁ。やっぱりフライ定食かなぁ…迷っちゃうッ!」

 

 

 

「…見るからに重たいのばっかり。」

 

 

 

颯はそんな彼女を見て苦笑いしていると

いきなり携帯が鳴る。画面には

[差出人:REI]と書かれていた。

実はついこの前レイチェルとアドレスの交換をしたばかりで連絡も偶に取っている。やり取りを行う為のサイトを開いてみると一言、今から会いたいと書かれていた。

 

 

「会いたい?……今から?」

 

 

 

やり取りを更に重ね、今から1時間後に彼女と会う事になった。響はまだメニューとにらめっこを続けている。

颯がレイチェルと会う様になってからというもの、向こうからのアピールが強くなった。クラスは違えど休み時間になれば必ず颯のクラスへ来る程。考えていると響が彼女の方へ声を掛けて来た。

 

 

「おーい…颯ちゃん、決まった?」

 

 

 

 

「あ…ごめん、何の話だっけ?」

 

 

 

 

「私は豚カツ定食ご飯大盛りにするけど…颯ちゃんはどうするのかなぁって。もう、さっきからずーっと携帯見てるんだから!」

 

 

 

「私は…クリームソーダ。それとフライドポテトで。」

 

 

 

 

「え!?ご飯食べないの!?」

 

 

 

 

「小腹は空いてるけど、流石に大盛りは食べらんないよ。」

 

 

颯はボタンを押すと少し微笑んだ。

店員へ注文を終えるとそのまま待つ。

暫くしてから2人が頼んだ品物が届き、食事が始まった。

 

 

「やっぱご飯だよねぇ…あぁ美味しい……!」

 

 

 

「本当、美味しそうに食べるよね…ご飯の神様も喜んでるんじゃない?」

 

 

 

「えっへへ…そうかなぁ?んーッ、豚カツも美味しいッ!」

 

 

響はニコニコしながら山盛りのご飯とおかずを食べ進めて行く。その速さは何処か目を見張る物が有った。

一方の颯はフライドポテトを摘みながら時折、クリームソーダを飲んでいた。

本人はポテトの塩加減とクリームソーダの甘さによる甘塩っぱい感じが好きなのだという。先に食べ終わると響の食事が終えるのを待ってから会計を済ませ、店を後にした。

 

 

「いやぁー、食べた食べたッ!お腹いっぱいだよ!」

 

 

 

「…山盛り2杯食べてたじゃん。その食べた奴が身体に出ないのが羨ましいよ。」

 

 

 

「えへへ、まぁ運動するからねぇ。それじゃ!また明日ねッ!」

 

 

 

「うん、また明日。」

 

 

颯と響は店の前で別れると颯はレイチェルの家へと足を運んだ。彼女は寮に住んでいる訳では無く街から離れた場所にある家に住んでいる。メッセージのやり取りで彼女から住所を教えて貰った為、それを頼りに路地を歩いて行く。

約20分程、歩くとその家は有った。

まるで西洋の御屋敷の様な佇まいをしたその家らしき建物。普通の家とはどう見ても違う。

 

 

「…お金持ちなんだ、彼女。それにしても大きな家……。」

 

 

 

颯が門へ近付くと自動でそれぞれ開く。

まるで自分が来るのを待っていたかの様に。颯は屋敷のドア迄歩くとノックをしてみる。すると見慣れた顔が姿を現し、颯を見ると微笑んでいた。

 

 

「ハヤテ、来てくれたのね!歓迎するわ!」

 

 

 

「それは良いんだけど…何でこんな時間に?」

 

 

 

「…話は中でするから。さ、入って!」

 

 

颯は彼女に手を引かれ、屋敷の中へ。

エントランスの天井には巨大なシャンデリアがぶら下がっている。中は思ったより城に近い雰囲気だった。

 

 

「お邪魔します…本当にお城みたい……。」

 

 

 

「パパが会社の社長なの。だからお家の事も全てパパが決めてるのよ。」

 

 

2人はエントランスから長い廊下を進み、数あるドアのうち1つの前へ立ち止まる。

 

 

「此処が私の部屋。お話するなら此処が良いでしょう?」

 

 

 

「まぁ…どっちでも良いけど。 」

 

 

 

「ハヤテはちょっとクールな所が有るけど…私はそこが好きよ。何か格好良いし、お友達が貴女を慕うのも解る気がする。」

 

 

 

「友達って…美結の事?」

 

 

 

「ええ。彼女も貴女の事を慕ってるみたいだし……さ、どうぞ?」

 

 

レイチェルと共に彼女の部屋へ入ると真ん中で立ち止まり、テーブルを挟んだ所に有る椅子へ腰掛ける。室内は女の子らしく、写真やぬいぐるみが幾つか置かれていた。

 

 

「……この家には1人で?」

 

 

 

 

「そうよ?私のパパとママはお仕事の関係で海外に居る。だから此処には私とお付きの人が1人だけ。」

 

 

 

「成程ね…それで私に話って何?」

 

 

 

「……ハヤテは私が別の世界から来たって言ったら信じてくれる?」

 

 

 

少し間を開けてから話が始まった。

突然の事だった為、颯は驚いている。

 

 

「…は?何言ってんの?どういう事?」

 

 

 

「そのままで良いから聞いて欲しい。私はこの時代の人じゃない。並行世界というもう1つの世界から来たの。」

 

 

 

「並行……世界?」

 

 

 

「この世界とはまた別の異なる世界……それが並行世界。貴女で例えるなら、もう1つのハヤテが向こうの別世界に存在するという事になる。」

 

 

レイチェルは颯を指さすと呟く。

つまり、彼女は此処の世界の住人では無いという事。颯は色々と考えていた。

 

 

「…でも、何でそう言い切れるの?レイがそういう人だなんて確証なんて無いのに。」

 

 

 

「並行世界へ行く為の手段…それは聖遺物を用いる事による移動。それを利用してこの世界に来たのが私。」

 

 

 

「時空を越えられる聖遺物…!?そんなの有る訳無いでしょう!?」

 

 

 

「実在するわ…けど、未だ眠っている。完全に起動した訳では無いの。」

 

 

レイチェルは机の上から写真を1枚取り出し、それを颯の前へ置いた。

写っていたのはまるで緑色の貝の様な物。それが聖遺物なのだと言う。

 

 

「…聖遺物の名はギャラルホルン。」

 

 

 

「ギャラル…ホルン……。」

 

 

 

颯からすれば初めて聞いた名前では無い。何処かで聞いたのは覚えているものの、それ以上は解らない。レイチェルはゆっくりと話を続ける。

 

 

「でも…ギャラルホルンは眠っているのにどうやって此処に来たの?」

 

 

 

 

「…ギャラルホルンの構造を利用した疑似システム…それを利用して私は此処に来た。」

 

 

 

 

「つまり、貴女の言う事は全て嘘じゃない…って訳ね。」

 

 

 

颯は真剣な顔をして話すレイチェルを見て呟く。だが、彼女が何しに此処へ来たのか?それは未だ解らないし謎のままだ。すると突然レイチェルは立ち上がり、颯をある場所へと連れて行くと話して部屋を出た。颯も部屋を出てから彼女の後ろを歩きながら進んで行く。

連れて行かれたのは大きな広間。まるで劇場の様だった。

 

 

「何ここ……?」

 

 

 

「ハヤテ…貴女に聞きたい事が有るの。私は貴女と関わり、仲良くなって…貴女と居る事が掛け替えの無い時間に感じる様になってしまった。」

 

 

 

レイチェルは颯と共に歩くと広間の真ん中へ来た。彼女だけが歩いて壁面へ向かうと何かを操作し、壁の一部が開く。

彼女が取り出したのは小さな石。

それは黒く輝いている。 それを右手の中指へ嵌めると此方へ振り向いた。

 

「……ハヤテ、私は貴女とずっと一緒に居たいの。だからその為に今ある世界を全て壊し、生まれ変わらせる必要がある。」

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ…何言ってるの?さっきから何が言いたいのか全然解らない…!」

 

 

 

 

「私が此処に来たのは…今あるこの世界を破壊する為ッ!!そして新たに創り出すの……貴女と私だけの世界を!」

 

 

 

レイチェルは颯をじっと見つめる。

ギリッと颯は歯を食い縛って聞いていた。

 

 

「待ってよ…それじゃあ、私以外の人はどうなっても構わないって事!?どうして世界を壊そうとするの?」

 

 

 

「…貧困、差別、格差、無くならない戦争…。この世界に住む人々は皆、バラルの呪詛に取り込まれている。全ては過去の話…何者かが人々から統一言語を奪い、相互理解を阻む呪いを撒き散らした……それこそがバラルの呪詛。 そのせいで私達は未だに1つに成れないのよ。解除する真相は未だ解明されず、闇の中……。」

 

 

 

 

「そんな身勝手な……ッ!」

 

 

 

 

「私はラグナロクにより生き延びた者達を選ばれし存在とし、彼等の手で新たな未来を切り開く事を望んでいる……そして私と貴女でバラルの呪詛の真相を共に突き止めるの。相互理解を阻む呪いを解く為に!!」

 

 

レイチェルは演説を繰り広げ、颯の方を睨み付けていた。自分と颯さえ居れば後はどうなっても構わない。それが彼女の言いたい事らしい。

 

 

「…ハヤテ、貴女だけは解ってくれるでしょう?貴女は私に選ばれたの…この世界でただ1人、ラグナロクから逃れられる存在として……!」

 

 

 

「……言いたい事はそれだけ?」

 

 

 

「ハヤテ…お願い……ッ!!」

 

 

 

「世界を壊してまで私は貴女と生きようと思わないッ!ラグナロクだか何だか知らないけど……そんな勝手な真似させないッ!!」

 

 

 

颯はレイチェルの言う事をバッサリと切り捨てた。世界を滅ぼそうとする相手と共に生きる気は無いと、そう言い切ったのだ。

 

 

「……そう。なら、貴女の力を私に頂戴?それから私は連中の手からギャラルホルンを奪う。仲間達と共にッ!!」

 

 

 

「力って…何の事?」

 

 

 

「惚けないで。貴女はシンフォギアを纏う装者…そうでしょう?あの日覚醒してから今日までずっと戦い続けて来た。数多くのアルカノイズやテロリスト達と。正義のヒーローとなった気分はどう?でも、もしそれ等全てを私がそう仕向けたとしたら…?」

 

 

 

「ッ……じゃあ、私にギアを送ったのは誰!?」

 

 

 

「私よ…あの博士が残した完成系のギアペンダントを奪い、貴女にプレゼントとして送ったのも。」

 

 

 

「……あの時、ノイズを使って街を襲ったのも?」

 

 

 

「それも私…全ては試運転の為よ。ネフシュタンのレプリカのね。それと…シンフォギア装者として覚醒する器かどうか知る為のテストでも有ったの。あの場で覚醒しなければ、貴女を消すつもりだった…でも貴女はそれを跳ね除けて覚醒した。」

 

 

更にレイチェルは話を続けていく。

マジックの種明かしの様に次々と。

 

 

「現実は詠唱では無く…貴女の負傷によるケガでの覚醒だった。嘗て奏宮結弦は貴女と妹にテストを施していた。そして将来、何方かにそのギアを委ねる事に決めていたの。紅剣レーヴァテイン…悪魔のギアの持ち主を。」

 

 

 

「何言ってんの…さっきから……ッ!?」

 

 

 

 

「それと、ご両親は聖遺物関連の事故で亡くなった訳じゃない……正確には消されたのよ。最後まで頑なに纏井と組もうとしなかったから貴女の両親は消された。妹さんを引き取ったのは罪滅ぼしらしいけど…ね。その真相は私にも解らない。」

 

 

 

「ッ……!!」

 

 

 

颯は力強く拳を握り締める。

妹を引き取った相手が悪の根源でも有る事、そして自分が選ばれたのは全て彼女により仕組まれた事だと解った事から。怒りなのか悔しさなのか解らない感情が颯を取り巻いていてた。

 

 

「それと私の名はシャーロット、レイチェルじゃない。もう貴女は用済みよ…私に従わないのなら消えて貰うしかない。」

 

 

 

「信じていたのに…ずっと…ずっと信じていたのにッッ!!! 」

 

 

 

「バカみたいに他人を信じれば…最後には裏切られる……それが人間。貴女はそれが怖くて手を伸ばせなかった。漸く掴んだ誰かの手も結局は貴女から離れていく…貴女は幸せになんか成れない。あの日から貴女はずっと一人…孤独のまま。」

 

 

 

「違う…私は…私には…美結が居る…皆だってッッ……!!」

 

 

 

「裏切られるわ…何れ。皆、貴女の事なんかどうでもいい……貴女は悲劇のヒロインを演じているだけ。ずっと待ってたんでしょう?自分の事を救ってくれる誰かを……。そして偶然手にしたシンフォギアを通じて仲間と出会い、貴女は戦って来た。本来の正史とは異なる形で……ね。」

 

 

 

シャーロットは颯の前へ来ると彼女を抱き締めた。颯からすればその温もりは何故か心地好く感じる。全てを包み込む様な暖かい感覚だった。

 

 

 

「大丈夫よ…今なら未だやり直せる。私はいつでも傍に居るわ……ハヤテ、私の手を取って?ずっとずっと一緒に居ましょう?私が貴女を守ってあげる…。」

 

 

 

「あ…ああ……ッ…。」

 

 

 

颯は彼女の手を握ろうとする。しかし、シャーロットは颯を突き飛ばした。

ガラガラと音を立てて壁が崩れ落ちた。

 

 

「ッ…!?」

 

 

 

「無事か!?奏宮ッ!!」

 

 

駆け寄って来たのは翼。彼女が入って来た方を見ると壁が大きく斬られていた。

シンフォギア、天羽々斬を纏った翼が颯の前へ立つ。

 

 

「どうして…此処に?」

 

 

 

「話は後だッ!戦えるのならギアを纏えッ!!時間なら私が稼ぐ!」

 

 

 

「ちッ…邪魔を……!良いわ、見せてあげる。ハヤテ!貴女にも…ね?」

 

 

シャーロットが指輪を前へ突き出すと紫色の光が彼女を包み込む。そして姿を変えて2人の前へ立ち塞がった。

ファウストローブ、フェンリル。

左右に狼の頭部をあしらった装飾、谷間が見える様な黒い衣装と下はホットパンツ。それと繋がる様に左右の胸から下には黒いラインが。両手には指ぬきのグローブ(黒)、そして背中には大体脹脛近くの黒いマント。

コレこそがシャーロットの本当の姿だった。

 

 

「ファウストローブ!?…あの時と同じか……!!私の相手に相応しい…私も獣と刃を交えるのは初めてだ!」

 

 

 

「私も初めてよ…貴女に牙を突き立てるのは。……そしてこれが私の武器ッ!!」

 

 

シャーロットはマントを広げ、そこから剣を取り出す。銀色の鞘を持ち、手をグリップへ掛けてそれを引き抜く。禍々しい赤い色をした刃が姿を現した。

 

 

「魔剣…グラム。これこそが私の剣ッッ!!」

 

 

シャーロットは走り出すと翼へ剣を振り翳す。それを翼が受け止め、互いに鍔迫り合いを始めた。

 

 

「何て荒々しい……ッ!!まさに獣か!!」

 

 

 

「全てを喰らい…飲み込む力ッッ!!これこそが我がフェンリル!!」

 

 

シャーロットは振り払うと片手を翼の前へ突き出す。衝撃波を引き起こして彼女を吹き飛ばした。防御姿勢のまま飛ばされるが、辛うじて耐えていた。

 

 

「くッッ…奏宮?どうした、何故戦わないッ!?」

 

 

翼は立ち尽くしている颯の方を見ていた。ギアを纏う気配すら感じられないのだ。戦う意思も、逃げようとする意思すらも。

 

 

「聞こえているのか?奏宮ッッ!!」

 

 

 

「はッ!?ッ…Saver all-revantin-tronッ!!」

 

 

翼の声で我に返った颯は詠唱を行った。が、ギアは現れずいつもの様に起動しない。

 

 

「嘘、ギアが…纏えない!?」

 

 

 

「呼べどレーヴァテインは起動せず…ね?ハヤテ。貴女の意思はギアに届かない……私と来ないのなら、此処で死になさいッッ!!」

 

 

 

「不味いッ…逃げろッ!!奏宮ッッ!!」

 

 

 

「え……ッ!?」

 

 

 

「もう遅いッッ!!」

 

 

 

ドスッという鈍い音と共にシャーロットが颯との距離を詰めていた。じんわりと赤い血が颯の着ていた服の辺りを染めていく。彼女の腹部にはシャーロットの持つ剣、グラムが突き刺さっていた。引き抜くと同時に颯は吐血、その場に膝を付いて倒れてしまう。

 

 

「奏…宮……ッ!?奏宮ぃいッッ!!?」

 

 

 

 

「……7人目は此処で死んだ。残念ね、また大切なモノを護れなくて。」

 

 

 

「ッ…ぐッッ…貴様ぁあああッッ!!」

 

 

 

翼は泣き叫びながらシャーロットへ飛び掛る様に斬り掛かる。太刀筋は先程より鋭く、より早く。シャーロットは血の滴るグラムで受け流し、振り払っていく。

 

 

「よくも…よくもッッ!!」

 

 

 

「ふふッ、貴女がどれだけ戦っても…私にその刃は届かないッ!」

 

 

マントで振り払うとシャーロットは翼から距離を取る。そして姿を消した。

翼、颯の2人を残して。

必死に翼が呼び掛けたが颯は返事をしなかった。

目を閉じたまま、ぐったりとして動かぬまま。

 

 

 

シンフォギア装者 奏宮颯 死亡 享年16歳

 

 

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