戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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18 LISTEN TO MY SONG

颯が現場へと駆け付けた時、既にマリアとシャーロットとの交戦は終わっていた。マリアを荒々しく投げ捨てるとシャーロットの両足のブーツにも色合いが出現する。まるでマゼンタを彷彿とさせる様なカラーリングへと変化した。

 

 

「…あら、ノコノコと死にに来たの?」

 

 

 

 

「シャーロット…ッ!!」

 

 

 

 

「ふふッ…その目、良いわねぇ?私へ対する憎しみと恨みが籠った目…!悔しかったら取り返してみる?無理だと思うけどッ!! 」

 

 

 

 

「この…ッ!!」

 

 

 

颯は前に拾った鉄パイプをシャーロットへ向けて振り翳す。しかしそれは片手で受け止められ、容易くへし折られてしまった。それを捨てると今度は拳を繰り出してギアの胸部を力一杯殴る。

颯の右手の拳を伝って痛みが走った。

 

 

 

「ざぁーんねん…ッ!」

 

 

 

 

「まだまだッ!!」

 

 

 

シャーロットが笑って馬鹿にすると颯は何度も何度も殴り付ける。右手がダメなら左手を繰り出して。

殴り続けていると次第に指から血が滲み出し、血が滴り落ちる。

するとシャーロットは颯のその手を掴み、投げ捨てた。

 

 

 

「みっともないわね…ハヤテ?これが貴女の…人の限界なのよッ!!」

 

 

 

近寄ると颯の髪を掴み上げ、顔を無理やり上げさせた。

 

 

 

「そうかもしれないッッ…!でも、諦めるもんか…絶対にッ!!」

 

 

 

 

「そう…貴女のそういう生意気な所が気に食わないのよッッ!!」

 

 

 

無理に立たせると颯の腹部を何度も殴打し、彼女が苦しむ様を嘲笑っていた。

それから今度は彼女の首を締め上げると

力を込めていく。

 

 

「ぐッッ…あぁあッ…!?」

 

 

 

 

「いい加減、死になさいよ…実験体ッ!!私の役割を奪って…貴女だけが2人から愛されて…ずっとずっと貴女が憎かったッ!!」

 

 

 

力を込められると颯の意識も遠のき始めた。何とか抗おうとするものの力が入らない。薄れ行く意識の中で颯は1つの記憶を思い出していた。

未だ彼女の両親が生きていた時、1人の少女と研究室で目が合った事を。

自分は母の手を握って廊下を歩いていると、彼女は羨ましそうに此方を見ていた。その少女はそれから無理矢理、研究員へと連れて行かれてしまった。

泣き叫ぶ声とそれから嫌がる声、苦痛の悲鳴。あの時自分は会っていたのだ。目の前に居る少女、シャーロットと。

 

 

「ッ……!?」

 

 

 

 

「死ねッ…死ねぇええッッ!!」

 

 

 

あと少しで意識が途切れる。

自分の首を締め上げる彼女へと差し出した手は自然と頬へ触れた。そして目を閉じ、颯は死を覚悟した。

気が付くと景色が暗転し暗闇の中に1人立っていた。自分の事を呼ぶ声と共に颯は目を覚ました。

 

 

[…颯ッ!!]

 

 

 

「誰…?」

 

 

 

 

[起きなさい…颯ッ!!]

 

 

 

 

「貴女は…あの時の…?」

 

 

 

そこに居たのは自分が出会った金髪の女性。彼女は颯の名を呼ぶと近寄って来た。

 

 

「私は…どうなったんですか?」

 

 

 

 

[死ぬわ…このままだと。]

 

 

 

 

「解ってます。あの子…シャーロットと私は前に会っている…私は気付かなかった…彼女は私が憎い…両親に愛されて育った私の事を心の底から憎んでる……。」

 

 

颯は女性から目を逸らす。

すると女性は颯の頬をそっと撫でた。

 

 

[愛への憎しみ…か。なら、貴女が彼女の手を握ってあげなさい。拳は殴るだけじゃない…その手を広げれば誰かを差し伸べるモノへと変化する。颯…貴女が戦う理由は?]

 

 

 

「私は…私は誰かの明日を守りたい。人助けとは違うけど…その人がまた明日って言える何気ない日々を守りたい…それが私の戦う理由。もし喧嘩したとしても仲直りして…またやり直せる様に。」

 

 

 

[…そう。なら生きなさい!!貴女自身の、人間の可能性を再び私に見せて。]

 

 

 

「待って…貴女は誰なの?」

 

 

 

[我が名は…フィーネ……貴女の胸の歌を信じて…全てはそこに有る……。全てが終わったらまた会いましょう?待ってるから……!]

 

 

 

「フィーネ……。」

 

 

その瞬間、颯は目を見開いた。

彼女の紫色の目が一瞬だが金色へ変化する。

そしてシャーロットを無理に蹴飛ばすと突き放した。

 

 

「なッッ!?何処にそんな力が…!?」

 

 

 

 

「げほッ…げほ、げほッ!まだ…まだ私は死ねないッ!!」

 

 

颯は顔を上げると再びシャーロットを睨み付けて対峙していた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「もう止めよう…?貴女の事は全て思い出したから…ッ!!」

 

 

 

「今更何をッ…お前は私の敵…それ以上に何が有るというのッッ!?」

 

 

 

颯はシャーロットへ呼び掛ける。

これ以上続けても何も意味が無いのだと。だがシャーロットは颯の呼び掛けに応じる事は無く刀を向け、襲い掛かる。

 

 

「シャーロット…ッ!どうして…!!」

 

 

 

 

「お前は私の敵だ…それ以上の理由が有る訳が無いッ!!」

 

 

 

 

「それなら何故…あの時、私に近付いたのッ!?偽名まで使って…どうしてッ!!」

 

 

颯は振り翳された刀を右手で握り締めると彼女へ訴え掛けた。

シャーロットは動揺しているのか手が震えていた。そして震える様な声で颯へと語り出した。

 

 

「私は貴女が憎い…でもッ…私は…ずっと愛が欲しかった……!!貴女には解らないでしょう?家族や友達も全て持っている貴女にはッ!!」

 

 

 

「……解るよ、両親が亡くなってから私は施設に預けられ…ずっと1人だったから!!誰も信じられなくて…世界を憎んだ事だって有るッ!!」

 

 

刃を握る右手から血がポタポタと滴り落ちる。それでも颯はシャーロットへと話し続けた。

 

 

 

「だから…だから私が貴女の傷も憎しみも全て背負うッ!!もう何もかも1人で全部抱え込まなくて良い…!私達は分かり合えるんだよ…こんな事をしなくたって……お互いに手を取り合う勇気さえ有れば!!」

 

 

 

颯は微笑んだ。そして握っていた刃から手を離すと左手をシャーロットへと差し出した。

 

 

「貴女は私にレイチェルと名乗った。けれど、もう自分の事を偽らなくて良い…これからはシャーロットとして生きて。私と…私の仲間達と一緒に。」

 

 

 

「ハヤテ…ッ……。」

 

 

 

シャーロットは武器を手放すと頭を抱え、考えてからゆっくりと颯へ手を差し出す。そしてその手が颯の左手へと触れた時。

何かがシャーロットの胸を刺し貫いた。

それは槍。光の槍そのものだった。

血が颯へと飛沫すると彼女の顔を汚していく。シャーロットはまるで颯に抱き抱えられる様な形で正面から倒れ込んだ。

 

 

「え……?」

 

 

 

颯が視線を向けた先に居たのは甲冑を纏った表情の無い白い人形。両目の部分には人の目を象った透明なレンズが代わりに備わっていた。その人形が数体降り立ったかと思えば、その真ん中へと姿を現したのは白衣を着た総一郎本人。

傍らにはあの時見たオートスコアラー、ヘルも居た。

 

 

「…変に感情移入するからだ、実験体02。適合者かと思えば唯の失敗作か。感情を捨てろ…全てを憎めと教えなかったか?」

 

 

 

「…貴様ぁ…ッ!?」

 

 

シャーロットが何か言い掛けたが彼女の声は吐き出した血で遮られてしまう。

颯はシャーロットの手を握りながら背中を摩っている。すると総一郎は颯の方を向いて語り出した。

 

 

「ほぅ…キミも一緒か。結弦と詩音の残した忘れ形見であり…2人により選ばれた07の最終実験体…いや、こう言うべきかな?聖遺物適合実験体No.001。失敗作のNo.016は元気かい?」

 

 

 

「人を…私をその名で呼ぶなッ!!」

 

 

 

 

「ふふ…キミの顔は詩音さんそっくりだ。怒った時の顔も…色は違うが、その目も。私は彼女が好きだった…彼女とは同じ大学で仲間だったからね…。だが彼女は私より結弦を選んだんだ。あんな無力で何も出来ない馬鹿を!!」

 

 

 

「何を言ってるの……?」

 

 

 

 

「その日から私は詩音さんを奪ったアイツへの憎しみを抱き続けた…そしてある日、結弦は調査へ向かった遺跡にて完全聖遺物を見付けた…それこそがレーヴァテイン…北欧神話に伝わる伝説の剣。まさに大発見だった…!私の居る家、纏井は国にも関わる聖遺物研究機関…そこにそれを渡す様に彼へ呼び掛けた。だが彼はそれを拒んだッ!!」

 

 

総一郎は颯を睨みながら更に話を続けていく。

 

 

「そして彼は纏井の誘いを断り続け、レーヴァテインを櫻井理論に基づいてシンフォギアへと転換する事を私に明かしたのさ…それから実験の日々が始まった。何十、何百…数多くの少女達を利用し実験を繰り返した。無論、死人すら出ている…ある者は薬液による副作用、またある者は適合出来たとしても力に飲まれて制御出来ず死ぬ…それを繰り返した。そしてある日を境に実験は幕を閉じ、レーヴァテインは日の目に出なくなった。」

 

 

 

「……私が適合者になったから。」

 

 

 

 

「そうだ!!本来ならそこに倒れている役立たずの女がキミの代わりになる筈だった…それを私が承認し実験したが適合出来なかったッ!!完全聖遺物…ギャラルホルンを用いて無理矢理、実験体候補として連れて来たと言うのに飛んだ無駄足だった……!彼女には毎日私が結弦に代わって実験を施したッッ!!そして真面に扱える様に仕向け、レーヴァテインのギアを2人から奪ったのさ…!」

 

 

 

 

「それが…父さんと母さんを殺した理由……?」

 

 

 

 

「聖遺物可動実験による死亡…そんなのは建前さ。私が作り出した試作品のノイズ…カラミティによって殺した…!最後までキミと妹の名前を呼んでいたよ…あの子達だけは見逃せとね!!そして奪ったレーヴァテインをシャーロットに送らせた…詩音さんの字と同じモノを書かせた手紙を入れてキミにッ!!…実に長かったよ。キミが覚醒させてくれるまで…私はずっと待ったのだから。だがそれも今日で終わる……!」

 

 

 

総一郎は、しゃがんでいる颯へ近寄ると彼女を睨み付ける。そしてシャーロットへ近寄ると彼女の胸元から無理にギアを右手で引き剥がした。するとギアが強制的に解除され、裸体となったシャーロットを他所に小型のカプセルと共にギアペンダントは総一郎の手へと渡った。

 

 

「これで良い…これで世界を滅亡へと追いやれるッ!!私の理論は間違って無かったッ!!」

 

 

 

 

「……返して。 」

 

 

 

 

「…何を言っているんだ?」

 

 

 

 

 

「私のギアを…返してッ!!」

 

 

 

 

シャーロットを寝かせ、上着を掛けると颯は総一郎へ掴みかかる。

だが横に居たヘルがそれをオートスコアラー2体と共に阻んだ。総一郎はそれを見て不気味に笑っている。

 

 

「私の両親を殺し…シャーロットや結衣の想いや願いも何もかも踏み躙って…お前はそれでも人間かぁあッ!!?」

 

 

 

「ああ、人間だよッ!醜く、己の欲望の為なら何だってする…それが人間さ!!それがヒトの本性…!!」

 

 

 

 

「お前の勝手な理想で人の命を…夢や希望を弄ぶなぁあああああッッッーー!!!」

 

 

その瞬間、颯の全身は黒く染る。

彼女の右胸下にある傷跡からそれは広がる。レーヴァテインの暴走状態と同じ、あの姿へと。ガックリと項垂れたかと思えば赤い目を向け、ギザギザになった歯を見せ付けて笑った。そして2体のオートスコアラーの頭部を両手で鷲掴みし、

ぶつけて破壊したかと思えばヘルの腹部を膝蹴りし、貫いた。悲鳴と共にヘルは真っ二つにされ倒れてしまう。

 

 

「ッ…馬鹿な……マスターぁあッ!!?」

 

 

 

 

「ガァアアッッッ!!!」

 

 

 

 

「ちぃッ…ワルキューレッ!あの化け物を止めろぉッ!!」

 

 

総一郎が叫んで後退ると颯が進む。それをワルキューレと呼称されたオートスコアラー達が数体降り立つと拒んだ。

2体が颯へと襲い掛かると交戦状態へ移行し、繰り出された剣を避けて肘と膝を用いてへし折る。後ろから刺されそうになると飛び上がって同士討ちを誘って2体を破壊する。別の1体が颯へ立ち向かうとそれを爪を振り翳して鎧ごと身体を斬り裂いた。

 

 

 

「ば、化け物ッ!!くッ…死ねるか…こんな所でッ!!」

 

 

 

何かの端末を操作すると今度は巨大な金色で鳥型の化け物を送り込んで来た。

コレも街を蹂躙すべく彼が作り出した生物兵器だった。名をヴィゾー。暴走する颯を睨むと咆哮し威嚇する。

対する颯もまた相手を睨むと威嚇し同じ様に咆哮した。

 

 

「精々…お互いに潰し合うがいい…私はスルトをッ!!」

 

 

総一郎がニヤリと笑うとカプセルを機械の巨人へ差し込む。ギアペンダントを装置へ装着しようとした時だった。

装置の真横へ剣の破片が突き刺さる。

総一郎は後ろを振り向くと重傷を負ったシャーロットが立っていた。

 

 

「誰かと思えば…死に損ないか…もうお前に用は無い、さっさと消えてくれ。」

 

 

 

「バカ言わないでッ…私は……私の生きる意味を…探す為に……ッ!」

 

 

 

「生きる意味だと?…笑わせるな。お前は所詮、失敗作…私の役に立たぬ者は皆そうなるんだッ!!」

 

 

 

「そうやって…他人を見下し続けるから……分かり合えないッ…!私のしてきた事…過ちは到底許されるものじゃない…だから…これは…私なりの償い…これが私の…戦い…ッ!!」

 

 

シャーロットは裸のまま指輪を翳し、フェンリルを纏う。そして総一郎へ掴み掛かると彼を殴り飛ばし、ギアペンダントを奪う。更にはカプセルを取り出した。

 

 

「止めろッ…ダメだッ、よせぇええッ!!」

 

 

 

「ハヤテ…貴女に…明るい未来を…ッ!」

 

 

 

そしてカプセルを握り潰すと光が飛散する。黄、青、赤、白。それぞれの光がそれぞれの元の場所へ戻った。

それからギアペンダントを颯の方へと投げ捨てた。

激昂した総一郎はシャーロット目掛け発砲し、彼女が倒れる様を見ると立ち上がり睨みつけた。

 

 

「貴様…自分が何をしたか解っているのかぁあッ!!?」

 

 

 

 

「勿論…私は失敗作…だから…計画そのものを…中止させた…それだけの事…ッ!」

 

 

 

 

「くッ…ふざけるなッ!!悲願を…我が纏井の悲願を…よくもッ!!よくもぉおッ!!」

 

 

再び銃を向け、シャーロットへと発砲する。弾が切れる迄。悔しそうにしながら彼女を睨み付けていた。

その様子を見届けたシャーロットは一矢報いたと悟り、少し笑うと目を閉じてそのまま動かなくなった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その頃、颯はヴィゾーと呼ばれる鳥型の化け物との交戦を続けていた。

カシャンという音に気付くと足元のギアペンダントへと目をやる。それを不思議そうに見つめると拾い上げた。

 

 

[…その力、今の汝が持つには程遠いモノ。それを振るえば世は破滅するぞ。]

 

 

 

「……?」

 

 

 

頭の中に声が響く。前を向くと戦いを止めた鳥型の化け物は暴走している颯の方を見ていた。

 

 

[お前の望みは何だ…破壊か?或いは救済か?それとも我の死を望むか?]

 

 

 

 

「ッ…!!」

 

 

 

颯は構えるが、頭を抱えると首を横へ振るう。世界の滅亡では無く目の前に居る化け物の死でも無いと。

 

 

「だ…レ…か…ヲ…ダ…れ…カ…の…ア…し…タ…を…ま…モるッ!!」

 

 

 

 

[…誰かの明日を守る。その為に剣を振るうか。我の死でも無く…破壊でも無い。解った…呪いを解いてやろう。お前に掛けられたその呪いを…そしてその願いに…希望を。]

 

 

ヴィゾーは嘴で器用に尾羽根を取ると颯の前へ。そして大きく羽ばたいて空へ消えた。颯がそれへ触れた途端に暴走状態から解放され、刻まれた右胸下の傷も消えていた。

 

 

「私…何を……?」

 

 

 

「颯ちゃんッ!大丈夫ッ!?」

 

 

ギアを纏った響が颯の元へ走って駆け付けた。後ろから倒れていた2人、それから切歌とマリア、調も合流した。

 

 

「……大丈夫。それよりシャーロットは?」

 

 

 

「残念だけど…彼女は…ッ。」

 

 

 

颯の前へ来るとマリアは首を横に振る。それに対し小さく頷くと同時に悔しさが込み上げて来た。守れなかったという後悔とやっと分かり合えたのにという悔しさ。

 

 

「…解りました。今は兎に角ッ!」

 

 

 

「そうね…終わらせましょうッ!」

 

 

 

それぞれが集結し並ぶ。響の右横に颯、翼、クリスが。そして響の左横から順にマリア、切歌、調がそれぞれ並ぶ。

目の前に居るのは纏井総一郎、そして彼が生み出したオートスコアラー・ワルキューレの群集。

 

 

「残念だったな…私にはコレが有るッ!!貴様ら如きに負けるものかッ!!」

 

 

 

「…幾ら増やしても私達が何度でも叩き潰すッ!!それだけだッ!!」

 

 

 

颯は総一郎へ指をさす。

響も颯の横へ立つと頷き、彼女の左手を握り締めた。

 

 

「行こう…颯ちゃん。明日を…皆の明日を守るんだッ!私の…いや、私達の手でッッ!!」

 

 

 

「うん…ッ!!」

 

 

颯は詠唱し、ギアを纏う。これ迄と同じ様に。そして装者全員が前へ出ると手を取り合った。颯と響は互いに頷き合う。

 

 

「私達の歌…何処までも響け、鳴り渡れ…ッ!」

 

 

 

「生きる事を諦めず…胸の歌に可能性を…奇跡と…勇気をッッ!!!」

 

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl…。」

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl…ッ!!」

 

 

響、颯達は絶唱を唱えた。

颯の絶唱にはこれ迄の全てがそこには詰まっていた。

幼い頃に両親を亡くし、世の中を憎んだ事。

孤児院で育ち、出会いと別れを知った事。

学校で出会った美結や響を始めとする多くの仲間達の事。

妹である結衣と分かり合えた事。

そしてシャーロットとも分かり合えた事も。何気なく当たり前の日々がとても大切なのだと教えてくれた。

 

 

 

ー胸の歌が、仲間達が。ー

 

 

 

響を始めとする装者は皆、ギアペンダントをそれぞれ外し掲げる。それぞれがイグナイトモジュールを抜剣し最終段階であるルベドへと連続して解除した。

 

 

「何だ…何が起こっているッ!?馬鹿な…有り得ない…お前達は何なんだ!?お前達が纏っているソレは…何だと言うんだ!?」

 

 

 

驚いている総一郎を他所に颯が大きく叫ぶ。自分達が纏っているそのシステムの名前を。

 

 

「シィインフォギィァアアアアアッッッーー!!!!」

 

 

そして今度は響が大声で叫ぶ。

 

 

「S2CAッ!!セプタコンバージョン!!ジェネレーション…ドラァァアアアイブッッッーーー!!!!」

 

 

「これが私の…ッ!!」

 

 

 

「私達のッッ!!」

 

 

 

「「絶唱だぁぁあああッッ!!!」」

 

 

それは全てを明日へと繋げる為の少女達が奏でる歌だった。

今日で世界が終わるという事を理屈や言葉では言い表せない程の力を用いて覆すというまさに祈り…いや、願いそのもの。花は枯れ、荒れた大地に7人の天使が舞い降りる。

 

 

 

ーそして終末戦争の幕は上がった。ー

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