戦闘が始まった。世界を終わらせない為の戦いが。戦場となった場所には白銀の衣装を身に纏った少女達の歌が響き渡る。そして一方は世界を終わらせる為に自らが生み出した兵器を用いて抗い続ける。オートスコアラー・ワルキューレ。
それは戦場において生きる者、死ぬ者を見定める集団の名を持つ者の事を示す。皮肉にも彼女達は人では無い、モノとして生み出されたのだ。
そして今、その矛先は7人の天使達へと向けられている。1人、また1人と斬られては殴られ、射抜かれ、切り刻まれる形で倒されていく。
そして獣の形を象った大型のそれが轟音と共に投入された。試作型零号、又の名をスルト。嘗て実在したネフィリムと呼ばれる完全聖遺物を模したそれは咆哮と共にワルキューレ達の後方へと降り立った。
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「くそッ!虫みてぇに何匹も湧きやがってッッ!!」
クリスは迫り来るワルキューレの大群を銃や火器を利用し次々に撃ち抜いて破壊していく。そのすぐ横で翼、マリアが互いの剣と刀を敵であるワルキューレ達へ向けて群れへと突き進んだ。
「あのデカブツは何ッ!?まさかネフィリム…ッ!?」
「アレも纏井のコピー品だろう…だが今の私達に倒せぬ敵など居ないッ!!」
クリス同様、ワルキューレの大群を前に怯むこと無く突き進んで行く。青と白銀の閃光は戦場を駆け抜けて行った。
地上では総一郎の放ったカラミティノイズが、そしてワルキューレらが颯達4人へと襲い掛かった。
「颯さんッ!アレをやるデス!今こそ特訓の成果の時…ッ!!」
「アレやるの!?…解ったッ!!はぁああッッーー!!!」
白色へ変化したレーヴァテインを纏った颯は剣を握り締め、1呼吸置いてから刀身へと炎を纏わせる。そしてそれを大きく振り翳して放った。大きな火柱となったそれは真っ直ぐに突き進む。今度は切歌がイガリマの刃を投擲しそれが炎を斬り裂くとまるで龍の様な形へ変化。
周囲に居たノイズやワルキューレらを焼き尽くした。
「響さんッ、私達もッ!」
「ええッ!?私何も聞いてないけど!!?何とかなれぇえッッーー!!」
驚いた顔で響が調を見つめる。だが、特訓で培ったコンビネーションは伊達では無かった。響が突撃しワルキューレを次々に殴り飛ばす。それを調が放った大型の丸鋸で斬り裂いた。
気が付けば残りの数も減っている。このままあの巨大な巨人さえ倒せれば全てが終わる。誰もがそう信じていた。
「このままで済むと思うなよ…小娘共ッ!!さぁ全てを焼き尽くせ…零型ッッ!!」
総一郎の合図と共に咆哮した零型は
背面のキャノン砲の様な装置を展開し起動する。
その瞬間、灰色の雲が掛かった空へ白色の光線が放たれるとその光が分散し雨の様に降り注いだ。
周囲の建物やビルへ着弾するとそれ等を飲み込む形で破壊していく。
幾らエクスドライブモードと言えど直撃すればタダでは済まない。
颯はその様子を響と共に見つめていた。
「纏井…未だあんなモノを…!!」
「世界を焼き尽くしても…壊しても何も変わらないのに…ッ!広がるのは悲しみだけなのにッッ!!」
そこへワルキューレを殲滅させた翼達も集結する。
「…だから終わらせるんだ。私達の手で、この無謀な争いを!!」
「これ以上…誰かを泣かせたり苦しませたりしない為にッッ!!」
「アイツらに見せてやろうぜ…あたし達の思いと力…!」
「可能性と…!」
「胸の歌をッッ!!」
再び7人が集結すると颯と響が前へ出る。2人、いや7人はそれぞれ頷くと再び走り出し飛び上がった。
「何人来ようと…この零型に敵うものかぁああッッ!!!」
総一郎は大きく叫ぶ。零型は彼女達へ向けて再び白色の光を放つ。今度は左腕の装甲も展開しそこからミサイルを放って。
「私達が道を切り開く…行けッ!!立花、奏宮ッッ!!」
翼の合図と共にマリアも突破口を開くべく再び進む。降り注ぐミサイルをお互いに全弾切り落としていく。
降り注ぐ白色の光線をすり抜け、5人が零型へ接近する。
「喰らいやがれぇええッッ!!」
今度はクリスが装甲を展開し零型へレーザーによる銃撃を加えて後退させる。
その隙を逃さず切歌、調がお互いのコンビネーションによる攻撃で零型の装甲部を破壊した。
「2人ともッッ!! 」
「今デスッ!!」
たじろいでいる零型を前に颯と響はお互いの武器構える。颯は紅い剣を、響は光り輝く拳を。
「準備は良い?颯ちゃんッ!」
「大丈夫…行けるッッ!! 」
「これが私のッ!!」
「私達のッッ!!」
「「絆の力だぁぁあああッッ!! 」」
颯が突撃し、零型へ炎を纏った刃を振り翳すと大きく斬り裂いた。装甲が破壊された所へ響の拳が零型を刺し貫く。
零型は咆哮を上げそのまま背中から倒れてしまった。
「やったの…?なッ…うわぁッッ!?」
颯が煙に巻かれた零型を見下ろしていた時、突如何かによって弾き落とされてしまう。
「颯ちゃんッ!?まさか…まだッ!!?」
響にも飛んで来たそれを彼女は蹴りと拳で巧みに弾き返した。
煙が晴れるとそこに居たのは先程の零型とは異なる人型の何か。
装甲は完全に脱ぎ捨てており、頭部の左右には角が生えている。目は切れ長の線が左右に入った獣の様な目と紅い瞳。
これこそ、テロリスト集団イノベイターが探し求めたスルトだった。
右手を何か握る様な形にするとワルキューレ達の残骸から深紅の剣を生み出してみせた。それを握り締め、咆哮と共に振り翳す。地面へ刃が当たるとそこから凄まじい勢いで炎が吹き上がり、一帯を燃やし尽くす。
総一郎は狂った様に笑いながらその異形な神を見つめていた
「見たか…これがスルトの力だぁッ!!全てを滅ぼし…燃やし尽くすッッ!!」
スルトは7人の天使達を見据えると再び大きく剣を振り翳す。今度は横一線で。
発せられた風圧によりその場に居た全員が吹き飛ばされ、地面へと叩き付けられてしまう。まるで虫を叩き落とす様に。
優勢だった展開が一気に劣勢へと追い込まれてしまった。
「くッ…このままじゃ…ッッ!!」
颯は無理矢理、自らの身体を起こそうとする。
動かす度に身体のあちこちが痛む。幾らギアを身に付けていても傷や怪我は負う。そして今、たとえ痛くても辛くても立ち上がらなければならない。
この巨人が誰かの明日を奪ったりしない為にも。
「ふぅッ…うぅッッ…!!」
颯が立ち上がった。瓦礫の中から。
そしてまた1人、また1人と装者が立ち上がる。総一郎は彼女達を見ると不服そうな顔をしていた。
「何だ…未だ立つのか?お前達にはこの巨人は倒せない…!諦めたらどうだ?大人しく滅びを受け入れろッッ!!」
「…諦める?冗談言わないでよ。どれだけ苦しい状況でも辛い状況でも私達は何度でも立ち上がって…そして前へ進む、歩みを止めない限り可能性は有る!!そう私に教えてくれた人が居る、仲間達が居るッ!!だから私も諦めない…自分で決めた事を絶対に諦めたりするもんかッ!!」
「世迷い言を…!!やってしまえスルトッッ!!先ずはソイツだ…あんな小娘1人、捻り潰せぬお前では無いだろうッッ!!」
歩き出した颯は咆哮するスルトへ1人で向き合う。
そして右手の紅い剣を天へと掲げた。
ゆっくりと剣の刃先を下ろし、スルトへと狙いを定めると颯は構える。
「でやぁあああッッーー!!!」
「グォオオオッッ!!!」
走り出すとスルトと颯の一騎討ちが始まる。敵う筈もない相手へ立ち向かう。
スルトの振り翳した一撃を躱し、真正面から突き進む。無茶なのは解っている、それでも自分が戦わねばならない。
そう本能が訴え掛けている。颯は何度もスルトへ攻撃を与え続けると少しずつだが追い込んで行く。
「私の全てをこの一撃に…ッッ!!」
颯は、一度距離を取り飛び上がると剣を構える。持ち手へ力を込めると彼女の握っていたレーヴァテインは深紅から銀色へと変わった。そして深呼吸し心を落ち着かせると自ら突進して行く。そこへ響も加わると颯と共に剣を握り締めた。
「お願い、響の…皆の力を私に貸してッッ!!」
「うんッ!今度こそ…一緒に行こうッ、颯ちゃんッ!!」
颯の叫び声を皮切りに翼、マリア、クリス、切歌、調がそれぞれ片手を突き出して2人へエネルギーを解き放った。それ等が虹となり2人を追い掛ける形で飛翔する。
「皆、2人を援護するぞッ!天羽々斬ッッ!!」
「勿論ッ!アガートラームッッ!!」
「行けッ!イチイバルッッ!!」
「援護デスッ!イガリマッッ!!」
「届いてッ!シュルシャガナッッ!!」
翼の呼び掛けと共に青、赤、白、緑、桃色の光が2人を包み込むと颯の背中から虹色の羽が展開される。そして最後の力が黄色の光となって颯へと託された。
「颯ちゃんに力をッ!ガングニールッッ!!」
銀色の剣は7色へ光り輝き、巨大なエネルギーの刃を形成する。
その光は雲を大きく貫くと颯、響はそれをスルトへ向けて振り翳した。まるでその姿は天から放たれた裁きの一撃にも見えた。
「「「「「「「行っけぇええええええッッ!!」」」」」」」
装者達の叫び声と共に虹色の刃はスルトへ目掛け振り下ろされる。スルトは自らの大剣で刃を防いだがそれすらも打ち砕き、彼の身体を大きく斬り裂いた。悲鳴を上げるとそのままスルトの身体を分断する。そして刃の光はスルトへ収束し彼を取り囲むと大きく爆発した。
凄まじい爆風が辺りを吹き飛ばすと跡形もなくスルトは消滅してしまった。
近くに居た総一郎は爆風により飛ばされ、離れの公園にあった木に激突すると項垂れていた。
「馬鹿なッ…どうして……何処にそんな…力が……ッ!」
「…これが歌の…ううん、絆の力。アンタが馬鹿にして不要だと切り捨てたモノ。アンタは負けたんだ…その力に。」
着地し近寄った颯は総一郎を見下ろしていた。既にギアは元の赤と黒を基調としたデザインへと戻っている。
「何を偉そうに…ッ!お前は所詮、そのギアを纏わせる為に…両親から利用された存在に過ぎないんだぞッ!?何故…恨まないッ!!」
「…父さん、母さんがこの力を私に託したのは仮に私以外に適合した人が居たらその適合した誰かがこれを使って世界を守って欲しいと思ったからだと私は思ってる。そしてその役目を担ったのが私だっただけ…。アンタの言う通り、2人が私…そして結衣をも実験に掛けていたとしても私は恨まない。」
颯は真っ直ぐな目で総一郎を見下ろしていた。一点の曇りもない紫色の目で。
「…もう良いだろう。さぁ、私を殺せ。結衣とお前達を苦しめた存在をその手で斬ればお前は全て終わるんだぞ?そこに居る連中と毎日ヘラヘラ馬鹿みたいに笑って過ごせる毎日が…そして両親の仇を討ったという事実を持って…お前は日常に溶け込んで生きて……ッ!」
最後まで言い切る前に颯がそれを遮った。
「……アンタを殺しても両親は帰って来ない。それにアンタを裁くのは私じゃ無い。アンタに斬る価値なんてある物かッ!!消えて…そして二度と私と結衣に近付かないでッッ!!」
颯は総一郎を怒鳴りつけ、背を向けるとその場から去る。それから響達と合流し7人はギアを解いた。長い戦いに幕が降りた。
空は雲が一つも無く澄み切った青空だった。その下を7人が話しながら歩いて行く。世界が今日で終わる事は無かった。明日へと繋げる事が出来たのだ。
例え絶望の中に居たとしても希望は有る。最後まで諦めなければ必ずそれは自分に味方するとそれぞれが心の奥で信じて。1人の少女が手にした力、それは誰かと繋がる為の力だったのかもしれない。その思いは確かに届いた。
もし再び困難が目の前にあったとしても彼女はきっと切り開いて前へ進んで行ける。
ー歌と、絆と勇気の力…そしてシンフォギアで。ー