戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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20見た事のない明日の先へ

あれから約数ヶ月経った。

世界は終わらなかった。

7人の白銀の天使達は世界の終わりに抗い、打ち勝った。破壊されてしまった地域も少しずつだが今も現状復帰が行われている。街は壊されてしまった。それでも多くの人達が寄り添って協力し合いながら復興が続いている。

 

あの後、颯は帰って来なかった。

やる事が有ると一言だけ仲間に残して彼女だけが居なくなってしまったという。

美結は待ち続けていた。颯の帰りを。

そして今日もこうして学校へ1人で登校し、放課後になると街へ向かっていた。

 

 

「颯…何で帰って来ないのよ……。」

 

 

何もかも終わったのに。

もう戦わなくて良いのに。

颯に会いたい、今もずっとそう思っている。気が付けば美結は街の景色が見える高台へ来ていた。此処も颯と良く来た場所。此処で見える街の景色が好きなのだと彼女が前に言っていた。

フェンスに両手を掛けると遠くを見つめる。

 

 

「…颯、もう新学期始まったよ。皆が貴女の事をずっと待ってる。そうそう、この前…結衣ちゃんと一緒に市役所言ったの。名前を纏井から奏宮にしたいって言われて。今はもう奏宮結衣になってる…あと、颯が居た孤児院にも行った。皆、元気そうだった。また颯に会いたいってさ…テレビで颯の事、見たんだって。響達と戦う颯の姿を。だから…帰って来なさいよ……バカ…ッ!」

 

 

突然、美結はポロポロと泣き出してしまった。話したい事が沢山ある。何気無い事から色々と沢山。なのに彼女だけが帰って来ない。それだけが心にずっと大きな穴を開けていた。

少し経ってから涙を拭い、美結は来た道を引き返す。歩道へと出て歩いていると

突然ノイズが美結から離れた位置に姿を現した。そしてその近くには自分と同年代の少女がそこにおり、後退っていた。

 

 

「不味い…ッ!」

 

 

美結は走って彼女の元へ。そして咄嗟に手を引くと彼女を連れて走り出した。

未だテロリストの残党が居る事は美結も知っている。だが、まさか出て来るとは思わなかったのだ。

 

 

「ッ…!」

 

 

2人は無我夢中で走った。

何とか逃げたが目の前に現れたローブの男に進路を塞がれてしまう。

 

 

「へへ、残念だったな…もう逃げられないぞ?」

 

 

 

 

「どういうつもり…街中でこんな事してッ!!」

 

 

 

 

「決まってる、散っていった仲間達…リーダーの敵討ちさ。俺が新たなリーダーとなってリーダーの意志を引き継ぐ!それだけだッッ!!先ずその前にお前達を消してやる…新たな組織の糧になるのだ、名誉な事だと思うが良い!」

 

 

いつの間にか美結と少女の周りをノイズが取り囲んでいた。逃げ場が無い。

震える少女の手を美結は握り締める。

 

 

「…貴女、名前は?」

 

 

 

「舞ですッ…天城、舞…!」

 

 

 

「舞…大丈夫、私が付いてるから。その手は絶対離さない…!」

 

 

 

美結は震える彼女の手を強く握り締めた。自分だって怖い。だが颯だってきっと怖かった筈だ。けど守ってくれる彼女はもう居ない。この子を守れるのは自分だけなのだから。

 

 

「良し…そろそろ消してやるとするか。やれッ、ノイズ共ッ!!」

 

 

 

 

「ッッ…!!」

 

 

ざっと人型のノイズが3匹、前へ出ると2人の方を見た。手にはロール状の塊が付いている。それを展開し2人へと放った。

 

 

「助けてッ…颯ぇええッッ!!」

 

 

 

美結が大きく叫んだ。その瞬間、何かが聞こえた気がする。だが、もう間に合わない。美結は強く目を閉じて死を覚悟した。しかし彼女と舞は死んでいなかった。

 

 

「……え?」

 

 

 

美結が目を開くと3匹のノイズの触手が到達する手前で全て止まっていた。そのままゆっくりと身体が上下に分割されて後ろへ倒れとノイズ相次いで消滅する。

錬金術師の男も驚いた顔でその光景を見ていた。

「馬鹿な!?何が起きたッ!?」

 

 

 

 

「…誰?」

 

 

 

 

「誰だなんて自分が1番良く知ってる癖に……。」

 

 

 

2人の前に来たのは赤と黒のシンフォギアを纏った少女。

右手には紅い剣を握り締めていた。

少し伸びた赤い髪を風に靡かせて。

首元からは紅いマフラーの様な物が左右から伸びている。

 

 

「誰だお前はッ!?まさか…まさか貴様が……シンフォギアなのかッ!?」

 

 

 

 

「その通り…!」

 

 

 

少女は錬金術師を睨み付ける。

それから一言、2人へ声を掛けた。

「良く頑張ったね。」と

美結はその声の少女を知っていた。

笑う事は少ないけどそれでも誰かの為に必死に戦い続けて来た事を知っている。

自分が1番良く知っている。

だってずっとずっと彼女の傍に居たのだから。

 

 

「くそッッ…やっちまえッ!!」

 

 

 

「来なよ…私は歌でぶった斬るッッ!!」

 

 

 

少女は2人を逃がす為に飛び掛って来たノイズ達を先に斬り裂き、退路を作る。そこから2人を逃すと再びノイズが少女へと襲い掛かった。

 

 

「はぁあッッ!!」

 

 

 

深紅の赤い剣を振り翳す度に1匹、また1匹とノイズが分断され消滅する。飛んで来よう物ならば飛び上がって避け、左腕のガントレットから小型の刃を放って倒す。あっという間に男だけが取り残されてしまった。

 

 

「う、嘘だろッ!?アレだけ居たノイズが一瞬で……!?」

 

 

 

 

「…まだ続ける?それとも大人しく降参する?」

 

 

 

 

「くッ…うるせぇえッ!!」

 

 

 

男は歩道近くの鉄柱へ触れるとそれを引き抜き、槍へ組み替えると少女目掛けて襲い掛かった。何度も突きを繰り出しては時折、刃で斬り裂こうと。

だが、それは全て巧みに躱されてしまい空を切るばかり。

それから即席の槍は少女の剣により切り刻まれるとバラバラになって足元へと落下した。

 

 

「俺が…俺が負ける!?相手はまだガキなんだぞッ!?」

 

 

 

 

「これで…終わりだッ!」

 

 

 

少女は剣をガントレットへ戻すと男の首元へ素早く右足で鋭い蹴りを放つ。それを受けた男はバタリと地面へ倒れてしまった。

 

 

「…ふぅ。大丈夫だった…ッ!?」

 

 

 

少女はギアを解こうとしたが、間に合わず抱き着かれてしまった。それは少女にとっても見覚えのある姿。

紫色の髪の女の子。自分の胸元に強めに抱き着くと泣いてる様にも見えた。

 

 

「えっと…ケガでもした?」

 

 

 

「馬鹿ッ!」

 

 

 

「へ?ば、馬鹿…?」

 

 

 

 

「馬鹿ッ…馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿ッ!!今まで何処に行ってたのよッ!!人の気持ちも知らないで…ずっとずっと!!」

 

 

 

 

「その…あの後、色々有って…中々戻れなくて…ごめん…。」

 

 

 

 

「全くもう…お帰り…颯ッ!」

 

 

顔を上げると美結は泣きながら微笑んだ。そして颯もまた頷く。

 

 

「うん…ただいま……美結ッ!」

 

 

颯は微笑むと美結をそっと抱き締める。

こうして2人は再び出会う事が出来た。

空白の期間は長かった様で短い様な気がした。それから舞を送った後、2人は仲良く帰路へ着いたのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

今日という日が例え上手く行かなくても明日が有る。その誰かの明日を守るのが私の戦う理由。あの時、私が手にした力は私自身の生き方を大きく変えてしまった。空に手を伸ばした時にカミサマから貰った歌は確かに今も私の胸の中にある。

だから何があっても私は前へと歩き出せる。私はもう独りぼっちなんかじゃない。仲間が居て、友達や妹が居る。

そんな掛け替えの無い人達と笑ったり、泣いたり、怒ったりして毎日を過ごして行きたいんだ。

 

それと、これは私の勝手な推測なんだけど父さんと母さんはレーヴァテインを通して私に伝えたかったんだと思う。

この剣の様に困難を切り開いて前へ、先へ進めって。2人は間違って無かった。もし誰かに2人の事を責められても私と結衣は父さんと母さんの味方だよ。

だから安心してゆっくり休んで…。

 

 

「颯?何、長々と座って話してるの?」

 

 

 

 

「え?…父さんと母さんに報告してた。結衣の事とか色々。ありがとね、お墓参り付き添ってくれて。」

 

 

 

「良いの良いの!私達は親友同士なんだから。それくらい当然でしょ?」

 

 

 

「親友…か。悪くないかも。」

 

翌日、颯は美結と共に両親の墓参りに来ていた。2人は再度手を合わせてからその場を後にする。

 

 

「…ねぇ颯?」

 

 

 

「何?」

 

 

 

「明日からだっけ、新しい所に行くの。」

 

 

 

 

「うん。風鳴司令が急遽作った組織が有るからそこに装者として着任して欲しいって。」

 

 

 

 

「…随分と急なのね。ていうか、あの人何者なの?」

 

 

 

 

 

「響達も忙しいんだって。豪華客船で事件が発生したからそっちに行ってるって連絡有ったし。私も司令の事はあまり知らないよ、凄く強いのは知ってるけど……。」

 

 

 

 

「そっか…でも頑張ってね、応援してるから!」

 

 

 

「うん…ありがとう。それと美結……!」

 

 

 

「何よ?ちょっ…んむぅッ!?」

 

 

 

グイッと美結の腕を引き寄せ、振り向かせると颯は不意に彼女の唇へキスをした。そして直ぐ離れるとスタスタと歩いて行く。

 

 

「え…い、今の何…?」

 

 

 

「さぁ?何だろうね?」

 

 

 

「くぅッッ…はぁやぁてぇえッ!!」

 

 

 

「ふふッ、美結の顔真っ赤じゃん!」

 

 

 

「うっさい!待てこのバカ!」

 

 

2人は雲の無い青空の下をふざけ合いながら通りを歩いて行った。途中からはお互いの手を繋いで。

颯は歩きながら遠くを見て呟いた。

隣を歩く友達を少し見つめてから。

 

 

「……ずっと一緒だよ美結。これからもこの先もずっとずっと一緒!!」

 

 

 

 

戦姫絶唱シンフォギアRV(リバイヴ)

 

 

 

ー完ー

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