「...スカートなんて、いつぶりだろ?暫く穿いてないし。」
上は黒っぽい上着に赤いラインが左右に通っており、両手の辺りに赤いラインがそこでぐるっと円を描いている。
中は白いワイシャツに赤のネクタイに
スカートはチェック柄。
颯は鏡の前でリディアン音楽院の制服へ着替えていた。今、彼女が居るのは学生寮の1つ。昨日此処の鍵を渡され、1晩を過ごした。今日は学校の説明とクラスへの割り振り。更に部屋のルームメイトも今日決まる予定になっている。
「...そろそろ時間か。行かないと。」
颯は部屋を出て、ドアへ鍵を掛ける。そして廊下を歩くと集会の有る教室へと向かった。
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教室内には颯と同じで転入目的で来た同い歳の子がちらほら。それぞれ座っているか、或いは友達らしい子と話しているかの何れか。
「転入生の方は此方へ。資料を持って行って下さい。」
受付へ来ると職員から数枚の資料を受け取る。そして中へ入ると指定された場所の席へ座った。資料には学校に関する事細かなルール、購入する教科書、施設の簡易的な案内図等。
「へぇ...体育館とかプールも有るんだ。此処。」
颯は色々と見ていた。すると、真横に別の子が座ってくる。紫色の髪、そして綺麗な水色の目。
「こんにちは。」
ニコニコと微笑みながら彼女は挨拶して来る。そして颯もそれに応える形で挨拶を返した。
「...こんにちは。」
「ねぇねぇ、此処の制服ちょっと普通過ぎると思わない?もうちょい可愛いの期待してたんだけどなぁ...。」
「...そうですか。」
「...ね、ねぇ?昨日は何してたの?私は友達と流行りのコーヒー飲みに行ったりカラオケしたりしてたんだけど。」
「...荷造りです。此処へ転入する事に決まったから。後は部屋の掃除だけ。」
「...貴女のお友達から暗いとか言われた事は?」
「いいえ、これが普通ですから。...もう良いですか?そろそろ説明始まりますし。」
颯は自分から会話を切ってしまった。横に座った子は苦笑いしながら前へ向き直る。そして教師による説明が始まった。
学校の授業に関する事、他にも学校行事や制服の衣替えの時期の事、校則等。
そして説明が全て終わると今日はこれで解散。明日からは各教室へ割り振られる事になる
「さて...終わった事だし...。」
颯が立ち上がり、教室から出ようとした時に出口で寮のルームメイトの用紙を渡された。そこには
[奏宮颯(カナミハヤテ)]
[音羽美結(オトワミユ)]
と記載されていた。名前から見るに可愛らしい子なのだろうと思いつつ、颯は部屋へと戻って行った。
廊下は既にルームメイトとなる子達が話していたり、荷物が置かれていたりと色々。勿論、颯の部屋の前にも荷物が置かれていた。
それを確認し、自分の部屋の中へ運び入れて行く。ベットは施設でも見た2段ベット。広い部屋にはテレビの他にテーブルやキッチンや冷蔵庫、ソファがそれぞれ置かれている。住むには2人が丁度良いのは見て解る。
「私のはこの辺で...っと。後は誰が来るかだよね。音羽さん...か。」
颯は自分の荷物を1箇所に纏めると必要な物だけを取り出す。そして少し経つとドタドタと誰かが部屋へ入って来た。
「はぁ...はぁ...思ったより広いじゃない...何なのよ全く......。」
ふと顔を上げるとそこに居たのは先程の説明会で無愛想な返しをした颯。そして思わず叫んでしまう。
「あぁーッ!?あの時の無愛想な子!」
「嘘・・・あの時やたら絡んで来た子!?」
颯も向こうの顔を覚えていた。紫色の長髪に水色の目、やたら此方へ話し掛けてきた。それがまさか音羽美結だとは思わなかった。
「...こほん!えーっと私が音羽美結よ。宜しくね、無愛想さん♪」
「誰が無愛想よ...奏宮颯。宜しく。」
2人は少し離れた位置から挨拶をするとそのまま会話は終わり、颯は荷物を開けようとする。
「ちょっとぉ!?フツーはもっと色々話すでしょ!?趣味はー?とか、好きな食べ物はー?とか!」
「はぁ...別に趣味なんて無いし。好きな食べ物なんて考えた事ない。よく飲むのはコーヒー...砂糖無しのブラック。これでいい?」
颯は頭をかきながら思い付いた事を淡々と喋った。当の本人は、むすーっとした顔で颯を見つめるも諦めたのか荷物の配置に取り掛かった。お互いに荷物の整理が終わると颯は壁の近くにポスターを貼ろうとする。風鳴翼のポスター、とあるイベントで貰った限定品。
「良いよね?ポスター位貼っても。」
「物によるわよー?変なのは勘弁ね...って嘘でしょ!?これ、イベントの先着順でしか貰えない奴じゃない!?」
「そうなの?知らなかった。普通に並んだら貰っただけから余計に...。」
「知らなかったじゃないわよ...私も欲しいのに...。」
「今はプレ値付いてる。だから販売サイトでも買えないよ。」
ボソッと付け足すと颯はキッチンへ。そこでお湯を沸かし始めた。
「そう言えば、貴女の事は奏宮さんって呼べばいい?それとも・・・...無愛想さんが良い?」
「...好きにしたら?無愛想って呼んだら二度と口聞かないから。」
「冗談じゃん...じゃあ、颯。それなら良い?私の事は...。」
「音羽さん。でしょ?」
「あう...そこは美結で良いのに...。」
ガクッと美結は ふらついてしまう。
だが、そんな彼女を放置して颯はインスタントコーヒーの元をマグカップへ入れて沸かしていたお湯を注ぐ。颯の周りにはふんわりとコーヒーの良い匂いが漂う。
「来る前に買っといて良かった...やっぱりコレが一番。」
颯はマグカップを持ちながらソファへ腰掛ける。そして1口飲んでからテーブルへ置いた。
「もう寛いでるじゃない...ホント、貴女って変わってるわよね。そういえば颯は兄とか弟、妹とか姉は居るの?」
「...居ないよ、私だけ。」
「つまり一人っ子?」
「正確には居たが正しい。...もう何年も会ってないから顔も殆ど忘れちゃったけど。」
「ふぅん...親が離婚して離れたとか?」
「それなら未だ良い...事故で死んだんだ、私の親。そしたら親戚中は訳の分からない研究をしていた所の子だからって厄介者扱いされ、終いにはタライ回しにされてた。そこで父親の方の親戚が妹だけを引き取って、私だけ孤児院送り。これで満足?」
じっと美結の方を見つめる。向こうは少し思い詰めた様な顔をしていた
「そんな話...よく淡々と言えるのね。普通なら苦しいとか悔しいとか言うと思ってたけど...ごめんなさい、変な事聞いて。」
美結は視線を逸らすと何となくだが颯が感情を殺している様に思えた。相当な思いをしている筈なのに、思い出したら泣いたり恨み言の1つさえ言うかと思ったのに。でも、出て来なかった
「...さ、辛気臭いのは終わりにして!ご飯食べましょ!何食べる?」
「好きにすれば良いじゃん...スーパーかコンビニ行ってカップ麺とか何か買って来れば済む話でしょ?面倒臭いし。」
「はぁー...ホントに無愛想なんだから!!」
美結は呆れた顔をすると自分で調理を始める。最初はぶつくさ文句を言っていたが次第に集中し始める。そして数十分後に2人分の更に盛り付けた手料理を持って来た。
「ほら、私特製のチャーハン!それくらい食べられるでしょ?」
「...どうも。味付けは?」
「塩と胡椒...後は市販の味付け用の調味料だけど?」
「ふぅん...頂きます。」
「感想聞かせなさいよねー!人が腕奮って作ったんだから!!」
颯は1口食べ、暫く噛んでから飲み込んだ。
「普通に美味しい...孤児院の時に出たのよりはマシかもね。」
「孤児院のチャーハンの味は知らないけど、お気に召したのなら結構!はぁー、いつも通りの味付けも出来てるし私って完璧!」
自分で自分の事を褒めると颯の前でモグモグと食べ進めている。その姿はまるで出された手料理に喜ぶ子供の様。
その日は夕飯を食べ、入浴を済ませると明日の支度だけして2人はそれぞれ眠りについた。上に美結、下に颯とそれぞれベットを割り振って。
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ー翌朝ー
今日からクラスへ編成され、普段通りの授業カリキュラムに基づいて授業が行われる。颯は美結より早く起きて支度をしていた。
「カバンと...後は筆記用具、それから教科書と...良し、忘れ物は無し!」
後はお気に入りの音楽再生機器を持って終わり。颯はその後、キッチンへ向かうと冷蔵庫を漁る。有るのは美結が買い込んだ食材ばかり。
「パンも無しか...こりゃ今日買ってくるしか無いな...。」
颯は卵を1つ取り出し、目玉焼きを作る事にした。そして自分が持って来たパックご飯をレンチンし出来た目玉焼きをその上へ。そこに醤油を垂らして完成。
年頃の男性が食べる様なワイルドな朝食だった。そこにインスタントコーヒーを入れたマグカップを置けば完成。
「...頂きます。」
颯は手を合わせ、朝食を食べ始める。
あまり炊事をしない颯だが簡易的な物は作れる。そして直ぐに食べ終わり、今度は身支度へと取り掛かった。美結は朝が弱いのか未だ寝ているらしい。
制服に着替え、髪を整えたりしている時には丁度いい時間になる。
「さぁて...行きますか...。」
再びリビングへ戻ると、先に行くとメモ書きを残して颯は部屋を出た。
廊下には同じ制服を着た女の子達がゾロゾロと歩いている。唯一起きてないのは美結位だろうか?颯は教室へ着くと自分の席へ座る。そして数分後には授業が始まった。始まってから直ぐに自己紹介をして欲しいと言われ、颯は慣れないが教壇の近くへ。黒板へ名前を書いて振り向いた。
「...今日から皆さんと一緒に勉強する、奏宮颯と言います。宜しくお願いします。」
お辞儀をすると拍手が巻き起こる。そしてガラガラとドアを開けて誰かが入って来た。薄い茶髪の髪の毛、そして黄色い目。髪留めだろうか?アルファベットのNを象った様な物を嵌めている。
「ごめんなさいッ!人助けしてたら遅れましたッッ!」
立花と呼ばれた彼女は教師から説教をされている。そしてチラリと此方を見てくる。颯はぺこりと小さくお辞儀をした。
そして昼休み。颯は教室から出て購買へ行こうとした時に話し掛けられる。
「えっと...貴女が転入生の子?」
「...?そうだけど何か?」
話し掛けて来たのは先程の立花さんと呼ばれていた人。颯も彼女の方を向いた。
「私は立花響。宜しくね!」
すっと手を差し出される。颯も何処か恥ずかしそうにしながら手を差し出し、握り締めた。
「...奏宮颯。宜しく。」
「宜しく、颯ちゃんッ!そうだ、折角だからお昼も一緒にどうかな?次いでに色々案内してあげるよ!私のお友達も紹介したいし!」
「えっと...私は別に...。」
「遠慮しなくて良いから!ほらほら!」
グイグイと手を引かれて教室を後にした。彼女もまた美結とか異なるが明るくて元気一杯な雰囲気を感じていた。
それも美結とは比べ物に成らない程のベクトルなのは間違いない。間違い無くとんでもないのと知り合ってしまったと颯は直感した。
2人は食堂へ来ると、昼休みで賑わっている様をそのまま見ていた。
「此処が食堂だよ!食券は此処で買ってね。」
響はニコニコしながら券売機を指さす。
本人はどれにしようかなぁと色々見ている。颯は食堂で食べる気はなかったのだが、誘われたからには止むを得ず同じく券売機のメニューを見ていた。
「......じゃあ私は蕎麦に。」
「私は...えーっとフライ定食のご飯大盛りッッ!!」
「大盛りって......そんなに食べるんですか?」
「うん、ご飯大好きだから!あと敬語じゃなくて良いよ?同い歳だもん。」
響と共に食事券を買うと並んでからそれぞれが頼んだメニューを受け取る。そして空いてる席へ座った。
「いやぁー、やっぱりご飯だよねぇ!何をするにもご飯が1番!いっただきまーす!!」
ニコニコしながら響は手を合わせ、箸を手に取ると山盛りのご飯を食べ始める。
「ホントにご飯大盛り...頂きます。」
颯は頼んだザル蕎麦を食べ始めた。
蕎麦は久し振りに食べた為か特別な味がする。響は嬉しそうにご飯とおかずを交互にモリモリ食べている。
「響!ここに居たの?もう...勝手に出てっちゃってさぁ。探したんだよ?」
「ごっくんッ...ごめん、未来。転入生の子が入ったからつい......えへへへ。」
「今日もまた人助けして遅刻したんでしょ?もう...お人好しなんだから。あ、こんにちは...貴女が転入生の?」
「...奏宮颯です。宜しくお願いします。」
「小日向未来です、響が迷惑掛けると思うけど...私共々よろしくお願いします。」
未来と颯は互いに頭を下げる。
すると今度は息を切らした美結が颯の肩を掴んで来る
「はぁーやぁーてぇーッッ!!どうして起こしてくれなかったのよぉッ!?お陰で遅刻してめっっっちゃ怒られたじゃない!!」
「...気持ち良さそうに寝てたから、邪魔しちゃ悪いなってさ。」
「そういう問題じゃないでしょ!?全くもう...!あ、どうも...。」
美結は響と未来を見掛けると頭を下げた。そして3人も自己紹介を済ませると同じテーブルへ座った。
「へぇー、2人は同じ部屋なんだ。私も未来と同じ部屋だよ!」
「でも、こんなに無愛想じゃないでしょー?昨日もテキトーな返事しかしなくて大変だったんだから...。」
「無愛想って言うな!ったく、自分で起きれば良いのにさぁ...。」
「ふふ、でも2人とも仲良しだね。私と響みたいに。安藤創世、寺島詩織、板場弓美...この3人が私と響の友達。近い内に紹介してあげるね?」
未来は微笑みながら3人の名前を上げた。そして食事を済ませるとそのままお喋りが始まる。
「いやぁー!美味しかったなぁ!!ご馳走様でしたぁーッ!!」
「あのさ、あのさ!今度みんなでカラオケとか行かない!?知り合ったのも何かの縁でしょ!もっと色々知りたいの!」
「私はパス。」
「カラオケかぁ...響はどうする?」
「んー?未来が行くなら...。ねぇ、颯ちゃんも行こうよ?楽しいと思うよ?」
「むぅ、折角誘ってるのにぃ...颯ッ!あんたノリ悪過ぎ!!」
ビシィッと美結は颯を指さした。
そして彼女の方をジロリと見ている。
「ホント暗過ぎる...!!直ぐ避けようとするんだから!」
「参加不参加は本人の自由でしょ?...私はアンタみたいな楽観主義じゃない。」
「誰が楽観主義よ!ほんっと、可愛く無いんだから!」
「まぁまぁ...カラオケはまた今度にしよう?誘ってくれれば私達も付き合うし。ね?」
未来は2人を宥めるとその場は何とか落ち着いた。美結は颯の方を見つつ、溜息をつきながら腰掛けた。そしてチャイムが鳴り、昼休みが終わると4人は午後の授業へ向かった。午後は後3回授業を受ければ終わりだった。
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ー放課後ー
「んん...はぁ、やっと終わった!」
「響また寝てたでしょ?お昼あんなに食べるから...。」
「いやぁー...あはは...。」
響と未来の後に続いて颯と美結も教室から出て来た。
「...取り敢えず、帰ったら予習と復習をしないと。テストに出るって言ってたし。」
「ふわぁあ...颯は眠くないの?私、超疲れた...。」
「朝あれだけ寝てたのに眠いの?遊ぶ事には直ぐ頭回る癖に。」
「五月蝿いわねぇ...変な所だけ気が利いて...。」
そんな話をしながら歩いていた時、響の携帯が鳴った。そして3人は廊下の中程で立ち止まる。
「もしもし立花です...あ、師匠!お疲れ様です。颯ちゃん?今一緒ですけど...解りました、一緒に向かいます!」
誰かと電話を終えると響は未来の方を見ていた。
「響、また人助け?」
「うんッ、颯ちゃんにも来て欲しいって!行こっか!」
「颯が人助け?何の事?」
「美結ちゃんは私と一緒に戻ろう?...そっか、颯ちゃんも響と同じなんだね。頑張って!」
「え...あ、ちょっとッ!?」
「さ、行こう!」
響に手を握られると颯は共に走り出した。そして2人は校舎を出た所に居た車へ乗り込むと直ぐに走り出した。
「あの...一体何処へ?本部って建物じゃないの?」
「あー......颯ちゃんは未だ知らないんだっけ?あ、見えてきた!アレが本部だよ。」
車が暫く進むと眼前に出て来たのは巨大な潜水艦。そして近くへ車が止まると2人は降りた。
「これがS.O.N.Gの本拠地...。」
颯は思わず息を飲んだ。そしてそのまま響と共に歩いて行き、中へと入る。
中をひたすら進むとブリッジらしき所の扉の前へ来る。
「この先に師匠...えっと、弦十郎さんが居るよ。立花響、現着しましたッ!」
「うむ、来たか...ようこそ、颯君。此処がS.O.N.Gの本拠地だ。驚いたかね?何せ本拠地と言っても巨大な潜水艦だからな。」
響に後に続いてブリッジへ入ると弦十郎が迎えて来た。まるでSF映画に出て来る戦艦の様な感じがする。
「...広いんですね、結構。」
颯は色々と見回していた。
画面には常に何かが映っている。
地図やレーダーが絶え間なく動いている。無論、外の景色も解る。
「彼処に居るのが藤尭朔也、オペレーターだ。そしてその離れた横に居るのが友里あおい君。彼女もオペレーターだ。」
弦十郎が紹介すると2人は此方へ向き、頭を下げた。そして弦十郎は説明を続ける。
「単刀直入で申し訳ないが...颯君、キミの最初の任務はシンフォギアの力を完璧に使いこなして貰える様にする事だ。それとギアの特性を良く理解する事...それがキミに課す最初の課題だ。出来るな?」
「...はい、勿論です。」
「良し。生憎だが他の装者...マリア君、翼、クリス君らは別で動いて貰っている。なので颯君の訓練は切歌君に調君、そして響君にお願い出来るか?」
「はいッ!大丈夫ですッ!!」
「それともう1つ。最近、街で不審な人物を見掛けたと噂がある。ノイズを操る事が出来ると聞いているが・・・詳細は解らない。くれぐれも注意してくれ。では解散ッ!」
弦十郎の掛け声と共に響は敬礼した。そして颯も同じ様に敬礼する。ブリッジを後にし、2人はトレーニングルームへ入った。
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室内は殺風景で普通の部屋。とはいえ十分に広い。そして響がポチポチとボタンを押すと風景も変わる。街並みへと変化した。
「うわ...すっごい...ビルとか道路も出て来た。」
颯は辺りを見回す。そして響はペンダントを取り出すと颯の方へ向き直った。
「よし、じゃあ始めようか!エルフナインちゃん!お願いッ!」
声を掛けるとエルフナインの声と共に仮想のノイズが現れる。
「ッ...ノイズまで!?」
[仮想敵ですが、攻撃を受けるとダメージも受けてしまいますから気を付けて下さい!颯さん様にレベルを調整してますので、先ずは慣れていきましょう!]
マイク伝いで音声が流れた。
「でも、私はあの時偶然ギアを纏っただけで...そんないきなりなんて。」
「大丈夫だよ!胸の歌を信じて!」
「胸の...歌?」
「うん、静かに目を閉じて...深呼吸すれば浮かんで来る。颯ちゃんなら出来る!」
響は力強く頷いた。そして離れた所から颯を見守る事に。
「解った...ッ!」
目を閉じ、深呼吸をする。そしてペンダントを握り締めると何かが聞こえて来る。これが歌なのだろうか?
「Saver all-revantin-tron...ッ!」
歌を軽く歌っただけなのだが、突如としてペンダントが光る。そして着ていた制服が消えて裸体の上からインナースーツやアーマー等が装着され、颯はギアを纏う事に成功した。
「同じだ...あの時の格好と!」
見慣れた黒いブーツに赤と黒のギアインナー、そしてガントレット。頭部にはヘッドフォンを思わせる様なアーマーが付き、腰周りには左右に黒い布が展開されていた。
「これが颯ちゃんのギア...!マリアさんがあの時着てたガングニールにも似てるし...何処と無く翼さんのギアっぽい様な...?」
響は颯のギアをジロジロ見ていた。
そんな視線を他所に颯はノイズへと向き合った。
「私、喧嘩とかした事無いんだけど?トレーニングだから殴り合い...なの?」
ふとエルフナインへ指示を貰おうとする。まさかノイズと拳でやり合えとでも言うのだろうか?
[いえ、アームドギアを使って下さい!颯さんのアームドギアは右腕に備わっている剣です。それを試してみて下さい! ]
「剣?あの時使った奴か...ッ!」
颯は右腕のガントレットから剣を引き抜く。あの時と同じ黒い刃の剣が出現した。
「...良し!」
そして構えるとノイズの群れへ向き合う。形は人型やらカエル型やら様々。
「頑張ってッ!颯ちゃんッ!」
響もいつの間にかギアを纏っていた。
そして颯の事を近くで見守る。
「やぁああッッーー!!!」
目の前の1体目を斜め掛けに斬り裂く。更に続けて2体目、3体目。相次いで斬り進む。4、5体目から今度はノイズによる攻撃が始まった。他のノイズの後ろから飛び出てきたサムライ型ノイズが颯へ襲って来たのだ
「くぅッ...何、コイツ...腕が剣になってるッッ!?」
颯とノイズはギリギリと競り合う。どうやら肉弾戦では難しい
「颯ちゃん、距離を取って!無理に競り合うと逆に追い込まれるから!」
「解ってるッ...!!」
颯は無理に振り払うと距離を取る。向こうは仮想敵なのにやる気満々だった。
「...どうすればいい、どうすれば切り抜けられる!?」
颯は構えながら思考を巡らせる。
考えるより動くしかない、今はただ目の前に集中するだけ
「そうだ...あの時もこうやってッ!」
力を込め、目を閉じると炎が刀身を包む。これなら対等にやり合える
「よし...出来たッ!!」
颯は再びサムライ型へ斬り掛かった。向こうは防御態勢へ入り、颯の剣を受け止める。だが少しずつ炎へ巻かれ始め、終いには全身が発火しその場に崩れ落ちた。
「...ッ!!」
再び別の敵へ向かい、走り出す。
ある程度のノイズを斬り裂いた所で殲滅は終了した。
「はぁ...はぁ...ッ.......。」
額からダラダラと汗を垂らしながら颯は項垂れていた。剣を握る手に力が余り入らない
「お疲れ様、颯ちゃん。その...大丈夫?」
「え?うん、何とか...。」
景色が元へ戻ると颯と響はギアを解いた。そしてエルフナインも入って来る
「颯さん、お疲れ様でしたッ!颯さん、ペンダントをお借り出来ますか?少し調整を加えた方がもう少し簡単に扱えると思いますので。」
そっと小さな手を差し出して来る。
颯は頷くとペンダントを彼女へ渡した。
「ありがとうございます!明日には調整を終わらせておきます!」
エルフナインは言い残すと部屋を後にする。
「汗かいたし、シャワー浴びて来たら?私は此処で待ってるから。お風呂場は此処を出て通路を右ね?」
そう促されると颯は頷き、1人で風呂場へと向かった。
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ー風呂場ー
中にはシャワーが数個と奥に浴槽が備わっている。制服を脱衣場で脱いで、室内に入って1つ目の個室へ入ると颯は裸でシャワーを浴び始める。
「未だ初日なのに...あれだけ体力使うなんて...。」
身体を石鹸で洗いながら、ふと鏡を見た。そこには年頃の女の子と比べると整ったスタイルで白い肌の自分の身体が映る。
「あのギアを使いこなさないと誰も護れない。私は未だ無力......。」
〔貴女は自分の本当の力を未だ知らない...。〕
「誰ッ!?」
聞き覚えのある声。街中で擦れ違った時に聞こえたのと同じ声だった。
颯は見回したが声の主は解らない
〔あの力はそんな生易しいモノでは無い...貴女は選ばれた。貴女が相応しいと私が判断したから。〕
「選ばれたって...装者に?あのギアには何が有るの?貴女は誰なのッ!?どうして私を選んだのよッッ!?」
〔...胸の歌は貴女の中に。〕
「ねぇッ、未だ話は終わってないッ!ダメだ...声が消えた......。」
再び謎の声は消えてしまった。そして颯はシャワーを止めると脱衣場へ戻り、再び支度を始める。その後、響と合流した颯は潜水艦を後にして学校へと戻って行った。
謎の声と自分が選ばれた理由を知らぬまま。