颯がトレーニングを開始してから数週間経った。最初は剣を振るのも一苦労だったが、今では軽々扱える程に。
戦闘スタイルは剣術に格闘を織り交ぜた独自のスタイルへ。今日も朝から颯は響と共に街中をランニングしていた。
毎朝5:00に起きて7:00までランニング。
外は未だ人が殆ど出歩いていない。
だからこそ、この景色が新鮮だった。
「頑張って!あとちょっと!」
「ッ...よくそんな走れるね...!」
「そりゃあ鍛えてるし?大丈夫、颯ちゃんも慣れれば出来る様になるから!」
「はぁ...?」
そして学校へ戻ると2人は立ち止まり、息を切らしていた。
「お疲れ様!今日の朝のトレーニングはこれで終わり!」
「お疲れ様...ッ。」
声を掛けられると颯は顔を上げ、持って来たタオルで汗を拭く。数週間経ってはいるが、自分が強くなっているという自信があまり無い。ギアもこの前調整して貰ってマトモに動かせる位にはなった。
そして響と共に寮へ戻り、途中で別れると颯は自分の部屋へと戻った。
ドアを開けると美結が既に起きていた
「お帰り、先にシャワーでも浴びて来たら?汗っぽいでしょ?」
美結に言われ、颯は無言で頷くと風呂場へ入る。そしてジャージ等を脱衣場で脱ぐとシャワーを浴び始めた。
辺りには美結が買ってきたシャンプーやリンスが置かれており、入浴剤もその隣に有る。そして身体を洗ってから再び戻ると下着姿のままリビングへ戻って来た。
「...ねぇ、私の服は?」
「そこに置いてる...そういえば、髪はちゃんと乾かした?」
「タオルで拭いただけ。」
「男の子か!?ホントにもー...あと下着姿で歩き回らないの!ホントに同性なの?実は男の子だったりしない?」
「そんな訳無いでしょ...良いじゃない、別に。私と音羽さんしか居ないんだし。」
「はぁー...そこ座って!ドライヤー持って来るから!」
こんなやり取りが何度も続いている。
颯はズボラな事が多く、髪はタオルで乾かしたらドライヤーは掛けない、下着姿で歩くのもしばしば。施設に居た時も風呂場が近い事から1人で風呂へ入った時は下着姿のまま自室へ戻り、寝る時にだけ寝巻きを着る。流石に食事の時や誰かと会う時は着ている。
「しっかりしてると思ってたのに......意外と変な所はズボラなのね。」
「...逆に音羽さんが几帳面なんでしょ?」
「音羽さんじゃなくて、美結って呼んでよ。私は颯って呼んでるのに。」
「...どっちで呼んでも意味は同じでしょ、変わらない。」
「変わるっつーの!」
「はいはい...。」
ドライヤーをコンセントへ刺すと美結は颯の髪を乾かし始める。これも出会った時に美結が気付き、いつの間にか日課になった。綺麗な髪なのに勿体無いと。
「それで...今日もボランティア行くの?毎日毎日、律儀ね...。」
「え?うん...。」
「頑張るのは良いけど...身体、壊さないでよ?はい、終わり!」
ポンポンと頭を軽く叩かれた。美結はプラグを抜くと、ドライヤーを片付けに洗面所へ行った。颯は先に制服へ着替えるとその後に食事を始める。今日はトーストにジャム、それからサラダ。
簡易的だが朝はこれ位で足りる。朝食を済ませると食器を台所へ戻し、先に出て行く。カバンを持つと何も言わずに颯は部屋を後にした。
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ー本部ー
颯、響は本部のブリーフィングルームに居た。何でも急なミーティングが入った為だ。そして後からバイト先で見た2人も入って来る
「あ、切歌ちゃんに調ちゃん!」
「え?あ...。」
響が声を出すと、颯も思わず入って来た2人を見る。そして向こうの2人も颯を見て驚いていた。
「およよ!!?ファミレスのお姉さんデスッ!?」
「ホントだ...ハンバーグのお姉さん!」
「あー、この前の子?」
3人、特に切歌が驚いていた。何せあの時に出会った赤髪のお姉さんだからだ
「お姉さん...装者なのデスか?」
「...まぁ?成り行きでそうなっただけ。宜しくね。」
颯は手を振る。そして調の方を向いた
「真衣と雰囲気が似てる...気の所為?」
「え?真衣さんってお姉さんの知り合いの人?」
「まぁ...ね...。」
そんな話をしていた時、弦十郎が入って来る。4人は彼の方へ向くと、何も言わずに資料が4人へ手渡された。
「およ?何デスか、これ...?」
「...別働隊?」
切歌と調が首を傾げている。そして2人を他所に説明が始まった
「簡易的に説明すれば、君達4人で新チームという事だ。颯君が加わった事で装者は7人。バランスを考えた上で組んだチームだ、問題は無いだろう。...それと気になる聖遺物も見つかっている。 」
「...気になる聖遺物ですか?」
「ああ。名はギャラルホルン...未だ能力は未知数、厳重に管理されているが...いつどうなるかは解らない。何れ、我々も何かしらの形で関わるかもしれないな。」
弦十郎はそう伝えた。そして再び本題へ。この隊の編成後、颯は本格的な実戦へ望む事になる。現場へ駆け付けるのは調、切歌の2人。それから響と颯。
簡単な件であれば2人、厳しい場合は4人全員での出撃が要請される。
大まかな説明を終えると弦十郎だけは部屋を後にした。
「実戦...か。私に出来るかな...。」
颯は拳を握り締めた。すると響が肩へ手を置いて来る。
「大丈夫、私達が付いてるし...颯ちゃんの努力を証明出来るチャンスだよ!危なくなったらカバーする!だから自信持って!」
響はニッコリと微笑むと颯を後押しした。すると横に居た調がふと思った事を口にした。
「あの、颯さんのシンフォギア...何ですか?」
「そう言われると気になってたデス!」
切歌も加わり、余計に話が盛り上がってしまった
「私の?...私のはレーヴァテインって言うんだって。成り行きで装者になったから詳しい事は良く解らないんだけど。」
颯は首を横へ振った。事実、何故自分が選ばれたのかも解らない上に何故、適合出来たのかも解らない。それが偶然なのかそれとも必然なのかも。
「成り行き...つまりマリアや切ちゃんや私みたいに装者になれって決め付けられた訳じゃない...と?」
「...多分ね。私の親はもう両方死んでるから何も聞けないし。」
ペンダントを制服のポケットから取り出す。それは蛍光灯の明かりの反射で綺麗に光っていた。
「あ、そろそろ行かないと!遅刻しちゃうよ!」
「デデデッ!?もうそんな時間デスか!?」
「募る話はまた後で...行きましょうッ! 」
4人は大慌てでダッシュし、学校の方へと戻って行った。
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辛うじて授業には間に合った事から遅刻は免れた。そして颯、美結と響、未来は同じクラスの為、合間の休憩時間でも話し合っていた。
「...颯、私に何か隠してる?」
「隠してるって?......何を?」
「何となく気になっただけ。本当に唯のボランティアなの?」
「そうだけど?それとも、私がサボって遊んでると思う?」
ジロリと颯は美結を見つめる。
響と未来はそれを遠目から見ていた。
「...そうは言ってないでしょ?でも、いつも帰り遅いし...今朝だってギリギリになって学校来たじゃない?だから余計に気になってるの。」
「じゃあ聞くけど...貴女に話した所で何か解決する?」
「むぅ...何よ、さっきから聞いてれば人の事バカにして!」
「まぁまぁ!落ち着いて2人とも!喧嘩はダメだってば!!」
喧嘩になりそうになった所で響が仲裁に入る。実は美結と颯の仲は未だ距離が縮まっていない。話こそするが1歩間違えれば喧嘩になる。
「じゃあ言わせて貰いますけどね、誰がいつも颯のご飯作ってると思ってんのよ!」
「はぁ?それは関係無いでしょう?」
「関係有るッ!メニューだって毎日毎日考えてんの私なんだから!!ちょっとは感謝してよね!」
「ふぅん...私は別に頼んで無いのに。そっちが勝手にやってるだけじゃないの?」
「はぁ!?人の苦労を何だと...ッ!」
「何、文句ある?そもそも元から気に入らない...親じゃないのに親みたいな顔して私と関わって...何が楽しいの?私のお世話係りのつもり?私はペットじゃないッ!!」
「別に私はそんなつもりで...!」
「...もういい、これ以上私に関わらないで!迷惑だからッッ!!」
颯は睨み付けるとその場を去った。
そして1人で廊下を歩き、学校の屋上へ来ると外の景色を眺めていた。離れた所には街が見える。ビルや商業施設、そしてその上に立てられている看板。
ポケットから取り出したのは小型のオーディオプレーヤー。赤い端末に対し白いイヤホンが繋がれている。そしてイヤホンを両耳に付け、曲を再生した。自分が好きなアーティストの風鳴翼の曲を。
こうしている時が颯にとっては何よりも幸せな時間だった。音楽は人の心を穏やかにする事を知ったのは施設に居た時。
当時、中学校には通っていたが親を亡くしていたという事で周りから憐れむ目で見られる反面、変な研究に関わっていたという噂も有った事から周りは彼女を遠ざけていた。私が一体何をしたのだろう?私は悪い事を何もしていない。両親の仕事の事は何も知らないのに。それなのに周りは颯を避けた。石だってぶつけられた事も有る。私物も隠されたりと酷いイジメにも有った。自分は本当に生きていて良いのか?そう思う事も有った。
だが、そんな時に施設のテレビで偶然聞いたのがツヴァイウィングの曲。彼女達の笑顔、それに伴う歓声。そして何より透き通った様な綺麗な歌声。聞いている内に少しずつ心が楽になっていく気がした。辛い時、悲しい時、苦しい時はいつも2人の曲を聞いて乗り越えてきた。
親が居なくても私は大丈夫。そう思えたのは彼女が中学を卒業した後の事。
「はぁ...やっぱり1人が1番落ち着く・・・誰にも干渉されないし、誰にも文句を言われない。誰かと関われば傷付くのは自分...そうでしょう?今迄もそうだった様に。」
目を閉じれば曲だけが彼女の中に流れる。それはまるで子守唄の様に優しく、彼女を包み込む様にも感じられた。
すると後ろから急に肩を叩かれ、我に返る。そして振り向くと響が立っていた
「......少し、話さない?ほらお弁当。美結ちゃんが持って行ってあげてってさ。」
そっと青い布に包まれた弁当を差し出す。2人は屋上の端へ座ると昼食を取り始める。
「...話す事なんか何も無いのに。」
「颯ちゃんに無くても、私には有るの!お節介というか...そういう本質なんだろうね、私は。」
「......音羽さんが頼んだの?」
「ううん、私の意思だよ。お弁当は美結ちゃんから受け取っただけ。」
響は持って来た大きなおにぎりを取り出すと食べ始める。やはりご飯好きなのは相変わらずだった。
「颯ちゃんも食べなよ、お腹空いてるでしょ?」
「私は...要らない。大丈夫...。」
「無理しちゃって。なら私が食べちゃうよ?」
「ッ...ほら!そんなに食べたいなら食べれば良いでしょう!?」
弁当を響の前へ突き出して見せた。意地でも食べないつもりらしい。
「素直じゃ無いなぁ...食べないと持たないよ?出撃だっていつ来るか解らないんだしさ。」
響は弁当の包みを解くと長方形の形をした蓋を開けてみる。そこには野菜や肉類、揚げ物等のおかずが。下はごま塩を振った白米。
「うわぁ、美味しそうだなぁ...未来の手料理みたい!」
響は思わずゴクッと唾を飲み込んだ。
そして箸を開くと響はおかずを1つ摘み、颯へ差し出す。
「...ほーら、食べなって!あーん!」
ニコニコしながらエビフライを向けられる。颯は逃れられないと知り、仕方なく口を開けて食べた。
「ん...美味しい......。」
「ああは言ったけど、本当は美結ちゃんと仲良く成りたいんじゃないの?」
「私は別に...ッ。」
「誰かに手を差し出す事も大事だけど、自分から手を差し出す事も大事だよ。助けて欲しいって思った時も、傍に居て欲しいって思った時も・・・そうすればきっと助けてくれる!ちゃんと謝れば解ってくれるよ、美結ちゃんだって!」
響は微笑む。颯は自然と自分の手を見つめる。今まで、手を握られる事は有ったが自分から手を差し出した事は無い。誰かと繋ぐ為の手。響が言うと何故かそれはとても重みが有った。
「解った...そこまで言うのなら......話してみる。もう1回。」
「うん!さぁ、残りも全部食べちゃえ!」
弁当を再び渡されると颯は箸を手に取り、食べ始める。そして米粒1つ残さず全てを食べ終わった。両手を合わせ、ご馳走様でしたと一言。慣れない手付きで包みを纏めるとそれを手にし、響と共に屋上から校内へ戻った。
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昼休みが終わり掛けた時、突如として響の携帯へ着信が。通話を簡潔に済ませると颯の方へ振り向く。
「颯ちゃん、初陣だよッ!」
「...解った!」
頷くと2人は教室へ。そして颯は包みを自分の机の上へ置いた。
「......ねぇ、颯!」
美結が颯を呼び止めると颯も立ち止まった。だが本人は振り向かないまま響と共に教室を出て行く。そして走りながら情報を聞こうとする。
「ねぇ、場所は?」
「ポイントC、此処からそう遠くない!」
2人は校舎を後にし、目的地へと走って行った。
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ーポイントCー
そこは会社のビルやオフィス街の辺り。
駆け付けると既にノイズが何体か居るのが確認出来る。
「いい、颯ちゃん?無茶はダメだからね! 」
「...解ってる!」
「Balwisyall nescell gungnir tronッ!!」
「Saver all revantin tronッ!!」
2人はそれぞれ詠唱し、ギアを纏う。
人混みをすり抜けてノイズへ立ち向かっていく
「逃げて下さいッ!此処は私達が何とかしますからッ!!」
響は逃げ惑う人々へ声を掛ける一方、颯はこれ以上進ませまいとし剣を引き抜き、ノイズらへ向けた。
「......お前達なんかこの剣で蹴散らしてやるッッ!!」
颯は真っ向からノイズへ突っ込む。人型を斬り裂いたかと思えば鎌を持ったノイズが割り込んで来る。攻撃を避け、咄嗟に繰り出した蹴りで粉砕した。
「お待たせッ!皆、避難出来たから大丈夫!2人で此奴らを片付けよう!」
「うん......ッ!!」
互いに真正面へ立つと颯はガントレットへ剣を再び差し込む。響は構えると両足のアンカージャッキを起動させる
「いっけぇええッッッーーー!!!」
響はロケットスタートを行い、背面のブースターと共に加速。そして突き出した拳でノイズを次々と撃ち抜く。
「喰らえぇええッッッーー!!!」
颯が右腕を突き出すと同時にガントレットから左右に分離した剣が出撃。そこから生成されたエネルギー状の小型の剣が発射され、次々とノイズを貫いていく。
そして全てのノイズを殲滅すると風で黒い粉が舞い上がった。
「ふぅ、これで一安心......。」
響は辺りを見回す。ノイズらしき面影も敵影も無かった。だが、突然頭上から拍手が聞こえて来た
「流石はガングニールのギア...形は違うけれど、性能は折り紙付きか。ふふッ、そうでなければ張合いが無い!!」
黒い長髪、そして血の様に赤い瞳。
赤いスカートとグレーのシャツを纏った女性が電柱の上から2人を見下ろしていた。
「貴女は誰ッ!?貴女がこんな事をしたの!?」
響は彼女へ向かって叫ぶ。
「ええ、そうよ?それと...アレがレーヴァテインのギアか。あの方も欲しがる訳だ...ふふふッ、これでも未だ完全に引き出せてる訳では無いなんて......。」
女性は颯を見ると不気味に笑っていた。そしていつの間にか地面へ降りており、2人の前へ立ちはだかる構図になった。
「先ずは自己紹介から......私はレイス。レイス・ヴェステリウスダイン...さぁ、楽しませて頂戴?シンフォギアァァッッ!!」
右手から剣を出現させ、颯目掛けて斬り掛かった。颯も剣を引き抜くとそれを受け止めて競り合う。
「あはははッッ!!反応速度も良い...!貴女、戦うの初めてなんでしょう?」
「答える義理なんか無いね...ッッ!!」
2人は競り合い続け、互いに振り払うと何度も切り結ぶ。
「貴女の相手は1人じゃないッ!!」
響も突撃し、拳を振り翳す。
「慌てないの...これでも相手してなさいなッ!!」
レイスは左手で出した障壁で弾くと小型の石の様な物を続けてばら撒く。それ等が地面へ落下するとそこからノイズが現れた。
「アルカ・ノイズッ!?...だとしてもッッ!!」
響は構え直すとノイズと戦い始めた。
「こっちはこっちで楽しみましょう?レーヴァテインちゃんッ!」
レイスは何度も斬撃を繰り出して来る。
颯は防戦一方の状態へ追い込まれつつ有った。
「くそッ...此奴、何なの!?それなら...ッ!!」
距離を取ると持っていた剣を2つへ分割する。そして左手に持つと二刀流の形となった。これもトレーニングで会得した物だ。
「来なよ...オバサン!!」
「オバサン?...失礼な子ねッッ!!」
レイスはニヤリと笑うと颯へ再び斬り掛かる。それを右手の剣で颯は受け止め、自分の方へ受け流すと同時に左手の剣で斬り裂いた。確かに手応えは有った。だが、何かがおかしい
「痛ったぁ...ふふ......なんちゃって。残念でした♪」
本来なら痛みや血が吹き出る筈。だが、血は出ていない
「嘘でしょ...バケモノ!?」
「バケモノじゃないわ...私は自動人形(オートスコアラー)。血も出なければ痛みも何も感じないッッ!!」
動揺している颯の隙を付くと彼女の方へ剣を向け、振り翳す。放たれたのは剣により放たれた斬撃そのもの。
「ぐぅうッッ......うわあぁあッーー!?」
受け止めきれず、颯は吹き飛ばされてビルの壁面へ激突してしまう。ガラガラとコンクリートの破片が颯へ降り注いだ。
「颯ちゃんッ!?このッ...! 」
響はノイズを退け、レイスへ走り出す。そして拳を振り翳すのだが彼女には届かない。
「残念♪」
「くぅッッ......!!」
ギリギリと押し合う。だが障壁は破れず、あしらわれてしまった。
「はぁーあ、他愛の無い事......。」
「何余裕こいてんの...私はまだやれるッ......!! 」
身体を無理に起こし、颯は立ち上がった。パラパラと細かい破片が足元へ落下する。
「...根性は有るみたいね。負けず嫌い?それとも火事場のナントやら?」
「勝手に言ってろッッ!!」
颯は剣を拾い、レイスの方へ走り出す。だがそれを響が制止した
「ダメだ、颯ちゃんッ!!」
「退いてよッ!!此奴だけは...此奴だけはぁあッ!!」
「ふふ......懸命な判断ね。迂闊に突っ込めばタダでは済まない。でもまぁ、また会いましょう颯ちゃん...それと私はお姉さんよ?覚えといてね?」
レイスは姿を消した。残されたのは颯と響の2人だけ。そして2人はギアを解いた。
「ねぇ、何で止めたの!?1発でも喰らわせてやれるチャンスだったかもしれないのに!!」
「言ったじゃん、無茶はダメだって!!だから止めたんだよ...それにもし、颯ちゃんに何かあったら美結ちゃんが可哀想だと思ったからッッ!!」
「ッ......誰もそんな事頼んでないッッ!!」
颯は響を振り払うと1人でスタスタと歩き出す。学校の方とは異なる場所へ。
「何処行くの颯ちゃんッ!?」
響も慌てて颯を追い掛け、彼女の制服の袖を掴む。
「私に触るな......偽善者ッッ!!」
颯は響の手を払い除けて走り出してしまう。
「あ...ッ...!?偽善者......か。また言われちゃったよ...あれから気を付けてた筈なのに......。」
響は振り払われた手を見ながら呟いた。彼女の事は弦十郎からも聞かされている。過去の事から彼女の扱いが難しい事も。一度乱れてしまった調律を再び元へ戻すのは難しい。響は本部へ現状を伝えると1人で現場を去った。