戦姫絶唱シンフォギアRV   作:秋乃楓

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09災いは彼方より来たりて

響と颯は本部の指示によりある場所を訪れていた。それはつい最近発見された錬金術師らのアジトで、何者かにより本部へと情報がリークされた。

あまりの唐突な出来事であった事から弦十郎は2人を招集し現場へ向かわせた。

既に錬金術師らは身柄を拘束された後で、残っているのは調査のみ。

2人は調査員数名と共にアジトの中を散策していた。

 

 

 

「…ドラマや映画のアジトとは大違い。よりによって洞窟だなんて。」

 

 

 

 

「そっか、颯ちゃんはこういうの初めてだもんね。私達は調査というよりこの人達の護衛が任務だからね!」

 

 

 

 

「解ってる…ところで気になってるんだけど、錬金術師って何?此処に来る前の資料でも何回か出て来たけど。」

 

 

 

 

「あー…確かエルフナインちゃんがそういうの知ってるかも。私はそういう難しいの解りませんッ!」

 

 

 

 

「成程ね……確かに頭良さそうだったし、私にも分かり易く色々教えてくれたから今度聞いてみよ。」

 

 

 

細長い洞窟を抜けると目の前に開けて来たのは部屋だった。足元もドアの前から先はコンクリートの床になっている。調査員2名が2人の前へ出るとドアを開き、中へと入る。

 

 

「うわぁッ…広い……!」

 

 

 

「図書室…?いや、違うか……。」

 

 

 

颯と響は部屋の中を見回していた。

洞窟の中とは思えない光景が広がっていたのだ。机には山積みにされた資料、それから様々な写真が壁に貼られていた。

調査員達は何かを報告すると作業を始めていく。2人は彼等の仕事が終わるまで辺りを見て回る事にした。

 

 

 

「おっきい地球儀…あっちは望遠鏡も有る……これは本…かなぁ?見た事ない字がびっしり書いてある。」

 

 

 

 

「これって…組織図?」

 

 

 

颯は偶然発見した図を見ていた。

所々に何かの家紋が書いてある事は見て解った。しかしそれ以上の事は何も解らない。

すると響が颯へ声を掛けてくる。手招きされて近付くとガラスケースに入れられていた小さな箱があった。

 

 

「これ何の箱だろうね?キラキラしてて綺麗!何入ってるのかなぁ?」

 

 

 

 

「このサイズなら宝石が入ってる…とか?」

 

 

 

 

「…開けてみる?」

 

 

 

 

「ダメ、絶対怒られる。」

 

 

 

「ええー?ケチケチしないで、開けてみようよ?」

 

 

ダメと言われれば尚更、それが気になるのが立花響という人間なのは颯も解っている。颯は近くに居た調査員に尋ねるとコレはただの箱では無いと聞かされた。

ガラスケースに厳重に保管されているコレこそが探していた物なのだという。

戻って響に聞かせると、箱はそっとしておこうと彼女を宥めた。

 

 

 

「こんな小さな箱が?危ないの?」

 

 

 

 

「うん。向こうが回収してくれるからコレはそのままにしといて欲しいって。」

 

 

 

 

「ちぇーッ、宝石だったら未来達にも見せようと思ったのにさぁー!」

 

 

 

 

「…それもどうかと思うけど?」

 

 

 

一通りの調査を終え、例の箱も彼等により回収されると響と颯達はアジトから離れる。そして薄暗い洞窟を抜けて外へと出た。後はトラックへ載せるだけなのだが、歩こうとするとヒールの靴音と共に姿を現したのは見た事の有る風貌。

例の黒いイチイバルの少女だった。

相変わらず目元はオレンジ色のバイザーで隠れており、よく解らない。後頭部で結ばれた紅い髪が風で靡いている。

響と颯は調査員らの前へ出ると睨み合った。

 

 

「…その箱、私達にくれない?それは計画を進める上でとても大切な箱なの。」

 

 

 

 

「悪いけど渡せないッ!何を企んでるか知らないけど…悪い事に使うなら尚更ッ!!」

 

 

 

「同感…そう易々とアンタなんかに渡さないッ!!」

 

 

 

「へぇ…?口でダメなら無理やり奪う迄ね。」

 

 

 

少女はガトリングを取り出すと響達へ向けた。2人は互いに頷くとペンダントを掲げ、詠唱する。

 

 

「Balwisyall nescell gungnir tronッ!!」

 

 

 

 

「Saver all-revantin-tronッ!!」

 

 

互いにそれぞれのギアを纏った瞬間、ガトリングによる掃射が始まる。颯は咄嗟に左手を突き出して障壁を展開し弾を弾いていく。後ろでは調査員らが居る為、下手な真似は出来ない。

 

 

「颯ちゃんッ、皆をお願い! 」

 

 

 

「解ったッ…早く逃げて下さいッ!! 」

 

 

 

颯は響にこの場を任せ、調査員達と共に別ルートで逃げ出す。少女も其方へ銃口を向けようとしたが響により遮られてしまった。

 

 

「ちッ…余計な真似を!」

 

 

 

 

「貴女の相手は私だッッ!!」

 

 

 

響は右手を振り翳し、少女へ殴り掛かる。それを銃身で防ぐと互いに睨み合う形になった。

 

 

「退きなさいッ!!融合症例第1号ッ!

 

 

 

「私の名前は立花響…そんな名前なんかじゃないッ!!教えて、どうしてこんな事をするの!?貴女の目的は何ッ!!」

 

 

 

 

「話す訳無いでしょう?正義の味方気取りなお前なんかにッ!!」

 

 

 

振り払うと今度はミサイルを左右のスカートから放つ。響がそれを避けると彼女の周囲で爆発が巻き起こり、木々や草が焼かれていく。

 

 

「お前の相手はコイツらがしてくれる…私はあの女をッッ!!」

 

 

 

少女は小型の何かを取り出すと辺りへばら撒く。地面へ落ちるとそれ等からアルカノイズが次々と出現し響を取り囲んだ。

 

 

「待ってッ!!くッ…!」

 

 

 

少女が去り、残された響は周囲に展開されたアルカノイズらと戦闘を開始した。

 

 

一方の颯は調査員らと共に別ルートで合流地点へ辿り着く。彼らにその場を離れる様に伝え、最後の一人が乗り込むとトラックは発進。そして少ししてからイチイバルの少女が姿を現した。

 

 

「生憎、トラックはもう出た…残念だったね。」

 

 

 

 

「ふん…なら貴女からそのギアを奪った次いでに箱を狙う事にする。少しは真面に扱える様になったかしら?」

 

 

 

 

「お陰様で…ッ!!」

 

 

左腕のガントレットから剣を引き抜き、構えてみせる。翼に教わった剣さばきと独自のファイトスタイルを組み合わせた戦い方。颯は先に仕掛けると少女へと斬り掛かった。対する相手も呼び出したハンドガンの銃身下部へ刃を展開させるとそれで防ぐ。火花が散り、睨み合った。離れれば右足による蹴りが飛び、容赦無く少女を追い詰めて行く。

 

 

「やるじゃない…この前より強くなってるッ……!!」

 

 

 

 

「私だって成長してるんだ…いつまでも同じだと思わないでッッ!!」

 

 

 

横一線で斬り裂くと少女の手からハンドガンが弾かれ、隙が生まれる。颯は好機と見ると剣を握り締めて力を込め、そして力強く振り下ろした。だが少女は左手にも同じくハンドガンを構えており、一撃を刃で防いでいた。

 

 

「残念…ッ!!」

 

 

 

「でもコレでアンタの武器は片方無くなった……このまま押し切らせてもらうッッ!!」

 

 

 

力を込めると腰のブースターを点火させ、少女を無理やり突き飛ばす。剣を正面へ向けると刀身へ炎を纏わる。右へ向けたまま走り出し一気に間合いを詰めると飛び上がり、剣を頭上から振り翳した。

 

 

「これで…終わりだぁあッッーー!!!」

 

 

 

 

「くぅ…ッ、あぁああッッ!!?」

 

 

 

ハンドガンの刃で防ぐもへし折られ、斬られる。少女はバタリと後方へ倒れる。

颯はゆっくりと顔を上げ少女の方を見る。 だがその顔には見覚えがあった。

バラバラに砕け散ったイチイバルのアーマー、そこに横たわる1人の紅い髪の少女。彼女の纏っていたギアインナーは解けており裸同然でそこに横たわっていた。

 

 

「え……どうして…何で……!?」

 

 

 

どうやら無理やりアーマーを外して防いだらしいが衝撃が大きかった事もあり身体の所々を負傷していた。

颯は恐る恐る彼女へ近寄るとその姿を目で確認していた。

 

 

「嘘だッ、有り得ない!!だって…そんな事無い……有る筈が無いッッ!!」

 

 

 

 

「颯ちゃんッ、大丈夫だった!?…その子……さっきの!」

 

 

 

響も合流すると同じ様に颯とその少女を見ていた。髪型は違うものの色は颯と同じだった。

 

 

「どうして…此処に結衣が……ッ!?」

 

 

颯は頭を抱えながら俯いていた。

本部へ事の終始を伝えると響、颯は結衣という少女と共に帰還した。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

本部へ帰還した2人は事の詳細を全て司令である弦十郎へと説明。

既に結衣が所持していたギアは回収され、エルフナインの手により調査が進められていた。颯は同じく保護した結衣の事を併せて報告する事になった。

 

 

「つまり…キミが幼少期に別れたのがあのイチイバルの装者……キミの妹という事か?」

 

 

 

 

「はい…ッ。あの子…結衣は未だ幼い頃に別の家族へ引き取られましたから詳しくは解りません。でも…何で……ッ!」

 

 

 

颯は拳を握り締めていた。別れたあの日から結衣は幸せに暮らしていると思っていた。だが、現にギアを纏って颯や他の装者達と対峙している。それは紛れも無い事実だった。

 

 

 

「…事情は解った。後は此方で何とかしよう。何か動きが有ればまた連絡する。」

 

 

 

そう促されると響に連れられて颯も司令室を後にする。歩きながらも思い出すのはやはり結衣の事だった。

最後に見たのは幼い彼女が自分の服の袖を引っ張って離れたく無いと泣きじゃくっていた時。無論、颯には何も出来なかった。

 

 

「……颯ちゃん、本当に大丈夫?」

 

 

 

 

「…うん、私は大丈夫。それより早く戻って授業受けないと。また補習だけは勘弁したいから。」

 

 

響に心配されるも颯は少し笑って誤魔化し、学校へと戻った。

 

颯は授業を受けている時も結衣の事が頭から離れない。後一歩の所で妹を斬る所だったのだ。考え事をしているとツンツンと指で小突かれる。はっと振り向くと美結がニヤニヤしながら此方を見ていた。

 

 

「なぁーに考えてんの、珍しく黙りこくっちゃってさぁ?もう授業終わってるよ?」

 

 

 

「え?さっき来たばかりなのに…?」

 

 

 

「馬鹿ねー、今日は午前中で学校終わりよ?それに、授業中ずーっと上の空だったじゃない。ノートも真っ白だし……。」

 

 

美結は、あーあと言いながら颯のノートを見ていた。確かに日付だけ書いてから何も記載されていない。

自分でも気付かなかった。

 

 

「それで…この後どうする?」

 

 

 

「…ごめん、ちょっと用事。また後で。」

 

 

 

「あ、ちょっとッ!?もう!」

 

 

 

颯はカバンへ筆記具や教科書を手早く片付けると教室を走って出て行った。

向かったのは結衣が保護されている本部。学校から出た途端、連絡が入る。

 

 

「はい奏宮です。ッ……解りました、急行しますッ!!」

 

 

例の箱を輸送していた調査員が相次いで襲われたと本部から連絡を受け、颯は現場へと向かった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

現場へ駆け付けると職員へ槍を向けている黒い髪の女性が立っていた。

 

 

「見付けたッ…その人から離れろッ!!」

 

 

颯が叫ぶと持ち主はゆっくり振り向いた。それは嘗て颯が圧倒されたオートスコアラー、レイス。彼女の紅い目が颯をじっと見つめていた。

 

 

「誰かと思えば…あの時の子。ふふッ、随分と良い顔付きになって……。」

 

 

 

「あの時と今じゃ全然違う…それを見せてやるッッ!!Saver all-revantin-tronッ!」

 

 

即座に詠唱するとギアを纏い、剣を抜剣する。それを彼女目掛けて振り下ろすが、払われてしまった。反撃で今度はレイスが槍を突き出して来ればそれを避けて距離を取った。剣と槍では部が悪すぎる。

 

 

「あら、もうお終い?来ないなら今度は此方から…ッッ!!」

 

 

 

レイスは槍を回すと颯目掛けて振り翳す。それを咄嗟に避けると先程居た地面が大きく抉れる。アスファルトの地面がバラバラに砕け散ったのだ。

 

 

「届かないのなら…これでッッ!」

 

 

颯は着地し、剣を納めると左手を突き出し、エネルギー状の小型の刃をレイスへ向けて乱射した。向こうも弾き続けるが数発が彼女へ命中する。

 

 

「ッッ……!?おのれッ!!」

 

 

 

「言ったでしょう…この前と違うって!!」

 

 

 

颯が再び剣を引き抜き、構えるとレイスはニヤリと笑う。そしていきなり槍を突き出すと刃先だけが颯へ飛んで来た。

それを剣で弾いてみせるとレイスへ剣を振り下ろそうとした。だが何かが可笑しい。握っていた剣が砕け散るとバラバラと刃先が落下する。

 

 

「剣が…砕けたッッ!?」

 

 

 

 

「ふふッッ…仕込んでおいて良かったわ。剣殺し(ソードブレイカー)の複製品を。ただの槍と思ったら大間違い……さようなら、紅い剣のお嬢ちゃんッッ!!」

 

 

レイスは槍を投げ捨て、黒剣を取り出す。それを颯へ向けると彼女へ斬り掛かった。しかし、いきなり空中から丸鋸の刃が降り注ぐとレイスは後退り、更に緑刃の鎌が振り下ろされるとそれを黒剣で受け流して見せた。

 

 

「颯さんッ!!」

 

 

 

「お待たせデス!」

 

 

 

駆け付けたのは調に切歌。既に互いのギアを装備しており、颯の前へ立った。

 

 

「新しいのが増えた…ふふッ、なら纏めて相手をしてあげるわ……特にあの紅い剣は砕かなければ…ッッ!!」

 

 

 

「来るよ、切ちゃんッ!あと、箱の事も忘れないで!」

 

 

 

「ザババの力を見せつけてやるデスよ!!」

 

 

 

悪魔でも任務は襲われた職員の保護。

颯はふと視線を向ける。だが、職員は居なかった。

 

 

「2人はアイツをお願い!私は職員の人を探すから!」

 

 

 

颯は2人から離れ、単独で職員を探す。

林を抜けた先にその男は居た。

手にはあの箱を所持している。

 

 

「…良かった、無事だったんですね!さぁ早く此方に……!」

 

 

 

「ふふ…ッ、やっと手に入ったんだ……渡すものか!!」

 

 

 

「は…?何言ってるんですか…?」

 

 

男は颯の方を見て笑っている。

箱の正体は未だ何も聞かされていない。

それ故、何がどうなるかは解らないのだ。

 

 

「これこそが禁断の箱…世界を大きく覆す為の!!」

 

 

 

男が箱の上部へ手を掛けた時、箱から電流が走ると男は悲鳴を上げて手放してしまった。箱はコロコロと転がり落ちる。

 

 

「……この箱、何なんですか?」

 

 

 

颯がそれを拾うと彼に見せつける。

するとエルフナインから通信が入った。

 

 

[颯さんッ、その箱は絶対に開けてはダメですッッ!]

 

 

 

「開けちゃダメ?…ただの箱じゃないの?」

 

 

 

[ダメなものはダメです!!それを回収して現場を離れて下さいッ!!]

 

 

 

 

「…?解った、2人にも伝える。」

 

 

 

通信を終えると再び男の方を見つめる。

倒れたまま動かないが、どうやら気を失っているだけらしい。再び戻ると切歌と調がレイス相手に戦っていた。

 

 

「2人とも、箱は確保出来たッ!早く離れよう!!」

 

 

 

「解りましたッ!!切ちゃん!」

 

 

 

「解ったデス…よッ!さぁ、逃げるデス! 」

 

 

切歌が近接戦闘を切り上げ、鎌を回してから強風を巻き起こすと3人はその場から逃げ出した。レイスは1人取り残されると不気味に笑っていた。

何か別の作戦を企てている様な顔をしながら。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

颯達は本部へ戻り、エルフナインの元へ向かうと確保した箱を渡した。どう見ても小さめなお菓子の箱にしか見えない。

 

 

「ありがとうございました…ところで誰も開けてませんよね?」

 

 

 

「うん。大丈夫…私が持ってたから。」

 

 

 

「んんー?一体何なのデス?その箱。凄い気になるデス。」

 

 

 

切歌が颯の近くへ来ると首を傾げて見ている。エルフナインは箱をカプセルの中へ入れて鍵を掛けると説明を始めた。

 

 

「パンドラの箱ってご存知ですか?」

 

 

 

 

「パン…ドラ?」

 

 

 

「名前は聞いた事有る様な…?」

 

 

 

「私も名前なら聞いた事は有るかも。」

 

 

3人は首を傾げて考えていた。

そんな3人を他所に説明を続けていく。

 

 

「ギリシャ神話の神、ゼウスがパンドラという人へ渡したのがこのパンドラの箱です。でも、パンドラは興味本位で開けてしまい……地上へありとあらゆる災いが降り注いだと言われています。」

 

 

 

「……つまり、箱を開けるなって意味はそういう事だったんだ。でもあの人が開けようとしたら箱に弾かれてたけど?」

 

 

 

「恐らく、この箱には何かしらのプロテクトが施されているのでしょう……コレはボクが厳重に保管しておきますのでご安心を!」

 

 

ニコニコと微笑むと彼女に任せる事にし、切歌と調は先に戻る。颯は病室へと立寄ると話して2人と別れた。

結衣の居る病室へ入ると彼女は未だ眠っていた。ケガをした箇所には包帯が巻かれ、絆創膏も所々貼られている。

 

 

「…結衣。」

 

 

 

颯はベット横にある椅子へ腰掛け、彼女を見ていた。知らない間に結衣は大きくなった事を心の何処かで颯は安堵していた。すると結衣は目を開き、颯の方を向く。

 

 

「結衣ッ!?目が覚めた…?」

 

 

 

 

「ッッ…此処は……?」

 

 

 

「大丈夫…何も心配しなくて良い…ッ!?」

 

 

 

颯がそう言い掛けたと同時に結衣が身体を起こし、颯へ掴み掛かって来た。

 

 

「私の…私のギアを返せッ!!何処へやったッッ!!言え!!」

 

 

 

 

「ちょっと…結衣ッ、止めてッ!落ち着きなって、もう戦う必要は無いの!!」

 

 

 

 

「私の名前を気安く呼ぶなッ!!」

 

 

 

 

「ッ…私の事……覚えてないの?私だよ、颯!私は貴女のお姉ちゃんだったじゃない……!」

 

 

 

「……颯?ああ、私の事を見捨てて勝手に居なくなった憎たらしい奴の事?…お前なんか私の姉じゃないッ!!そこを退けッ!卑怯者!!」

 

 

 

結衣は颯を荒々しく突き飛ばすと点滴を無理に引きちぎり、立ち上がる。フラフラと歩きながら病室を去ってしまった。

 

 

「私のした事が…結衣を……傷付けてた…?」

 

 

 

颯は倒れたまま放心状態だった。

あの時、自分が取った行動が結衣を変えてしまった。立ち上がろうとすると片手に少し痛みが走る。突き飛ばされた際に手を捻ったらしい。騒ぎを聞いて駆け付けたスタッフの手を借りてその場に立ち上がった。

 

彼女の事を追おうとしたが追う気にはならなかった。廊下を出ると結衣が逃走した事を知ったスタッフ達が慌てて報告しているのが解る。他にも問題が起きてしまったらしい。休憩室へ差し掛かると室内のテレビの前に人集りが出来ていた。

調が颯に気付くと手招きし、誘われる様にテレビを見ていた。

 

 

「何やってんの?ニュース?」

 

 

 

「イノ…何とかが世界に宣戦布告するって言ってるのデス!ほら!!」

 

 

 

食い入る様に見ていた切歌の横から覗き込むと紺色のローブを纏った集団、そしてその前に立つのは同じ色のローブを纏った何者か。彼等は世界を変革する事を此処に宣言すると大々的な演説を繰り広げていた。そして生き残れるのは神により選抜された者達だけだとも伝えている。名指しで呼ばれたのは、やはりS.O.N.Gの事。最大の障害である彼等を排除するとも伝えていた。

 

 

「我々はイノベイター、世界を変革させる者達であるッ!!この腐った不条理な世の中は浄化されなければならないッ!!」

 

 

彼等のリーダーによる演説は約1時間以上も続いた。それは事実上の宣戦布告だった。

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