閑忍譚~カンニンタン~【シノビガミ 二次創作短編】   作:朱星リズ

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世界忍者連合 神南 輪世(カナミ リンゼ)

私立御斎学園本部 平 六花(タイラ リッカ)


「太陽と風の剣士」

私立御斎学園文化祭。全国にある学校の中でもとりわけ大規模に行われるお祭りだ。

学園生だけでなく、申請さえすれば外部の忍も出し物を行うことができたりする。それには当然学園の審査も入るわけだけども――。

 

かくいう私も申請していて、なんと審査が通って文化祭の一角で占いブースを出すことができることに!

やっぱり、人生何が起こるかわからないな。

私の運命の輪(ウィール・オブ・フォーチュン)もニッコリ微笑んでくれていて、何よりの気運だ。

 

そも、申請してみよう!となった切っ掛けだが、友人が着ぐるみ仲間とダンスショーをするとかなんとかとのことで、元々文化祭に申請していた、といったことだった。

彼は一年前にも参加していたようで、私は今年初めての参戦になるわけだが、こうして申請して出店できる、というシステムすら初めて知った。自由な校風もここまで来ると何だか面白いな。

 

さて、ブースを建てたら開始からものの数分で行列!いやあ、学生ってやっぱり占い大好きだよな!

占い料金は特別出血価格で1人1回限りで300円って事にして、簡単な占いだけしてあげることにした。本当はカウンセリング料で2000円くらい取りたいけど、あくまでも文化祭。価格設定は実行委員会の子と相談しながら行ったんだけど、2000円とか1000円とか提案したら怒られた。流石に学生相手には高すぎる値段設定なんだってさ。そりゃそうか。

 

相談の内容は大体恋愛絡みで、客層は女の子が多い。たまに男の子も来るけど、恋愛だけでなくてテストの点とか就職先とかそういう進路系の話題が多かった。

私は本当に簡単に話だけ聞いて、1枚カードを引いて、相手に残りのカードから1枚引かせて、という形式で占った。もっと本格的なものはお値段が張るので、本当にこれだけ。

けれど大体の学生は喜んで帰ってくれる。お客が喜んでくれるのは、商売がうまく行ってるって証拠だ。おかげでお昼に一度店じまいをして、ルンルン気分で学食にご飯を食べに行くことができた。

 

+ + +

 

私は学生時代は忍の鍛錬とかそういうことはしてなくて、ごくごく普通の進学校に通って、平凡な生活を送っていた。

大学に行ったら天文学を専攻することになって、御釘衆としても少しだけ働いた。けれど実力が伴わないってことで、3ヶ月の試用期間を経て首が飛んだ。

タロット占いは元々趣味でやってたけど、御釘衆でより本格的なものを学ばせてもらった。小アルカナを使った占いもそうだし、そこから星の位置とか陰陽とか色々あったけど、その辺は頭に入ってない。

よくわかんなかったので「タロット一筋で頑張ります!」って言ったけど、そのせいでお前は駄目ってなったんだ、と今思う。思い返すと何か腹立ってきた!

 

閑話休題。

そんなとこで学食でご飯を食べるのも半年振りで、以前居た学校とは違うけれど、御斎学園のご飯もまた美味しそうだなあと感じた。

素朴なから揚げ定食も、ついこないだまで食べていた学食のそれとほとんど変わらない、鮮明にも懐かしい味だった。御斎学園のものは少し豪華で、レモンが添えてあった。

食べてる間にも色々な学生さんから声をかけられた。中にはタロット占いやってみたい!って人も居て、ちょっと驚きもあった。私の占いを経て「やってみたい!」ってなるのも、なんだか嬉しいな。

 

それから学食に食器を返し、ブースに戻っている道中のことだった。

 

「すまない。貴女(あなた)は占い師だろう?これを学食に忘れていないか?」

 

ふと声をかけられた方を見ると、刀を6本も提げた小さな女の子が、私にカードを差し出した。

受け取ると、そのカードは小アルカナのソードの6。どうやらさっきタロットのプチ講義を行った時に忘れたらしい。小アルカナは普段使いしないカードであったため、全く気づかなかった。

 

「あ!ありがとうね」

 

私は女の子に一礼して、占いブースに戻るのだけれど、女の子も私の後をくっついてきていた。ブースの準備を整えている間もずっとこちらを見ていて落ち着かなかったので、声をかけることにした。

 

「占いしてほしいの?」

 

「うむ。少し占いというものに興味があってな」

 

というわけで、ブースを再開させた一人目のお客様として、その子を迎え入れた。

 

「占い師の神南 輪世(カナミ リンゼ)って言います。本日はよろしくお願いしますね。まずはあなたのお名前伺ってもいいですか?」

 

平 六花(タイラ リッカ)だ。よろしく頼む」

 

それから生年月日と、占いたい事を聴取する。彼女は六刀(りくとう)と呼ばれる刀を手に入れるために努力に励んでいるようで、その努力は果たして実るか、といったことを占ってほしいそうだ。

そりゃあ努力だし、頑張れば当然実るだろうけれど、ここは商売。私は22枚のカードをシャッフルして、1枚(めく)った――。

 

「あなたの運命を示すカードは――ソードの……あれ?ソードの6?」

 

大アルカナで占いをしていたと思ったら、小アルカナが混じっていた。小アルカナは勉強途中で、意味も全然暗記できていなかった。

私は誤魔化すように咳払いをし、六花ちゃんにやり直すことを話した。

 

「いや、このカードが私の運命を示しているんだろう。どんな運命が待っているんだ?」

 

逃れられなかった。私は頭を抱えながら、なんとかトラブルに対応しようとバッグを漁る。

バレないようにタロットの教本を探り、該当のページを開き、そこから意図を読み取る。

 

剣は風の力を宿し、力強さや権力、破壊力といった暗示を持つ。

6という数字は5に宿った「変革」に続く「調和」を意味し、創造、発展性を表す3の倍数であって……。

 

「……大丈夫か?」

 

「――え?あ、ああ!大丈夫大丈夫……ええと、ソードの6の正位置ね。このカードに描かれた船と、刺さった6本の剣。波も立たない穏やかな海を漕いで進むその様は、順風満帆――とは言えないけれど、慎重に、ゆったりと未来に進んでいる様が伺える。たとえ不安に苛まれても、ゆっくり、堅実に続けていけば、いつかやがてその願いは叶う、そんな示唆がされている、かな」

 

「……ふむ。道険しくも、努力は実を結ぶ、ということだな」

 

教本を一旦無視して、絵柄から読み取ったことをなんとなく口に出してみる。

六花ちゃんはなんとなく考え込んでいるように見えるが、一応この場はなんとかなったか。

私は更に残った山をテーブルに広げて、六花ちゃんに一枚引くように促す。

出たカードは法皇の逆位置だった。

 

「あなたの運命を支えるカードは法皇の逆位置。独りよがりになるのはやめましょう。ソードの6と合わせると、きっと良い師があなたの前に現れるはず。ただし、悪意のある助言にはご用心、ってとこかな」

 

「ううむ……良いのやら悪いのやら……ありがとう。参考にしよう」

 

「ありがとう。あなたに運命が微笑みますように〜……あはは」

 

彼女は礼を言うと、300円支払ってそのまま帰っていった。しかし小アルカナが混じっていたなんて。学食に忘れたといい、物品管理はしっかりしていたはずなのに、今日は気が緩んでしまっているのかもしれないな。

 

+ + +

 

その日の夕刻。ツクツクボウシが鳴いていて、秋の訪れを感じさせる園内の道を歩く。

1日限定の占いの舘も無事に店じまいをし、それなりにお小遣いも貰って、学生の笑顔も見れて、心も懐もホクホクだった。ハグレモノであり、一応その手の連絡網にも入ってはいるけれど、自由に、表の世界にほど近く生きていれば、こういう体験だってできる。自由って素晴らしい!としばらく振りに思った。

 

と、校門をくぐったところで、生徒数名に囲まれた。

見たところでは制服をだらしなく着込んでいるようで、不良生徒のようだった。

 

「おい、こっち来い」

 

私は両脇を固められると、首筋に小刀を突きつけられる。校門の見張りについていた大人――恐らく特教委の忍は、こちらを見て、その後すぐにそっぽを向いた。

学園にはハグレモノに対して嫌悪感を抱く人間が多いと聞くけれど、だからといって助けないのはどうなの!

私はそのまま園内に引き戻され、倉庫の裏手に連れて行かれる。そこには金品が入っていたであろう高級バッグが散乱していたり、服を剥かれた少女が倒れ込んでいたりと散々だった。

 

「おめーだろ?占い屋。随分人気者だったらしいじゃねーか」

 

「オレの彼女に散々な占いしたんだってな!」

 

「近くでじっくり見たらカワイイじゃねーか。今夜はこの二人ぶっ壊してやろうぜ」

 

不良生徒は涎を垂らしながら私に近づく。相手は御斎学園の忍者のようだけれど、こちらが忍者だって事には気付いていないみたいだ。

 

一人の手が私の胸を鷲掴みにしようとした瞬間、私は拘束を抜け出して高速起動(ヴェロシティ・システム)に入り、倉庫の上に立つ。

驚いた不良生徒は上を見上げ、舌打ちをした。

 

「チッ――こいつ忍者か!やっちまえ!」

 

私はふとタロットを1枚引いた。その柄を見た時、一陣の風が吹き――

 

「――幻六刀流(まほろろくとうりゅう)奥義・【六花六刀散華(りっかりくとうさんげ)】ッ!!」

 

倉庫の上に降り立った不良生徒達を何者かが薙ぎ払い、校庭へと吹き飛ばした。

私の目の前には、あの時ソードの6を拾ってくれた女の子――六花ちゃんが刀を構えて立っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとう」

 

よろめきながら呻く不良生徒の前に飛び降り、私もそれに続く。その動きを見た六花ちゃんは、私を見てにやりと笑った。

 

「貴女も忍者だったか。ならば大丈夫だな」

 

「……まあ、あなたの仇敵のハグレモノなんだけれどね」

 

「何を言う。困っている者は仇敵であれど助けるのが筋だろう。私は貴女に感謝しているからこそ、尚助けなければ気が済まない」

 

六花ちゃんは刀を構え、私はカードを構える。幻のように淡い桃色の刀が現出し、それは桜の花びらを散らせながら六花ちゃんの背後に浮遊した。

 

「さて、なんだか悪さをしてるみたいだし?天罰を下さなきゃね」

 

(おう)。ここに成敗してくれる――!」

 

夕日の光を浴びて、六花ちゃんの刀が輝く。私のカードデッキも呼応して魔力を強めるのを見て、再び1枚引いた。先程引いたカードをデッキの一番上に戻し、群青に輝く塔のカードを掲げる。

 

ぐらぐらと大地が揺れ、天を覆うように魔法陣が描かれる。

それははたまた綻びの再現か、驕り高ぶる者達が建てた塔か、幻影は天にも届くそれを映し出すと、天罰の如き遠雷を轟かせる。

 

――其は十六番目の恨み。

遺構の奥底より聴いた、孤独なる怨嗟の声。

分かたれたが故に神へと至れず、愚かに地より天を見上げる礫が上げた、()()()()()()()()――。

 

「――降り注げッ!【崩落せし傲慢の塔(バベラス・ブレイカー)】ッ!!」

 

ガラガラと瓦礫が降り注ぎ、六花の剣気は破る暇を与えず、その瓦礫ごと不良生徒を吹き飛ばした。

 

私はタワーをデッキの一番下に戻し、デッキ最上段に置いたカード――先程引いた、太陽のカードを見て、にこりと微笑んだ。

 

+ + +

 

それから不良生徒は連行され、私はハグレモノながら、六花ちゃんと共に御斎学園の先生にお礼をされた。

校門から見ていた教師は、最後まで不貞腐れていたようだけれど。

服を剥かれていた一般の女の子も無事に保護されたようだけど、心に負った傷は大きいみたい。可哀想だったので、後で激励の手紙を送ってあげた。

 

――そういえば、六花ちゃんと別れる前に一つ話したことがある。

彼女が助けに来てくれた時に引いたのは、太陽のカードであること。それは流派に囚われず、恩義に応じて祝福を齎す者。まるで六花ちゃんのようなカードだ、と。

そう言ったら、何て返ってきたと思う?

 

「そうなのか。やはりタロット占いは面白いな。良ければ今度、教えてくれないか」

 

だってさ!あんなに武人みたいな喋り方なのに、言ってることは普通の女の子みたいで、笑っちゃったよね。

だから連絡先を交換して、教えてあげるから、いつでもうちに遊びに来て!って言ってあげた。

 

それからは週に1回くらい、女の子の友達……と、なんとあの時助けた女の子も連れて、私にタロットを学びに来てる。

 

やっぱり、人生何が起こるかわからないな。

 

 

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