悪童と呼ばれた呪具師   作:多趣味の男

18 / 34

加茂家の別荘に到着した三人は早速、二手に分かれて行動を始めた。

一馬は渡された地図を元に山を登り残りの二人はそのまま御魅村の調査へと向かうのだった。


第九話 違和感(表)

御魅村の調査に向かった二人は村に到着するのだがそこで直ぐに違和感に気付いた。

 

「この気配、妙じゃのぉ。

生きているとも死んどるとも取れん不気味な気配じゃ」

「確かに村なのに人気を感じません。

少し偵察をして貰いましょうか。」

 

麗はポケットから折り紙の鶴を取り出すと持っていたカッターで指を切りその血を鶴に染み込ませる。

嘴が赤く染まった鶴に麗は呪力を流し込む。

 

「赤血操術"朱点"(しゅてん)

 

麗の術が発動すると折り紙の鶴がまるで意思を持った様に動き始める。

鶴が空を飛びながら村の中へと入っていく。

その姿を見た時雨が驚いた表情で告げる。

 

「ほぉ!見事な操術じゃの。」

「加茂家の者は赤血操術を身につけた呪術師が生まれることが多い。

だが、術の中でも得意不得意が存在する。

 

私は血を利用し無機物を操作する事に長けてはいるが攻撃に関する術式は無い。

 

偵察や状況分析が主な私の仕事だ。」

 

そう言って麗が片目を瞑ると瞑った目の視界と血のついた鶴の視界がリンクする。

「.....建物の扉が木で打ち付けられている。

それだけじゃない....人を確認出来るが全員、生気を感じられない。

まるで死人が動いているようだ。」

「死人....か。

呪霊に村が襲われたと?」

 

「まだ断定は出来ないが....村人が普通じゃないのは確かだろう。

!?隠れている子供がいる...かなり怯えているな。

徘徊していた村人に気付かれた!?」

麗がそう言って時雨を見るが時雨の姿はそこにはなかった。

「あの人は!?

全く、人の話を聞こうともしない!」

麗は急いで時雨が向かったであろう村へと入っていくのだった。

 

 

 

「はぁはぁはぁ....」

少女は逃げ回っていた。

きっかけは村の外れで起きた神隠しを見てからだ。

 

その事を家族に話したら私の事を襲い始めた。

必死になって逃げる中で私は見た。

襲ってきた人の身体に傷が出来たのに血が一滴も漏れなかったのだ。

 

出たのは透明な水だった。

何とか逃げ延びて隠れていたけど遂に見つかっちゃった。

「いや....来ないで...」

懇願する私の声が聞こえているのか襲ってきた村人は返事をする。

「ダいジョうブだョおォ!いタくナぁイぃ」

 

焦点が合わないで笑顔で話すその姿に私は戦慄した。

(もうダメ....私殺されちゃう!)

 

村人が手に持っていた鎌を私に向かって振り下ろし私は目の瞑った。

だが、その後に私の身体に痛みは起こらずガキン!と鉄がぶつかる音が聞こえた。

 

目を開けるとそこには村人の鎌を刀で抑えている着物姿のおじさんがいた。

「無事かのお嬢ちゃん?

ちょーっと目を瞑っとれ直ぐに終わる。」

 

私はおじさんの言う通りに目を瞑った。

 

「さて....と、お主、どう見ても正気とは思えぬが人間かの?

それとも呪霊か?」

時雨の問いに村人が答える。

 

「ジゅレいィ?ナにソれェえ」

「あぁ、もう喋らんでもいいわい。

お主はもう助からんのじゃろ?

なら、苦しませずに仕留めてやるわい。」

 

時雨がもう一方の手で刀を握り二刀にする。

 

「"シン・陰流 二刀(にとう)"円累"(えんるい)

 

時雨は二刀を円の様に回転させて村人の手足と首を一呼吸で断った。

 

斬られた村人の身体から大量の透明な液体が溢れ出す。

「この匂い...."酒"か?」

時雨がバラバラにした遺体の臭いからそう推察するが詳しく調べようとする前に周囲から敵意のある気配を感じる。

 

「む?....どうやら、感付かれたようじゃのぉ。

どうやら、村全体が敵の手に落ちておると考えた方が良さそうじゃ。」

時雨は現状を冷静に分析する。

 

(ここで、呪霊にやられた村人を相手にしとったら日が暮れてしまう。

後ろのお嬢ちゃんはまだ無事なようだし話を聞いておきたいのぉ....であるなら今取るべき行動は)

 

時雨は刀を納めると懐に手を突っ込む。

 

「"逃げる"....それが最善じゃあ!」

時雨が地面に何かを投げつけるとそこから大量の煙が上がった。

 

その隙に時雨は少女を背負うと村から反対の方向....一馬が登ろうとしていた大江山に向かった。

逃げる時雨を下駄をはいた子供が見つめながら....

 

その姿を空を飛んでいた"折り紙の鶴"が見ていた。

「....成る程、一馬さんと合流するつもりなのですね。

ならば私も....誰!?」

 

麗が懐に入れていた銃を取り出すと気配のあった方向へ射撃する。

ダン!ダン!

二発の弾丸が放たれるがその弾が敵に当たった反応はなかった。

 

「敵でないのなら大人しく出てきた方が良い。

でないのなら実力行使も厭いません。」

銃を向けながら麗は語りかけるが返事が聞こえない。

呪力を広げて探知しようとするがどうやら完全に気配が消えているようだった。

 

「逃げました....か。

敵の事が分からない以上、深追いは危険か。

早く時雨さん達に合流しないと...」

そう言うと麗はその場から急いで退散するのだった。

 

麗のいなくなった場所から下駄の音が聞こえた。

 

 

山を登っていた一馬だったが途中で道に迷ってしまう。

地図通りに進んでいる筈なのにずっと同じ場所へと帰ってきていた。

「おかしい...まるで同じ場所をループしているみたいだ。」

一馬は違和感の正体を調べる為、腰のポーチからビー玉を複数取り出すと四方に向けて投げた。

 

このビー玉は一種の発信器の役割となっており集中することでその場所を知覚することが出来る。

 

一馬はビー玉の位置を確認すると四方に投げた筈なのに自分の立っている場所に四つ全てのビー玉が存在する事になっていた。

一馬は地面を見つめるがそこにビー玉はない。

「一体どう言う事だこの空間は?」

 

疑問に思っていると下駄の音を流しながら四人の子供が現れる。

「お兄ちゃんはだぁれ?」

「君達は?」

 

一馬の問いに子供が答える。

「私達はね...この山に縛られてるの。」

「ずーっと....だから寂しかった。」

 

「だからね...お友達を増やそうとしたの」

「お父様に話したら増やしてくれるって....言ってくれたの」

「だから、お兄ちゃんも...私達とお友達になりましょう?」

 

一馬はその瞬間、感じた殺気に身体が反応した。

地面を転がりながら回避すると一馬が立っていた木が吹き飛ぶ。

 

「....どう言うつもりだ?」

一馬がポーチから取り出した槍を構えるがそれを見た子供達は嗤う。

 

「「「「あははははははは!!!」」」」

 

「お兄ちゃんが遊んでくれるって!」

「やったぁ!遊んで遊んで!」

「ずーっと、つまらなかったんだぁ!」

「"源平以来の大遊び"だぁ!」

 

すると、一馬の立っていた地面が崩れる。

その崩壊に巻き込まれ一馬は落ちていった。

 

その姿を見ながら子供は告げる。

「あはは!誰が相手になるかな?」

「四人の内の誰かだよ!」

「お父様とお母様は譲ってくれた。」

「だから、お前達"三人"は.....」

 

「「「「()達の獲物だ。」」」」

 

 

一馬が崩壊した空間から落ちた事は時雨や麗にも影響を与えた。

この四人の子供は大江山に巨大な呪術による結界を作っていたのだ。

 

結界の能力が四人が作った空間を一つに纏めること....その影響で神隠しや転移が起こっていたのだ。

 

能力の影響下に置かれる条件は四人の子供の内、誰かを認識すること...つまり三人は大江山に到着した時点で彼等の作り出した結界に巻き込まれてしまったのだ。

 

大江山の中心に作られた祭壇で鎖に縛られながらも手に持った盃を傾けながら酒を飲んでいるのは鎧を着た一体の鬼だった。

 

「.....ん?どうした"茨木童子"。」

『貴方....この山に呪術師が現れたそうよ。

子供達が見つけたみたいなの。』

 

山に女性の声が響く。

「そうか...くくっ、遂に俺達もここからオサラバ出来る訳か?」

『えぇ、漸くね。

頼光に封じられてから何百年経ったかしら.....今思い出すだけでも忌々しい。』

 

「そう言うな茨木童子。

封印が解けるのもあと少しだ。

それまでの間、迷い込んだ呪術師で遊べば良いだろう?

結界はちゃんと動いている。

俺の酒で酔った人間の駒も沢山いるんだからな。」

『それもそうね。

それじゃあ貴方は動かないのかしら?』

 

「あぁ、封印が解けるまで力を溜める。

その為に人間の血肉を食らいながらな。」

『流石は"酒呑童子"。

今も昔も貴方は素敵よ。』

 

酒呑童子と呼ばれた鬼は地面に転がっている村人から抜き取った血肉を喰らうと盃の酒で流し込む。

それをする度に酒呑童子の体内の呪力が増大していく。

 

「さてさて....俺を楽しませてくれよ。

今を生きる呪術師達よ。」

酒呑童子はまるで余興を楽しむように血肉と酒を煽るのだった。

 

 

 

一馬が目を覚ますとそこに時雨と少女、そして麗が立っていた。

「目を覚ましたか一馬くん?」

「えぇ、貴方達は?」

 

「分からん!急に地面が崩れたかと思ったらここにいた。

外の様に見えるが見えない壁があるのか前に進めん!斬れん!訳が分からん!」

「そうか....その子供は?」

 

「村で拾った!

麗が調べたから呪霊には憑依もされておらん。

お嬢ちゃん、名前を教えてやってくれ。」

「あ....(すずめ)です。」

 

「雀か...良い名前だな。

君はこの村の子供なのか?」

「えっと...お母さんが里帰りするって言って...昨日来たの。」

 

「成る程、だから呪霊の影響を受けていなかったのか。」

そんな話をしていると空から先程の子供の声が聞こえてくる。

 

『あー、あー、聞こえてる?

これから始める遊びの縛りを説明するから聞いて貰いまーす!』

「あの声は...あの中にいた餓鬼の一人か?」

 

『僕の名前は星熊童子(ほしくまどうじ)

これから始まる遊びの説明をして良いって皆から頼まれたからするね!

 

お前らは僕達の作った結界に囚われた哀れな....これ何て読むの金童子(かねどうじ)

 

....あぁ、ありがとう!

哀れな咎人です!

ここから出るには僕達の遊びを突破しないと行けません。』

 

「遊びじゃと!?

何を言っとるんじゃこのわっぱは?」

時雨がそう反論する中、麗が一馬に耳打ちする。

 

「一馬さん...星熊童子と金童子は...」

「うん、流石に知ってるよ。

酒呑童子の配下と呼ばれた鬼達だよね?」

 

「えぇ、どうやら酒呑童子の封印が解かれていると考えた方が良さそうです。」

 

『これから僕達の誰かと1体1で戦って貰います。

縛りに関してはその戦いで決まるので気を付けてくださーい。

それじゃ、誰が行くか決まったらその穴から奥に進んでくださーい。』

 

星熊童子がそう説明すると目の前に暗い穴が一つ浮かぶ。

 

「どうやら、僕達に拒否権は無いみたいですね。

どっちが行きますか?」

一馬の問いに時雨が答える。

 

「ワシが行こう!

正直、この空間に関してはサッパリ分からん!

ワシが戦ってる間にここを出る方法を考えてくれ。」

「まぁ、それが一番合理的でしょうね。

麗さんと僕でこの空間を抜ける方法を探します。」

 

「うむ頼んだ!

では行ってくる!」

「待ってください時雨さん。

用心の為にこれを持っていってください。」

 

一馬がポーチから木箱を取り出すと時雨に渡した。

「こりゃ、何じゃ?」

「捨餓螺家で新しく開発した呪具を積めた木箱です。

怪我を治せる物が殆どですが援護できる望みが薄い以上、これぐらいしか出来ませんので....」

 

「すまん助かる!

ありがたく使わせて貰うぞ。

では行ってくる!」

そう言うと時雨は穴の中へと入っていくのだった。

 

 

穴を通り抜けるとそこに広がっていたのは岩場だらけの空間だった。

そこに、下駄をはいた少年が一人立っている。

 

「最初の相手はおじさん?

まぁ、良いや。

じゃあ、改めて自己紹介するね。

僕の名前は星熊童子....さぁ、楽しくあーそぼ!」

 

そう言い終わると星熊童子の身体が変異していく。

グチャグチャと骨と肉が擦り潰れる音がしながら身体が変化していくとその大きさが変わり時雨の慎重を軽々と越える巨大な肉体とオレンジ色の体色を持った鬼へと変わった。

 

一本の太い角を持つ鬼へと変わると地面に手を突っ込みそこから身の丈程の長さを持つ大斧を取り出すと肩に担いだ。

 

その姿から先程の少年の声で話し掛けてくる。

「さてと!僕の遊びの縛りは速死に(はやしに)

自分の指定した傷を相手より速く相手に与えたらそいつの勝ちになる遊びだよ!

 

僕の指定する傷は"片腕"....つまり僕が片腕を失ったら君の勝ちって事。

 

それでおじさんはどうする?

因みに僕が賭けた物よりも重い部位を賭けないといけない.....」

 

そう言う星熊童子の声を遮るように時雨が言った。

 

「"命"....ワシの命が失くなればワシの敗けで良い。」

「え?良いの?それって死ぬってことだよ?」

 

「あっはっは!お主ら呪霊とは覚悟が違うのじゃ!

呪術師として生きると決めた以上、"生きるか死ぬか".....それだけじゃ」

時雨さ何時もの様に快活に笑う姿を潜めると腰の二刀を、引き抜いた。

 

「星熊童子と言ったか?

覚悟せい....死を背負った人は...強いぞ?」

時雨は星熊童子の命を射抜く様な強い目で睨み付けるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。