悪童と呼ばれた呪具師   作:多趣味の男

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久々に書いたら色々と思い浮かんだ奴です。

作者


第十四話 傀儡(表)

 

甚爾と別れてから一年の時が経ち色んな事が変わった。

先ず1つに捨餓螺家の規模が拡大した。

これに関しては俺が作り出した"現代兵器の呪具"が関係している。

 

これまで呪具と言えば刀や槍...飛び道具だとしても弓矢が主流だった。

更には生得術式の影響で呪具で戦うのは術師として不完全だと言う偏見が生まれていた。(シン・陰流の様な武器ありの術式は除き)

 

故に呪具も昔ながらの武器が主流となっていた。

そこに疑問を持った俺は転魂術式を使い四級クラスの呪霊を使い"銃の呪具"や"爆発物の呪具"を作り出した。

 

結果、それで生まれた呪具は呪霊を祓う中で強力な力を発揮した。

これまでは近接でしか呪霊を祓えなかった術師が遠くから複数で銃を使い呪霊を祓う事が出来たのだ。

 

そして、これは非術師....特に政府や軍関係の目に止まった。

これまで術師に任せないと呪霊に対応出来なかった者達が捨餓螺家の呪具を使えば自衛出来る可能性が出てきたのだ。

 

しかも、この呪具が一馬の転魂術式有りきの物の為、他の者は複製出来ずそれが反って捨餓螺家の地位向上に繋がった。

現在の捨餓螺家は御三家と並ぶ権力を手にしていた。

 

それに伴い御三家から捨餓螺家に術師の卵を送りつけ始めた。

捨餓螺家の技術を盗みたいと言う打算的な考えだろうが当主である二虎はそれを受け入れた。

 

「技術を盗む?....寧ろそんな連中はこっちで使い倒してやりますよ。」

二虎は俺や源爺にそう言ってのけた。

流石は俺の弟だ!!

 

っと話が脱線したがその関係で今、家は大所帯になっている。

更に俺達の"お袋"(隠居させたクソババァ)が手を回して捨餓螺の分家である

"鎖餓螺"(さがら)家の連中も家に押し掛けてきた。

 

分家の話は聞いていたが今回の件を受けて本格的に本家に吸収されるつもりだと言ってはいるが本当かどうかは定かじゃねぇ。

 

まぁ、そんな気の抜けない中で....悲しい事もあった。

源爺が死んだ。

医者の話では老衰だったらしい。

仕方ない事だが俺や二虎にとって親代わりの人物だった。

俺達をサポートして今の捨餓螺家を作ってくれたのは源爺のお陰でもある。

 

だからこそ、源爺の死は俺達に大きな悲しみを残した。

だが、源爺が最後に残した遺書にはこう書いてあった。

 

『私は捨餓螺一馬様と捨餓螺二虎様に会えてとても幸せでした。

最後に二人に仕えられた事が、私の人生で最大の誇りです。』

 

源爺が俺の事を誇りに思ってくれているのなら俺はこんなこ所で泣いてなんていられない。

俺は源爺の墓に誓った。

 

俺の大事な者は源爺を除けば二虎と甚爾だけだったが今度は死んだ源爺が誇れる物を残す。

源爺は最後まで捨餓螺家に仕えてくれた。

 

だから俺と二虎が捨餓螺家を変える。

死んだ源爺が誇り続けられる様に.....

 

 

 

そうして俺と二虎が呪具製作に邁進していると二人の人物から連絡が入る。

一人は加茂家の重役だと名乗った加茂 紫痕と五条家当主である三ツ木だった。

 

そして、今俺は紫痕の依頼を受けてとある屋敷へと向かった。

屋敷の使用人が俺の姿を見ると誰かを呼びに行く。

 

奥から出てきたのは一人の男性だった。

「お初にお目にかかります。

私の名前は"与 史郎"(むた しろう)と申します。」

そう名乗った男は俺を屋敷の奥にある部屋へと案内する。

 

そして、目の前に現れたのは扉と部屋の周りを札で囲われた空間だった。

「これは.....」

「先ずは中をご覧下さい。」

 

史郎がそう言って扉を開けると最初に感じたのはそこにあったのは小さな浴槽だった。

その中心には包帯でグルグル巻きにされた何かが蠢いていた。

 

「これは何だ?」

「与....幸吉....私の息子です。」

 

その言葉を聞き驚いた俺は直ぐ様、浴槽にいる子に近付こうとする。

しかし、その歩みも急に現れた木人形が止めた。

 

「コ....ワイ....コ...ナイデ」

俺はその言葉を聞き距離を離す。

それを見た史郎が告げた。

「これは幸吉の持つ傀儡操術の力です。

転与呪縛により幸吉はその身に有り余る量の呪力を蓄えています。」

「んなこと言ってる場合か。

どう考えてもお前の息子はヤバイじゃねぇか!

早く治療してやらねぇと.....」

 

そう言う一馬の言葉を史郎は否定する。

「私の願いは幸吉の"治療"ではなく"処理"です。」

「あ?処理だと?」

 

一馬は不満を露骨に表すが史郎は気にせず続けた。

「与家にも過去、転与呪縛により呪術師としての力を高めた者はいました。

その中でも幸吉は異常です。

 

全身の皮膚と手足、腰から下の感覚を失った代わりに得られた呪力により幸吉の傀儡操術は遠く離れた場所にある傀儡すら操作出来るレベルに至っています。

 

ですが、いくら強力な呪力を得ていようと人であるならば死ねばその力は失われてしまいます。

聞けば一馬様の転魂術式は呪霊を呪具に変えられるとのこと.....呪力の塊である幸吉も呪具に変えられるのではありませんか?」

驚愕の提案を受け一馬は礼儀をかなぐり捨てて尋ねる。

「お前....それマジで言ってんのか?

自分の息子をなんだと思ってる。」

 

「息子.....貴方にはこんな人間のなり損ないの芋虫が人に見えますか?」

その直後、一馬は懐から呪具である刀を取り出すと史郎の首に刃を押し付けた。

「口の聞き方に気を付けろよ。

転与呪縛については知ってる。

でも、どんな姿だろうとコイツはお前の息子であり今も必死に生きようとしてる。

それを理解してやるのが親じゃないのか?」

 

首につけられた刃に目を向けながら史郎は冷笑する。

「親....そう思えたらどれだけ良かったか。

幸吉を産んだ妻は、今どうしていると思います?

産まれた瞬間に皮膚が焼け爛れた子供を見て心を壊して今も精神病院にいます。

 

私達の両親もこの現実が受け止められず自殺しました。

家の血筋で残っているのはもう...私と幸吉しかいない。

それでも貴方は妻と私達の家族を奪った幸吉を愛せと言うのですか?

答えてくださいよ

捨餓螺 一馬!!

 

史郎の目を見た一馬は当てていた刃を下げた。

この男がこの頼みを悪意を持って言ってないことが分かったからだ。

(きっと、このおっさんは心が壊れかけちまってるんだ。

大事な家族を愛するべき息子に奪われたとしか思えないでいる。)

 

「俺の転魂術式は呪霊の呪力に反応して呪具に変換する。」

「では....出来ないと?」

「少なくとも俺の知ってる方法に"人間を呪具に変える"ものは無い。」

 

一馬は捨餓螺に伝わる外法で人の身でありながら呪具を保管できる器へと変えられた。

しかし、どれだけ調べてもその外法のやり方を示した書物は見当たらなかった。

 

故にこの発言に嘘はない。

「そうですか.....では幸吉を処分してください。」

「それは....殺せと言う意味か?」

 

「はい。

幸吉の姿をこの世から消してください。

それならば、出来る筈です。」

「俺がそれを断ったらどうする?」

 

「紫痕様は仰っていました。

貴方は御三家の御当主と縛りを結んでいると.....これは加茂家当主からの命だと紫痕様は仰りました。」

当主からの命令、その言葉を聞いた一馬は黙ってしまう。

 

(このオッサンの言うことが正しければこの命令は縛りの契約があるから必ずやらなきゃならねぇ。

でも、本当にそうか?

賢尺のオッサンがこんな命令を下すか?

 

もし、この紫痕って奴が当主の命令だと嘘を言ってるのだとしたらここで言う通りにするのは悪手だな。

.....それに)

 

一馬は浴槽で怯えながら動いている小さな存在を見つめる。

(このガキは生きようとしてる。

その想いを俺は奪いたくねぇ。

だが、どうする?

どうすればガキを殺さずにこの状況を切り抜けられる?)

 

そして、沈黙の時間が暫く流れた後、一馬は口を開いた。

「なぁ、アンタの目的は息子をこの世から消せれば良いんだよな?

結果がどうなろうと.....」

「その通りです。」

 

「分かった。

だが、準備に時間がかかる。

一度、家に戻るが構わねぇな?」

「はい、約束を守っていただけるのでしたら.....」

 

そう言うと一馬は二虎へと連絡を取った。

「兄さんどうしたの?」

「二虎....悪いが手を貸してくれ。

お前の力が必要だ。」

 

一馬がそう言うと二虎は悩むこと無く答えた。

「分かった。

僕は何をすれば良い?」

 

 

 

数時間経過すると一馬は与家の屋敷へと戻ってきた。

史郎が一馬の決心の付いた顔を見つめる。

「安心しました。

流石は御三家が重宝されるお方だ。」

「先ず、この方法をやるに当たってアンタにはあるルールを守って貰う。

それは俺達がお前の息子の始末をつけるまで誰も屋敷に入れないことだ。

 

それが守れないならこの話は無しだ。

どうする?」

 

「.....終わったらご連絡下さい。」

史郎は屋敷の者に指示を出すと一馬と二虎、と幸吉を除き全ての人が屋敷から出ていった。

二虎は一馬の顔を心配そうに見つめる。

 

「兄さん....本当にに良いんだね。」

「あぁ、こうなった以上やるしかねぇだろ。」

 

一馬は銀隸棍を握ると二虎と屋敷へ入っていく。

幸吉のいる札で囲われた部屋に着くと一馬は言った。

「手筈通り頼むぜ二虎。」

「任せて兄さん。

完璧に成功させて見せるから.....」

 

そう言うと一馬は部屋の中に入り二虎は印を結ぶと呪力を展開する。

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

二虎の展開した帳は一馬と幸吉のいる部屋を覆った。

 

 

一方、一馬は暗い部屋を一人進んでいた。

少しすると上から殺気を感じた一馬は分離させた銀隸棍をその方向へ飛ばした。

 

ベキッ!

 

木が砕ける音が聞こえると人型の木人形が落ちた。

「流石に仕掛けてくるよな。」

「ダレ?....コワイ!タスケテ!オトウサン!オカアサン!」

 

砕けた木人形の頭が子供の声を出しながら叫ぶのを聞き一馬の顔は歪む。

「すまねぇこんな怖いこと嫌だよな?

だから、一瞬で済ます。」

一馬は呪力を感じる方向へ突進する。

すると、暗闇から大量の木人形が現れ一馬の動きを阻もうとした。

 

一馬は銀隸棍を使い木人形を破壊しながら前へと進んでいく。

砕かれていく人形からは操る少年の悲痛な叫びが聞こえてくる。

 

一馬はその声を歯を食い縛りながら聞き前へと進んでいく。

無数の人形をなぎ倒していくと目の前に浴槽が見える。

すると一馬は浴槽に向かって金属製の筒を投げ込んだ。

砕かれた木人形達は残ったパーツを支え合うようにして立ち上がると投げ込まれた筒が浴槽に向かうのを掴んで止めた。

 

その瞬間、その筒から煙が放出される。

「ナニ!?...コ.....レ....」

「催眠ガスだ。

暫く眠ってろ。」

 

浴槽近くで放出された煙が晴れる頃には動いていた木人形が崩れてしまった。

一馬は浴槽の中を覗き込む。

 

そこにはミイラの様に包帯を巻かれた子供が横たわっていた。

そんな子供を見つめながら一馬は印を結ぶ。

 

「......領域展開」

 

 

 

帳を降ろしている二虎は途中から現れた加茂 紫痕とその取り巻きを部屋に入れない様に立ち塞がっていた。

 

「始めましてですかな?

ワシの名は加茂 紫痕。

ここには当主代理として来ております。」

「捨餓螺当主の捨餓螺 二虎です。

それにしてもどうなさったのですか大人数でこの屋敷に来るなんて聞いていませんが....」

 

「実は今回の一件で造られる呪具を受け取る様に言われているのですよ。」

「此方にはそんな内容は聞かされてはいませんが?」

 

「あぁ、何分急に決まったことですから情報の伝達に時間が掛かっているだけでしょう。

呪具を渡してくれさえすれば何も問題はありませんよ。」

「ですが.....」

 

そうして会話をしていると部屋の扉が開き中から"両手を血で汚した一馬"が現れた。

一馬の手には呪力が流れる球体が握られていた。

 

「兄さん無事だったんだね。」

「まぁな....んでそこの奴らは?」

 

「加茂 紫痕と申します。

当主に変わりそちらの呪具を頂きに参りました。」

「んなこと俺も二虎も聞いてねぇぞ?」

 

「御当主にも申しましたが情報が行き違ったのでしょう。」

「なら、そっちの当主から直接連絡して貰うのを待つ。

俺が呼ばれたってことはそれだけ重要な案件だったって事だからな。」

 

「困りましたねぇ。

何としても今すぐに受け取らねばならぬと言うのに...」

「力付くでも奪い取るか?

そっちがその気なら殺ってやっても良いぞ俺は...」

 

そう一馬が言うと紫痕は雰囲気が変わり先程の温和な声は身を潜める。

「流石は悪童と言われるだけはある。

だが、所詮その程度だな捨餓螺 一馬。」

「それはどういう意味.....」

 

一馬がそう訪ねようとすると外からパトカーのサイレン音が響く。

「!?」

「あぁ、ご安心を我々が呼んだのですよ。

貴方を殺人未遂で捕まえて貰う為にね。」

 

「殺人だと?」

「えぇ、その血塗れの姿と中の惨状を見れば状況証拠としては充分でしょう。」

 

「貴方は兄さんを警察に引き渡すつもりなのか!」

二虎は紫痕の思惑に気付き怒りの声を上げる。

「滅相もない。

それは"最悪の手段"です。

その呪具を渡してくれさえすればここには何もない警察が誤って出動した事実に変わります....ですが拒むのなら」

「加茂家の力を使って俺を犯罪者にするか?」

 

「そこまで分かれば後は貴方が決めるだけです捨餓螺 一馬。

さぁ、御決断を.....」

一馬は少し考えると手に持っていた呪具を紫痕に投げ渡す。

「懸命な判断です。」

「お前みたいないけ好かないジジィは始めてだぜ。

今回の件はキッチリと報告させて貰う。」

 

「ご自由に.....さて目的は達しましたので私はこの辺で....あぁ、警察の方々はすぐに引かせます。」

紫痕とその取り巻きは呪具を木箱に入れるとその場を後にするのだった。

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