悪童と呼ばれた呪具師   作:多趣味の男

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第十六話 願い(表)

 

目を覚ました一馬は起き上がると周囲に目を向けた。

ボロボロの服のまま布団にいた所を見るとあの戦いで俺は気絶したみたいだ。

(何とか無事に終われたってことか。

にしても五条悟、アイツはヤバ過ぎるな。

最後の蒼とかって技………どう見ても人間が放って良い威力じゃねぇ。

あんなの使われたら半端な呪霊は一瞬で消滅するだろうな。

次期当主は伊達じゃねぇ……いや、それ以上だな。

あの男がモノになったら呪霊が消滅する未来が来るかもしれねぇ。

そう思っちまうぐらいにはあの男は強い。)

 

「しかし、三ツ木さんの言ってた本題って何なんだろうな?

悟ってクソガキが関わるのは確実だろうが後は何もわからねぇ。

それ聞く前に戦わされて気絶しちゃった訳だからな。

……あー、"鬼血の太刀"(きけつのたち)体内に仕舞い忘れちまった。

こっちにも無いってことは多分、三ツ木さんの手に渡ったな。

ヤベェな下手しなくても問題になる。」

 

鬼血の太刀は大江山で死闘を繰り広げた"酒呑童子"を使い作り出した呪具で御霊の壺と同じく"特級呪具"に該当する。

一馬の持つ切り札の様な呪具であったが故に温存するつもりだったが悟の放った強力な呪術を迎撃する為、仕方なく使用したのだ。

 

(バレずに取り返すのは恐らく不可能だろう。

でもだからと言って俺以外のやつに使わせられる程、安全な呪具でも無ぇ。

能力も含めて厄介な物だからな。)

 

そう考えていると襖が開かれ小さな鍋を乗せた膳を持った飛鷲が入ってくる。

「何だよもう起きたのか?」

「おぅ、俺はどれくらい寝てた?」

 

「大体、2時間だ。」

「わりと寝てたな。」

 

「まぁ、長旅の疲れが出たんだろ?

そう言えば五条家の従者からコレ()と一緒に伝言預かった。

『それを食べて落ち着いたら"死病の間"(しびょうのま)に来てくれ』だと」

「分かった。

にしても何だそのネーミングセンス。

どう言う神経したらそんな名前が浮かぶんだよ。」

 

「んなもん、俺だって知りてぇよ。

でもこの名前に変わったのは今の当主(三ツ木)の発案らしい。

さっき、従者の人に教えて貰った。」

「まぁ、分かった。

それ貰って良いか?」

「あぁ、ほらよ。」

 

一馬は飛鷲に差し出された鍋の乗った御盆を手に取ると鍋の蓋を開けた。

肉鍋らしく中にうどんが入っており御盆を置いた一馬は箸を手に取ると中身を口に運ぶ。

その姿を見た飛鷲は尋ねる。

「毒見はしなくて良かったのか?」

「あ?お前が毒見するつもりだったのか?

飛鷲だっけ?お前ぶっちゃけ俺の事、嫌いだろ?」

 

「いや、俺は……」

「ここじゃあ誰も聞いてねぇし何か言ったところでお前の兄貴には告げ口しねぇよ。」

そう一馬が言うと渋々ながら飛鷲は本心を言う。

「そうだな。

あんまり、好きな性格はしてねぇ。」

「随分、ハッキリ言うなお前。」

 

「俺は尊敬してる"鷹光の兄貴"から頼まれたからお前についているだけだ。

それに俺は呪具作りには全く才能が無ぇ。

腕っぷしは自信があるから兄貴の作った呪具を使った実績を上げるつもりだった。

……鎖餓螺家からの命令でも無ければな。」

「その様子だと家の連中は好きじゃねぇみたいだな。」

 

「格式だの捨餓螺家の恩義だの俺達とは関係ないもんを持ち出して俺や兄貴を縛ってるからな。

"鎖餓螺家"は元々、捨餓螺の血が何らかの事態で途絶える事を避ける為の保険として存在している家でありだからこそ捨餓螺家の命令は絶対、今回の件だってお前のとこのお袋が俺達を呼び出したんだろうが!!

そのせいで斑鳩の兄貴は俺まで敵みたいに扱ってくる。

ずっと、仲の良さだけは自慢の兄妹だった俺達が…クソがよ。」

それを聞いた一馬は食べていた箸を止める。

「そうかお前達もあのクソババァの被害者なんだな。

この際だ飛鷲、お前には言っとく。

先ず、俺やニ虎にとってもあのクソババァは敵だ。

本気で気に食わないって言うなら俺達は手を貸せる。」

「は?何いってんだお前?

お前達にとっては母親だろ?」

 

「名前だけだ。

あの女に母親らしい事をして貰った記憶はねぇ。

それにあのババァはニ虎を危険に晒した。

俺にとってはあの女が害以外の何者でも無いんだ。」

「………」

 

「もし、お前たち三人が捨餓螺家からの呪縛から逃れたいって言うんなら俺達はその思いに全身全霊で応える。

不安に思うなら縛りで確約しても良い。」

そこまで提案すると飛鷲が尋ねる。

「何でだよ?

分家とは言え赤の他人の俺達にどうしてそこまでしようとしてくれるんだ?」

 

その問いに一馬は飛鷲の目を見て答えた。

「お前も俺と同じく兄弟を大切に想っているからだ。

呪術界で本当に信用出来るのは自分の芯がしっかりしている人間。

そういう意味ではお前は信用出来るしその想いには俺も共感できる。

この世界に本当に染まって凝り固まった思考になってないお前ならまだ話が通じる……そう思っただけだ。」

 

「………少し考えさせてくれ。

兄貴達と相談しないと答えは出せねぇ。」

「あぁ、それで構わねぇ。」

 

そうして話し終えると飛鷲は部屋を出ていきご飯を食べ終えた一馬は服を着替えると指示された死病の間に向かった。

中には坊主頭に剃り込みを入れた男が一人座っていた。

その男は日本刀を手に持ちつぶさに観察していた。

 

(アレは俺の"鬼血の太刀"やっぱり回収されていたのか。)

 

そう考えていると男が一馬に尋ねる。

「貴殿が捨餓螺 一馬か?」

「はい、そういう貴方はお名前を伺っても?」

 

名前を尋ねられた男は此方に顔を向けて答えた。

「私は"夜蛾 正道"(やが まさみち)

話は三ツ木殿から聞き及んでいる。

私の呪骸技術について学びたいと……」

「はい、次に作る呪具で呪骸の技術が必要なんです。

勿論、指導に対してのお礼は用意します。

金や呪具。

俺に叶えられる事ならばお渡しする準備は整えています。」

 

「この呪具は……君が作ったのか?」

夜蛾は鬼血の太刀を見せながら尋ねる。

「はい。」

「一人ででか?」

 

「僕の術式はご存知でしょう?

呪霊を呪具に変換する。

この呪具もそれで作り出しました。」

「そうか……分かった。

こんな強力な呪具を作れるとは流石は"捨餓螺家最高の呪具師"と呼ばれるだけの実力は有している様だな。

良い物を見せて貰った。」

 

夜蛾はそう言うと鬼血の太刀を一馬へ返した。

「これ程の実力があるなら"高専"にいても有名になっている筈だが………」

「高専って……高校の事ですか?」

 

その問いに夜蛾は驚く。

「まさか、高専を知らないとはな。

"呪術高専"(じゅじゅつこうせん)……将来の呪術師を育成する目的で作られた学校だ。

君のような若い術師ならば当然でていると思ったのだ。」

「その呪術高専には若い呪術師が沢山いるんですか?」

 

「まぁ、あくまで呪術師の卵だがな。

私は"東京校"で教師をしている。」

それを聞いた一馬は考える。

(子供らしい生活を求めてはいるがニ虎の頑張りにも限界がある。

アイツも俺も仕事があるからな。

そういう意味では言えば……呪術高専は良い選択かもしれねぇ。

未来の呪術師が入るなら天与呪縛に対する偏見も少ないだろう。)

 

その顔を見た夜蛾が尋ねる。

「気になるのか高専が?」

「いや、僕では無くて……気に掛けている呪術師の子供がいましてその子を通わせるのも良いかと思っただけです。」

 

「気になるのならば後日資料を送ろう。

それに東京だけでなく君の家の近くにある京都にも学校はあるからな。」 

「ありがとうございます。

それで先程の問いに対する答えをお聞きしても宜しいですか?」

 

一馬の問いに夜蛾は答えた。

「すまないが……

君に私の"呪骸技術"を教える事は出来ない。」

「理由をお聞きしても?」

 

一馬の問いに夜蛾は先程見ていた鬼血の太刀を指差す。

「この呪具は本来ならば特級か一級の高名な呪術師が複数人集まり己の命をかけて作り出せるレベルの代物だ。

それを一人で作り上げ五体満足でいる。

正直に言って私は君が"怖い"。

もし君が我々に絶望し呪詛師の様な存在になってしまったら……君の作り出した特級呪具がそんな奴等に渡ったら事態は大変な事になる。」

「僕にその気が無いと言ってもですか?」

 

「呪術師の世界は歪んでいる。

そして、その歪みに許容し理解し行動出来る人物が今の呪術師のトップにいる連中だ。

そんな奴等にとって君の呪具はとても魅力的に映るだろう。

……いや、もう呪術師関係無く君の力を危険視する者は多くいる。」

「それはどうして?」

 

「最近、非術師でも呪霊を祓える銃と弾丸が流れていると聞いた。

それをあらゆる国家が欲していると……出どころを調べれば捨餓螺家だった。」

「確かに非術師に呪具の提供は行いましたがその条件として縛りで複数の制約を……」

 

「そう言うことじゃない。

個人的な感想だが私はその呪具を提供すること事態は賛成だ。

増え続ける呪霊の量に比べ呪術師はあまりにも少ない。

故に我々は事件が起こってからでないと呪霊への対処が出来ない。

……いや、間に合わないというのが正しい。

だが、君の作り出した呪具があれば救えない命が減り助かる者が増える筈だ。

だが、同時にこう考えてしまう。

呪霊を祓える銃と弾丸ならば"呪術師を殺せる武器"にもなると」

 

「…………」

「呪力の無い人間に呪霊は見えない。

そういう者から見れば呪術師は詐欺師か犯罪者の類に見える筈だ。

現に呪術師を恨む人間も多い。

"何故、もっと早く助けてくれなかったのか?"

"呪霊等と言い本当はお前が殺したのではないか?"

"我が子に呪いが取り憑いたのはお前たちのせいだ。"

 

私も言われたことがある。

だからこそ我々、呪術師は表の人間とは離れた存在であるべきなのだ。

そう考えた者が多かったからこそ今の呪術師の世界が出来上がっている。

だが、君の作り出した呪具は術師と非術師の壁を取り払いかねない。

そんな事が出来る君が呪骸技術を学べばどうなるか……私は怖いんだ。

自分よりも若く幼い君が怖くてたまらないんだ。」

 

夜蛾は拳が震えるほど握りながらそう呟く。

それは恐怖かそれとも幼い一馬を恐れている自分への怒りからかは分からないが切実な思いでこの言葉を言っているのが一馬には理解出来た。

 

「貴方の懸念は分かりました。

僕も呪具師の端くれです。

確かに僕の呪具は呪術師を殺す力があるかもしれません。

ですが、それは"使う側の問題"です。」

「何?」

 

「貴方の呪骸技術も悪人が使えば人を殺す兵器になり得る。

それに大抵の呪術師は軍隊の持つライフルやミサイルには敵いません。

使う側がその道具を"守る為か壊す為のどちらに使うか? "

大事なのはそこではありませんか?

僕が呪骸の技術を求めるのは失った手足を復元したいからです。

戦闘を目的にしていません。」

「失った手足……その呪術師は戦闘で手足を失ったのか?」

 

「いいえ、幼い身体で天与呪縛によって手足を失いました。

天与呪縛は生まれながら肉体に矯正させられた"縛り"……故に手足を復元出来るレベルの反転術式の使い手がいたとしても手足が戻る事はない。

その者の縛りに干渉できるレベルの術式でも無ければ」

「では、私の呪骸技術も意味が無いのでは無いか?」

 

「だから発想の転換をしたんです。

手足そのものを作るのではなく"手足と同等の機能"を持つ呪具を作れば良いのだと……呪力を通す事で精密な操作が行える様な物をね。

だが、そんな呪具を作るには精密で繊細な術を構築する必要がある。

そして、その術を収められる器が……」

そこまで説明すると夜蛾は納得した。

「成る程、つまり君が知りたい呪骸技術と言うのは……」

 

「はい。

構築した術式を収められる核……コアの作り方を知りたい。

夜蛾さんの作ろうとしている"完全自立型人工呪骸"の研究にその核の作り方のヒントがあると思っています。」

「なっ!?……どうしてそれを?」

 

完全自立型人工呪骸の研究はまだ完成には至っておらず夜蛾もその事は誰にも話していなかった。

「人の口に戸は建てられない。

貴方に会うにあたって僕も出来るだけ調べました。

呪力を与える事で動く呪骸ですが肝心の呪力が無くなれば呪骸は動かなくなる。

貴方はそれを解決しようとしている。

夜蛾さん、貴方の作ろうとしている完全自立型人工呪骸に必要な基準を満たしたコアの製作を請け負います。

それが私の提供出来る条件です。」

「…………」

 

「私の作ろうとする"義手義足型呪骸"には貴方の技術や知恵が必要不可欠です。

だから、貴方が協力してくれないのならば私には打てる手段は何も無い。

ですから、此処から先はお願いです。」

 

一馬はそう言うと地面に頭を付けて懇願した。

「お願いします。

俺に……人を救う技術を教えてください。」

 

夜蛾はその姿を見て少し考えると頭を下げる一馬に声をかけるのだった。

 

 

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