悪童と呼ばれた呪具師   作:多趣味の男

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三話 縛り(表)

一馬が術式を使い二虎を助けてると屋敷の者が入ってきた。

 

そして、怪我人を病院に運び込み周囲の安全を確認する。

これには源吾も参加しており一馬と二虎は安全な部屋に一時的な隔離された。

 

(とんでもない事になったなぁ......)

 

一馬は他人事の様に心の中で言うと自分の掌を見つめる。

 

(二虎が殺されると思った瞬間、まるで自分の中に押し込められた力が解放された感触がした。

あの動きや術式だって無意識だった。)

 

自分の体に何かが起きているのは理解できたがそれが何なのかは分からない。

(確か、源爺は捨餓螺家には家だけが持つ相伝術式があるとか言ってたな?

ここから出られたら調べてみるのも悪くないな。)

 

そんな事を考えていたからか横にいる二虎の顔が悪くなっていることに気付かなかった。

 

「おい、二虎!大丈夫か?」

一馬が駆け寄り二虎に触れる。

(身体が震えていて熱い.....まさか!?)

 

一馬は二虎の額に手を置いた。

「熱があるじゃねぇか!

どうして黙ってた!」

 

二虎を心配してるからか口調が荒くなる。

「みんな...に....しんぱ...い...かけ...たく...ハァハァ....」

「もういい!あんまり喋んな!

おい!誰でも良い来てくれ!

二虎が熱を出したんだ!」

 

一馬の声を聞いた源吾がやってくる。

「どうしましたか一馬様!」

「源爺!二虎が、熱を出してる。

早く医者を呼んでくれ。」

 

「何と!?承知いたしました。

直ぐに薬を持ってきます。」

「頼む!

布団はここにあるか?

二虎を寝かせたい。」

 

源吾から説明を受けた一馬は急いで立ち上がると部屋に仕舞われていた布団を乱雑に取ると地面に敷いてそこに二虎を丁寧に移した。

 

「二虎?安心しろ源爺が薬を持ってきてくれるから、それに直ぐ医者も来る。」

「あり...が...とう...」

 

二虎を布団に寝かせていると部屋に捨餓螺家の者が入ってきた。

「一馬様、二虎様。

御三家の当主様方はお二人にお会いしたいと仰っております。」

「あ?

この状況、見えねぇのか?

二虎が熱出してるんだぞ。」

 

「関係ありません当主様が御呼びになっているのです。

さぁ、早く行きましょう。」

そう言って二虎に触れようとする家の者の手を一馬は掴む。

 

「その汚い手で弟に触れるな。」

「は....離してください!」

 

「聞こえなかったか?

触れるなって言ってんだよ!

 

バキリ!

怒りのままに力を込めた為か掴んでいた腕の骨を折ってしまう。

 

「ぐあっ!?」

「ひぃ!?」

 

呼びに来た者達は一馬を化物の様に見る。

そんな空間の中に一人の男性が入ってきた。

 

「あららぁ、ヤバいとこに来ちゃったなぁ。」

「誰だアンタ?」

 

一馬の問いに男は答える。

 

「俺?俺は"五条 三ツ木"(ごじょう みつき)

君達に会いたがっている御三家の一人だ。

それよりも、彼等を離してあげてくれないか?

 

彼等は俺達の命令に従っただけだ。

それにこの人達は捨餓螺家の人間だろう?

身内を虐めるのは心証悪いぞ?」

 

三ツ木に言われた一馬は握っていた手を離す。

三ツ木は折れた腕に鉄扇を向ける。

 

すると、折れていた腕が一瞬の内に治ってしまった。

「!?」

それを見て一馬は驚く。

「"反転術式"だよ。

負の力(破壊)である呪力を2つ掛け合わせて正の力(治癒)に変える。

馴れると案外簡単だよ。」

 

「その反転術式で二虎を治せたりしないのか?」

「こればっかりは使う本人の才能だからねぇ。

病気を細胞の外傷と捉えられるレベルの術師なら出来るかもしれないけど残念ながら僕が治せるのは外傷のみだ。

さてと....じゃあ本題に行こうか。」

 

そう言うと三ツ木は何時も抑えている呪力を解放する。

その濃密な呪力を受けて治療された家の者は気絶し一馬達を守る様に源吾が部屋に入ってきた。

 

「三ツ木様.....これは一体どういう了見ですか?」

一馬達に呪力をぶつけている姿を見た源吾は警戒するが三ツ木は一馬の表情を見て感心した。

 

「凄いな君は.....これだけ強い呪力を浴びても平然しているなんて....それじゃあ、要件を話そうか。

俺達が会いに来たのは君だ一馬君。

転魂術式を使う君と話がしたいんだ。

君が来てくれるのならこれ以上は何もしないと約束しよう。

....どうかな一馬君?」

三ツ木の問いに一馬は即答する。

 

「分かった。」

「一馬様!」

 

「俺に用があるって言うのなら都合が良い。

今は二虎の体調を優先させるべきだ。」

「素晴らしい決断だね一馬君。

じゃあ、行こうか。」

 

「源爺....悪いけど二虎を守ってあげてくれ。

頼む。」

そう言うと一馬は三ツ木と共に部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

一馬は呪霊が暴れ周り辺りにまだ血の匂いが残るあの部屋へと連れてこられた。

そこには先に二人の男が入っており中を見聞していた。

 

三ツ木達を見つけた筋肉質の男性が言う。

 

「三ツ木.....貴様が抜け駆けするとはな?」

「まさかぁ、ちょっとトラブルがあって一馬君だけでもここに来れる様にお膳立てしただけだよ。」

 

「どうだか....お前達、五条の人間は信用ならん。」

「それはこっちの台詞だよ。

禪院 直琵人(ぜんいん なおびと)。」

 

その会話を聞いていたメガネを着けた男性が話に入る。

 

「相変わらず、当主としての品が無いなお前達は.....

それに話がブレている。

ここに来たのはその小僧(一馬)の処遇を決めるためだと記憶しているが?」

一馬は自分を小僧と言われ若干イラッとしたが我慢する。

 

それを見た三ツ木が話に入る。

「まぁ、そう言うなよ"加茂 賢尺"(かも けんじゃく)

俺達が仲が悪いのは今に始まった事じゃないだろう?

それに、処遇も何も彼は罰せられる事はしていない。

違うかい?」

「....言葉選びを間違ったのは認めよう。

だが、我等とは暇ではない。

早く本題に入るべきだ。」

 

「それもそうだね。

じゃあ、一馬君。

色々と説明しよう。

先ず、俺達は御三家と呼ばれている呪術師のトップスリーだ。

 

そんな俺達が君に興味を抱いているのはその術式があるからだ。

転魂術式.....呪霊を呪具へと変えられるその力は俺達、呪術師にとってとても有用だ。」

「有用?

どういう意味だ?」

 

一馬の問いに賢尺が答える。

 

「何だ知らないのか?

呪具には等級が設定されている。

一般的な呪具の等級には1~4級しかない。

だが、お前の術式を使えば一級よりも更に上の"特級呪具"を作り出せる。」

 

「つまりだ。

俺達はその特級呪具が欲しい。

それを作れる可能性のあるお前を囲い込みたいって訳だ。」

直琵人がそう告げると三ツ木が補足する。

 

「ただ、一つの家が君を囲い込んだら争いが起きるのは目に見えている自分の家の者なら兎も角、君達、捨餓螺家は三家に対して中立を保っているからね。

そこで、決めたんだ。

三家全てで君の事を囲い込もうとね。

 

そこで、君と"縛り"(しばり)を結びたい。」

 

「縛り?」

「呪術を使った制約....約束だよ。

勿論、破ったらそれ相応の罰はあるけどね。

君に守って欲しい制約は"僕達、三家の依頼を断らない事"それだけだ。

 

その代わりに俺達、三家が"君個人"に力を貸そう。」

 

「俺個人?」

「ハッキリ言うけど君って捨餓螺家の人からかなり酷い扱いを受けてきたよね?

ここで暮らし続けたらきっと君は成長できない。

それは俺達からしても困る。

 

だから、君を俺達三人で呪術師として育てる。

これでも俺達は御三家のトップだ。

君を今より確実に強く出来るよ。」

 

「強くなった後の事は好きにしろ。

俺達はお前が死ななければそれで良い。

当主の座も欲しいから三家の力で渡してやる。」

「その代わり、貴方は私達に言われた通りの呪具を提供する。

制約の内容はそれだけだ。」

 

説明を受けた一馬は三人に尋ねる。

「幾つか聞きたい。

お前達との縛りを受けたことで二虎や源吾に被害は出るか?」

「思い付く限りは出ないけど気になるのならその二人を俺達が守ることも縛りに加えて良い。」

 

「縛りを破った代償は?」

「お前への代償は"呪力の完全喪失"だ。

我々の場合は他の二家から血筋が消される。」

 

「当主、個人に対する縛りじゃないのか?」

「俺達の目的は家の血を残すことだ。

だからこそ、血筋が断たれる事は文字通りの死を意味する。」

 

「そう言うこと.....さて、一馬君。

後は君が選択するだけだ。」

そう言われた一馬は少し悩むと顔をあげて決心した表情を見せた。

 

「良いよ。

アンタ達との縛りを受ける。」

「ほぉ、ほぼ即決とは思い切りが良いな。」

 

「俺の幸福は家族が幸せでいることだ。

その縛りでそれが叶うのなら問題はない。」

「そうか。

ならば早速、縛りを行おう。」

 

「やり方は?」

「互いの呪力を放出して縛りの内容を確認し相手が認めれば良い。」

 

その言葉を受けて一馬と他三人は呪力を放出する。

放出された呪力を受けて直琵人は笑う。

 

「ほぅ、その年でこれだけ濃密な呪力を扱えるとは大したものだな。」

「それだけの呪力が扱えるのなら小僧との制約も悪くないな。」

 

「二人が気に入った様で.....それじゃあ始めるよ。

俺達は君が家族と認める者の安全を守る代わりに俺達が出した依頼を断らず受ける。

それで良いね?」

「あぁ、構わない。」

 

「決まりだ。

これにて縛りは為された。」

三ツ木の言葉と共に一馬の身体に奇妙な感覚のする呪力が流れ込む。

 

それを吸収すると三人は呪力を放出するのを止めた。

「これで縛りは終わりだ。

お疲れ様、これで君への用は無くなった。

早く弟の元へ向かうと良い。」

 

三ツ木のその言葉に従い一馬は部屋を後にするのだった。

二虎がいる部屋に戻ると源吾が迎えてくれた。

「一馬様!ご無事でしたか。」

「うん、御三家と縛りを結ぶことになったけどお陰で二虎の安全は確保できたよ。」

 

そう二人で話していると二虎が目を覚ました。

「う...ん?...ここは」

「二虎、起きたか?」

 

「二虎様、御加減は如何ですか?」

「まだ、頭がフラフラする。」

「当然でしょう。

お医者様に確認したら栄養失調の症状と寝不足が起こっていたと説明されました。」

 

「は?

何で二虎がそんな目に遭うんだよ?」

一馬の疑問に二虎が答える。

 

「お母様が当主の座を磐石にするためだと言って.....何日も続けて訓練をしていたんです。

食事する時間も無い程に....」

「「!?」」

 

「それにお母様が貴方が当主にならないと一馬兄さんに....僕が....殺されるって

兄さんは....僕の事を恨んでるからって」

そう言いながら目に大粒の涙を浮かべる二虎を見て一馬の怒りは更に募る。

 

(あのアマ.....俺の事が気に食わねぇからって二虎に何て重荷を背負わせながったんだ。)

 

「仮にでもよ....お前は捨餓螺家の次期当主と言われてんだろ?

そんな扱いを母親が命令したって言うのか?」

「分からない.....でも家の人は皆、お母様の言うことに従っているみたいで....それで」

 

そこまで言った所で一馬は二虎を抱き締めた。

「もういい。

悪かったな辛いことを思い出させて.....」

「でも.....僕が...捨餓螺家の当主にならないと」

 

「俺はお前が当主になりたいなら喜んで譲るしお前の手助けをしたいと思ってる。

だから、そんな心配しなくて良いんだ。」

「そん....でも...」

 

混乱している二虎に源吾が話し掛ける。

「二虎様、今はお休みください。

身体を休め体調を戻すことが今、貴方のするべき事です。」

「あり...がと...う。

源...吾....兄...さん。」

 

「お休み....二虎。」

 

 

二虎が寝たことを確認すると一馬は源吾に尋ねる。

「なぁ、源爺?

次期当主と言われてる人物を栄養失調と睡眠不足で殺しかけるのは正しい行いか?」

「いいえ、一馬様。

全く正しくありません。

それは次期当主に対する行動としても下も下で御座います。」

 

「そうだよなぁ......なら、何でそんな事をしたか知りたい。

二虎を追い詰めたのが誰なのか?

それと二虎を指導していた呪術師についても知りたい。

頼めるか?」

「勿論ですお任せください。」

 

「.....はぁ、どいつもこいつも"うぜぇ"。

何が次期当主だ。

自分達にとって都合良い駒を作りたいだけだろう。

だけど、お陰でよく分かったよ。

俺達に今、必要なのは力だ。

 

それを手に入れる必要がある。

二虎を守るためにも自分自身を守るためにもな。

その為には先生が必要だな。

俺は呪術についてまだ完全に理解していない。

 

それを知る"必要"がある。」

 

 

一馬は決心をつけると部屋を出ていく。

向かうのはかつて当主が生活していた部屋。

大量の資料や物が乱雑に置かれ足の踏み場もない。

 

「俺の父親は俺を使って何かをしようとしていた。

それが何か調べる。

先生に関しては御三家の奴等に丸投げだ。

どうせ、俺を利用する気なんだ。

 

なら、こっちも利用し返してやる。

先生が見つかる間、取り敢えず調べられるだけ調べてやるよ。」

 

 

一馬は覚悟を決めると部屋の中を散策し始めた。

全ては大切な家族を守る為に.....

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