IF:もしも転生先が・・・・
あ、ありのまま起こったことを話すぜ!
いつも通り就寝したと思ったら、『戦姫絶唱シンフォギア』の『天羽奏』になっていた!
な、何を言っているか分からねーと思うが、わたしも何が起こったのか分からなかった。
頭がどうにかなりそうだった・・・・。
ドッキリだとか異端技術だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇッ!
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・・。
と、いうわけで。
死んだ覚えも無いのにいつの間にか憑依転生なんて事態になっていて、絶賛混乱中な自分っす。
いや、本当に何が起こったんかワカンネ。
ああ、でも。
自分に縋っておいおい咽び泣いている翼さんを見てるって状況は、罪悪感しか湧かなかった。
覚えてるって嘘ついてもしょうがなかったんで、正直に『だぁれ?』と聞いたときの翼さんの顔よ・・・・。
何とか口八丁駆使して、記憶喪失ってことで片付くことにはなったものの。
代わりに翼さんがべったりするようになってきて。
あの、分かる?
お風呂もご飯も寝るのも、四六時中一緒なの。
わたしと少しでも一緒にいるために、歌手活動すらやめてしまう始末。
よっぽど例のライブがトラウマになったんだろうなぁ、コレ・・・・。
それでね?
まあ、弦十郎さんも緒川さんも了子さんも、もちろん翼さんだって。
みんながみんな、優しかったわけだけども。
その優しさが、ちょっと重たく感じたというか、なんと言うか。
だって、わたしは『奏』じゃないし、体乗っ取ってる一般人だし。
勝手に死ねないから仕方なく生きてるだけで、何か立派なことが出来るわけでもなし。
もっと言ってしまうと、本来死んでいる人間がこうして生存していることで。
未来に大きな変化が起こることが、とても怖くなってきて。
その責任を負いきる自信が、日に日に薄れて、潰えて。
っていうか、あんな『生きるのを諦めるなッ!』とか、かっこいいこと咄嗟に言えないし(泣
んでも逃げるってわけにもいかないし。
あのね?監視の目っていうのかな?
あれを結構感じるのよ。
なんか、こう、一挙手一投足を見張られてる感じがして、むずむずする。
いや、元シンフォギア装者なわけだし、野放しに出来ないってのもわかるんだけどね?
ああ、でも。
『奏』であって、よかったなっと思うことはある。
実は現在、あのライブから二年経っているんだけど。
ええ、そうです。
響ちゃん、合流済みです。
この子がまたワンコみたいでかわいいんだこれが。
こっちを見つけるたびにてけてけ駆け寄ってくる様はまさに子犬。
わしわし撫でてあげるとものすごい喜ぶし、本当に癒し。
千切れんばかりに振られる尻尾を幻視してしまうのは、しょうがないことだと思うの。
で、もちろん翼の方にもそれっぽくフォローを入れている。
『わたしはもう戦えないから、力を引き継いだあの子を気に掛けてあげてほしいな』ってお願いしたら、割とあっさり引き受けてくれた。
現在はちょっと不器用ながらも、頼れる先達として響ちゃんと頑張る日々。
うんうん、その調子で『
とまあ。
始まっちまった原作の中、どうにか必死こいて生きているわたしですが。
最近、ちょっとした楽しみが出来まして。
「――――すまない、待たせてしまった」
とある週末の夕暮れ。
通行人で賑わう繁華街で、電柱に寄りかかっていると。
銀色の綺麗な髪に、まっさらなスーツでびしっと決めたカッコイイ外人女性がやってきた。
「いえ、こっちも来たばかりですよ。『エルマさん』」
こちら、ヨーロッパの出身らしい『エルマ』さん。
道迷っていたところを、案内したのが切欠で仲良くなった。
多分『友人』と呼んでいい人。
お仕事で、このごろから日本にちょくちょく来ているらしいけど。
なんでも会社の中で重要なポジションにいるだとかで、本名は名乗れないんだとか。
まあ、そういう事情抜きにして、いい人だというのは分かっているので。
暗黙の了解ってことで、こっちもあまり詮索していない。
「それでは行くとしようか」
「はーい」
最近出来た楽しみとは。
このエルマさんと一緒に、居酒屋に行くことだった。
あの頃より年を食っているとは言え、この身は未だ
なので、必然と飲むのはジュース類に限られてくるんだけど。
エルマさんが話してくれる外国の話や豆知識が結構好きなので、あんまり気にならない。
それから、もう一つ。
「――――まったく!あの男も日本の厚着文化を見習えばいいのにッ!!何なの会うたびにマッパでいて!!何なの!?私を、私を女としてみてないって事なの!?」
「そんなことないですよ、エルマさんは十分素敵な女性ですから」
「ありがとうだいすきっ!!」
「はいはい、わたしも大好きですよー。ささ、おかわりどーぞ」
アルコールが回ってきたエルマさんの愚痴を聞いてあげるという、(個人的に)重要な役目もある。
やっぱり組織で重要な立ち位置にいると、苦労の百個や二百個ボロボロ出てくるみたいで。
特に『アダム』さんという上司についてのアレコレは、相当溜まっているようだった。
「ううぅ・・・・もぉー・・・・カリオストロもプレラーティもフリーダムすぎるし、結局後始末はわたしがやるはめになるしいぃ・・・・!」
「それだけ頼られているんですよ。感謝って、普通は照れくさくて言いにくいですから」
エルマさんのすごいところは、べろんべろんになっても機密事項を決して漏らさないところ。
名前らしき単語はぽろぽろ零すけど、それくらいだ。
将来的に付き合いで呑むことになるであろう身としては、是非とも見習いたい部分だよ。
「そうかなぁ・・・・」
「そうですよ。颯爽とお仕事こなす女の人って、わたし憧れます」
・・・・・こうやって愚痴を聞いている時間は、何だか安心する。
『天羽奏』と違って、何も出来ないわたしだけど。
こうやって誰かにしてあげられることが、誰かに頼ってもらえることが出来るんだということが。
わたしは決して、空っぽじゃないんだということを自覚できて、それが何だか嬉しくて。
閑話休題。
「――――ううぅ」
お手洗いから戻ってみれば、机に突っ伏しているエルマさんが。
表情はよく分からないけど、耳は真っ赤だし。
これはそろそろ帰した方がよさそう?
「エルマさん、眠いんですか?」
「んー・・・・」
肩を揺らしながら聞いてみると、唸りながら首を縦に振ったのが見えた。
じゃあお会計だなと伝票を取って、さっと計算。
・・・・うん、これならわたしでも払えそう。
一言断って、一旦レジに行ってから。
「さ、それじゃあホテルまで送りますから、それまで頑張ってください」
「んんー・・・・」
ぐったりしているエルマさんに肩を貸して、立ち上がる。
「あの、お客さん。タクシー呼びますけど・・・・?」
「その辺で捉まえるので、お構いなく。ありがとうございます」
心配してくれた店員さんにお礼を言ってから、店を出た。
・・・・出て、ちょっと後悔。
まだ終電には早い時間帯、タクシーの一台や二台見つかると思っていたけど、中々思うように行かない。
見つけたと思ったら、反対車線だったりしたしね。
酔っ払い抱えてうろうろしても埒が明かないので、少し遠いけど駅前を目指すことにした。
「うぅ・・・・かなでぇ・・・・」
「はーい?」
えっちらおっちら歩いていると、エルマさんがうめき声を上げる。
「かなでは、やさしいなぁ・・・・・こんな情けない大人に、親切して・・・・・」
「だったらエルマさんの人徳ですよ。偉い人だからってえばらずに頑張っている、素敵な人だから、こうやって呑みにいってますしね」
これは本当のことなので、ちょっと素直に吐き出しちゃう。
気恥ずかしさは無くもないけど、エルマさん相当酔ってるからね。
記憶に残らないことでしょう。
「うううううう・・・・!」
すると、エルマさんがまるで泣いているような声を上げた。
というか、実際泣いていた。
大粒の涙をぽろぽろ流すエルマさんは、縋る子どもみたいな顔をして、
「かなでぇ・・・・けっこんしてええぇ・・・・・!」
そのままさらに泣き出してしまった。
むむ、困ったぞ。
急なプロポーズ発言もそうだけど、これ相当弱ってるパターン。
わたしが思っている以上に、ここのところはよっぽど大変だったらしい。
「んんー・・・・」
と、なると。
この酔った勢いの世迷言である『プロポーズ』も、下手に突き放すと傷つける可能性があるわけでして・・・・。
「・・・・エルマさんと結婚できたら、それは素敵でしょうけど」
遅れ過ぎない程度に、考え込んでから。
「日本の法律では、同性婚は認められていないんですよねぇ」
遠まわしな『考えておきます』を口にして、うやむやに流してしまうことにした。
この場合、イエスとノーどちらも断言してしまうのは危ないと思ったからだ。
・・・・そうやって、日本人特有のどっちつかずな答えをしてしまったのが、いけなかった。
「・・・・じゃあ、連れて帰る」
「へっ?」
懐から、何だか覚えのある赤い結晶を取り出したエルマさんは。
それを地面に叩きつけて――――
―――――意識が浮上する。
朝の清々しい光が、部屋に満ちている。
(そういえば昨日は、どうやって帰ったっけ)
柔らかな毛布の感触に、何となく違和感を覚えながら。
ゆっくりゆっくり目蓋を開けると。
知らない天井が、飛び込んできた。
・・・・・・頭がフリーズするって、こういうことなのか。
スゴイナー(棒)
なんてやっとる場合やないですね、ええ。
思いっきり身を起こしてみると、予想以上に寒い。
「―――――ッ!!!!?」
何事!?と体を見てみれば、下着一つつけていないダイナマイトボデーが飛び込んできた。
・・・・・常々思っていたけど、『奏さん』ってやっぱりスタイルええよなぁ。
――――じゃ!!なくて!!
「――――んぅ」
なんて混乱し始めたところへ、下から声。
見下ろしてみると、隣にエルマさんが寝ているところだった。
「あれ、かなで?」
寝ぼけ眼をこすりながら起きた彼女もまた、すっぽんぽん。
同じくぽんぽんすーなわたしを見て、一気に眠気が吹き飛んだようだった。
・・・・・いやぁな沈黙が始まる。
いや、気まずい、むっちゃ気まずい。
何て考えているところへ、
「――――サンジェルマーン?起きてるー?」
「戻っているのは分かっているワケだ」
何か高級そうな扉の向こうから、声が聞こえてきた。
さんじぇ何とかとは、エルマさんの本名だろうか。
「もう昼過ぎよー?」
「いい加減起きないと不健康なワケだ」
止める暇すらなく、扉が開かれて。
入ってきたのは、褐色の肌の、これまたないすばでーなおねーさんと。
カエルのぬいぐるみを抱えた、可愛いお嬢さん。
当然っちゃ当然だけど、素っ裸のわたし達を見て硬直していた。
・・・・部屋の中を、ものすごい気まずい雰囲気が支配する。
体全体を圧迫されているような、重苦しい空気。
「――――発言いいですか?」
「ど、どうぞ?」
耐え切れなくなったので手を上げると、オーケーをもらえたので遠慮なく。
「酔った勢いでお持ち帰りされた挙句、ムシャムシャされたわたしに一言」
あ、涙我慢できなかった。
「ッごめんねえええええええええ!?本ッ当にごめんねええええええええええ!?」
「サンジェルマンは普段こんなことしないワケだ!どうか嫌わないで欲しいワケだ!!」
「すまない!私が不甲斐ないばっかりに本当にすまない!ああああああ、頼む泣かないでくれ!!」
送ってくれたカリオストロさんは、とっても優しかった。
お詫びにと貰ったお高そうなワインは、来年の楽しみにとっておこうと思います。