書いてる本人も結構キマした・・・・(ヽ´ω`)ゲッソリ
――――結構、長かったわ
「・・・・うん」
あなたに出会って、あなたと別れて
いろんなことがあって
「・・・・うん」
それで、最期にまた会えて
「・・・・うん」
幸せだった、幸せだったの
「・・・・うん」
わたしは、先にいくけど
「・・・・ぅ、ん」
待ってるから、遅刻して来てね?
「・・・・んっ」
――――ひびき
「なぁに?」
だいすきよ
「わたしも、だいすき、だよっ・・・・!」
「――――あっつ」
八月中旬、いわゆるお盆。
家の前に出て、口をついた感想がそれだった。
昼間であっても、いや、昼間だからだろうか。
充満した湿気がじわじわ肌を浸食し、全身に不快感を与えている。
「ほら、そろそろ行くわよ」
「はぁーい」
母に促され、車に乗り込む。
ほどなくしてエンジンがかかり、出発した。
今日は、郊外にある墓地への墓参り。
周囲を自然に囲まれているおかげで、虫やら掃除やらが随分大変だ。
同年代なら普通、うだうだと駄々をこねて嫌がるのだろうが。
自分には一つ、楽しみのようなものがあった。
「・・・・今年もあるかな」
「バラの花?多分あるんじゃないかなぁ」
幼い頃から、必ずと言っていいほど見てきた。
毎年お盆の季節になると、ぽつんと供えられている。
三本の真っ赤なバラ。
両親によれば、曾祖母が入ってから供えられるようになったので。
あれは曾祖母宛てなんじゃないかということだった。
物心付いた頃からずっと見てきた、三本のバラ。
今年もあるのか、来年もあるのか。
それが気になるから、墓参りはそこまで嫌じゃなかった。
「誰がお供えしてるんだろうな」
「お寺のご住職も、知らないって言ってたものねぇ」
両親のそんな会話を聞きながら、窓の外を見る。
車は、街中を抜けていた。
◆ ◆ ◆
「――――はぁ、は、はっ」
駆け抜ける。
草を踏み越え、飛び越え。
背後の追手から逃げようともがく。
ふいに気配。
とっさに飛びのけば、鉛玉が頬をかすめた。
舌を打ってもう一度飛ぶと、雨あられと降り注いだ。
地面をもんどりうって起き上がってから、慌てて手元を見る。
『手土産』は、傷一つついていなかった。
安堵を覚えて、また駆け出す。
思いを込めた『贈り物』が、傷つかないように守りながら。
◆ ◆ ◆
「――――あれっ」
「へぇっ?」
いつの間にかまどろんでいたらしい。
父の声に、意識が浮上した。
よだれをぬぐいながら顔を上げると、進行方向に検問のようなものがある。
一瞬警察かと思ったが、違う。
緑っぽい装いと、手にした物々しい銃器から。
自衛隊だと分かった。
「何かあったんですか?」
「実は、凶悪な犯罪者がこの付近に潜伏しているとの通報がありまして」
車をゆっくり近づけて、父が問いかけると。
そんなぎょっとなる答えが返ってきた。
「犯罪者って、警察は?」
「その警察では手に負えないため、我々が出動しているのです」
思わず口をついて出た疑問にも、丁寧に答えてくれる自衛官。
「僕達、この先の墓地に用があるんです。ここからそう遠くありませんし、何とかなりませんか?」
「お気持ちはお察ししますが、我々にも皆さんに危険を及ばせない使命があります。申し訳ありませんが・・・・」
同じ日本人として、先祖に挨拶したい思いは理解してくれたものの。
やはり、閉鎖区域に入れてはもらえなさそうだった。
「そう、ですか。分かりました」
「ご協力感謝します、今日はなるべく近づかないようにお願いします」
ここでゴネてもしょうがないと父は判断したらしい。
誘導に従い、おとなしくUターンした。
なんてところで、終わるわきゃねーのである。
「――――ぃよっし!」
家に戻ってから。
『愛車』たる自転車の調子を確かめて、ひとつ頷く。
日も傾き、風にも涼しさが混じってきた。
サイクリングにはうってつけだ。
目指す目的地は一つ、今日お参りする予定だった墓地である。
そもそも『ダメ』と言われたらやりたくなるのが人間。
そしてうら若き十代ともなれば、その傾向は顕著だった。
(悪い人がいるってんなら、あのバラの花だって危ないじゃないの)
命に比べれば軽いものかもしれない。
だけど、誰かを思って贈られたものが、大事じゃないわけがない。
何より、かすかながら覚えているのだ。
うんと小さなころ、自分をかわいがってくれた。
曾祖母の、温かい手を。
件の墓地は、今日見かけた検問のある場所からさほど離れていない。
何かあれば素直に自衛隊に助けを求めればいいだろうし。
無茶がどれほど危ないことか、わからないほど子供でもないつもりだった。
さっと確保して、さっと戻ってくるだけ。
大丈夫なはずだ。
供えるようのお菓子とお線香など、忘れ物がないかをしっかり確認して。
いざ尋常に、と、漕ぎ出した。
途中までは大きな道を、検問が近くなったら整備されていない田舎道を通って。
脇道に自転車を置いてから、道なき道を歩いていく。
草で切ったり、張り付く芋虫に驚きながらも。
『乙女舐めんな』という謎の対抗意識をたぎらせて。
草木をかき分けていく。
「――――ぶっは!!」
結局、たどり着いたのは。
空が茜色に染まるころだった。
葉っぱや虫を払いながら見渡して、目的地に着いたのを確信する。
・・・・検問の向こう側という意識があるからだろう。
誰もいない空間は、なんとなく重みを感じた。
「・・・・っ」
自然と背筋を伸ばして、歩き出す。
早いとこ目的を達成して、この場を立ち去らねばならない。
気持ち身をかがめて、慎重に歩を進める。
ゆっくりゆっくり歩いて、自分の家の墓を見つけた。
バッグからお供え用のお菓子を取り出し、そうっとのぞき込んで。
「――――ぁ」
息をのんだ。
記憶より苔が生した墓。
誰かがぐったり寄りかかっている。
「だ、大丈夫ですか!?」
なるべく声を潜めながら近寄れば、その状態がよく分かった。
あちこちに泥汚れや擦り傷をつくったその人は、自分と同い年くらいに見える。
顔立ちからして、同じ日本人の女の子といったところか。
「ねぇ、ちょっと・・・・!」
ゆすろうと手を伸ばしたところで、気が付く。
少女の手元、握られたそれは。
幾度となく見てきた、三本のバラ。
「――――っ」
「っあ、ねえ、大丈夫?聞こえてる?」
淡い茶髪の間から、ぼんやり見上げてくるその人は。
琥珀の瞳を揺らしながら、かすかに口を動かす。
「――――みく?」
こぼれたのは、曾祖母の名だった。
人間じゃなくなって不老不死になったビッキーが、未来さんの子孫に合う話。