○○○の少年と離れた時間と公園で   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回は後日談編……その2になります。

それではどうぞ。


第8話 次の主役は

ある朝の花咲川女子学園の高等部、1-Cの教室にて。

 

「ねぇ、美咲(みさき)! とっても楽しいお話があるわよ!」

「え? な、何いきなり……? まだ、おはようも言ってないんだけど……」

 

教室に入ってくるなり、こころの突拍子のない言葉にそう返したのは、奥沢美咲(おくさわみさき)

 

「昨日ね、子供達の前で人形劇をやったの! ペンギンが大冒険する話で、いろんな場所に行くのよ! そうしたら子供達は大喜びで……」

「ちょ、ちょっと待ってって! そんな朝イチで追いつけるテンションじゃないから!」

 

朝から情報量が多過ぎる内容に戸惑う美咲。一度こころに話を止めさせる。

 

「美咲は、人形作れるわよね? 前に作っていたでしょ?」

「それって羊毛フェルトの事?」

 

そう、それよ!と言うこころ。どうやら前に自分が作ってた羊毛フェルトの事で合ってるようだ。

 

「まー、羊毛フェルトなら得意な方かな」

「そうよね! それじゃあ、人形作りは美咲にお願いするわ!」

「人形作り!? なに、人形作りって!? 全然意味わかんない……っ」

 

いきなり人形作りをお願いと言われ、反応に困る美咲。

 

ちょうどそんな時……

 

「きゃー! 誰あの子!? だらしないけど……なんか可愛い!」

「あの制服って、藍音学院(あいねがくいん)じゃない!? ほら! よく2年生の先輩達と仲が良いって噂の人がよくうちの学校に来るじゃん!」

「あ! あのクールそうなカッコいい人!?」

 

廊下から少し騒がしい……というか賑やかに近い声が。

 

「っ!」

「ちょ、こころ!?」

 

直後こころは何かを見つけると、廊下に出るや否や、先程の話題になっていたと思われる人物を教室に連れてきたのだ。

 

何故かその人物と腕を組みながら。

 

「彗を見つけたから、連れて来たわ!」

「……どうも、理事長先生に書類を届けに廊下を歩いてたら、こころちゃんにドナドナされた明星彗です……」

「いや、連れて来たわじゃなくて……どうも、奥沢美咲です……」

「……ん、慣れてるし、平気だから気にしないで」

 

なんか朝からすいませんと視線を送りながら自己紹介する美咲。彗は慣れてるから気にしないでと返す。

 

「彗! 今度あの公民館で、また人形劇をすることにしたの!」

「……ん、それはまた凄いね」

「そのための人形を美咲に作ってもらうのよ!」

「……って、言ってるけど……美咲ちゃん、人形ってなにで作るの?」

「羊毛フェルト。あたしも今こころに言われたばっかりだから……」

「……ん、納得。こころちゃん、そもそも公民館にあるものを使えばいいんじゃないの?」

「(あたしが思ってる事を言ってくれてる!? 花音(かのん)さんや水無月(みなづき)先輩以外の常識人だ!)」

 

そんな彗を見て、美咲は常識人だ!と内心1人で歓喜していた。

 

「それもいいけど、もっといろんな人形があったら、もっと楽しいお話ができるわ!」

「「それはそうだろうけど……」」

 

思わず声を揃える彗と美咲。

 

「子供達も新しいお話をとっても楽しみにしていたわ!」

「「……((はぁ……子供達が楽しみにしてる、とか言われたら、断れる人、いないか(でしょ)……))」」

 

そんな事を言われたら断れないじゃないかと彗と美咲は思った。

 

「あーはいはい。分かったから、作ればいいんでしょ?」

「……ん、参考までに訊きたいんだけど、どんな人形なの?」

「お話ならもう出来上がっているから、どんな人形を作ればいいか、美咲も彗も一緒に考えましょ!」

 

もう話が出来上がってるというので、童話かなんか?と美咲がこころに訊くと……

 

「違うわ。あたしがお話を作ったの。このお話の主人公は……()()()()()よ!」

「えっ……ミッシェルが主人公、なんだ……?」

「……ミッシェル……ミッシェル……あぁ、ああ、はいはい。そういう事ね」

 

彼女の口から想定外の名前が出た事に驚く美咲。対して彗は、ミッシェルの名前を思い出しながらもチラッと美咲の方を見て、1人で納得していた。

 

「ある時、ミッシェルが森を歩いていると……魔法使いのおばあさんと出会うの。そこで、ミッシェルはおばあさんの魔法で、女の子の姿に変えられてしまうの!」

「……え? ミッシェルが、女の子に変えられちゃうんだ……? 逆じゃなくて?」

「逆? 逆ってどういう意味かしら?」

「……(なんか美咲ちゃん、苦労してそう)」

 

話の内容で察していたが、美咲が苦労する訳だなと彗は思った。昨日初めて会った有咲と絶対に気が合いそうとも思いながら。

 

「あ、ごめんごめん。別に気にしないでいいから。続けて……」

 

今のを気にしないでいいと美咲は、こころに先程の話の続きを促す。

 

「女の子の姿に変えられてしまったミッシェルは、自分にかけられた魔法を解くために森を飛び出して大冒険をするのよ!」

「……へー」

「大冒険の末、女の子にされてしまったミッシェルは、あたし達ハロハピの演奏を聴いて、笑顔になるの! その笑顔で魔法が解けて、女の子の姿に変えられていたミッシェルは本当の姿に戻るのよっ!」

 

とっても面白いお話でしょ!?と笑顔で美咲と彗に話すこころ。ちなみに彼女が言ってる『ハロハピ』とは、バンド名の事らしく、正式名称は『ハロー、ハッピーワールド!』らしい。

 

何故『らしい』という表現をしたかというと、彗も活動内容がよく解ってないからだ。こころがバンドを組んだの!という事を、実家の通話で話した時に聞いたくらいしか。

 

「というより、とっても()()()()だね……」

「……ん、話の内容は面白いと思うけど、最後のオチを『魔法で女の子の姿に変えられていたミッシェルが本当の姿に戻る』じゃなくて、『ミッシェルと女の子、それぞれに分離して、その後、友達もさらに増え、ミッシェルや女の子にも笑顔が増えました』に変えてみた方がいいと思うよ?」

 

美咲が皮肉な話と述べる意味を理解してた彗は、最後のオチを変えた方がいいと、こころに提案してみた。

 

「魔法で女の子の姿に変えられてたとはいえ、その女の子自身もミッシェル?の1人……というか人間なんだから」

 

もちろん、その理由も付け足しながら。

 

「まあ! 素敵ね! 確かにそっちの方が面白そうだわ!」

「……すご、意見が通っちゃった」

 

まさかの最後の話の内容の変更に驚く美咲。

 

「……ん、それは何より。それで、どんな人形が必要なの?」

「必要な人形は、ミッシェルと魔法使いでしょ? あと冒険の途中にドラゴンが出てきてほしいわ! 他には……」

「ちょーっと待ってー」

 

いったん止める美咲。自分の聞き間違いでなければ、こころはドラゴンとか言ってなかったか……?

 

「今、ドラゴンってあっさり言ったけど、それってかなり大変なんですけど」

「……美咲ちゃん、さっきの話の内容で、こころちゃんが童話系前提なんて言ってないでしょ? 森で冒険するって言った時点で、ファンタジー系の生物が出てくるかもって予想した方がいいよ」

「いや、言われてみれば確かにそうだけど……そんなの予想できないでしょ……」

 

確かに彗の言う通り、こころの性格上で考えるのを失念していた。……しかし、そんなの予想できる訳がない。

 

「あとは狼もいるといいわ! 狼が群れでミッシェルを襲うの!」

「へー……群れちゃうんだ。1匹じゃなくて……」

「……ん、群れる狼って、いたような気もするけど……」

 

というか群れる狼って、いたような……いなかったような気もするが。

 

「来週、公民館に行くことにしたから、これから一緒に作りましょう!」

「来週って! 絶対に無理だってば!」

「そんなこと、やってみないとわからないわ! 一緒に頑張りましょう!」

 

まさかの来週に公民館に行くと言うこころに驚きの声を上げる美咲。

 

「はー……学校来て、いきなり憂鬱なんだけど……」

「……ん、人形作り、僕で良ければ手伝おうか?」

「え? いいの?」

 

するとここで、彗が美咲に手伝いを申し出たのだ。

 

「……ん、手伝うのは放課後になるけどね。こころちゃん、学校が終わったら、こころちゃんの家に行ってもいい?」

「ええ! 放課後に藍音学院まで迎えにいったほうがいいかしら?」

「……ん、大丈夫だよ。一輪車で爆速で行くから」

 

そう言うと彗は、理事長先生に頼まれた書類を届けなきゃいけないから、またあとでね?と言い残して、教室を出ていった。

 

「……(なんか気遣い上手な人だったな)」

 

美咲から見た彗の第一印象はそんな感じだった。

 

余談だが、昼休みに廊下で会った有咲に今朝の事を話すと『私から見た感じ、昨日初めて話してみたけど、香澄や北沢さんと同じ波長だったぞ? でも苦労も解ってくれる常識があるやつ』だと聞かされ、その意味が分かる気がすると思ったのは別の話。




読んでいただきありがとうございます。
次回で後日談編は最後になります。
頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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