ゾンじゅじゅ〜呪力を持ってゾンビの世界へ〜   作:ssgss

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先日に引き続きたくさんの評価と感想、そして閲覧ありがとうございます!

拙い文章ではありますが、これからも頑張らせていただきます!


コンビニ・オブ・ザ・デッド

 輝と出会って、彼の家に泊めてもらった翌日。

 俺は

 

「あい輝、ゴミ出し終わったぞ」

 

「おお、ありがとうございます。啓斗さん」

 

 彼の家の掃除を手伝っていた。

 部屋中ゴミだらけで辛うじてベッドに寝られるスペースが確保されているだけ、とてもじゃないが人が生活できるような空間ではなかったし、何より宿を提供してもらったんだ。

 これくらいの手伝いはするべきだろう。

 

「部屋の整理は心の整理…いつぶりだろうこんなに心がスッキリしてるの。久しく忘れてたなあ」

 

「昨日も聞いたけどブラックってレベルじゃねえなその会社…。どうやって存続してたんだよ」

 

「アハハ…まあ外面だけはいい会社だったのかと…」

 

 輝は頬をポリポリと掻きながら言う。

 そんな会社に三年も勤めてたら、そりゃあの状況でビールも飲むわ。

 

「しかし、どうやら夢じゃないんだな。この地獄…」

 

 俺はベランダから外を眺める。

 長い夢でも見ていて実は世界にゾンビなんか蔓延っていないんじゃないかと思ったが、そんな事はなかったらしい。

 

「けど働いてた時の方が地獄でしたよ」

 

 輝は冷蔵庫から取り出したであろうビールを片手に言う。

 もう完全に価値観が壊れてんな。

 多分俺もだけど。

 

「ゴク…ゴク…。ぷっはー! 朝から仕事もせずに飲むビールが、こんなに美味しいものだとは! これぞ正に奇跡の水! 啓斗さんも飲みます?」

 

「いや、俺ビール苦手なんだ。なんか苦みがさ」

 

「ええもったいないな~。なら残りは全部俺が貰っちゃいますよ」

 

 ……能天気というかポジティブというか。

 けど、この状況で変に辛気臭くなるよりはいいのかもと俺は足軽に冷蔵庫へ向かう輝を見て思う。

 しかしそんな俺の考えとは反対に輝は一転絶望した表情で冷蔵庫を閉めた。

 

「輝、どうかしたのか?」

 

「…………無い」

 

「無い?」

 

「ビールが無いんですよーーー!!」

 

 輝は泣きながら俺に縋り付いてきた。

 そして彼の言うとおり、冷蔵庫の中にはビールはおろか飲み物すら入っていない。

 

「あードンマイ…」

 

「無理ですよ。俺もう今日はビール飲んで一日ダラダラするって体になっちゃったんです! 彼無しなんて考えられないんですよ!」

 

 涙ながらに俺に言う輝。

 そしてそんな輝に同意するように俺の腹も鳴った。

 

「分かった。ビールでいいんだな」

 

「うぇ…?」

 

 涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる輝。

 とても人に見せられた物じゃない。

 

「俺が調達してきてやるよ。飯も食いてえし」

 

「た、啓斗ざん…」

 

「その顔は拭け、ゾンビでもマシな顔するぞ」

 

 俺は輝に言いながら服を着替える。

 

「じゃあ、俺にも何かお願いします!」

 

「分かった。ビールと適当に見繕ってくるから、生きてろよ」

 

 俺はそう言ってベランダから飛び出す。

 下にあるのは駐輪場。

 そしてそれを雨からしのぐための屋根。

 俺の着地点である。

 

「よっと」

 

 全身に呪力を纏わせて着地に備える。

 こっちに転生してから呪力操作と筋トレだけは毎日欠かしてねえんだ。

 今更この程度で怪我なんかするか。

 

 俺はその場に凄まじい轟音と煙を上げて着地する。

 どうやらその拍子に数人のゾンビを巻き添えにしたのか俺の物ではない血が辺りには飛び散っている。

 

「な、何、今の音!?」

 

 俺の着地音に驚いたのか隣のマンションの住人が顔を出した。

 

「ああすいません。驚かせちまいましたか」

 

「と、とにかくそんな所に居ると危険だ! どうにかこっちに!」

 

 こんな状況で他人を心配するなんて、いい人達だな。

 

「いや、ちょっとこれから同居人の癇癪を癒しにビール取って来なきゃいけないんで、お気持ちだけ貰っておきますんで、自分の心配をしてください!」

 

 俺は話しながら音に集まってきたゾンビの相手をする。

 ……昨日よりも数が多い?

 いや、当たり前か。

 むしろ隣のマンションに生存者が居る面ではまだ少ないと思う事にするか。

 

「ああそうだ。どうせなんで欲しい物とか、必要な物があれば言ってください。何度も行くの面倒なんで」

 

 俺に面食らっているお隣さんにそう言う。

 まあ、この世界の人からしたら異常ではあるか、素手でゾンビ蹴散らして無傷なんだし。

 これで加減してますって言ったらどんな顔するんだ?

 

「じゃ、じゃあなるべく日持ちするものを…」

 

「私も、トイレットペーパーをダブルで、あと出来るだけくだらない週刊誌をお願いします…」

 

「了解! ……ってわけで、ちょっと乱暴するぜ!」

 

 俺は目の前のゾンビ一人の顔面を踏み台に大きく跳ぶ。

 けど、このまま増え続けられのも正直面倒だ。

 別にあいつ等は不死身じゃないし、防御力も低い。

 ただ今後の動きを考えると少しは減らしておきたい。

 

 新たな着地場所を探す俺の目に止まったのは、乗り捨てられた一台の車。

 そしてその近くで燃える炎。

 

「…………いい事思いついた♪」

 

 俺はその車に照準を定める。

 多分いい車なんだろうけど、乗り捨てた奴が悪いってことで了承してもらおう。

 

「弾けろ!」

 

 ゾンビと違って耐久力のある面は流石乗用車。

 呪力を込めて殴りつけても潰れてガソリンが漏れる程度で済んでくれるとは僥倖。

 

「3…2…1」

 

 車から漏れ出したガソリンの一部は導火線の様に炎へと向かう。

 そしてガソリンは引火し、ゾンビどもを燃やしながら爆発した。

 え、その中心に居たんじゃ俺も巻き込まれてるって?

 

 そこまで無計画なバカじゃない。

 

「イヤッホー!!」

 

 俺はガソリンが引火するまでの間に屋根を引っぺがし、爆風から守りながら空を飛んだ。

 

「けど、流石にちょっと熱かったな。あれはそう何度も使えないか」

 

 少しの間空飛ぶ絨毯に乗る気分を味わっていた俺だが、それもほんの少しの間でやがて高度を落としながら近づく地面を見つめて俺は再びコンビニを目指す。

 

「しかしアレだな。存外まだまだ都内でも生存者はいるのか」

 

 少しの間飛行体験を共にした屋根。

 俺はそんな彼と別れて地面に降り立つ。

 またゾンビが襲ってくるとも考えたが、何故か連中は俺ではなく少し後に落ちた屋根の方に向かった。

 

 生きてる人間よりも、デカい音のする方を優先するのか?

 

「どっちにせよ、多少体力を温存出来てラッキー」

 

 俺は昨日輝と出会ったコンビニへとたどり着く。

 その時、俺はふとそのコンビニ停められた自転車に気付いた。

 暗かったから確かではないが、昨日は無かったはず。

 それにちゃんと手入れのされたクロスバイクだ。

 

「うん。やっぱり昨日は無かったよな」

 

 そう言うと俺を認識してその自転車に取り付けられたカメラがこちらを向く。

 ……よし、せっかくの記念だから俺の姿でも残してもらおう。

 俺は何度か決めポーズを取り、満足してからコンビニに入った。

 

「えーっと、週刊誌とトイレットペーパーのダブル。あと日持ちする食べ物と…ビールビールっと」

 

 俺は両手いっぱいのカゴに色々な物を詰めながら冷蔵庫の方を目指す。

 そして目的の場所に着いた時、先客に出会った。

 

「ふー…」

 

「……」

 

 俺よりも大分先に着いていたのだろう、彼女のカゴにはカップ麺や水、お茶と言った飲料水と缶詰が所狭しと並んでいた。

 きっと外の自転車は彼女の物だろう。

 

「ちょっとゴメンな」

 

 俺は彼女に言いながら輝ご所望のビールをカゴに詰める。

 どんな銘柄がいいとか聞いてなかったからありったけでいいだろ。

 後は、俺の食いたいものだけど……さすがに弁当や乳製品の飲料はアウトだろうな。

 

 そういえば、最近甘いもん摂ってないな。

 みたらし団子でいいか。

 俺はそう思って甘味が多く並べられている所から一つ、みたらし団子をカゴに入れる。

 あとは彼女と同じ様に缶詰やパンなどがほとんどで詰め終わる頃には輝から借りたリュックもカゴもパンパンだった。

 

「にしてもアンタはよく無事だったな。あのゾンビどもから」

 

 その間、俺は同じようにコンビニを利用している彼女に話しかける。

 せっかく出会えた生存者だ、少しくらい仲良くしてもバチは当たるまい。

 

「……余計なお世話かもしれないけど。この状況で手に入れる物のプライオリティは決めたほうがいいわよ」

 

 彼女は淡々と返した。

 

「水や食料品ならともかくビールや週刊誌(そんなもの)の為に危険な街中に繰り出すのは、とてもプライオリティの高いこととは思えないわ」

 

「横文字が多くてよく分からん」

 

「……街中がゾンビだらけなのだから、必要な物だけを手に入れるべき。それ以外は捨てたほうがいいわ。とくにそのお団子、本当に必要なの?」

 

 彼女は俺のカゴに入っているみたらし団子を見て言う。

 

「食いたいのか? まだあるぞ」

 

「……いいえ。この状況で糖質を摂取する事は、死のリスクを高めるだけよ」

 

「そうかなあ…いや、そうかもな」

 

「でしょ、だったら…」

 

「けど、今俺はこれが食いたかった。それで十分だ」

 

 俺は彼女にそう返した。

 コイツの言ってる事は正論だ。

 こんな状況で週刊誌やビール、団子なんかを求めるのは間違っている。

 

 だけど、コイツの言う事には正論以外の意味がない。

 

「もし団子を食わなくて、明日ゾンビに殺されたら、俺はきっと後悔する。もしかしたら食ったところで明日殺されてるかもしれない」

 

「……」

 

「どうせ死ぬなら、自分に嘘つかねえまま死ぬ。後悔を残して長生きするより、後悔を残さずに早死にするさ」

 

「そう、別にいいわ。忠告しただけだから」

 

 彼女はそう言ってその場を去ろうとする。

 

「もう行くのか? せっかく同じ生存者なんだし、情報交換の意味でも連絡先ぐらい交換しねえ?」

 

「せっかくの申し出で恐縮ですが、リスクヘッジもマトモに出来ない人とアライアンスを組むメリットは見込めない。一緒に居るとこちらの生存率まで下がりかねないので、連絡先の交換はお断りさせて頂くわ」

 

「…そっか、残念。アンタ美人とはお近づきになりたかったんだがな」

 

 その時、俺達の居るコンビニにトラックが衝突してきた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 その後、俺は輝の居るマンションに戻ってきた。

 お隣のマンションの人には荷物を届けられなかった。

 俺が帰って来た時には既に、その部屋は襲われた後だけが残っていたからだ。

 

「へー、美人のお姉さんかあ……俺も行けば良かったあ…」

 

「へへ、ま、これは命張った奴の特権だな」

 

「けどリスクヘッジかあ…」

 

 輝はその言葉を言いながら空に浮かぶ月を見る。

 

「そんなの気にしてる場合じゃないよなあ。もうブラック企業で三年も無駄にしちゃってるし」

 

 輝はあのノートを取り出し、やりたい事を綴っていく。

 

「あ、そういえばすまん輝」

 

「え?」

 

「お前の自転車、多分壊した」

 

「……えーーーーーっ!?」

 

 おそらく駐輪場に停めてあったと思うが、出る時に駐輪場ごと壊したからな。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ーーー朝6時。

 私はいつも通り、いつもと変わらずこの時間に起きる。

 そして、ゾンビに捕まらないようランニングマシーンで10km走ること、これも変わらずに行い、徹底的な脂質と糖質の制限によってコンディションも維持する。

 

「ふぅ…」

 

 テレビやラジオで外からの情報を得る事も欠かさない。

 ゾンビにならない為にすべき事を、私はする。

 

「Hello…Hello…」

 

 LA(ロサンゼルス)の本社とも連絡が取れない。

 今はとにかく、少しでも早く郊外を目指すべきか。

 

「……ゾンビには、歩くタイプと走るタイプがいるのね」

 

 少しは足しになるかと思って見始めたゾンビ映画。

 もう百本は軽く超えたと思うけど、そのほとんどでゾンビは生存者を襲い、同じゾンビは襲わず、かつ追いかける時には足を使うというものばかりで、今の状況と酷似していた。

 

「今のゾンビパンデミックには、両方のタイプが存在するのね。となると、走るタイプは危険、襲われた時瞬時にどちらのタイプか見定められるようにしておかないと」

 

 ーーーけど、今俺はこれが食いたかった。それで十分だ。

 

 こんな時に、昨日出会った彼の事を思い出した。

 私とは反対に、先ではなく今を生きる事を楽しむ人。

 

「こんな状況で、こんなに楽しそうに生きられるなんて、典型的で短絡的な快楽主義者ね」

 

 私はカメラが記録していた映像に映る、様々なポーズで楽しむ彼を見て思ったけど、

 

 ーーー後悔を残して長生きするより、後悔を残さずに早死するさ。

 

 けれど、

 

「……桜餅くらい、我慢しなくても良かったかな…」

 

 ほんの少し、本当に少しだけ……その素直な生き方が羨ましいと思った。

 真似したいとは思わないけど。

 

 

 

 

 




閑さんの彼に対する感想はあくまで個人的にこう思っているかなと原作とアニメで思い書きました…
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