チートも貰えずに地球の頃の肉体で異世界に転移してしまった日本人が過酷な世界で必死に生き延びる話   作:山田さぶなかたろう

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ちょっとだけ物語が進みます。


第三話 異変の予感

 ブルースライムを探してダンジョンを探索中。

 

 今日は何故かブルースライムの数が少なく、かと言って群れを見つけたと思ったら、20数匹の群れを作って身を寄せあってたりする。

 

 明らかに異常な光景である。

 

 ブルースライムは非常に弱いモンスターなので、それに伴って非常に危機察知能力が高い。

 

 彼らは本能で危険を避けて動く習性があるので、ブルースライムがここまで怯えてるってことは、この第一層に何かしらの異変が起こっていると言う事にほかならない。

 

 正直どう考えても今から引き返して今日はぐっすり眠って明日に備えるべきであるし、今もなお倒せそうなブルースライムを求めてダンジョンを練り歩いているのはあまりにも無謀な行為である。

 

 しかし、今日は運悪く「七の日」と呼ばれる、地球で言うなら日曜日であった。

 

 日曜日だからなんなんだって話だが、それを説明するには少しダンジョンについての解説を行わなければならない。

 

 という訳で突発的ながらダンジョン講座を始めさせていただきます。

 

 講師は私、「エグチ アキラ」が努めさせていただきます。よろしくお願いします。

 

 ではまずダンジョンと曜日の関係について。

 

‪ 「ダンジョンは生きている‪」とは誰が言ったものか。

 

 ダンジョンの研究家であろうか、それとも名のある冒険者か、それとも国を総べる王様か。

 

 いずれにせよ、その言葉は広く伝え聞かされ、今や全ての人族にとっての常識である。

 

 では何故「ダンジョンは生きている」と言われるのか

 

 それは、ダンジョンの中身が「形を変える」こと、そしてダンジョン自身が「意志を持つ」ということが原因であると言われている。

 

 また、ダンジョンは七日周期で中身の形を変える。

 

 なぜそのような行動を起こすのかは未だに謎だが、少なくとも七日周期以外に形を変えたことは長い歴史の中で一度もない。

 

 ダンジョンが新たに生まれる時も、周期の途中ではなく周期が終わって次の週が始まった日に絶対に生まれてくる。

 

 さらにダンジョンは意志を持っている。

 

 というか実際にダンジョンと会話ができるらしい。

 

 特殊なスキルが必要らしいが、そのスキルさえあればダンジョンを自由自在に操ることも可能らしい。

 

 大都市の一つである「迷宮都市」も、そのダンジョンと意思疎通を行えるスキルの持ち主が建国したともっぱらの噂だ。

 

 さて、それと日曜日の何が関係あるかというと、七日周期の最終日がその「七の日」と呼ばれる日曜日なのだ。

 

 ここまで言ったらお察しの通り。この世界の曜日は「ダンジョンの構造変化の周期を一周として定められたもの」である。

 

 一ヶ月は四週したら。1年は48周したら。

 一ヶ月は一律で28日、1年は336日だ。

 

 分かりやすくていいね。

 

 さて、日曜日にダンジョンの構造が変化すると何が困るか。

 

 それはもちろん「ダンジョンの構造が変わる」ことに起因する、それによって「マップが変わる」ことが一番の問題だ。

 

 各国のギルドの職員には「マッピング」のスキルを持つ冒険者が必ず複数いる。マッピングガチ勢だ。

 

 そのガチ勢たちが毎週、一の日の早朝にダンジョンのマッピングを行ない。それをギルドに貼り付ける。

 

 冒険者たちはそれを見ながら攻略する道筋を立てたり、マップを購入してダンジョン内で役立てたりする。

 

 今日ここでダンジョンの探索を諦め明日に持ち越す場合。明日にはダンジョンの構造が変わり、新しいマップができるだろう。

 

 しかし、あれ凄い混むんだよね。

 

 何故か張り出されるマップはギルド内には一枚しか張り出されない。

 

 それ以上欲しいなら受付で買うか、自分でマッピングするしかない。

 

 俺は無一文の弱小冒険者低収入筆頭なので、当然マップを買うなんて言う恐れ多いことは、とてもでは無いができない。

 

 毎週10等級ポーション500本分も吹っ飛んだら収入と収支が逆転してしまい、ギルドに借金こさえて返済のために生涯無給の雑用人生だ。

 なんかそれでいい気がしてきた……賄いとか出るかもだし………いやいや。

 

 好き好んで木等級のままで冒険者やってて、借金こさえるとかそんなの歴史に乗っちゃう。

 

 ギルドのしおりの最後の方に掲載されている「こんな冒険者は嫌だ」リスト入りしてしまうだろう。

多分『年中木等級の冒険者、ついに気が狂ったのか第一層しか周回しないにも関わらずマップを購入。月収14回分の借金で冒険者から雑用に』こんな感じになる。あまりにも不名誉すぎる。

 

 ので、マップを買うのはあまりにも現実的では無い。

 

 そして当然俺も張り出されたマップを見に行くわけだから……おい誰だ今「第一層しか周回しないのにマップ見る必要ある?」って言ったやつ。

 

 正しく、その通りだ。しかし、第一層は第一層でも、なんと第二層へ行く階段に近ければ近いほど敵が強くなったり、群れが大きくなったりするのだ。

 

 そのせいで俺は入口付近から真ん中ぐらいまでを行ったり来たりするしかなく、もし間違って第二層の近くに足を踏み入れたら、良くて大怪我下手したら死ぬ。

 

 マップを見ながらダンジョンの構造を暗記したりメモしたりして「ここまでなら大丈夫だな」って安心して探索できるのだ。

 

 しかしギルドのマップは一枚しか張り出されていないので、ありとあらゆる冒険者が殺到する。

 

 朝にギルドに行ったらマップの周囲はまさに人の塊だ。

 

 時間が経ったら、だいたい昼過ぎの日が落ちかけてきた頃に、やっと見れるようになる。

 その頃のマップ近くには、値段が高くてマップが買えない冒険者たちがマップを見て必死に写している光景が見られる。

 

 目がバッキバキで雰囲気が怖いのでなるべく邪魔しないようにマップを見るようにしている。

 

 特に序列などは無いが、俺は幻の木等級のライセンスをつけているので、実質的に初心者とされる石等級の冒険者より先にマップを見ることは難しい。

 

 別に何か言われる訳では無いんだけど、暗に「お前見る必要あるの?」って言わんばかりの目が耐えられない。

 

 なので昼過ぎに遠目からマップを見て、それからダンジョンに潜って少しダンジョンを見たら帰るのである。

 

 そして一の日は大抵収入はゼロ。

 

 なので七の日にできるだけお金を稼いでおきたいという切実な事情があるのだ。

 

 欲を言えばいつもの倍は稼いでおきたい。

 

 だから今危険だからと言ってスタコラサッサと帰ったら、いつもの収入の10分の1くらいで帰宅することになる。

 

 貯金を切り崩せばまぁどうにかなるだろうが、この先苦しくなるのは必然。

 

 命あっての物種とは言うが、それはそれとしてお金が無くちゃ人は生きていけない。

 

 未知の脅威と日々の生活。それらは決して比べられるものでは無いが、起こるかも分からない恐怖に脅えてたらそもそも冒険者なんてやってられない。

 

 なので俺は危険を承知でひたすらにダンジョンをさ迷っていたのだか……どうやら俺はしくじったようだ。

 

 今どこにいるかまったくわからん。

 

 多分第一層の中盤付近だと思うんだけど、来た道を引き返せばいいのか先に行けばいいのかわからなくなった。

 

 普段はこういうことは無いんだけど……スライムの異常行動に意識を持っていかれたか?

 

 さてどうしようか。多分来た道を戻れば、入口付近に帰れる……ハズ。

 

 でもスライムと戦ってる途中にどっちから来たのか分からなくなって、適当に進む時がたまにあるのだ。

 冒険者やめちまえ。

 

 と、とりあえず来た道を引き返そう。奥に向かったら非常に不味い。

 

 体の向きを反転して、いざ戻ろう……という瞬間。

 

 ダンジョンが大きく揺れた。

 

「!? なんだ!なんだ! 地震か!?」

 

 体を丸めて盾を頭上に掲げ、頭を守るように構える。

 

 もし落石があったらと思うとヒヤヒヤする。

 

 しかし、これは非常事態だ。ダンジョン内は一種の異空間となっているため、外の世界で地震が起ころうと中は一切変化がない。

 

 つまり今の揺れは、外の世界ではなくダンジョンで起こったものだと断言出来る。

 

 何層かは分からないが、近くの階層ででかい戦闘が行われている。

 

 もしも余波で階層崩れが起きれば俺は岩盤に叩きつけられて死ぬ。

 

 マンボウ並に死ぬ危険がそこかしこに転がってるのが木等級なのだ。

 

 これは一刻も早く逃げなければ。

 

 帰還用アイテムは既にない。

 

 今日は七の日なので当然使った後だ。

 

 もはやどっちに行くかで迷っている暇は無い。

 

 すぐさまさっきまで来た道を走って戻ることにする。

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