チートも貰えずに地球の頃の肉体で異世界に転移してしまった日本人が過酷な世界で必死に生き延びる話   作:山田さぶなかたろう

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ヒロインが出てきます。
美少女の表現って難しい・・・。


第四話 女神と遭遇する

 なんか揺れが大きくなってる気がする。

 

 いや、気のせいだ。

 

 スライムたちが俺の進行方向から大挙して逃げ去って行ってるのも、何かの間違いだ。

 

 ていうかめっちゃ俺のこと避けないじゃん。普通避けるだろ危機感ねえのか。

 

 攻撃形態じゃないので全く痛みも衝撃もなく、相手はただの水の体だからすり抜けてくけど……

 

 スライムは危険から遠ざかるだけで、必ずしも第二層側から遠ざかっている訳では無い。入口付近でドンパチやってる可能性だって充分ある。

 

 その場合巻き込まれて死ぬんだが、んな事言ってる場合じゃない。

 

 そして、必死に自分を言い聞かせて走ること10分ほど、ちょくちょく疲れたので歩いてはいたが、相当な距離を稼げたのではないだろうか。

 

 しかし、さっきから鳴っていた轟音がピタリと止み、地震が収まっている。

 

 これで一安心、ではあるのだが、本格的にどっちが出口か分からなくなってしまった。

 

 一応、ダンジョンで迷った場合は救済措置がある。

 

 階層の境にはテレポートの魔法陣があり、そこにたどり着けばギルドまで転送される。

 

 その他にも、七の日を超えて一の日になった瞬間。つまり「00:00」になれば強制的にダンジョンから吐き出される。

 

 その時ダンジョンは入口を封鎖し、一切の侵入を断るようになる。

 

 お化粧直し中なんだろう。ピュアだね。

 

 なので、ダンジョンで迷ってもどっちか片方に進み続ければいつかは第二層かダンジョン入口にたどり着けるわけで、第二層付近まで行くのが怖いならそこら辺で身を寄せて寝て待てばいい。七の日だからできる強引な策である。

 

 第二層にはブルースライムしかいないので、危険は無い。

 敵意がない相手には何も感じないのか、通路で寝ててもマジで何もしてこない。

 

 むしろ人肌が暖かいのか起きるとブルースライムに囲まれてたりすることもある。

 

 あれはマジで恐怖だったね。あと俺舐められすぎな。

 

 もちろん冒険者が通りかかることもあるので恥ずかしい思いをするが、それは許容するしかない。

 

 帰りたければさっさと第二層まで行けばいいのに、わざわざ第一層で野宿するアホなんて居ないから、みんなに不思議な目で見られる。

 

 第二層付近は第二層の敵がたまに混じるから怖いんよ。

 

 迷った時に第二層側に向かうのは極力避けている。

 

 少しでも敵が強くなったり群れの平均が大きくなってきたと思ったら、そこで引き返せば入口まで戻れる。

 

 しかし、今その判別はできなさそうだ。

 

 さっき第一層にいるほぼ全てのブルースライムとすれ違ったのか、一匹も見かけない。

 

 今日はここで寝てもいいかもしれない。

 

 いや、寝る必要は無いか。0時まで起きればいいだけだ。

 

 そう思って早速体を休められる場所を探してうろうろしてると……

 

 「ん? 人間……か?」

 

 誰か倒れてる。

 

 慌てて駆け寄ってみる。と、その惨状が良く見えてくる。

 

 腕と足が曲がっては行けない方向に折れている。

 

 防具は所々引き裂かれ、肌どころかピンクの中に白い部分すら見えている。

 

 明らかに重症。 というより、死に体だった。

 

 

 グロ耐性がない俺は吐いた。

 

 前世でもっとホラー映画とかホラーゲームやるべきだった。

 

 ここまで自分がグロ耐性がないとは思わなかった。

 

 倒れている冒険者には非常に失礼だか、気の済むまで吐かせて貰った。

 

 死んでるかもしれない。

 

 しかし、死体を見つけた場合、誰が死んでいたかギルドに報告する義務がある。

 

 出来ればライセンスを持っていくのが礼儀だ。

 

 なので、できるだけグロい部分を見ないように手で隠しながら、重症の冒険者に近づく。

 

 するとやっと気づいた。よく見たら女の人だ。

 

 遠目からは分からなかった。それくらい酷い状態なのだ。

 

 ようやく手で触れる位置に来たので、

 仰向けにする。

 

 

 うわめっちゃ顔綺麗。

 

 顔は比較的傷が少なく、とても美しい顔が綺麗に残っている。

 

 相当な美人さんだったのに……可哀想に……。

 

 俺は防具につけてあるライセンスを見る。

 

 「白金のエリシア……2つ名持ちか。って、銀等級!? はぁ!?」

 

 銀等級。

 

 それは「人を辞めた存在」と言われる、まさしく超人だ。

 

 ひとつの国家に一人いれば他国への牽制になるくらい、もはや一冒険者ではなく生物兵器として扱われる有様である。

 

 銀等級のいる戦場はそれ未満の生物がいくらいても話にならないと言われ、銀等級が居ない国家は他の銀等級がいる国家に従属するのが一般的である。

 

 それくらい、一人いるだけでとんでもない存在なのだ。

 

 その銀等級が、こんなところ(ダンジョンの第一層)で……一体何が?

 

 いや、考えても仕方ない。

 

 冒険者側としてはとてつもない損失ではあるが、こればかりは死んでしまったら生き返ることはないので諦める他ない。

 

 恐らく当分の間銀等級を倒したモンスターが見つかるまでダンジョンは封鎖されるだろう。

 

 俺はとんでもないイベントに出くわしてしまったらしい。

 

 とりあえずライセンスを外してすぐさまギルドに届けなければ…

 

 「……っ」

 

 「?」

 

 ……今なにか聞こえたか?

 

 「………………っかひゅ」

 

 ……もしかして生きてる?

 

 よくよく胸付近を見てみると、辛うじてだが上下している。

 

 マジか、この状態で生きてるのか。

 

 銀等級マジか。生命力パネェや。

 

 まてまてまて、まだ生きてるならライセンス剥ぎ取れないぞ!っじゃなくて、助けなきゃ!

 

 俺は咄嗟にカバンを下ろして中身を地面にぶちまける。

 

 あった。俺の家宝。伝家の3等級ポーションだ。

 

 エリクサー症候群が見事に発症して一生使わない気だったが、これはまさにベストな使い所だ。

 

 吹けば死ぬような木等級の儚い命を救うより、世界の救世主足り得る銀等級様に使ってもらった方が3等級ポーションだって嬉しいに決まってる。

 

 というわけで早速蓋を開ける。

 

 すると、瓶の中からとてつもない波動を感じた。

 

 これは……魔力か?

 

 俺は魔法が使えない。チートも持たされずに地球の頃のまんまで異世界に来たので、当然魔力なんてものはひとつもない。すっからかんだ。

 

 だから魔力感知能力は無に等しいし、魔法耐性なんてないから魔法の中でいちばん弱い基礎的な攻撃魔法であるファイヤーボールどころか、魔力を固めただけのただの魔力球ですら当たったら致命傷だ。

 

 そんな俺でも、魔力を浴びていると感じられるほどの量の魔力が3等級ポーションから溢れ出ている。

 

 噂に違わず、とんでもないポーションだ。

 

 これなら効果を疑う必要も無い。

 

 俺は躊躇無く3等級ポーションを銀等級の娘の口を開けて飲ませた。

 

 ポーションは体に振りかけても効果はあるが、口から摂取した方が回復効率がいい……とギルドで習った。

 

 なので飲ませたが……その効果は劇的だった。

 

 銀等級の娘の体から、目が眩む程の光を発し始めたので咄嗟に目を閉じる。閉じた目の先から感じる光が少し収まった後うっすらと目を開けると、まるで逆再生のように身体中の傷が無くなっていくではないか。

 

 そして全ての傷が無くなった後も変化は続く。

 

 既に綺麗だった肌がさらに潤いを増し、艶が出来た。

 

 髪の毛はめちゃくちゃサラサラになって重力を無視して少し浮き始め、ダンジョン内を照らすヒカリゴケの光を反射して幻想的な輝きを放っている。

 

 よく見ると周りに光の粒が浮いており、現れたり消えたりしている。

 

 おそらく、体に収まりきらなかった魔力が実体を持って放出されているのであろう。

 

 これは間違いない。

 

 女神様だ。

 

 どうやら異世界転生前にチートを貰う時に会えると思っていた女神様は、今更遅れて登場したようだ。

 

 ふざけた考えはそろそろやめよう。

 

 とりあえず一命を取り留めた様で、顔がとても穏やかになっている。

 

 しかし、とにかく美しい。これこそまさに芸術作品だ。

 

 今すぐ写真を撮って末代までの家宝にしたいところだが、いかんせん手持ちがない。

 

 しょうがない。少々無作法だが、今の手持ちの全財産を捧げるだけで勘弁してもらおう。

 

 と思ってバッグの中の小銭入れを探していると

 

 『あ。あーあー、聞こえますか? アキラさん。あなたに話しかけています。 聞こえたら返事してください』

 

 「誰!?」

 

 なんか声が聞こえてきた。

 

 脳内にしゃべりかけられるような感覚で、その声はとても心地良い。

 

 ASMRとかやってそうな綺麗系の女の人の声だ。めっちゃ脳がくすぐったい。

聞いてるだけで蕩けそうになる。

 

 しかし、いくら見渡しても声の主は見つからない。

 

 はて、ついに俺の隠された真の能力が開花してしまったのだろうか。「幻聴」とかそういうスキルかな?

 

 『どこ探しても居ませんよ。あなたが今手で握ってるじゃありませんか。 ほら』

 

 手……?

 

 俺が手に持っているのは、使い終わった3等級ポーションの瓶だけだ。

 

 これが何?

 

 『まだ分かりませんか? それです。 私はそれ、3等級ポーションです』

 

 「馬鹿なこと言うんじゃないよ。 ポーションが喋れるわけあらへんがな」

 

 『現に喋っています。 むしろ3等級ポーションなんだから当然では?』

 

 「それもそうか」

 

 ……って納得しちゃった。

 

 待って、3等級ポーションって喋れたの?っていうかポーションだよね?

 

 ちょっと恥ずかしいんだけど毎日寝る前におやすみとか一緒にお風呂入ろうねとか体拭いてあげるねとかやってたの全部見られてたの!!??

 

 『あなたは随分と顔によく出ますね。あなたの思ってる事はだいたい分かりますが。「否定はしない」とだけ言っておきます』

 

 「完璧変質者じゃん……相棒に裏切られた……」

 

 『あいぼ……!? こ、こほん。 とにかく!私が3等級ポーションだというのは分かりましたね?』

 

 「完全に理解した」

 

 『その言葉は何故か信頼できませんが、理解したと捉えます。 さて、早速ですが、その助けた女の子、早く運ばないとあなた諸共ダンジョンに吐き出されますよ』

 

 「あ、そうだった! でも、ここから近いのって多分第二層だろ? さすがに近づきたくないんだが……」

 

 『この世界の冒険者が聞いたら驚愕する程頼りない発言ですが、安心してください。この先のモンスターはこの娘の戦闘の余波で一匹たりとも残ってませんよ』

 

 「なんでそんなこと分かるの?」

 

 『3等級ポーションなので』

 

 「ほな3等級ポーションが言うなら間違いないか」

 

 『道案内は私が行うのでその子を背負って今すぐ移動しましょう』

 

 3等級ポーションが早く行けと急かす。

 

 しかし、女神様こと銀等級の娘を背負うには一つだけ問題がある。

 

 「まって」

 

 『……? どうしたのですか?』

 

 「多分背負って歩けないかも。いや、武器とか盾を置いていったら行けるかもしれないけど」

 

 そう、装備だ。

 

 俺の生活を支える要、冒険者を冒険者たらしめる所以(ゆえん)とも言える装備を身につけたままでは彼女を背負えない。

 

 これは由々しき問題だ。

 

 『では武器と盾は置いて行ってください。つまらない質問してないでキビキビ歩いてください』

 

 「俺の仕事道具……」

 

 一蹴された。

 

 とは言っても価値にしたら銀等級冒険者と比べるべくもないので、非常に惜しみながら剣と盾を外して邪魔にならないように隅に置いておく。

 

 ダンジョンは一日以上放置してある武器防具を吸収する性質があるので、明日来たら多分無くなってる。

 

 ので、放置しても俺の損失になるだけだ。

 

 悲しいね。

 

 『では、案内を開始します。前方、そのまま真っ直ぐに500メートル進んでください』

 

 「わあナビみたい」




ストックの半分くらいです。
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