チートも貰えずに地球の頃の肉体で異世界に転移してしまった日本人が過酷な世界で必死に生き延びる話 作:山田さぶなかたろう
次話の番外編を読む上での補足です。
実は3等級ポーションは一部では「霊薬」という名で呼ばれており、その効果は一般的に知られている効果を遥かに凌駕するとてつもないシロモノだった。
曰く、そのポーションを1口飲んだ王様が人間の平均寿命である60年を大幅に超えた1000年も生きたとか。
曰く、そのポーションが一滴落ちただけで、荒れ果てた枯れた大地が息を吹き返し、草木が生い茂る広大な森になったとか。そしてその広大な領土を巡って今でも近隣の国は争い続けているとか。
曰く、そのポーションの所有権をめぐって世界最大とも言われた二大国家が500年以上続く戦争をしたとか。
曰く、そのポーションを体の一部に浴びたモンスターが突如凶暴化、後に大厄災と呼ばれる歴史上最大規模の災害を引き起こした魔王種となったとか。
そんなマユツバな噂が流れるのが3等級ポーションであり。
その噂は、全て真実であるというのが最も恐ろしい事実だろう。
そのポーションを飲んでいればアキラは今頃世界中に名を馳せる最強冒険者の一角として生きていたのだろうに、実に不運である。
そんな3等級ポーションがアキラの元へ届けられるまでの話
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「ならば男、その剣と盾を売れ」
「は!? いや、こ、これがないと生活できないんだが!?」
「その剣と盾、そしてお主の全財産を合わせればギリギリこのポーションが買える。そうでなければお主にこのポーションは譲れんなぁ」
「くっ! なんて卑怯な……! でもめっちゃ欲しい……!」
「さあ、どうする? 買うか、買わないか。」
「くっ…………」
こんなのは明らかに詐欺であろう。
手持ちのお金は今持っている全財産であり、それに加えて生活を支える冒険道具まで売り払ったら、もちろん冒険者はダンジョンに潜れなくなり路頭に迷う羽目になる。
それほど防具と武器は貴重なものであり、辛うじて冒険者を冒険者たらしめる生命線なのだ。
それを全て売り払い、無一文になってまで買う価値があるというのだろうか。
普通の人は諦めていたであろう選択。
しかし、彼は異世界人、この世界でのまともな感性などロクに持っていない異端者だった。
そして大いに悩んだあと、アキラは剣と盾を恭しく体から取り外し、怪しい風貌の人物に差し出す。
「そのポーションを俺にください! 絶対幸せにしてみせます!」
彼女の親に対する挨拶のごとく、娘をください!と言わんばかりの勢いでポーションを買う。
彼は命より重い武器と防具を、ただの効果が高いだけのポーションと天秤にかけ、珍しいと言うだけでポーションに傾いた。
怪しい風貌の人物は大いに驚き、そして不敵に笑った。
「くくく、よく言った男。その心意気に免じてこのポーションを売ってやろう。 せいぜい有効に扱うんじゃぞ」
「くっ……そ! 絶対詐欺られてるのに心の底から喜んでる自分がいる! よろしくなポーション!今の俺の全財産はお前だけだ!」
こうやってポーションは買い取られた。
次は今度こそネレちゃんの過去話です。