物心ついたときから細かい計画を立てるのが苦手だった。ある程度ここ目指したらいいやと曖昧に決め、途中でよりいい道を見つけたらすぐに乗り換える。そんなどっちつかずで自由気ままに生きてた自分はいつしか親族から「変わり者」や「一族の突然変異」だのひどい時には「恥晒し」とまで呼ばれるようになった。確かに自分でも変わっているなとは思うけど自分の幸せのために行動しているからそこまで気にはしていないし、親族からの仕打ちも陰口ぐらいで実害はないし従妹から慕われているだけで十分だ。
──そんな俺は今日も無計画に外を出歩く。
この時期は暖かく晴れた日が多いためのんびり散歩するにはぴったりな季節だ。まだ四月の上旬もあってか桜は満開で見栄えが良い。そして何より”皐月賞”が近いためそのレースに出走する名のあるウマ娘たちがこの付近でランニングなどの練習をしている。特に現在歩いている河川敷はそんなウマ娘たちにとっては都合のいい練習場所である。家柄ウマ娘に興味がある自分にとっては今年のレースに出る娘たちがどんな感じなのか間近で見られる絶好の機会、この時ばかりはこの付近に家を建てた家族に感謝したい。愛してるぞー!!! うわきっしょ、何こいつ? 俺だわ
「トレセーン!!!」
掛け声とともに中央のチームのウマ娘達と思われる集団が横を通り過ぎていく。そういえば従妹がチームに所属した!と言っていたけどどこのチームかは聞いていない。また今度会った時に聞いてみるか。
そんなことを考えていると.
「はぁ、はぁ...」
次は1人のウマ娘が横を走って通り過ぎようとする。
あの片耳カバーと髪型から見た感じだと確か”アドマイヤベガ”だったか。母親はかつてレースで名を残した名ウマ娘でその娘であるアドマイヤベガも相当な期待を寄せられていたはずだ。
だが様子がおかしい。明らかに焦点の合ってない目、過呼吸を疑うほどの息切れ、そして滝のように流れる汗、おそらく熱中症か脱水症状だろう。今すぐにでも倒れてしまいそうな雰囲気だ。
流石にそろそろ休憩を取るはずだが何か嫌な予感がする。念のためここでUターンして様子を見てみるか.
そう思った矢先...
「おい、大丈夫か???」
アドマイヤベガはバランスを崩しフラフラとしてきた。このままでは倒れる。急いで駆け付けた瞬間案の定倒れてきた。
「あっぶな、気づけて良かったわ俺」
咄嗟の判断で彼女を支えることができた俺は次に大丈夫かどうか確認を取る。
「う、うーん...」
意識はまだあるようだ、よかった
「大丈夫ですか? 一応救急車呼びましょうか??」
念のため聞く、重度だったらまともな返事は返ってこないので即119だが軽めで向こうが面倒なことになりたくない場合でもなんとかできる。
「それは...待って...」
「分かりました、ですが水分は取ってください。これ上げますんで」
軽度だからといって何も処置をしないのはよくないのでさっき買った未開封のスポーツドリンクを手渡す。
「...十分です」
「このまま水分を取らず重症化したら示しがつきませんよ、いいから飲んでください未開封なんで」
「...わかりました」
おっ、飲んでくれたよかったよかった。これで何とか大事にならずに済みそう。あとはこのまま日陰で休ませて様子を見てトレセン学園まで送ろう。
「このまま休んでもらって大丈夫そうなら学園まで送っていきますよ、トレーナーさんか教官には連絡は?」
「...オーバーワークして倒れたなんて言ったら今後が...」
「なら黙っておきますね、これはここだけ秘密ってことで」
「え? いいの? 最悪命に関わることだったのに...」
「人には黙っておきたいことの一つや二つくらいありますよ、それにこの様子だとレースも近いでしょう? ここで出走できずに夢が潰えるなんてあってはいけないと思うんですよね」
「...ありがとう、もう大丈夫よ」
「よかったよかった、それじゃ行きましょうか」
こうして無事に回復したアドマイヤベガを連れトレセン学園の付近までやってきた。
「じゃあここらへんで自分の役目はしゅうりょうですね」
「ええ、助かったわ...その...ありがとう」
「いいんですよそれくらい、それにあなたが倒れたら悲しむ人だっていますよ」
お礼の言葉に対しそれっぽいような返答をする。
「...例えば」
おやおや(ボ卿)、予想だにしない言葉が出てきましたよ。困りますね。ここは返さなくては(使命感)
「それは家族だったりトレーナーだったりファンだったり、自分だって悲しいですよ」
「ッ!!!」
何やら思いつめた表情、もしかして地雷踏み抜いた???
「あっ...すみません」
「...いいのよ、こっちの問題だし」
心が広い! 圧倒的感謝ッ!!!
「それと...今度お礼がしたいからその...連絡先を交換しないかしら?」
「いいですよ、はい」
「ありがとう...」
「それではそろそろ行かせてもらいますね」
「...家族...ね...」
アドマイヤベガと別れ帰路につく。今日は人助け?ウマ助け?をしたのでいい気分!なんだかいいこと起きそう!
誤字脱字報告、感想よろしくお願いします。お褒めの言葉を頂くと筆者のHeart(ネイティブ)がumapyoi(直喩)します。