鬼にも笑劇があるらしい(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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続けちゃった


幕間
入る時はノックを忘れないように


 

「私の望みは鬼殺隊の殲滅」

 

 一人残らず叩き殺して二度と私の視界に入らせないこと。低く重厚な声が猗窩座に言う。高慢で利己的な物言いだった。その声を出す男は幼かった。若くあどけない輪郭を残す年端の行かぬ少年だが、猗窩座はその前に跪く。少年は普通の子供ではなかった。猗窩座と同様の人外であり、そしてその上で束ねる鬼殺隊の怨敵である。鬼舞辻無惨、鬼の首魁である男は少年となり猗窩座に問いかけた。

 

「複雑なことではないはずだ、それなのにいまだ叶わず」

 

 どういうことなんだ、少年が尋ねる。まるで子供の癇癪のようだった。我が儘が通らぬことが分からぬような態度で見開きの本の頁を破く。猗窩座は返答せずに頭を垂れて跪いていた。まるで許しを乞うようにも見えるがその顔は血管が浮かぶ。身体中に巡る細胞を捻り潰すような痛みが込み上げて、言葉を返せなかったのだ。戦慄く口は必死に閉ざされるも僅かに血が溢れる。

 

「柱も殺せず他に三人の隊士も取り残す、挙句の果てに普通の人間ごときにいたぶられて帰って来るとは役にも立たぬ以前の問題だ」

 

 ビリビリと引き裂けるページは次第に増えていき、最後には本の背表紙すら引き千切る。その間も猗窩座の細胞は破壊されていくが、尚も頭を垂れて許しを乞う。

 

「何故始末して来なかった?わざわざ近くにいたお前を向かわせたのに…猗窩座」

 

 猗窩座、猗窩座、猗窩座!繰り返し呼ぶその名が無惨の怒りをそのままに示す。生き残ることを優先する種は何よりも脅かされること故の憤怒であった。猗窩座の細胞は破壊されて口から血を吐き出した。跪く足元にボタボタと血を汚す。よく見ればその身体もボロボロだった。打撲痕と、それを隠さぬ上半身。無様でしかなかった。

 

「お前には失望した」

 

 冷ややかな目が突き刺さり、無惨はまた本棚に手を掛ける。背表紙を手に取り本を読む姿から先程の怒りは見受けられなかった。ただ静かな少年がそこに居るだけだ。

 

「まさか人間に傷を付けられるとは」

 

 【上弦の参】も堕ちたものだ、最後の締めくくりとして言われた言葉は猗窩座も僅かに反応を示す。その感情は既に無惨が感じ取れるものであったが知ったことではない。

 

「下がれ」

 

 話は終わりだと言わんとする態度だ、最早興味を示さずただ本を読んでいる。実際無惨の話はこれで終わりだった、これ以上の時間は割くことは出来ないのだ。お前などその程度だ、明け透けにそう言われたその屈辱は、猗窩座の内心を著しく不快にさせた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

――館には蝶が舞っていた

 

 館の庭には花の香りがむせ返り、多種多様の蝶がひらひらと飛んでいる。蝶屋敷と呼ばれるこの屋敷は蟲柱胡蝶しのぶが所有する邸宅だった。邸宅は基本的に負傷した隊士の治療所として使われている、その邸宅では炭治郎たちがその邸で治療を受けていた。

 

 

――その中には炎柱も混じり、皆負傷していた

 

 伊之助や善逸はさして目立つ傷はないが、炭治郎は腹に開く傷を縫う重傷だ。煉獄はそれよりも酷い傷を負い、その右腕は既に喪失していた。抉れたような傷はその損傷の酷さを如実に表し、内臓の損傷すら深い。この治療所の長であるしのぶは、最早剣士としての再起は難しいだろうと診断した。利き腕の喪失は、鬼殺隊として致命傷の傷。それは煉獄の柱としての寿命である。

 

――柱とは簡単に務まる立場ではない

 

 鬼殺隊の誰よりも強く抜きん出た彼らだからこそ、この立場の責任は重いのだ。煉獄は誰よりも責任に重きを置く男だ。それを理解しているからこそ、引退を言い切った。

 

――それは炭治郎たちが誰よりも後悔することである

 

 煉獄の役にも立てず、足手纏い。上弦の鬼と戦うにはまだ早すぎる自信の未熟さ、その無力さ。誰よりも深く刻み込まれた感情であった。泣きそうになる三人を宥める煉獄が寝台の上で変わらず笑う。

 

「君たちのせいではないさ、俺が未熟だっただけさ」

 

 それに何より生きているじゃないか、煉獄の言葉は温かく優しかった。まるでわだかまりを解すような言葉に青い男は野次を入れる。

 

「そうです、生き残った奴が強いんです」

 

 あたくしの知り合いの受け売りですがね。津軽はそう言い放ち寝台の上で行儀悪く座る。命あっての物種だなんていうのもあるから、津軽の言い分は間違ってはいなかった。その寝台の横にある卓の上には、鳥籠が一つ居座りお喋りに参加する。

 

「それじゃあ、私が一番強いということだなぁ」

 

「おお、そういう意味ではそうかもしれません」

 

 こりゃ一本取られました、その言葉と共に奇妙な笑いを繰り広げている。真打津軽という男はつくづく享楽的な男だ、こんな空気の中でも飄々としているのだから。その傍らにいる女中は何も言わず静かに佇んでいる。まるで人形のようで微動だにもしない彼女は馳井静句という鳥籠の従者なのだとか。後に加わったのは津軽らしいが、未だにその声を聞くことはなかった。この鳥籠もとい生首の鴉夜が探偵というがその名声は聞いたこともないのだからやはりよく分からないが彼らに対する感想である。

 

――鬼殺隊の治療所に似つかわしくはないであろう三人は、此処では賓客であった

 

 産屋敷家たっての希望らしく、彼らは蝶屋敷でもてなしを受けている。というのも津軽が主に戦闘で怪我をしていないかという検査もあったのだが、当人の様子を見る限り健康に見えた。

 

――煉獄でさえ大怪我を負っているのにこの男は何だろうか?

 

 全身が青く、それでいて再生する鬼に再生出来ぬ一打を与える。その胡散臭さすら得体が知れぬ生き物にも思えるが食べているものは炭治郎たちと変わらなかった。白米を美味そうに食べてみたり、時そばなんて演目を急に始めてみたりととにかくやかましい男だ。最終的に静句と喧嘩になり仲が悪いことも発覚するのだが、やはり陽気なだけなのかもしれない。

 

――炭治郎から見て、津軽という男はただ楽観的で普通の人間だった

 

 だが、それでも輪堂鴉夜という不死に仕えることも疑念に残る。あの不死はいつからいるのだろうか、いつ出会ったのか。そんなことを疑念に重いながら禰豆子の眠る部屋に向かった。日光に当てられない禰豆子に寝室を頂いていることはありがたいのだが、炭治郎の眠る病室から遠い。禰豆子ちゃんに会いに行くなら、と一緒に着いてきた善逸と共にある一室を前に扉を開ければ、そこに禰豆子は居なかった。

 

「……な、ッ!!」「……は?」

 

 炭治郎と善逸はほぼ同時に変な声を上げる。というのも禰豆子が居なかったからではなく、そこに居たのがあの三人居たからだった。正確に言うとその二人。津軽と鴉夜が口付けていたのを見てそんな声が出たのだった。

 




津軽とのキスシーン好きなので、次回書く。R15にした理由はそういう意味もあります。

評価と感想お願いします(乞食)

追記
アンケート設けた。遊郭編諸々カットしようか悩んでてその関係で。ご協力お願いいたします。アンケートは幕間の間のみ。

遊郭編は必要?

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  • 必要ない
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