鬼にも笑劇があるらしい(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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カット出来る所はカットします。


光があるから闇もある

 

 

――列車と融合した鬼の頸を探っていた

 

 炭治郎は車両内を回る。前方の車両に向かって走るのだが、未だ鬼の急所は見当たらない。炭治郎は鼻が利く。鬼の匂いが強い方に向かってはいるのだが、それでも分からなかった。強い風がその匂いを拡散させて、場所が曖昧だ。こうしている間にも乗客を守る仲間が摩耗する。急がねば、そう考えて伊之助を呼べば頭上から声が聞こえた。

 

「うるせぇ!ぶち殺すぞ!」

 

 伊之助の声は隔たりのある天井から降り注ぐ。外に居る伊之助と話せば向かっている先は同じようだった。寧ろ伊之助の方が鋭く鬼の気配を感じ取っている。風で鼻が利かない現状を考えると、伊之助を信じて炭治郎は前へと進んだ。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「怪しいぜ怪しいぜ、この辺は特に!!」

 

「な、何だ、お前は!で、出ていけ!」

 

 石炭が積まれている車両に行き着く。伊之助は先にそこに侵入すれば、車掌が一人そこに居たが伊之助にはどうでもいいようだった。

 

「鬼の頸、鬼の急所!!」

 

 伊之助は敏感な気配を肌で感じ取り、その床目掛けて日輪刀を振り下ろす。その直前に壁から盛り上がった肉が手に形を変えて伸びてきた、一つだけではなく、数え切れぬ程の無数の手が、伊之助の方へ向かってくる。

 

「キモっ!!」

 

 気持ち悪いと伊之助は引き攣りながらもその手を切り落とすも、伊之助の手数は足りずやがて四肢を掴まれた。あわや殺されるかも知れぬ直前で炭治郎が助けに入り、ようやく二人は合流出来たようだった。手の付いた肉は扉ごと切り落とされて、そのまま車外へと流れるように落ちていく。轟音のような断末魔が響く。車内全域に響くその声は、紛れもなく鬼の急所が間近にあることをハッキリと周囲に知らしめた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「まるで地震みてぇだ」

 

 津軽は車両内でそんなことを呟く。派手におっぱじめているようで、と呟きながらも津軽は拳を振るった。伸びた触手は容易くその拳で千切れていく。鬼としての再生能力は何故か作用せず、千切れた触手は無様に足元に飛び散っていった。

 

「……は、」

 

 触手を引き裂く度に、ぶちぶちと筋肉繊維が引き裂ける生々しい音がする。浴びる返り血は生温かった。見て聞いて、そしてこの皮膚で感じる。それらの感覚は津軽の中にある得体の知れない感覚を呼び起こした。吊り上がる口角は恍惚に満ちている、そして興奮すらしている。きっとこれに身を任せれば死が待ち受けるかもしれないが、津軽はそれでも構わないとも思った。その瞬間がないとは言い切れないのも事実だ。

 

――いっそこの身を委ねてしまおうか

 

 そう考えてしまう瞬間があるが、それはもう既にやめたことだった。昔考えた一芸でもあるが今はきっと師匠が許さない。殺してくれ、だなんて言うあの人を置いていくのは余りにも。津軽は人でなしであれども不義理をするつもりも毛頭なかった。……ああ、違うな。それは自分の中でしっくりとこない。ああ、やっぱりあれだ。

 

「へ、へへ……」

 

 津軽は一人納得して静かに笑む。そうだ、そうだったと思い出す。蘇った記憶はかつて見世物小屋に居た頃の記憶。師匠を楽しませると言ったのだからそれは成さねばならないことだった。ではこれもまた興行の一環だろう。なに、海外でもやったし、慣れたもんだ。一人勝手に納得して拳を振れば、またあの人外の叫ぶ声がする。おっと、先程以上の揺れを感じて、列車はそのまま脱線していった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

――石炭の詰まれた車内は鬼の頸があった

 

 剥き出しした床には人間の脊椎が生々しく収まり、おおよそ人の大きさではないそれは列車の大きさに相当するように大きく肥大していた。これを切り落とすには二人がかりでやるのがやっとである。つまり二人がどちらかが欠けていたらこの鬼は倒せなかったことに他ならなかった。

 

――ようやく倒した鬼は断末魔を上げる

 

 その首が切れたことで列車は両断された。先頭は脱線し、後続の車両は全てひっくり返る。大惨事にもなり得たそれが奇跡的に死者を出さなかったのは、後続に居た煉獄が全てを守り切ったからだった。同時に全て内壁が全て肉になっていたことも重なってその奇跡が成り立ったのである。

 

――ただ全てが無事ではなかった

 

 脱線以前に、腹を刺された炭治郎は重症だ。決して浅くはないその傷は鬼の手で行われたモノではなく、人為的な要因によって行われたものだった。伊之助を庇ったことで負った傷は炭治郎を動けなくさせた。必死に呼吸を整える最中、煉獄の顔が炭治郎の眼前に広がった。

 

「全集中の常中が出来るようだな、感心感心」

 

「……煉獄さん」

 

 あの脱線の中無事だったらしい、呼吸について説明する煉獄は炭治郎に指南するように常中の呼吸での止血を教え込んだ。

 

「腹部から出血している、もっと集中して呼吸の精度をあげるんだ」

 

 身体の隅々まで神経を行き渡らせろ、煉獄に言われるがまま炭治郎は素直に呼吸を繰り返す。

 

「血管がある、破れた血管だ」

 

「もっと集中しろ」

 

 更に深く集中する炭治郎は、その破れた血管を見つけた。

 

「そこだ、出血を止めろ」

 

 言われるがまま、炭治郎が必死に止血しようとするが痛みのあまり呻く。ジワリと隊服から血が滲んでまるで集中が出来ていない状態になると、煉獄の指が炭治郎の額に置かれた。

 

「……集中」

 

 優しくも厳しい指導、炭治郎は必死に呻きながらもようやく止血すれば、止血出来たなと言って顔が穏やかになった。

 

「呼吸を極めれば様々なことが出来るようになる、何でも出来る訳ではないが昨日の自分より確実に強い自分になれる」

 

「……はい」

 

 煉獄は満足そうに笑い、そして現状を話し出す。

 

「皆無事だ!怪我人は大勢だが命に別状はない」

 

「……ありがとうございます」

 

 君は無理せず身体を休めろ、そう言って笑う煉獄は優しかった。これが柱か、炭治郎は既に安心しきっていた。

 

――だがそれでも闇はそこにある

 

 夜明けが近い夜更け、誰もが目を覚まそうとするその夜明け前にまた一匹と鬼がやって来た。ドン、凄まじい轟音と共に起きた砂埃。その中で形作る影は静かに此方を見据えていた。




津軽は多分約束は守る奴です。



正直、この作品無限列車編で終わらせようと思ってたのですが、ちょっと惜しいような気もしてアンケートします。

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