鬼にも笑劇があるらしい(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

9 / 14
続けてみた。演出上途中までは原作通りです


さて、お立合い

 

 

「今まで殺してきた柱に炎はいなかったな」

 

 猗窩座は煉獄の刀と迫ながらそんなことを話す。そうしている間も早い打撃は煉獄に襲い掛かり、煉獄もまたその打撃に対応していた。何度も両手で打ち込まれる拳、それを受け止める刀身と共に煉獄は僅かに後ろに後退る。

 

「そして俺の誘いに頷く者もなかった」

 

 猗窩座の鍛え抜かれた足がその腕が振るわれる度に砂が舞った。炭治郎では捉えきれぬその動きに、煉獄は尚も反応する。その左腕を切り落とそうとする刀は途中まで斬れたが、動かない。その状態でも尚猗窩座はまた話し始めた。

 

「何故だろうな、同じく武の道をきわめる者として理解しかねる」

 

 選ばれた者しか鬼になれないというのに、猗窩座の右手が煉獄の顔に襲い掛かるも、煉獄はすぐに反応した。煉獄は刀を下から上へと斬り上げればその腕は吹き飛んだ。切り落とすことが出来たがあっという間にその腕は生えて攻撃に転じる。振りかぶった拳を受け止めて煉獄の顔が険しく歪む。

 

「素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えていく、俺は辛い」

 

 死んでくれ杏寿郎、若く強いまま。向かい合ってそう囁かれた。まるで甘くされどおぞましいその言葉を振り払うように煉獄が大きく薙ぎ払う。渾身の一撃は容易く避けられて、猗窩座は宙を舞った。

 

――【破壊殺・空式】

 

 何もない虚空に繰り出される拳は風圧となり、煉獄へと向かう。その一撃を貰った瞬間、煉獄は僅かに呻いた。成程、煉獄は相手の血鬼術の特性を理解しその打撃を刀身で受け止める。ダン、ダンと重い一撃は刀身に乗る度に煉獄はそのまま後ろへと下がった。更に降り注ぐ打撃の風が煉獄を襲う。

 

――炎の呼吸、【肆ノ型 盛炎のうねり】

 

 前方目掛けて全身を使った薙ぎ払い。広範囲に渦巻くような炎が立ち上ってその拳を相殺してみせた。互いに互角、されど猗窩座はその遥か上をいく人外。再生力、体力を見れば長期戦は不利であることは明らかであった。さらに言えば、先程の技。あれをされてしまえば簡単には近付けない。近付けねば頸は斬れぬ、ならばと煉獄は考えてそして前へと躍り出た。見えぬその反射速度、猗窩座は目の前でその刀が振るわたが、猗窩座は容易く半身で避ける。

 

「この素晴らしい反応速度」

 

 怪物は嬉しそうに口角を吊り上げて、その拳を振るった。その拳を容易くいなしそして斬り上げる動きを猗窩座は惜しむ。

 

「この素晴らしい剣技も失われていくのだ、杏寿郎!」

 

 悲しくはないのか、猗窩座は煉獄を叱咤する。吊り上がるその眼は怒りに燃えて、その強さが失われることを心底惜しんでいた。だが煉獄はそれに反論する。

 

「誰もがそうだ!人間のことなら当然のことだ!」

 

 拳と刀がぶつかり合う中、炭治郎も応戦しようとした。同時に途中できた伊之助も加わろうとするもそれを煉獄が気付き止める。「動くな!」と煉獄は炭治郎たちに怒鳴る。反射的に姿勢を正した二人に煉獄は尚も叱りつけた。

 

「傷が開いたら致命傷になるぞ!待機命令!」

 

「弱者に構うな、杏寿郎!」

 

 全力を出せ、俺に集中しろ。まるで嫉妬するような纏わりつく言い方で猗窩座は煉獄に語りかける。事実、それ以上煉獄は気を配れぬまま、この死闘は続いた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

――隙がねぇ……!

 

 嘴平伊之助は煉獄と猗窩座の戦闘を見てただ息を呑む。応戦したくも入れない、そしてその動きの速さについて行けないことを伊之助は感じ取っていた。あの間合いに入れば死しかないと肌で感じ取る。そして助太刀しても足手纏いになることも。だからこそこの場で動けない。

 

「……煉獄さん」

 

 ただ見ることしか出来ないのか、炭治郎も同じことを考えていた。ただそこに居ることが心苦しく思いながらまた一発と煉獄は負傷する。掠めた額は血を噴き出し、尚も前へと近付く煉獄は諦めていなかった。お前はまだ肉体の全盛期ではない、その煉獄の闘気を猗窩座が惜しむ声すら何処か遠くにあるようだ。最早伊之助と炭治郎は傷が増える煉獄を見ていられなかった。

 

――だけど、どうしたらいい?

 

 必死に考える二人に近付く影が現れる。姿勢の悪いその男は津軽だった。大股に歩き、そしてその手には鳥籠が一つ。その状況を見て津軽は炭治郎から刀を抜き取って歩き出す。その登場は炭治郎も予想外だった。そして言葉を掛ける暇もないまま、津軽は鳥籠を手渡す。

 

「師匠をお願いします」

 

 いつもの口振りで、その男はその刀を投げた。水平にただ真っ直ぐ射貫くような矢として刀は虚空を駆け抜けた。当然、その刀は誰かに刺さる。

 

「……カ.ハ、、ッ」

 

 ザク、と腹に刺さった猗窩座の口から吐血する。誰だ、ギロリと睨む方向は炭治郎たち。あの弱者が俺たちの邪魔をするなど、あってはならなかった。そいつを殺してやる、血眼になって探すも投げた形跡はない。誰だ、誰だ。必死に探す猗窩座の背に掌底が一発打ち込まれた。メリメリと沈むその手は猗窩座を押し、そして吹き飛んでいく。吹き飛んだ先は先程煉獄がぶち当たった部分目掛けてぶち当たった猗窩座はようやくその相手を見た。

 

「……何だ、お前は?」

 

「どうもお初にお目にかかります。あたくし海外公演を終えて遠路はるばる日本に戻ってまいりました流浪の芸人、【鳥籠使い】真打津軽と申します。名は真打でも器は前座ってぇちゃちな男でございます」

 

 へらへらした男だった、陰気な雰囲気と何処か胡散臭い空気を纏わせる。恰好は白シャツ一枚にサスペンダーで吊った長ズボンが一枚。靴すら履いていない舐めた格好だった。シャツの腕を肘まで捲り、吊りズボンの裾を膝まで上げる、まるで川遊びでもする子供のような恰好。その開いた胸元では心臓のような大きな刺青が一際目立っていた。そう青い、その頭髪もその眼も全て。身体中に走る線は動脈に沿うように皮膚を走る。突き刺すようなその左目の線も同じモノだった。つまりこの刺青は足と手の指先まで走っている。

 

――津軽は細身の男だ

 

 肉体は細くそして軽い、されどその四肢は一切無駄のないしなやかな筋肉で濃縮されていた。練り上げられた肉体だが、水を差されたのだ。猗窩座は面白くなかった。

 

「貴様の名前なんてどうでもいい、何故邪魔をした?」

 

「そりゃ興行の一環ですよ」

 

 これからは全国行脚しながら回るのです。張り付けたような笑みで、ふざけたことを宣う。まるで何処か上弦の弐を彷彿とさせるその軽薄な態度は猗窩座の神経を逆撫でにさせた。

 

「……そうか、死ね」

 

 そう言って拳を振り上げるが、津軽はそれを軽く躱し懐から針のようなものを取り出す。それは乗客が持っていた針だった。その眼球目掛けて二つの針を投げればその両目に突き刺さった。だが猗窩座は怪物だ、この程度で仰け反ることもない。そのまま攻撃に転ずるも津軽はそれすら躱し、更にその奥へと針を押し込んで叩きこむ。

 

「卑怯な……!」

 

「はて、卑怯?殺し合いに卑怯もないと思いますがね」

 

 卑怯でもそれは方法でしかない。確実に殺せるのであれば、津軽は率先して行うことだった。手頃にあればそれを使うし、勝てないと判断すれば目的だけを達成する。結果的に勝てば津軽にとって卑怯などないのだ。視界を奪われて針を引き抜こうとするも、更に追い立てるように津軽の拳が猗窩座の腹にのめり込む。渾身の一撃だった、猗窩座は小さく呻く声を上げてまた吹き飛んだ。吹き飛んだ先は森の中、その背に大木の衝撃を受けるが猗窩座にはさして問題はない。身じろこうとするが何故か動けなかった。傷は治っている筈だ、この時猗窩座は初めてその違和感に気付く。

 

「傷が……?!」

 

 治っていない、そう言って猗窩座は腹に触れる。背の傷は癒えた。だがまだ痛むところがあった。最初にあの男に受けた掌底、そしてこの腹の一発。まるで無惨様に受けた呪いのように、傷が癒えないのだ。何だこれは、そう言いかける猗窩座だが、その木の向こうからあの飄々としたあの声が聞こえてきた。

 




戦闘シーンは時間が掛かります。卑怯で我流なのが津軽の魅力です。
正直、この作品無限列車編で終わらせようと思ってたのですが、ちょっと惜しいような気もしてアンケートします。

続きは?

  • 見たい!
  • 満足!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。