ヒーロー名《大将黄猿ボルサリーノ》 作:ヒーローにわか
「速さは重さ。――お前さん、光の速さで蹴られたことはあるかい?」
足元に転がる大きな残骸を、足蹴にしながら、その少年はほざいた。
少しサルっぽい顔がカッコいい少年。
298cmという驚異の高身長。目はタレ目で、ニット帽を被り、その上にサングラスを載せている。
髪は肩につく少し手前まで伸ばし、そしてもじゃもじゃ。およそ中学生らしからぬ、ワイルドなヘアスタイルである。
「しかし呆気ないねぇ〜。結構大きかったから俺っちも少しは楽しめると思ったけど、そんなことなかった。弱くてあくびが出ちまいそうだよぉ」
少年の名前は、
入学試験の受験生で、無数の仮想ヴィランを秒殺し、そして足元に転がる巨大なヴィランを一方的に蹂躙した、あくまで受験生である。
そんな彼の足はピカピカ光っていた。
――――
死んだと思ったら、ONE PIECEの大将黄猿の能力を持ってアメコミ風世界に転生した件。
サリーノの自意識が覚醒した時に、まっさきに思ったのがそれだった。
個性なる《悪魔の実》の能力に似た超能力者に溢れた世界。悪いことに個性を使う者をヴィランと呼び、ヒーローライセンスを持つプロヒーローが市民を守る世界。
どうやら、自分はアメコミ風の世界に生まれ変わったのだとサリーノは確信した。
このときはまだ、ヒーローになりたいとは微塵も思っていなかった。兵隊よりも危なそうな仕事、誰が好き好んでやるものか、とダダを捏ねていた。
だが、7歳に上がる頃、サリーノの個性が判明し、大きな騒動に巻き込まれることになる。
個性『ピカピカ』
部屋をピカピカに磨き上げる個性などでは当然ない。
ピカピカの実を食べた光人間と同じ状態を、サリーノは受けるのだ。
サリーノもとい、ONE PIECEファンの転生者は掌をくるりと返し、勉学に勤しむことになる。
ヒーローになることを決めたのだ。神は言っている、ヒーローになれ(言っていない)。大将黄猿もといボルサリーノの能力を神は授けてくれた。ならば、正義の側につき好き放題しよう。
それから、ずっと個性を磨き続けて、そして冒頭に至る。
「天下の雄英高校の試験だから、覚悟して来たんだけど、……これじゃ拍子抜けだよねぇ。まぁ、俺っちが強過ぎるせいだけど。ちょっとはしゃぎ過ぎた」
巨大なロボットを、光速の蹴りで完膚なきまでに破壊し尽くしたサリーノは、頭部だった物を蹴って転がしながら、欠伸をする。
余裕しゃくしゃくな態度に他の受験生たちは青筋を浮かべるが、何も言えない。言えるはずがなかった。
「怪我は無いかい? お嬢さん」
「うっ、うん!」
誰もいないはずの所に話し掛ける。
これが、サリーノと彼女の始まりだった。