しろめし修行僧・究極TKGでセンターを狙え!/小説   作:ドラ麦茶

2 / 10
2・天使からのお願い

「――いやぁ、始まったときはどうなることかと思ったけど、お坊さんの食レポ、完璧だったね。撮れ高モンスター級だよ。あんなの、どこで覚えたの?」

 

 中継が終わり、スタッフが機材を駐車場のロケバスに片付け始める中、ディレクターはたくあんの食レポを絶賛した。

 

「そんな、完璧だなんて。私はただ、全国を行脚して、いろんなおいしいものを食べてきただけです」

 

「そうなんだ。いや、それは立派な食レポ経験だよ。そうだ、今度、街ぶらロケがあるんだけど、お坊さん出てみない? 話題になると思うよ?」

 

「いえ、私は修行を続けないといけないので」

 

「そう? 残念」さほど残念そうでもなさそうな口調で言った後、ディレクターはえみりに視線を移した。「えみりちゃん、さっきSNSをチェックしてみたけど、反応イイみたいよ」

 

「ホントですか!?」と、もともと美しい笑顔をさらに輝かせて喜ぶえみり。

 

「ああ。今度の()()()()()、上位に行けるといいね。応援してるよ」

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

 片づけをしていたスタッフの一人がやってきて、撤収が終わったことを告げた。ディレクターは「じゃあ、二人ともお疲れ」と言ってロケバスに乗り、帰って行った。

 

 駐車場は、たくあんとえみりの二人だけとなった。中継は終わり、たくあんもご飯を食べることができたので、普通ならここでお別れだろうが、すっかりえみりにベタ惚れしてしまったたくあんとしては、このまま別れるワケにはいかない。さて、どうしたものか。まずは撮影のお礼と称してお茶に誘い、そのままデートにこじつけてみるか。えみりを見ると、スマホを取り出して操作している。たくあんは、「あのー、えみりさん。良かったら、お礼にこの後お茶でも――」と誘おうとしたのだが。

 

「いま忙しいからちょっと待って!」

 

 さっきまでの親しみやすさがウソであったかのように、思いっきり突っぱねられた。産みたて新鮮卵のような美しい笑顔も消え、ハードボイルドエッグのような固く険しい表情でスマホをスクロールさせている。やがてその表情が落胆したものに変わり、肩を落とすと、さらに一転して、キッ! っとたくあんを睨みつけた。

 

「もう! お坊さん! これどうするのよ!」

 

 えみりはスマホの画面を見せた。ツブヤイターというSNSの画面で、さっきの中継番組の感想が並んでいる。そこには、『お坊さんマジウマそげに食うwww』や『食レポ完璧坊主』など、たくあんの食レポを絶賛するツブヤキがズラリと並んでいる。いわゆる、バズると言っていい状態だが、どれもたくあんに関することばかりで、えみりやおかかTKGに触れるツブヤキはほとんど無い。

 

「あたしよりお坊さんが目立ってどうするのよ!」

 

 さっきまでの愛嬌の良さはどこへやら、ぷりぷりと怒るえみり。あまりのギャップに驚き、たくあんはたじたじになって「スミマセン……」と謝った。

 

「ああ……こんなんじゃ、次のランキング、とてもたま(ファイブ)入りなんてできないよ」えみりは大きくため息をついた。

 

「さっきディレクターさんも言ってましたが、ランキングというのはなんですか?」

 

 たくあんが恐る恐る訊くと、えみりはまた鋭い目で睨みつけてきたので、「いえ、なんでもないです」と謝る。

 

 しかし、不意にその目が柔らかくなった。

 

「そういえば、お坊さんって、全国を巡って、おいしいものをいろいろ食べてるんだよね?」

 

「え? まあ、そうですね」

 

 たくあんがそう答えると、えみりにまた笑顔が戻った。

 

 そして、ぱん、と、手を合わせると。

 

「お願い! あたしと一緒に、みんなが喜ぶ究極のTKG、考えてくれない!?」

 

 合わせた両手を挙げ、頭を下げる。

 

「みんなが喜ぶ、究極のTKG?」

 

 たくあんは首を傾けた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。