しろめし修行僧・究極TKGでセンターを狙え!/小説 作:ドラ麦茶
「――いやぁ、始まったときはどうなることかと思ったけど、お坊さんの食レポ、完璧だったね。撮れ高モンスター級だよ。あんなの、どこで覚えたの?」
中継が終わり、スタッフが機材を駐車場のロケバスに片付け始める中、ディレクターはたくあんの食レポを絶賛した。
「そんな、完璧だなんて。私はただ、全国を行脚して、いろんなおいしいものを食べてきただけです」
「そうなんだ。いや、それは立派な食レポ経験だよ。そうだ、今度、街ぶらロケがあるんだけど、お坊さん出てみない? 話題になると思うよ?」
「いえ、私は修行を続けないといけないので」
「そう? 残念」さほど残念そうでもなさそうな口調で言った後、ディレクターはえみりに視線を移した。「えみりちゃん、さっきSNSをチェックしてみたけど、反応イイみたいよ」
「ホントですか!?」と、もともと美しい笑顔をさらに輝かせて喜ぶえみり。
「ああ。今度の
「はい! ありがとうございます!!」
片づけをしていたスタッフの一人がやってきて、撤収が終わったことを告げた。ディレクターは「じゃあ、二人ともお疲れ」と言ってロケバスに乗り、帰って行った。
駐車場は、たくあんとえみりの二人だけとなった。中継は終わり、たくあんもご飯を食べることができたので、普通ならここでお別れだろうが、すっかりえみりにベタ惚れしてしまったたくあんとしては、このまま別れるワケにはいかない。さて、どうしたものか。まずは撮影のお礼と称してお茶に誘い、そのままデートにこじつけてみるか。えみりを見ると、スマホを取り出して操作している。たくあんは、「あのー、えみりさん。良かったら、お礼にこの後お茶でも――」と誘おうとしたのだが。
「いま忙しいからちょっと待って!」
さっきまでの親しみやすさがウソであったかのように、思いっきり突っぱねられた。産みたて新鮮卵のような美しい笑顔も消え、ハードボイルドエッグのような固く険しい表情でスマホをスクロールさせている。やがてその表情が落胆したものに変わり、肩を落とすと、さらに一転して、キッ! っとたくあんを睨みつけた。
「もう! お坊さん! これどうするのよ!」
えみりはスマホの画面を見せた。ツブヤイターというSNSの画面で、さっきの中継番組の感想が並んでいる。そこには、『お坊さんマジウマそげに食うwww』や『食レポ完璧坊主』など、たくあんの食レポを絶賛するツブヤキがズラリと並んでいる。いわゆる、バズると言っていい状態だが、どれもたくあんに関することばかりで、えみりやおかかTKGに触れるツブヤキはほとんど無い。
「あたしよりお坊さんが目立ってどうするのよ!」
さっきまでの愛嬌の良さはどこへやら、ぷりぷりと怒るえみり。あまりのギャップに驚き、たくあんはたじたじになって「スミマセン……」と謝った。
「ああ……こんなんじゃ、次のランキング、とてもたま
「さっきディレクターさんも言ってましたが、ランキングというのはなんですか?」
たくあんが恐る恐る訊くと、えみりはまた鋭い目で睨みつけてきたので、「いえ、なんでもないです」と謝る。
しかし、不意にその目が柔らかくなった。
「そういえば、お坊さんって、全国を巡って、おいしいものをいろいろ食べてるんだよね?」
「え? まあ、そうですね」
たくあんがそう答えると、えみりにまた笑顔が戻った。
そして、ぱん、と、手を合わせると。
「お願い! あたしと一緒に、みんなが喜ぶ究極のTKG、考えてくれない!?」
合わせた両手を挙げ、頭を下げる。
「みんなが喜ぶ、究極のTKG?」
たくあんは首を傾けた。