主人公が女の子になるのは間違っているだろうか   作:エルフ好き

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久しぶりに描きました。書くの下手すぎて、見づらかったらごめんなさい!


一話 麦畑

 

 

様々な本が乱雑に置かれている部屋に少女はいた。細い枝のような腕で、本を捲る。左目は灰色、右目は紅色と、美しい瞳の色を輝かせる。

 

本の内容は、彼女の大好きな英雄譚だった。祖父が何度も読み聞かせてくれた、偉大な英雄の話。何度も、何度も同じ頁を捲る。

 

自分の人生の半分は本で出来ているのかもしれない。

 

そんなことを考えていたら、不意に扉が開いた。年季の入った扉は軋む音を響かせながら開く。

 

「おかえり」

 

「ただいま、ベル!」

 

「今帰ったぞ!ベル」

 

黒髪の少年と、麦わら帽子を被った祖父が帰ってきた。それにベルは表情を綻ばせながら、本を閉じた。

 

何でことのない日常。病弱な彼女にとっては本を読む時間と、幼馴染と祖父との時間が何よりの宝だった。

 

「ベル、体調は?」

 

幼馴染のラグナは、ベルの体調を気遣うように手を取る。畑仕事をしてきたラグナの掌は、どこかゴツゴツとしていて暖かい。少しだけ頬が赤く染まるのを自覚しながら、大丈夫と頷く。

 

ラグナは不思議な人だ。ベルが知らない物語を知っているし、いつも身体の心配もしてくれる。この村は100人もいないほどの、田舎だ。だからこそラグナとは自然と仲良くなり、今では家族同然の仲だ。

 

でもラグナの雰囲気は、どこかおかしかった。それに疑問を持った時、ラグナは口を開いた。

 

「なあ、ベル」

 

「どうしたの?」

 

「俺は……オラリオに行こうと思う」

 

「────!?」

 

その時の表情を言葉で表すのは無理だろう。驚き、怒り、悲しみ、様々な感情がグルグルと回り出した。

 

「な、なんで……?」

 

「お前のためだ」

 

「ぼ、ぼくの……?」

 

「ああ。お前の身体を治す方法を探してくる」

 

その真剣な表情からは、決意を感じた。ベルは弱々しい表情を浮かべる。

 

ずっと一緒だったラグナが離れる。世界の中心と呼ばれるほどの大都市に。ラグナは冒険者になるつもりだと、ベルは即座に気付いた。

 

だからこそ想像してしまう。彼が怪物に食われる姿を、冒険者によって殺される姿を。冒険者になったら戦場は当たり前だ、死ぬなんて日常に近い。

 

「ぼくは、身体治らなくていい!」

 

「ベル……」

 

「今のままがいい!ラグナと、お祖父ちゃんと、三人で暮らしていたいよ!」

 

畑仕事で、夕方まで働く二人。料理を作って二人を待つベル。三人で食卓を囲み、何でもない話で笑い合う。

 

正にあたたかい家族の日常。それが無くなるのは嫌だ、ベルは頬を濡らした。

 

それを見てラグナは、口を閉じる。

 

そこで黙って話を聞いていた祖父が、ベルの肩を叩いた。

 

「ベル、それならお前も行くか?オラリオに」

 

「ジジイ!?」

 

「……お祖父ちゃんは?」

 

「儂は、この家を守らないといかん。ベル、お前が決めろ。ラグナに付いて行くか、行かないかを」

 

祖父は今までにない表情でベルに問う。つまりは祖父と共に暮らすか、ラグナと共に暮らすか。その二つの選択肢に、ベルは目を瞑る。

 

祖父のことは好きだ、読んでくれた英雄譚は全て記憶している。唯一血の繋がった家族だ、だから大切にしたい。

 

でも身体を治して、ラグナと二人で暮らして、いつかは本当の家族になれるかもしれない。そう考えるとベルは、自然と口を開いていた。

 

「────ラグナについていく」

 

「そうか。ベル、よく決断した。流石は儂の孫じゃ」

 

祖父はベルの選択を喜んでいるようだった。頭をゴシゴシと撫で、豪快に笑う。それにラグナは呆れながらも、受け入れているようだった。それに安堵しながら、自然とベルは笑みを浮かべた。

 

ようやく、時計の針が動き出したような。そんな気がした。

 

 

⬛︎

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ……」

 

視界に広がる麦畑に、げんなりとしながら溜息を吐く。この麦畑ともお別れになることに喜び半分、悲しさ半分と言ったところか。

 

気づいたら、転生していた。何で死んだのか、何度も思い返してみるが、そこだけが空白だ。まあ、死因なんてどうでもいいか。問題はこの世界についてだ。

 

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

 

主人公のベルが、仲間達と出会い成長していく王道ストーリー。俺も何度も読み返すほど大好きだったが、転生して気付く。この世界結構終わってる。

 

迷宮都市以外の場所では怪物に殺されるなんて当たり前だし、都市では冒険者に殺されることもあるし。なんなら、『黒龍』とかいう化物いるし。その化物殺さないと、世界は救われないとか終わってるし。

 

そして更に問題が発覚したのは、俺が3歳の頃に村に来たベルを見た瞬間だ。まず、瞳の色が違う。紅い瞳と、灰色の瞳。そしてどこか苦しそうな表情。

 

そこで気付いた、ベルの母は病弱だったことに。それを運悪く受け継いだのだろう。

 

気づいたら俺は気絶していた。いや無理もないと思うよ、だって主人公がTSしてるなんて考えられん。

 

そしてベルが病弱だと何が起こるか、まず寿命。ジジイから聞いた話によると、ダンジョンの70階層以降に『秘薬』と呼ばれる物があるらしい。それがあれば完治する可能性がある。

 

あくまで、可能性の話だが。

 

正直に言おう、無理だ。

 

あの成長レベルEXのベルくんで、ようやく深層だ。70階層以降に行ける実力を手に入れるには、ベルくん以上の成長が必要だ。

 

終わった。

 

いくらなんでもハードコアすぎる。しかも『黒龍』討伐までやらないと世界は終わる。

 

でも、一応希望は残っている。

 

それはベルくん、更なるチート説だ。今のベルは正直に言って、アルフィアと似ている。才禍の怪物と呼ばれる彼女の才能を、持っていたとしたら。

 

「……はは、はぁぁぁぁ」

 

それでも病弱なベルを戦わせたりはしたくない。出来れば俺一人で、冒険者になろうと思っていた。本当はもっと早い時期に行きたかったが、仕方ないだろう。暗黒期に都市に行く馬鹿はいない。

 

なぜ、今だったかと言われれば。爺さんから相談を受けたからだ。

 

『ラグナ、聞け』

 

『な、何かあったのか……』

 

『いいか、儂はここを出て行かなきゃならん。ヘラが近づいてきおる……』

 

『え、でも。ヘラ様にもベルをお願いしたら……』

 

『ラグナ!?そんなことをしたら儂が死ぬだろうが!』

 

『それは、村の人間にセクハラをするジジイのせいだろ』

 

とまあ、こんな風に。爺さんはちょうどいいと、オラリオにベルを連れていけと言ったが。俺は連れて行きたくないため、爺さんと命賭けの神拳(ジャンケン)が行われた。

 

中々に熱い戦いの末、俺は勝った。

 

まあ結果的にベルを連れて行くことになったが、仕方ないだろう。それにアミッドさんとかに、ベルの容態見てもらってもいい。

 

「……あとは、俺の才能次第かな」

 

畑に別れを告げ、俺は坂道を歩いた。丘の上で俺を待っているベルを見て、拳を握り締めた。

 

 


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