プロローグ
もう随分長いこと歩いてきた。
その切っ掛けは些細なことであった。
魔界の王ミルドラースを倒してから一年ほどたったある日のこと―――
僕はグランバニア城の中庭に“何か”を見つけた。
何かの歪み、空間の捻じれだろうか?
自分の記憶の中にあるもので、それは“旅の扉”に一番近い。
“旅の扉”――― それは遥か遠くの地、時には異世界にさえ渡ることができる古代の装置。
だが不完全だ。安定もしていない。どこかへ転移することなど到底できないだろう。
勿論、皆に相談した。妻に、息子に、娘に、叔父のオジロンに、従妹のドリスに、父の代から仕えてくれているサンチョに……。
だが誰も見えない。触れることもできない。認識することさえできないのだ。
ひょっとすれば悪いものではないか? 僕の不安は日に日に増していった。
そして―――
それに触れた。好奇心だった。今思えば愚かなことをしたと思う。
その瞬間世界が反転して……
僕は異世界にいた。
―――――――――――――――――――
何故、僕にしかあの“何か”を見ることができなかったのか。
異世界に渡ってようやく思い至った。
僕の母、マーサには不思議なチカラがあった。
そのチカラは魔界に通じるモノで、そのチカラがあったために母は僕が赤子の頃に攫われた。
母の一族、エルヘブンの民は神から“門”を司るチカラを与えられていたという。
エルヘブンの一族の中でも母のチカラは歴代の巫女の中で尤も優れていた。
僕にはそのチカラは引き継がれていないと思っていたのだが―――
どうやら突然目覚めてしまったらしい。
本来なら誰にも影響を与えないであろうごく小さな空間の歪み、それを見つけ出し“門”としてくぐるチカラ。
世界を救った今、そんなチカラに目覚めたくもなかったのだが―――
異世界に渡った後、元来た“歪み”を再び探したのだが周辺には存在しなかった。
元々小さな“歪み”であったことと、チカラを使って強引に渡ったために消えてしまったのだろう。
そうして再び僕の旅は始まった。
元居た世界に戻るために―――、そして愛する家族と再会する為に―――。
――――――――――――――――――
僕にだけ見える“空間の歪み”
それを見つけ出すのは困難を極めた。
多くの人々と出会い、そして別れた。
見たこともない魔物と戦い、そして倒した。
倒した魔物達の中から起き上がり、仲間になった魔物もいた。
苦しんでいる人々を見つけ、そして救った。
そして、旅の果てに―――
“歪み”を見つけた。
喜びのあまり小躍りした。
やっと帰れる!! そう思うと歓喜に打ち震えた。
そして迷うことなく触れた。
―――――――――――――――――
たどり着いたのは別の異世界だった。
そうと分かった時には絶望した。たぶん妻と一緒に石にされた時と同じくらいかと思う。
だけど、きっとどこかに元の世界に通じる“門”がある―――
無理矢理心を奮い立たせて前に進む。
それからはその繰り返しだった。
石にされた時との違い、それはしたいことができるということだった。
目の前に苦しんでいる人がいれば助けることができる。
助けた人々に感謝されることは純粋に嬉しい。
それに発見の喜びもある。
全く知らなかった呪文、見たこともない魔物、未知の技術。様々な職業。
それに、有翼の少年を魔物使いの弟子にしたこともある。
砂漠の世界、海洋の世界、氷の世界、更には空中大陸の世界などもあった。
そして―――、
「ようやくこの世界でも“歪み”を見つけることができたか……」
“歪み”を確認しながら呟く。
「少々名残惜しいが、この世界ともおさらばか………」
僕は決心すると“門”をくぐった。
――――――――――――――――――
「違うな」
匂いで分かった。文明が発達した世界特有の「淀み」がある。
まあ、我慢できない程ではないな……。少々違和感は覚えるが問題はないだろう。
周辺にある設置物から判断して、文明の発達度合いでいえばかつてバトルGPとやらが行われていた世界と同程度だろうか?
あの世界のぱそこんとやらを覚えるのには苦労したが……
かつて行ったことのあるムー帝国程ではないだろう。
夕暮れ時、どうやら広場らしい。
平和な世界だといいが……。ん、これは殺気か? かなり高い魔力を感じる……っ!!
その先には―――
漆黒の翼を持つ少女が青年に光の槍を向けていた。
砂漠の世界、海洋の世界、氷の世界、更には空中大陸の世界:「ドラゴンクエストモンスターズ2」より。主人公のイル・ルカが旅をする世界。
ムー帝国:漫画「ロトの紋章」より。劇中の一万二千年前に海へと沈んだ超大陸に栄えた国家。高度な文明を誇っており、魔法力を基礎に時間と空間を自由に操って発達した超時空都市。
「有翼の少年を魔物使いの弟子にしたこともある。」は「ドラゴンクエストモンスターズ+」という漫画からです。 途中で打ち切りになりましたが再開しないかなぁ……。
※この小説はドラゴンクエストシリーズと「ハイスクールD×D」のクロスオーバー小説で、主人公は「ドラゴンクエストⅤ」の主人公です。
そのことで注意していただきたいことがあります。DQをプレイされたことがある方なら当然御承知のこととは思いますが、DQの主人公はFFシリーズなどと違い、原則的に はい/いいえ 以外に喋りません。
ですので、この小説の主人公の性格などは作者のイメージが多分に含まれています。
それが皆様の「DQⅤの主人公像」と違うという場合は、どうか御了承願います。