14話 使い魔
「おや、奇遇だね」
満月の夜の不気味な森、住まいのアパートがある街から遠く離れたこの地で知人に出会った。
いや、正確に言えば知悪魔か。男性が二人に女性が三人、いずれも年若い少年少女達だ。
「リュカさん……こんばんはッス」
イッセーくんが僕に挨拶した。
リアス、ヒメジマ、トウジョウ、キバとも同様に挨拶を交わす。
「ところでどうしてこんな所にいるんだい?」
「使い魔を探しに来たんスよ」
「……使い魔?」
使い魔は悪魔にとって基本的なもので、主の手伝いから、情報伝達、追跡など、臨機応変に扱える契約した魔物のことらしい。
僕もたくさんのモンスターを仲間にしてきたが“契約”というのはしたことが無いから実に興味深い。
「リュカさんはどうしたんスか?」
「僕もバイサーに言われたんだよ。ここには色々な魔物がいるから“仲間”にしてくればいい、ってね」
バイサーには何か思惑があったみたいだが、それが何かは分からなかった。
「ゲットだぜ!」
「きゃっ!」
「だ、誰だ!」
近くの木の上から突然声がしてきた。声の主は剽悍な風貌の青年だ。
「俺の名前はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だ!」
「ザトゥージさん、例の子たちを連れてきたわ」
どうやら、リアスの知り合いらしい。ザトゥージと名乗る青年悪魔はイッセーくんとアーシアを見る。
「へえ。さえない顔の男子と金髪の美少女さん。OK! 任せてくれ! 俺にかかればどんな使い魔でも即日ゲットだぜ!」
「彼は使い魔に関してのプロフェッショナルよ。今日は彼にアドバイスをもらいながら、この森で使い魔を手に入れるの」
使い魔のプロフェッショナル……謂わば同業者ということになるのだろうか。
“魔物使い”と“使い魔マスター”、もし同じものなら是非、この世界の魔物について教示を賜りたいものだ。
「さて、どんな使い魔がご所望かな? 強いの? 速いの? それとも毒持ちとか?」
「いきなり毒持ちとか危険極まりないこと言わないでくださいよ。で、どんなのがオススメですかね?」
「俺のオススメはこれだね! 龍王の一角―――『天魔の業龍』ティアマット! 伝説のドラゴンだぜ! 龍王唯一のメスでもある! いまだかつてゲットされたことはないぜ!
なんでも魔王並みに強いって話だからな!」
彼が示したのは
お友達にはなったが、仲間にはしなかった。
何故なら、なぜか魔法の筒に入らなかったからだ。
その代わりにベルの様なものをくれた。
どこかで見たことがある物に非常に良く似ている。
「あの、こんな最初からクライマックスな使い魔はいいんで、もっと捕まえやすくて友好的なのいませんかね?」
「ハハハ! そうか、ならこれだ! ヒュドラ!」
イッセーくんが他のオススメを尋ねる。
ザトゥージが次に示したのはさっき新しく仲間になった多頭の蛇と同じ種族だ。
「こいつはスゴいぞ! 猛毒だ! どんな悪魔もこいつの毒には耐えられない! しかも不死身! 主人も毒殺する最悪の魔物だ! な? 有効的だろ?」
ああ、確かにその毒は強力だった……キアリーで解毒できたが。
イッセーくんに譲ってあげようか。
「いや! そういうんじゃなくて!? そうッスね、かわいい女の子系とか……」
ヒュドまる はいらないらしい。
女の子系? カカロンとかクシャラミなら召喚できるが―――
「かぁ~、これだから素人はダメなんだぜ! いいか? 使い魔ってのは強くて自身の欠点を補ってナンボだ。それに真の使い魔マスターを目指すなら同じ種類の雄牝を何匹かずつ捕まえる。その中から強いのを選びその二匹を交配させ……」
「―――もういい」
彼の話を黙って聞いていたが、我慢できなくなり途中で遮る。
「君の言うことは一面では正しい。僕がこれまで行った世界でも、魔物同士を配合し、より強い魔物を生み出すことが盛んな世界もあった。だが、君は大事なことを忘れているよ」
「……大事なこと?」
「それは“絆”だ。人と魔物……もとい悪魔と魔物の絆がなければ、どんなに強い使い魔も無意味だ。真の使い魔マスターなら、強い使い魔ではなく好きな使い魔で勝てるよう努力すべきだ」
僕の考えを話し終えた。
すると、ザトゥージは目に涙を浮かべた。
「……そ、その通りだったぜ……。使い魔マスターを目指して幾年……、そんな大事なことも忘れちまってたとは……、情けないぜ」
「しかし君には熱意がある。その熱い心を忘れなければ、いつか真の使い魔マスターになれるさ」
しばらく歩いて―――
そこは不気味な森にあって、神聖な雰囲気が漂う泉に着いた。
「この泉にはウンディーネという水の精霊が住み着いているんだぜ!」
「おお、水の精霊! 名前からして恐らく……未来のハーレム王として側に置きたい、耳かきと称して膝枕させて、そしてそっと手を伸ばし、その神秘に溢れてやまないお、おっぱいを……はぁ……はぁ……!」
なにやら、良からぬ妄想をしているらしい。
そんな邪な思いでは仲間になるものもならない、そう言おうとしたとき―――
「い、泉が!」
泉が輝き始めて―――
「フゥゥンガアァァァッ!!」
現れたのは筋骨隆々とした、女性型の魔物だった。
「あれがウンディーネだぜ!」
「いやいやいや! あれはどう見ても水を浴びに来た格闘家ですから!!」
「運がいいぜ、少年! アレはレア度が高い! 打撃に秀でた水の精霊も悪くないぜ!」
「悪い! あれじゃ癒し系というより殺し系じゃねえか!」
「でもあれは女性型だぜ?」
「最も知りたくない事実でした……」
何が気に入らないのだろうか?
すると、もう一体のウンディーネ(こちらも同じくらい体格がいい)が現れた。
そうして、先にいた個体と戦い始めた。
ガキッ! ゴスッ! ベキッ!
壮絶な肉弾戦だ。
イッセーくんは完璧に引いている。
死闘の末に先にいた方が敗れた。
これから彼女はどうなるのだろうか―――自然の摂理とはいえ、何だかやりきれない気持ちになる。
「イッセーくんは仲間にしないのかい?」
「しませんよ!!」
「そうか……」
そっと、敗れて地に伏したウンディーネに近づく。
「残念だったね……。ところで、僕の仲間にならないか?」
「ナニ? 同情ナドイラン」
「同情……。確かにそうだ。僕は君に同情している。住処を追われ、取り戻すために辛く苦しい鍛錬をしなくてはならない、それも一人でだ。
一人で戦うことの辛さは分かるつもりだ。なら、一人より二人がいい。
君の苦しみを思うと、僕が辛い。僕を助けると思って、仲間になってくれないか?」
「オマエヲ助ケル……。ワカッタ、仲間ニナル」
ディーネが 仲間に なった!
「今、戻った……。どうしたんだい?」
「……イヤ、何でもないッス……」
イッセーくんはとんでもないものを見た、という顔をしていた。
一方、アーシアさんは感動で泣いていた。
「スゴいです! あんなふうに敗れて傷ついた女の子を救ってあげるなんて尊敬します!」
「たいしたことではないよ……。相手を思いやる気持ちがあれば誰にでもできることだ」
そう、誰にでもできること―――それなのに実践する人は少ない。
皆がそうすれば、きっと皆が豊かになる、その筈なのに。
また、しばらく歩いて――――
「待て、見ろ!」
「ドラゴン!?」
「あ、かわいいです!」
「
蒼雷龍、何だかどこかで見覚えがある……ああ、さっき仲間にしたスプろうの小さいやつか。
もしかしたら、スプろうの子供かもしれない。
「これはかなり上位クラスですね」
「私も見るのは初めてだな」
「僕も見たのは、さっき仲間にしたやつに続いて二匹目だな」
「―――え?」
「ゲットするなら今だぜ。成熟したなら手に入れるのは無理だからな」
そうなのか。だとするなら、さっきのもまだ子供なのだろう。
全長は15mぐらいだがまだ成長するのか。
異世界で仲間にした“あの龍”ぐらいになるのかもしれない。
「イッセーくんは赤龍帝の力を持ってますし、相性はいいんじゃないかしら?」
「成る程、よし!
イッセーくんがヒメジマの提案を受け、蒼雷龍を仲間にしようとしたとき、急に上から何かが降ってきた。続いて林から蔦が伸びてくる。
「きゃあああ!!」
アーシアが悲鳴を上げた。彼女の全身に緑色のスライム(?)がへばり付いている。
彼女の側にいたキバくんにも襲い掛かり、目の辺りにへばり付いて彼の視界を遮っている。そういうところを見ると、この魔物たちは意外に賢いのかもしれない。
「ふ、ふおおおおお!?」
「あらあら、はしたないですわ」
リアス、ヒメジマ、トウジョウにも緑色の生物が纏わりつき、蔦が巻きついている。
よく見ると三人の衣服が溶け始めている。
強い酸でも出しているのだろうか?だとしたら三人が危ないが、皮膚が溶けている様子はない。
「……見ないでください」
「ごふっ!?」
イッセーくんがトウジョウに殴られた。見ない方がいいらしいが見ないと助けられない。
どうしたものか――――
「こいつには名称は特にないが、衣服を融かす特性を持つスライムだ。
それとただの触手だな。こいつらはよくコンビを組んで獲物を襲うんだ。
獲物って言ってもスライムは衣類、触手は女性の分泌物目当てで、目立った害はないんだが……」
なかなか、珍しい特性だ。先に装備品を破壊するとは……。
ダンジョンのトラップとして配備し、勇者の防具をダメにする――エビルマウンテンなどにそうした罠がなくて良かったと安心する。
「珍しいスライムと触手でもないが、森の探索中には迷惑な生き物でね。こういうのは火の魔力で一気に蒸発させるのが一番なんだが……」
「部長、俺はこのスライムと触手を使い魔にします! 服を融かす! 女性の分泌物を食べる! 俺の求めていた人材です」
うん、良いんじゃないのかな! スライム族には伸び代がある。鍛えれば意外に強くなるかもしれない。植物系モンスターも状態異常に強く安定性が高い。悪くない選択だ。
それに、僕が初めて“戦闘”で仲間にしたのはスライムのスラりんだ。
そんなことを思い出してしみじみとした気分になった。
だが、リアスたちは気に入らなかったらしい。
「あのね、イッセー。使い魔は悪魔にとって重要なものよ? ちゃんと考えなさい!」
「分かりました」
返事をしたイッセーくんは考える仕草をした。一瞬だけ。
「やはり、使い魔にします!」
「イッセー、考え込む姿勢になってから三秒も経ってないわよ」
「嫌だい! 嫌だい! 俺はこのスライムと触手を使い魔にするんだい。俺の求めていた奴らなんです! こいつらを使って俺は羽ばたきたい! 上を目指していきたい!」
そうこうしている内に、三人はスライムと触手を振り払い、リアスは消滅の魔力で、ヒメジマは雷で、トウジョウは素手で攻撃しようとし、イッセーくんが彼女達からスラ太郎と触手丸を庇おうと前に出る。
「うぅ、スラ太郎ぉぉぉ。触手丸ぅぅぅ! 俺の大切な相棒達は絶対に守ってみせる!!」
「あらあら、もう名前までつけているのですね」
「……このスライムと触手をここまで渇望する悪魔は初めてだよ。驚くことばかりだ。世界は広いな、グレモリーさん」
「ゴメンなさい。この子欲望に正直な子だから、時々暴走するの」
「止めなさい」
ピタッ!
僕が宥めると、蔦とスライムが動くのを止めた。
「よしよし、物分かりのいい子たちだ。お腹が空いていたんだね?」
袋から魔物の餌を取り出してそれを与える。触手もスライムも魔物の餌に喜んで食い付く。今がチャンスだ。
「さあ、イッセーくん。契約を―――」
「「「ダメよ!!!」」」
女性陣の声がハモッた。
因みにアーシアは蒼雷龍の子供を使い魔にし、「ラッセー」と名付けた。
イッセーくんの収穫はゼロだった。
◇
それから数分間、何故かリアスから説教を受けた。
曰く、悪魔にとって大事な使い魔にあんな生き物を勧めるとは何事だ、とか
少しは空気を読め、とか―――
「ああ、わかった。スラ太郎と触手丸は僕が引き取る。それでいいんだね」
「そんなぁ~、俺のスラ太郎と触手丸ぅ~……」
「ゴメンね……でもリアスさんのお願いだから。スラ太郎と触手丸は僕が責任を持って幸せにするよ」
翌朝
「何コレ?」
「ああ、新しい仲間で名前は―――」
「「「「「捨ててこい!!」」」」」
アパートが触手とスライムまみれになって皆からすごく叱られた。
「捨てるのは勘弁してくれ! 何とかするから!!」
僕は袋からとある物を取り出した――――
それと、バイサーはゴミ出し用の使い魔が欲しかったらしいが、ディーネが手伝うようになって少し楽になったらしい。
キアリー:Ⅱ以降に登場する、味方一人の毒、猛毒状態を治療する呪文。
魔物のエサ:Ⅴ、Ⅶ、モンスターズ1、2、テリワン3Dに登場する道具。効果はにおいぶくろ(フィールド)+行動封じ(戦闘中)。戦闘中の場合、地味にゴンズに効く。
ティアマットは私が真性ビビりである為に「この後、原作で出てきたら矛盾するなぁ……」という考えから出せませんでした。