時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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前回の番外編の続きです。
次回から2巻になります。


15話 転身と再会

 

「きれい……。これはなぁに? 御主人様」

 

 

 僕が袋から取り出した光り輝くハート型の物体。それは“モンスターの心”だ。

 かつて訪れた異世界の一つ―――そこで、発明家の老人から「ハートゲッター」なる品を貰った。何でも、その老人は純粋にモンスターへの好奇心からこの装置を作ったらしい。その正体はモンスター達から“心”を貰える機械だ。

 しかし、懐いたモンスターからのみではあるが。

 

 僕は魔物に懐かれることが多い。

 だが、全ての魔物が仲間になってくれる訳ではない。彼らにも子育てや狩りなどの事情があるのだろう。

 そうしたとき、“心”を置いていってくれるのだ。

 

 やがて袋の中が“心”でいっぱいになった。

 しかし、何に使えばいいのか分からない。せっかく貰った“心”をどうすれば良いのか、全く見当もつかなかった。

 

 それからしばらくして、また別の世界に渡ることとなるのだが……

 その行き着いた世界にあったダーマ神殿の神官をしていた蒼髪の少女にある秘技を教わった。

 それが“転身”である。

 

 転身―――二つのモンスターの心を用い魔物を別の種族に変えてしまうという、まさに秘術

 

 その少女神官の元での血の滲むような研鑽を経て、ようやく会得することができた。

 

 

 

「…………へぇ……」

 

 

 自身に起きた出来事をバイサー、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルトに話したが、彼女たちはポカンとしている。

 話が突飛過ぎて、あまり良く理解できなかったらしい。

 

 

「え~っと……、ともかく、だ。今からスラ太郎と触手丸を転身させる。君たちはスラ太郎に服を溶かされたり、触手丸に絡まれたりするのが嫌なんだろう? でも、それは“転身”で無くせることだ」

 

「分かったわ。じゃあ、そうしてちょうだい」

 

 

 レイナーレが一同を代表して答えた。

 僕はスラ太郎と触手丸に向き直る。

 

 

「では、スラ太郎、触手丸。この中から二つずつ選んでくれ」

 

「マッテクレ」

 

「ディーネ……どうしたんだい?」

 

 

 今まで黙って話を聞いていたディーネが間に割り込んで来た。

 

 

「ソレ、ヤルト強クナレルカ?」

 

「う~ん……、たぶん……そうなると思うけど」

 

 

 転身を繰り返すことで、ただのスライムがゴールデンスライムになったとか、ただのドラゴンが神龍になるまで至った、などとも聞き及ぶ。

 

 

「ナラ、オレモシタイ。モット強クナリタイ」

 

「別にいいけど……」

 

 

 ディーネの申し出も受け入れ、いくつもの“心”を並べて見せる。

 やがて、三体とも二つずつ“心”を選んだ。

 

 

 「では、始めるよ」

 

 

 三体の仲間たちに、それぞれが二つずつ選んだ“モンスターの心”を、その魂魄に交わらせる。

 スラ太郎、触手丸、ディーネの肉体が、まばゆい光の渦に溶けていく。

 

 さて、どんなモンスターに転身するのだろうか。

 

 スラ太郎はバブルキングとかがいいな。触手丸はローズバトラーあたりか……。ディーネはグラコスとかのパワー系がふさわしいと思う。

 

 そんなことを考えている内に、三体の肉体が再構成され始めた。

 

 そして―――

 

 

 

 

  スラ太郎 は スラ忍ピンク に転身した!

 

  触手丸 は ローズダンス に転身した!

 

  ディーネ は 水の精霊(Ⅶ) に転身した!

 

 

 

 緑色のスライムは、桃色の忍び装束を身に纏い、エンゼルスライムを摸したヘルメットを被った少女に―――

 

 蔦だけしかなかった魔物は、赤いバラと妖艶な美女が合わさった姿の魔物に―――

 

 筋肉質で大柄なウンディーネは、下半身は魚で、上半身は白磁のような肌を豪奢な衣で覆った神秘的な美女に―――

 

 

「やったよ! 御屋形サマ♪

 人型になれたんだ。 これで、もっといっぱい可愛がってもらえるね♡」

 

「ふむ……。ワタクシも人型に近い魔物になれたようです。これからは女の分泌物ではなく……。殿方の、いえ、主さまの精〇で栄養が摂取できますね♡」

 

「オオ、コノ体ハ……。イママデ、ニガテダッタ魔法モツカエソウダナ。 ソレニ、ツヨクナルタメニ女ハステテタガ、コレナラ雄ト……オマエト子作リデキルナ♡」

 

 

 

 

「……………」

 

「「「どういうことなのかしら……?」」」

 

 一人の悪魔と、三人の堕天使が鬼のような目で睨みつけてくる。

 僕にも何が何だか分からない。

 う~ん……ディーネは分かるんだが……。スラ太郎と触手丸は―――

 

 

「君たち♀だったの?」

 

「「はい♪」」

 

 

 ……き、気付かなかった……。

 でも一応、転身は無事終了だ。レイナーレたちに御伺いを立てることとしよう。

 

 

「ま、まあ……、これで一緒に暮らせるだろう?」

 

「「「―――ちっ」」」

 

 

 ……何でそんなに怒ってるのかな……? ま、いっか……。

 何はともあれ、こうしてスラ太郎、触手丸も無事に受け入れられた。

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――

 

 

 

 

「いくにょ! メラッ!」

 

「ギャオオオオォォォッ!!」

 

 

 今日もミルたんを呼んでいる。

 メラとギラを使えるようになった彼を実戦形式の戦いで鍛えることにしたのだ。

 対戦相手は先日仲間にした ジュラすけ だ。

 

 バイサーの話では ジュラすけ は地龍の一種で、この世界では恐竜とも言われているらしい。

 僕の知識にある中ではダッシュラン系の魔物に近い。

 育てばかなり大きくなるらしいが、今はそれ程でもない。せいぜい8mぐらいだ。

 

 

 

 

 

 そこから少し離れた場所で――――

 

 

「御主人様は何をしているの?」

 

「ああ、元居た世界に残してきた仲間モンスターたちを呼びだそうかと思ってね……」

 

 

 世界を隔てている壁を乗り越えて、異世界から魔物を召喚するのは難しい。否、不可能と言えるレベルだ。

 だが、僕には母の血が流れている。そしてこの世界で新たに得た知識。様々な異世界を 渡って得た強力なアイテム。

 

 それらを合わせれば―――

 

 

「御屋形サマの御家来衆か~……。どんな方々なんだろ~?」

 

「ワタクシも興味がありますね」

 

「オレモ興味アル。ツヨカッタラ戦イタイ」

 

 

 転身した魔物である彼女たちも興味があるらしい。

 バイサーたちと共に覗きこんでくる。

 

 皆の前で魔法陣を書いていく。

 基調(ベース)はこの世界の悪魔の召喚陣、そして昨日見た使い魔の召喚陣だ。

 それに、異世界で学んだルーンの秘文字を付け足す。

 

 触媒に使うのはルラムーン草、ルーラストーン、時の砂、そして世界を渡ると言う神鳥レティスの羽―――

 

 よし、理論的にはこれで上手くいくはず!

 

 

「来い―――――ッ!」

 

 

 魔法陣を発動させる。

 そして、袋からある物を取り出した。

 

 

  プオォ――――――!!

 

 

 

 バロンの角笛―――遠地から馬車を呼びだす力を持つ魔法のアイテム

 

 それを魔法陣に向けて盛大に吹き鳴らす。

 

 

 

  バアァーーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 魔法陣が凄まじい光を放つ。視界が一時的に真っ白になる。

 そして、その閃光が止んだ先には――――

 

 

 

「ピキッ?」

 

「ガロロロロロ……?」

 

「これは一体……」

 

 

 

 青い小さな生き物が―――

 

 赤い鬣が生えた大きな豹が―――

 

 緑色のスライムに騎乗した騎士が―――

 

 

 

「スラりんッ! プックルっ! ピエールっ! やっと……、やっと会えた!!」

 

 

 ―――その姿が目に入った瞬間、僕は堪らず三体を強く抱きしめた。思わず目元が潤む。

 

 

「ピキキー!?」

 

「ガロロロ」

 

「リュカっ!?」

 

 

 自分にとっては元居た世界の仲間たちとの、おそらく数年ぶりの再会であった。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

「そうか……そちらではたったの三週間か……」

 

「“たったの”ではありません! 我々は必死になって探していたのですよ?」

 

 

 ピエールたちから聞かされた話だと元の世界では僕が行方不明になって、まだ三週間しか経っていないらしい。僕の体感ではもう数年は経ったと思っていたが、どうやら世界ごとに時間の流れが異なるようだ。

 

 そういえば、行った異世界の一つに、元の世界の大昔だと考えられる世界があったな……。

 

 エンドール王国―――確か大昔に滅んだという国の名だ。それなのにその世界ではとても栄えていた。

 もしかすれば、元の世界に戻っても何百年も過ぎている可能性もあるようだ。……そこは運次第か。

 

 

「ともかく、無事で何よりです。今は何をされているんです?」

 

 

 ピエールが尋ねてきた。

 

 

「……そうだね。仲間を育成したり人助け……いや、悪魔助けかな? それをしたり……」

 

「仲間とはこの方々ですかな? 初めまして。私はピエールと申します。こちらは、プックルとスラりんです」

 

「ピキキーッ!」

 

「ガルルル」

 

 

 僕の元の世界での仲間たちを見て、スラ太郎、触手丸、ディーネは元気よく挨拶する。

 

 

「初めまして♪ スラ太郎でぇーす」

 

「ワタクシは触手丸です。以後お見知りおきを」

 

「オレハ ディーネ ダ。ヨロシク」

 

 

 一方、バイサー・堕天使たちは――――

 

 

「――――えっ? 何コレ………」

 

「その獣はまだ分かるが、その青色の珍妙なやつは何だ。御主人?」

 

「ちょっと期待ハズレっすよォ~」

 

「そんな奴らを呼びだすのにこんな大掛かりなことをしたワケ?」

 

 

 四人の表情は微妙だ。特にスラりんが気に入らないらしい。

 

 

「いいかい? スライムを笑う者はスライムに泣くよ」

 

 

 そう忠告しても―――

 

 

「何処の異世界の言葉? でも所詮スライムでしょ」

 

 レイナーレが小馬鹿にするように言った。どうやら完全にスラりんを舐め切ってるようだ。

 プックルを除けば最も古い付き合いのスラりんを、ここまで馬鹿にされては少々腹立たしい。

 それに敵を見た目で判断するのはあまり良くない。

 彼女たちには少し灸を据えた方がいいだろう。

 

 

「分かった。だったら腕試しだ。君たち四人でスラりんと戦ってみなさい」

 

「幾らなんでも私たちを馬鹿にし過ぎよ」

 

「レイナーレ様に同意見だ」

 

「ウチもっす」

 

「堕天使と同意見ってのも癪だけど、私も」

 

 

 なかなか乗ってこない。それなら……

 

 

「あぁ……、だったら、もし君たちが勝てたら、僕ができることであれば何でもしてあげよう……。それならどうだい?」

 

「えっ? 何でも!?」

 

「御主人と!?」

 

「何でも!?」

 

「していいの!?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 物凄い勢いで食いついてきた。皆、目の色が変わっている

 

 たぶん、異世界の秘術を教えろ、とか言うのだろう……。それなら仮に負けても問題はないが。

 

 

「ああ、それでやるかい?」

 

「ええ、勿論よ!! 御主人様と……ウフフフ♡」

 

 

 バイサーが代表して答えた。

 堕天使三人もやる気を出したらしい。

 

 

 

 

「よろしい、――――では、始め!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――五分後

 

 

 

 

 

 悪魔一人と、堕天使三人が地面に倒れ、伸びていた。

 

 思っていた通り、ほとんどスラりんのワンサイドゲームだった。

 堕天使三人娘の光の槍は硬化魔法(スクルト)でかすり傷しか与えることができず、その与えた傷も瞑想で立ちどころに回復され、混乱魔法(メダパニ)で錯乱したミッテルトがレイナーレにパンチをかまし、灼熱の炎でバイサーとカラワーナが黒焦げになった。

 

 

「流石、御屋形サマの家臣! 私も早く追いつきたいですぅ~」

 

「ええ、凄かったですわね」

 

「オレモ、アノグライ強クナリタイ」

 

 

 観戦していたスラ太郎たちが歓声を上げた。

 

 

「いった~。よくもやったわね、ミッテルト!」

 

「ひえ~っ! ゴメンなさい、レイナーレお姉さま!」

 

「……強い、強すぎる……!?」

 

「もうっ、こんなの詐欺じゃない! 御主人様の鬼!悪魔!」

 

 

 敗れた四人は口ぐちに文句を言う。

 

 

「アハハ……何だかゴメンね。でも、(スラりん)も初めからこんなに強かった訳じゃない。寧ろ、君たちよりずっと弱かった」

 

「本当に?」

 

 

 レイナーレが信じられない、といった口ぶりで囁く。

 

 

「ああ、だから君たちが彼と同じだけの研鑽を積めば、今の(スラりん)以上になれる」

 

「リュカ……。分かったわ、やってみる」

 

「ピキキーッ!!」

 

 

 スラりんが怒ったように言う。そう簡単に追いつかれてたまるか、と――――――

 

 

「フフッ……悪かったね。でも、プックル、ピエールにも聞いて欲しい。確かに、君たちは強い。極限まで鍛えられ、種族の限界にまで達している。だが、僕は異世界で色んな術を学んだ。それらを用いれば、君たちをもっと強くできる。また、修行の日々になるけどやってみるかい?」

 

「ピキキーー!?」

 

「ガルッ!?」

 

「本当ですか!? ……勿論、お受けします!」

 

 

 皆の向上心は素晴しい……! 僕も負けてはいられないな。もっと頑張らねば!

 

 ふと目をやると―――

 

 

「ギラにょぉぉぉ!!」

 

「ギャオオオオオ!?」

 

 

 ミルたんがジュラすけをギラで吹っ飛ばしていた。

 

 

「勝ったにょ!」

 

「…………とんでもないな」

 

 

 

 




転身:キャラバンハートの基幹的なシステム。前モンスターズシリーズの配合の代わりとなるもの。

ルラムーン草:Ⅴに登場。ルーラ習得に必要。

ルーラストーン:Ⅹに登場するアイテム。

神鳥レティス:Ⅷに登場。世界を渡る力を持つ神の鳥。元の世界に帰る為なら、こいつを捜せばいいんじゃ……。

バロンの角笛:Ⅳに登場。


キャラバンハートは今にして思うと割と名作だったと思う。
特に馬車隊での戦闘が大勢で戦ってる感が凄かったですね。
3DSでリメイクしないかなぁ……。

Q.この魔法で元の世界に帰れないのですか?
A.帰れません。

Q.どうしてですか?
A.御都合主義  
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