「バギマ!」
手始めに取り敢えず
真空の刃を帯びた竜巻が、砂煙をあげながらライザーくんたちに襲いかかった。
手加減したとはいえ聖なる力を帯びた竜巻だ。そこそこのダメージを受けたライザーくんは怒る。
「キ、キサマァァァッ!! 人間が付け上がりやがって! ミラ、やれ!!」
「は、はい! ライザー様!!」
先程イッセーくんを攻撃しようとした棍使いの少女が襲い掛かってきた。
黒髪に和服姿が良く似合い、動きにしなやかさがある。
そんな彼女があっという間に間合いを詰め、イッセーくんに打ちかかったときより数段鋭い突きを放ってくる。
その突きを軽く往なして、カウンターの回し蹴りを放った。
ブンッ!
「ギャッ!」
回し蹴りをミラという少女の腹へモロに入れた。闘気を用いず力も加減もしたが、それで彼女は気を失った。悪魔にしては少々脆いと言わざるを得ない。
「悪くない腕だった。鍛えればもっと伸びるな……。
だが、ライザーくん。君の指示は良くないぞ。戦力の逐次投入は愚策だ。相手は一人、なら一斉に掛かるべきだと思うんだが……」
僕の言葉に更に怒りを募らせるライザーくん。
眷属悪魔達に向かって青筋を立てて叫ぶ。
「
「はい!」
体操服姿の双子らしき娘達、踊り子の様な姿の少女、メイド、猫耳が生えた種族の娘。
多様な見た目のいずれも可愛らしい少女達が怖い顔をして進み出る。
プロモーション――― 敵地において、他の駒の特性を得る兵士の能力。特に、最強の駒である
つまり、事実上の女王七体。
それが一斉に向かってきた。
「ふむ! そうだ、悪くない判断だ!! だが―――」
真 空 波 ! !
“真空波”―――それは格闘の上級技の一つ。真空の刃の渦で大勢の敵を一網打尽にする。
体全体で風の刃を生み出し、周辺にあるサボテンだの岩だのをすべて破壊しながら向かって行く。
そして、その真空の波がライザーくんの兵士達全員を飲み込んだ。
「キャアアアアアァァァッ!!」
強烈な風の渦の中で錐揉みにされ、向かってきたライザーの兵士は全滅した。
「もう少し攻め方に工夫が欲しかったな」
「グッ……! イザベラ、カーラマイン! いけ!」
「ウオオオオッ!!!」
仮面を被った女が素手で殴りかかり、鉢巻きに鎧を纏った女戦士が剣で斬りかかって来る。
どちらもなかなかの腕前だ。
イザベラは女性にしては背が高く、徒手空拳で戦うスタイルらしい。体捌きがいい。
カーラマインは魔法剣が得意みたいだ。剣が炎を帯びている。それなりの火力がある。
しかし―――
「いいかい? 敵だけを見ちゃダメだ。周りを―――戦場も見るんだ」
ザッ!!
地面を蹴った。駆け出したという意味合いではなく文字通りに。
当然、砂漠の大地でそれを行えば―――
「うっ……目に砂が……っ! 姑息な真似をッ!!」
巻き上げられた砂埃がイザベラとカーラマインの瞳を直撃する。
熟練の冒険者であればすぐに目をそらし回避するが、彼女達に砂漠戦の経験はないらしい。
簡単に目を潰せた。
ビシッ バシンッ
視力に頼ることができない二人に手刀を振り降ろし、気絶させることができた。
「シーリス! 雪蘭! 美南風! もう構わん! 殺してしまえ!」
「
冷静さを失って叫ぶライザーに、僕は苦言を呈する。
だが、よっぽど腹に据えかねたのか、彼は聞く耳を持たない。
しかし、無茶苦茶な指示にも拘わらず、
シーリスは黒髪をポニーテールにした女剣士。先程のカーラマインとは異なり大振りな剛剣を構え突撃してくる。
雪蘭は青い武闘家の服をきた少女。拳に炎を纏っている。魔炎気の類だろうか?
美南風は十二単を着た黒髪の女性……、動きづらくないのか少々気になる。両手を翳し魔法を放とうとしている。
まあ、受けてみるか……。
避けるだけでは実力が見れない。軽く闘気を纏い防御の姿勢を取る。
シーリスの剣が―――
雪蘭の拳が―――
美南風の魔力弾が―――
暴風雨のように一斉に降り注いできた。
ドガアァァン!!
それらの攻撃による衝撃で大きな砂煙が立った。
「フンッ! ざまあみろ」
ライザーくんが勝ち誇った声で嘲笑する。どうやら僕が倒れたと思ったらしい。
「ムーンサルトッ!」
空高くに跳躍し、砂煙から飛び出す。
三人の少女の攻撃を回避し、そして、そのままの勢いで独楽のように回転。速度をつけて―――
グワンッ バシッ! バシッ! バシッ!
落下時の重力と回転の遠心力が加わった蹴りで三人とも吹っ飛ばした。
更に、そのついでに―――
「ラリホー!」
「えっ? ……zzz」
ドサッ
戦闘要員じゃなさそうだったピンクのドレスを着た少女を、仲間が瞬く間にやられたことに驚いている隙を突き
「ユーベルーナ! 分かっているな!!」
「はい! おまかせを!」
最後に残った眷属悪魔として女王らしき魔道士装束を纏った紫色の髪の堂々たる美女が進み出た。確かライザーくんとディープキスしてたやつだ。
「はあっ!!」
ボオォン!!
杖を構え一瞬で魔法陣を展開し、なかなか強力な爆撃魔法を放ってきた。
イオラくらいの威力はある。
爆破によって、またしても砂煙がもうもうと発生する―――
「……やったか?」
「やってないよ、メラミ!」
後ろに飛んで威力を殺し、受け身を取ったためダメージはほとんどない。
ライザーくんの呟くような問いに応え、ユーベルーナに向けてメラミを撃った。
それが
「ギャアアアアアァァァッ!!」
「ユーベルーナ! この畜生がぁァッ!!」
最後の腹心がやられ、ついにライザーくんが出てきた。
「絶対に許さんぞ……。人間」
「えぇ……そんな怒んなくても……。火力を加減したから死んでないよ?」
当然である。特訓でヒト……もとい悪魔を殺すほどトチ狂ってはいない。
だがその言葉は逆効果だったらしい。
「加減だと……! 人間が、このライザー・フェニックスに対して……許さん!!」
彼が全身に火を纏う。
なかなかの火力だ。“激しい炎”に匹敵する、いや超えるかもしれない。
対抗する為に大きく息を吸う。
「死ねえェェェッ!!!」
ビュウオオオオォォォォッ
僕は全身を震わせ凍える吹雪を吐いた。
ドラゴンの職業で身に付けた冷凍ブレス―――
灼熱の砂漠も、そこだけ極地並の極寒地帯と化す。
ガチッ ピキピキッ……
「なっ……何だと……! 俺が凍る!?」
ライザーくんも炎を纏い抵抗しようとしたが……
周りを見渡せばライザーの眷属たちが全員倒れている。
だが、みんな筋がいい。伸び代がある。
「これはいい特訓になりそうだ」
ぽつりと呟いた。
――――――――――――――――
「さて、……ってどうしたんだい?」
全員を
彼女らは僕の前に座らせる。
だが、最後に目を覚ましたライザーくんは震えている。
どうやら、少しやり過ぎたらしい。
「うぅんと……、怖がらなくてもいいんだよ?」
「べ、別に怖がってなんかいないッ!!」
「そうか……」
強がりが言えるだけでも根性が据わっている。
それはそれで立派なことだ。
「さて、先程スマホで連絡した。グレイフィアさんが僕の提案を了承してくれた」
先程はノリで飛び出してしまったが、後々考えると許可も何も取っていない。
それで連絡したのだ。因みにこの砂漠は圏外だったので日本に一度戻り、おやつのアイスを買った。あとで皆と一緒に食べよう。
ついでに、リアスさんたちの特訓も始めるように手配した。
ピエールが物凄く張り切っていたから大丈夫だろう。この世界で仲間にした者達もいるし……。
「そして、これからの修行のプランなんだが―――「おい」……ん、何だい?」
ライザーくんに途中で遮られた。
「何のつもりなんだ? お前。これは悪魔の問題だ。人間のあんたが関わっても何の得にもならないだろう? 一体どうしてこんなことをする」
「勿論、君とリアスさんのためだ」
迷わず答える。
「いいかい? レーティングゲームの勝敗は飽く迄“手段”だ。“目的”じゃない。
仮に君がリアスさんに負けたとしても、彼女が君の奮戦を認め、自分のことを愛してくれていると認めてくれるのなら、敗北しても何の問題もない。
―――しかし、逆も言える。君が勝っても彼女が認めなければ、たとえ結婚できても、その結婚には“愛”がない。それは不幸だ。君にとっても、リアスさんにとっても……違うかい?」
ライザーくんは心では納得できない様子だったが、頭では理解は出来たらしい。
渋々頷いた。
「僕とリアスさんは短い付き合いだが、彼女の優しさは良く分かっている。僕はリアスさんに幸せになってもらいたい。―――そして君もだ」
ライザーくんの眷属悪魔達を見まわす。
「君はこんなに大勢の眷属たちに慕われている。なら君には出来る筈だ。
これさえ乗り切れれば、きっと
「ああ、分かった……」
ライザーくんもようやく了承してくれた。
「よろしい! では各々に相応しいコーチを付けよう」
まずは兵士を見る。
棒術使いのミラにはキラースコップのラモッチを宛てがう。
他の子たちは基礎体力だ。プリズニャンのプリズンとブラウニーのブラウンに担当させる。
次は騎士のカーラマインとシーリスだ。
カーラマインにシュプリンガーのリンガーを、シーリスにはソルジャーブルのブルートが付く。
テクニックタイプとパワータイプの違いを考慮した人選ならぬ魔物選だ。
戦車の二人はアンクルホーンのアンクル、ゴーレムのゴレムスに任せる。
この二人は僕の魔物の中でも強者だ。存分にやってくれるだろう。
僧侶の二人もタイプが違う。そもそも、レイヴェルは戦闘要員じゃない。
だが、僕の見立てでは回復呪文の才能がある。よって担当はホイミンだ。
美南風は攻撃よりなので魔法使いのマーリンが付いた。
女王ユーベルーナ。何でも『
確かに彼女の爆撃魔法は素晴しかった。
よって得意分野を伸ばす。ミニデーモンのミニモンに任せる。
最後にライザーくんだが……炎を伸ばすには寧ろ逆の力、即ち冷気を操る魔物の方がいいのではないか?そう考えた。
その考えに従い、イエティのイエッタ、ブリザードマンのヒエール、ホークブリザードのブリードの三体を付けた。十日後までには倍の火力を身に付けれるだろう。
「彼らは皆、僕の大切な仲間たちだ。実力は僕が保証する。彼らに従えば十日でも見違えるほど強くなれるだろう」
「クソッ、こうなりゃヤケだ! やってやるよ!!」
「ああ、その意気だ」
こうして、ライザーくんにとって生涯で最も苦しい修行の日々が幕を開けた。
――――――――――――――
日本
スマホで連絡し、リアスさん達の修行場所に向かう。
森の奥らしい。それらしい建物が見えてきた。
僕の仲間たちも一緒に修行している……きっと効果は倍増してるだろう。
ドゴオオオオン!!
凄い音がした。
六人の若い男女が全力で走ってきた。
「「「「「「早くアレを止めて!!!!」」」」」」
リアスたちが僕に叫び、呼び掛けた。
後ろを見てみると―――
そして、魔法少女っぽい漢に追われていた。
「メラッ!メラッ!メラッ! 待つにょ! 戦わないと修行にならないにょ!」
ムーンサルト:Ⅵ~Ⅷ、PS・DS版Ⅳに登場する特技。空高く跳び上がり、回転しつつ敵全体に体当たりをして着地するというド派手な技。
ライザーの眷属多過ギィ!