時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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23話 力と優しさ

  

 

「リアス! 悪いがこちらから出向いてきたぞ!」

 

 

 吸血ドラキー三匹とライザー配下の眷属悪魔達の激闘が行われているグラウンドから離れた場所。

 朱乃に破壊された体育館跡地に三人の悪魔がいた。

 ライザー、リアス、アーシアである。

 

 ライザーは自分の本陣である新校舎からリュカの試練たる魔物達と、自分の下僕達の戦いを見ていた。

 その三匹は自分の予想を上回るほど強かったが、また同時に確信する。

 

 自分達も強くなっている、と―――

 

 十日前の配下達ならあっというまに全滅していただろう難敵に、美南風は身を挺しながらも仲間を守り通し、シーリスはその内一体をあと少しでリタイアになるまで追い込んだ。あとの残った眷属達でも、もう少しなら時を稼げるはずだ、そう考えた。

 

 レーティングゲームは相手を全滅させる必要はない。

 敵の(キング)さえ取れればいいのだ。

 今の自分たちでは、あの怪物蝙蝠を倒す力はないだろう。

 だが、皆が時間を稼いでるうちに敵の王―――リアスを取るのだ。

 しかし、他の連中(オカルト研究部)に気付かれると厄介だ。

 故に、新校舎の裏手からこっそり抜け出した―――。

 

 

 一方、リアスも同様の考えだった。

 

 ―――君達は自分達のみの力でリアスさんを守り切る、そう思って特訓に取り組んで欲しい。

 

 修行の前にリュカから言われた言葉。

 確かにこのまま持久戦に持ち込めば勝利は固い。それだけ彼ら(ドラキー達)の力は強大だ。

 ひょっとすれば一体一体が上級悪魔に届くかもしれない。

 

 ―――しかし、それでは胸を張ってライザーに勝ったと言えるだろうか……?

 

 そう思ってしまった。無論、愚かな考えだ。そんなことは誰よりも自分が分かっている。

 だが、この日の為にリュカの指導の下、自らの技に磨きを懸けてきたのだ。

 それは助っ人の影に隠れて勝利を拾う為ではない。

 故に、本陣から抜け出し敵陣に赴く。

 

 

 そしてその道中、二人は鉢合わせした。

 レーティングゲームのバトルフィールド。その丁度真ん中、センターポジション。

 その空間が人工的(悪魔工的に?)造られたことを示す白い空の下、両チームの大将が向かい合った。

 

 

「リアス……悪いが最初から全力でやらせてもらうぞ。俺の眷属達でもそう長くは持ち堪えられないみたいなんでな」

 

「いいわ。元々このゲームはグレモリー家とフェニックス家の問題。私たちで決着を付けましょう!」

 

「行くぞッ! リアス!!」

 

 

 ライザーは猛火を巻き上げ、自分の婚約者に向かっていった。

 リアスも滅びの魔力を展開する。迎撃する構えだ。

 

 ライザーが炎を纏った拳を繰り出す。だが、その拳は腕ごと消えていた。リアスが消滅させたのだ。

 しかし、そんなことは想定の範囲だ。

 瞬時に、背に業火の翼を出現させる。その翼から炎の塊を放った。

 

 

 

「きゃあああっ!!」

 

 

 リアスはライザーの炎に焼かれ、大火傷を負った。以前のライザーの炎であれば滅びの魔力で防げる自信があった。だが、これまでの(ライザー)の比ではない。魔力で身を守ろうとしたが、それすら貫通して自分の身を焼かれた。

 あるいは、仮にも婚約者である自分には加減してくれるかもしれないという甘えがあったか―――

 そんなことを考え、リアスは自嘲的な気分になった。

 だが、すぐに精神を立て直す。

 

 

「アーシア!」

 

「はい、部長さん!」

 

 

 リアスの呼び掛けにアーシアが答え、すぐに『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』で主の傷を癒す。

 

 

「させんっ!!」

 

 

 ライザーはそうはさせないと言わんばかりに追撃の業火を放った。

 以前の彼であれば余裕たっぷりに回復する猶予を与えていたかもしれないが、今はそうではない。

 一切の加減はしない。フェニックス家の為に、リアスに認められる為に、そして何より自分の為に全力の攻撃を放ち続ける。

 

 

「くうううぅぅぅっ!」

 

 

 フェニックスの業火を、滅びの魔力を障壁として展開することでリアスは耐え忍ぶ。

 もうすぐ、最初の攻撃で受けた火傷が完治する。それから反撃に転じなければ――――

 

 だが、そんな思いとは裏腹に徐々にライザーの炎の方がリアスの滅びの魔力を上回り始めた。

 

 マズい、受け切れない―――

 

 咄嗟にアーシアを抱きかかえ横っ飛びにかわす。

 ついさっき場所が灼熱に包まれた。そこらにあった体育館の残骸が燃えカスとなる。

 

 

「この十日間で強くなったのはお前だけじゃないぞ、リアス!」

 

「……そのようね」

 

 

 リアスにとって認めたくはないが、明らかにライザーは強くなっていた。

 その火力は勿論だが、何より精神面で甘さがない。配下が、そう長くは持ち堪えられないことをきちんと認識していて、クレバーに勝ちに来ている。

 悔しいが、このままじゃ不味い。

 

 やはり、最低でも自分の眷属達とは合流してからにすべきだったか。

 

 自身の軽挙さを呪ったが、今はそれどころではない。

 冷静に今すべきことを考えるのだ。

 

 

(……ここは一旦、逃げるべきね。イッセー達と合流して……)

 

「おっと、逃げようだなんて思ってないよな……。たしかに師匠(リュカ)からは『戦略的撤退は間違いではない』と言われてるだろう。

 だが、同時に『しかし、逃げ切れる敵かどうかを見極める必要がある。下手に相手に背を向けると、逃げ切れなかったときに窮地に立たされる』とも教えられてるはずだ」

 

 

 どうやらライザーも私と全く同じことを教えられたようだ。

 あの人(リュカ)はどこまでも公平らしい。付き合った期間は私の方が長いんだし、もう少し贔屓してくれてもいいじゃない―――内心リアスはリュカに毒づいた。

 

 ライザーからは逃げられない。ここは決死の覚悟で向かっていく必要がある。

 そう結論に至る。

 

 今、自分にやれる最高の技を放つ為に、魔力を練り上げる。

 

 

「フン、リアス、お前は俺のモノになってもらう。そのために全力で叩き潰す!!」

 

 

 ライザーもまた、魔力を集中する。炎の翼が数倍に大きくなる。

 その様は、まるで炎で出来た巨鳥だ。辺り一帯を焼き尽くしても尚、お釣りがくるほどの業火を身に纏う。

 

 リアスとライザーの視線が交わる。お互いがお互いに対して、極限まで集中する。

 それこそ一挙一動に至るまで、婚約者同士の二人が、今までこれ程に互いを観察したことが無いほどに。

 

 そのとき―――

 

 

「マホイミ!」

 

 

 物陰に隠れていたアーシアがライザーに向けて、両手を翳し魔法を唱えた。

 一体どんな魔法か―――ライザーが身構える。

 しかし、待てども何の痛みもこない。

 失敗したのか? そう思ったとき――――

 

 

「ハアアアァァァッ!!」

 

 

 リアスが叫びと共に赤黒い滅びの魔力を放った。今までの物の比ではない。触れるものを片っ端から消滅させてライザーに向かっていく。

 

 あれをまともに受けるには不味い。(ライザー)のこの十日間で鍛えられた感性が迅速に危機を伝える。

 そのおかげもあって、素早く飛び退くことができた。だが、片腕が滅びの魔力に飲まれ、消滅する。

 その魔力の塊はそのまま通過し、体育館の残骸の半分以上を消滅させた。

 

 しかし、今の一撃にはリアスの持つ魔力の大半が注ぎ込まれていたらしい。

 リアスは立っているのが精一杯のようだ。

 

(今の一撃がリアスの切り札だったようだな! 腕の一本ぐらいならすぐに再生できる! これで勝った!!)

 

 

 ライザーが勝利を確信する。

 

 だが―――

 

 

 彼の腕は再生が始まらない。寧ろ消滅した個所から徐々に肉体が崩れていく。

 

 

「なっ、何なんだ、これは!?」

 

「それはリュカさんから教えてもらった過剰回復呪文マホイミの効果です!」

 

 

 瓦礫の影に隠れていたアーシアが必死な面持ちで前に進み出て言った。

 

 

 

 

 

 修行四日目

 

 

 

「私だけがライザーさんを倒せる、ですか……?」

 

「ああ、そうだ」

 

 

 リュカがアーシアにそう言った。アーシアは驚く。

 

 

「でも、私の神器(セイクリッド・ギア)は皆さんの回復の為の物ですし……」

 

「そうだ、その回復だ」

 

 

 リュカがアーシアに説明する。

 

 

「ライザーくん……フェニックスが不死と云われるのは、その回復力が所以だ。その力を封じるか、或いは逆に利用するのが一番手っ取り早い倒し方だ」

 

 

 そう言うと、リュカは近くの木に近づいた。

 

 

「見ててごらん……。マホイミ!」

 

 

 リュカが何やら呪文を唱える。すると木はボロボロと崩れていった。

 

 

「今、僕が何をしたのかわかるかい?」

 

「ええっと……、なんでしょう?」

 

「答えは“回復”させた。君は植物の世話をしたことがあるかい? 植物に水やりをし過ぎると逆に枯れてしまう。生き物にとって過剰な回復は反って毒になる」

 

「なんだか怖いですね……」

 

 

 アーシアが怯えたように言う。

 

 

「ああ、そうだ。この怖さを理解できる者でなければこの魔法は教えられない。フェニックスの武器は“回復力”。しかしその“回復”こそが弱点だ。僕の見立てでは、君は完全にこの呪文をマスターできるわけではないが“もどき”ならできる。その神器があれば……」

 

「でも……、やっぱり癒しの力でヒトを傷つけるのには抵抗があります……」

 

 

 それでも躊躇うアーシア。しかし、リュカはゆっくりと微笑みながら優しく諭す。

 

 

「君は本当に優しい子だ……。でもね、愛や優しさだけでは必ずしも他人を守り切れない時もある。正義なき力が無力であるのと同時に、力なき正義もまた無力だ。要は使い方だ。

 大丈夫! 君が使う限り、その神器は決して正義なき力にはならない。僕が保証する」

 

「リュカさん……」

 

 

 こうして、アーシアの修行が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅうううぅぅぅ……」

 

 

 地に倒れたライザーは呻き声を上げ、崩れていく腕の断面を抑える。

 誰がどう見ても戦う力は残っていない。

 片腕を失い、マホイミで再生力も封じられた。

 だが、彼は諦めない。気力で持って強引に立ち上がる。

 

 

「まだだ……、まだ負けてはいない!!」

 

 

 今一度、炎の翼を生成しようとする。

 

  ゴオオオオオオオ

 

 ライザーの執念によって、再び巨大な業火が巻き起こった。

 (ライザー)の鋭い眼光を向けられ、優勢なはずのリアス達がたじろぐ。

 

 

 

「さあ、今度こそ決着を―――」

 

 

 二人の強い眼差しが交錯する。

 ライザーとリアス、己が運命を懸けた二人の若い悪魔が、その最後の力を振り絞って激突しようとした

 

 

 次の瞬間――――

 

 

 

 それは突然に、何の前触れもなく起こった。

 駒王学園を摸したバトルフィールドの全域が真っ暗になったのだ。

 夜になったのか? 否、違う。この空間は人工的に造られたものだ。夜になるはずがない。

 つい先程まで空は真っ白だったではないか。それがどうして――――

 

 

 リアスとライザーが不可思議に思っているとき、彼らの上空が急激に凍りついた。

 

 

 

 「「「「 マ ヒ ャ ド !!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃―――

 

 

 

「お~、来たのかにゃ」

 

 

 ライザー・フェニックスの眷属達を撃破したドラきち達が、ポカンとしているオカルト研究部の面々に話しかけた。

 

 

「……え~と、御三方はドラゴンなのでしょうか?」

 

「んにゃ、違うにゃ。今のは火竜変化呪文(ドラゴラム)の効果にゃ」

 

 

 やけに畏まって尋ねてくる一誠に、ドラきちがのんびりと答えた。

 

 

「しかし、こいつらもなかなかだったにゃ。まさか、オレ達の鱗を割かれるとは思わなかったにゃ」

 

「キーー」

 

 

 シーリスがラッキーを負傷させたのが意外だったらしい。ドラきちが感心したように言い、ラッキーも頷いた。

 

 

 

「さ~てと、何て言ったかにゃ……、あ、そうそう、ライザーにゃ。そいつを倒しに行くにゃ……。ん、あれ?」

 

 

 早速、敵の王を取りに行こうとするが、ドラきちが不思議そうに周りを見渡した。

 

 

「うぅ…………」

 

 

 カーラマインが苦しそうに呻いた。同様にイザベラ、ユーベルーナ、そしてレイヴェルも重傷だ。

 

 

「あれ~……。どうなってるにゃ?」

 

 

 レーティングゲームでは、再起不能になった者はリタイヤとなってバトルフィールドから強制転移される。

 転移先は医療設備が整った所で、レーティングゲームで大ダメージを受けても問題ないのはそれが理由だ。

 ところが、四人とも明らかに戦闘不能のはずなのに転送されない。

 

 

「なんかの事故なのでしょうか……?」

 

「これは不味いですわね……」

 

 

 木場と朱乃が負傷したライザー眷属を見て呟く。

 戦闘中は余裕綽々だったドラきちが、冷や汗をかいて焦る。

 

 

「ま、まままま不味いにゃ! 強制転移されるから大丈夫だと思って思いっ切りやっちゃったにゃ!

ど、ど、どうしよ~!!」

 

「……落ち着いてください」

 

 

 焦りまくるドラきち達を小猫がたしなめる。

 

 すると空が暗くなった。

 

 

「わひゃ~~~!! 何にゃ!? 何事にゃ!?」

 

 

 突然の事態にドラきちが驚きまくる。一誠達はさっきのドラゴン三匹が暴れてる方が驚きであったため、それ程でもないがやはり驚いていた。

 

 

 ズシィッ! ズシィッ! ズシィッ! …………

 

 

 そこに足音が聞こえてきた。その音の主の重量を感じさせる、低く重厚な足音。

 

 やがて暗がりから何かが現れた。明らかに尋常ではないモノ。

 

 人型ではあるが決して人ではない。

 巨人を思わせる大きな体躯。金色の強固な外殻。巨大な尾。両手の甲から突き出る爪のような骨。巨大な角に、自らの威信を示すが如き豪壮な髭―――

 

 

 それが何であるかドラきち達には分からなかった。

 故に尋ねる。

 

 

「お前は一体何者にゃ?」

 

 

 

 

「我に呼ぶ名などは無い。生贄を食らい人の願いを叶える魔神よ……。

そやつだな、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の持ち主とやらは――――」

 

 

 

 

 

 

 




マホイミ:漫画「ダイの大冒険」より。回復呪文ホイミの効果を極限にまで高めて、過剰な回復エネルギーを送り込むというもの。花に水をやりすぎると枯れるように、相手を過剰なまでに回復させて生体組織を破壊するという恐るべき攻撃呪文。


戦闘校舎のフェニックス編 BOSS いにしえの魔神:Ⅸのボス
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