なんかドラきちの方が主人公っぽくなってしまいました。
「ヒトの願いを叶える魔神だとにゃ……?」
ライザー・フェニックスとリアス・グレモリーの結婚が懸ったレーティングゲームのバトルフィールド。
ゲームの終盤において、乱入する者が現れた。
それは巨躯を誇る人外の存在。
ドラきち達は知らぬことだが、彼は異世界において“いにしえの魔神”と呼ばれた者である。
その力は絶大で、かつてその世界で覇を唱えた魔帝国ガナンの侵攻を阻むことができた程だ。
しかし、その対価となる生贄は大きい。
彼を召喚したセントシュタイン王国の王は
かの王が生涯秘匿にするほどのモノだった。
隣国ルディアノそのものである。
城も、国土も、そして民も、すべてが灰燼に帰した―――。
そんな存在が突如として現れた。
ドラきちは、すぐにこの魔が思い上がった三下ではないことを見抜いた。
「あらあら、何のつもりでいらっしゃられたのかは存じませんが、このゲームは魔王サーゼクス・ルシファー様がご観覧されいているのですよ。あまり、無茶をされてはなりませんわ」
魔王サーゼクス・ルシファー―――リアス・グレモリーの兄にして現四大魔王の一人。その力は四大魔王の中でも強く、冥界の超越者の一人と目される。
朱乃が穏やかに忠告する。だが、その穏やかさは表面的なものだ。彼女の声には強い警戒感が滲み出ている。
そんな朱乃の言葉を、魔神は鼻で笑った。
「フンッ、この異界で君臨するという魔王の一角か……。例え、その者が現れたとしても我ならば問題はない。ただ、打ち倒すのみだ。
だが、そなたの心配など杞憂に過ぎぬわ。我の召喚主がこの異空間を結界で覆っている。その証拠に……ホレ、そこの地に倒れている者達が転移されぬであろう」
魔神は手の甲から生えた極太の針の様な骨で、傷ついたライザーの眷属達を指し示した。
「この異空間は今や完全に断絶されている。ここで我が何をしても誰も……そなたの言う魔王ですらも何が起こっているのか認識できぬ」
「……で、何しに来たにゃ?」
ドラきちが冷たい声で尋ねた。
「召喚者からは
少々都合が良すぎるが、痕跡さえ残さなければそう納得せざるを得ない。何せ今、向こうは何も見えていないのだからな」
「要するに“死人に口無し”……神器所持者以外を全員殺すというのですか?」
魔神の話を聞き、木場がまとめた。魔神が頷く。
「そうだ」
「ふざけんな! そんなことさせるかよ!!」
一誠が激昂する。その叫びを聞いても魔神は全く意に介さない。まるで、纏わり付いてくる煩い蚊でも見たような目を向ける。
「造作もない」
そう嘯いた魔神は軽く息を吸い込み――――
コォォォォォーーーッ
輝く光の炎を吐いてきた。
ただの炎ではない。光の力を持つ超常の業火だ。
本来の威力であれば、直撃すれば悪魔の一誠は即時消滅するであろう。
神器所持者を回収する任を帯びているため加減はされているが、直撃すれば
ラッキーが 一誠 をかばった!
「ギギィィィッ!」
「ラッキーさん!?」
小さな吸血蝙蝠に身を挺して庇われた一誠が驚愕する。
「お前達は邪魔にゃ!
ドラきちが叫んだ。これまでの瓢々とした態度からは考えられない真剣な声だ。
その間にヨッキーがラッキーに近づき治療を施す。
「でも、ドラきちさん!?」
「四の五の言うにゃ! 死にたいのかにゃ!?」
それでも留まろうとする一誠に、ドラきちが一喝する。
歴戦の彼からしても、この敵はヤバい。足手纏いがいたら勝てないと判断するには十分すぎる程にだ。
「……わかりました。スンマセンッ!」
一誠は謝るとレイヴェルを担いで駆け出した。
同じように木場がカーラマインを、小猫がユーベルーナとイザベラを担ぎ逃げ出す。
姫島は空を飛び、彼らを先導する。
グラウンドには三匹のドラキーと魔神が残った。
その場には不気味な静寂が響く。その沈黙を破ったのは魔神の方だ。
「ふん、足手纏いを逃がしたか。悪くない判断だが大した時間稼ぎにもならんぞ」
「それはどうかにゃ?」
「まさかとは思うが、この我に勝つつもりなのか? そなたが脆弱な種族でありながら成長の極地に達した歴戦の兵であるということは分かる。だが、所詮ドラキーはドラキーだ。我には及ばぬ」
魔神が嘲笑するかのように言う。だが、吸血蝙蝠のリーダー格は不敵に笑った。
「そうでもないにゃ。アンタも能書きをだらだら話に来たわけでもあるまいにゃ。
…………やるにゃ」
ドラきちが他の二匹に目配せをした。三匹は一斉に闘気の輝きを身に纏い、それを同調させる。
そして―――
な…なんと ドラきちたちが……!?
合体して グレートドラキーこと グレドラになった!
三匹が密着したかと思えば、煙が発生し、その中から巨大なドラキーが現れた。
ただ単に大きいだけではない。強大な紫色の闘気と魔力のオーラを身に纏っている。
先程の小さな蝙蝠達とはまるで別物だ。
それを見た魔神は嗤う。
「フハハハハハハ! 確かに想像以上にやるようだな。だが、そのレベルではまだ我には及ばぬ!!」
『いくにゃっ!!』
異界の魔神と合体ドラキーが激突した。
◇
体育館跡地
「大丈夫か? リアス……」
リアスとアーシアとライザーは激戦の最中に、何者かからの攻撃を受けた。
マヒャド―――冷凍呪文の中では高位のものだ。
これを受ければリアスもアーシアも氷漬けになっていただろう。
しかし、そうはならなかった。ライザーが彼女達を撃破する為に放とうとした最後の業火を、リアス達に向けてではなく、降り注いでくる氷塊に向けて撃ったからだ。
ドサッ
これでライザーは最後の力を出し切ったのか気絶した。
「ライザー! しっかりして!」
思わずリアスが駆け寄る。
「部長! 大丈夫ッスか!?」
すると、そこに駆け寄ってくる者達がいた。
一誠、木場、小猫、朱乃、そして彼らに担がれているのはユーベルーナ、イザベラ、レイヴェル、カーラマインだ。
「皆! これは一体――――」
「あら、この状況でおしゃべりしている余裕があるの?」
オカルト研究部の面々が周りを見渡すと、すでに周囲は完全に包囲されていた。
その者達は皆悪魔のようだ。それも女性ばかりだ。
全員青い肌をし、蝙蝠の様な翼が生え、似た形状の胸元も空いた扇情的なドレスを着ている。
その代表らしき女悪魔が進み出た。青髪に赤い瞳の美女だ。
「主様が取り逃がすなんて、どういうつもりなのかしら? まあ、いいわ。さっさとお仕事しちゃいましょ」
そう言うなり、この女悪魔の瞳が 妖しく輝いた!
「……ぐっ! どうなってやがる……! 体が動かねぇ!!」
女悪魔の瞳から光が降り注ぐ――――
その怪光線を浴びた一誠達は指一本動かせなくなった。
オカルト研究部の部員たちが必死に足掻く……だが、まるで意味をなさない。
「アハハハハハッ! 無駄よ。私はイシュダル。この私の呪いを受けては動くことなどできないわ」
女悪魔イシュダルが嘲笑した。
そのまま彼女は一誠に近づき、彼が肩に担いでいたレイヴェルを抱き上げた。
そして―――
バシンッ
イシュダルがレイヴェルをはたき、叩き起こした。
「――――ッ!」
「目が覚めた? アンタ達、そのお嬢さんを抑えときなさい」
イシュダルが配下の女悪魔―――ヘルヴィーナスに命ずる。
二人のヘルヴィーナスが進み出てレイヴェルを羽交い絞めにした。
イシュダルが長く鋭いナイフを取り出し、ねぶるような眼差しを不死鳥の少女に向ける。
「御嬢さんはフェニックス……不死なんですってね。羨ましいわぁ……。なら、これくらい問題ないわよねぇ!」
イシュダルのナイフが黒い輝きを放つ。
暗黒闘気を纏わせたのだ。それはさながら毒蛇のキバのように見えた。
そのナイフを見せつけるように振り上げ―――
それをそのままレイヴェルの腕に突き刺した。
「キャアアアァァァッ!!」
「……レイヴェル様!」
「おい、何やってる! やめろッ!!」
レイヴェルが痛みのあまり劈くような悲鳴を上げる。その叫び声を聞きユーベルーナ達が目を覚まし、一誠が制止しようとした。
その様を睥睨したイシュダルが嘲笑う。
「ククク、アンタ達も馬鹿ねえ。私の呪いが掛かっているのに、動ける訳ないじゃない。そこでおとなしくしてなさいな」
「……レ……イ……ヴェル……」
妹の悲鳴を聞き、気絶していたライザーが目を覚ました。
満身創痍でありながら家族のために必死で起き上がろうとする青年を目に止めた妖魔は、小馬鹿にした表情でその様子を観察する。
「……ふぅーん、なかなかアンタもしぶといわね。
あ、そっか、アンタを使った方が手っ取り早いか……」
しばらく不死鳥の青年を眺めていたイシュダルであったが、何やら思い付いたらしい。
そう言うと、イシュダルはライザーにゆったりと近づき……、彼の妹にしたようにライザーにもおぞましい輝きを帯びた凶器を深々と突き立てた。
「グアアアアァァッ!」
「お、お兄さまァァアアッ!!」
兄の絶叫を聞き、レイヴェルが更に悲鳴を上げた。彼女の頬をつたって一筋の涙が落ちる。
彼女を羽交い絞めにしていたヘルヴィーナスがクリスタルの小瓶を取り出し、その涙を受け止めた。
それを見たイシュダルが満足そうに頷いく。
「……フェニックスの涙は採集できたわね。さて、あとは神器の持ち主を回収して……ああ、その前に用済みになった焼き鳥二羽と、その下僕を始末しましょ」
イシュダルのナイフにこれまでの比ではない暗黒闘気が宿る。
ライザー達を殺すつもりだ。
イシュダルがレイヴェルに向かってナイフを振りかざす―――
「止めろおおぉぉぉぉぉッッ!! ブーステッド・ギアッ!!」
『Boost!!』
「アーッハハハハッ! だから、無駄だっていってるでしょうに」
一誠が
『Boost!! Boost!! Boost!! Boost!! Boost!! Boost!! Boost!! Boost!!』
「うおおおおおおおおっっ!!!」
イシュダルが哄笑しても倍化を止めない。一誠が咆哮する。
『Explosion!!』
「どおおぉりゃあああぁぁぁっっ!!」
一誠が限界まで倍化し、雄叫びを上げる。
そして――――
バリィーンッ!!
「なっ!?」
イシュダルの呪いを打ち破った。
そして、そのまま――――
「木場ァァァァァッ!!」
「
木場が自身の神器である魔剣創造を発動させた。
そして地面に手のひらを向ける。
すると、地から無数の魔剣が勢い良く飛び出してきた。様々な形状、様々な刀身の魔剣だ。
「チッ――――」
イシュダルは飛びのいてそれをかわした。
ヘルヴィーナス達も同様に回避する。
「なかなか面白い技だったけど、そんな子供騙しで私達が―――」
『Dragon booster second Liberation!!』
赤龍帝の籠手から聞いたこともない言葉が発せられる。それに合わせ神器の形状が変化し、一誠の脳内に新しい情報が送り込まれる。
「これが新しい『赤龍帝の籠手』からの贈り物だ!!」
『Transfer!!』
変化した赤龍帝の籠手を一誠は地面に叩き付けた。
すると、より大きな、より大量の魔剣が地面から湧き出した!!
「グアッ!!」
イシュダルもヘルヴィーナス達も避け切れず直撃する。突きささる。
「はぁ……はぁ……はぁ……、やったか?」
力を使い果たした一誠が呟いた。皆が希望的に辺りを見回す。
「やってないわよ」
イシュダルが青い血を流しながらムクリと立ちあがった。
ヘルヴィーナス達も同様に起き上がる。中には急所に当たり、大ダメージを受けた者もいるが皆健在だ。
「フフフフフ……やってくれたじゃない。いいわ、私達の
もう、命令も知ったことじゃないわ。死ねえええぃッ!」
イシュダル達が一斉に氷結呪文を唱え始める。これを受ければ全滅は免れないだろう。
リアスが滅びの魔力で、朱乃が雷で攻撃しようとするが間に合わない。
万事休すか―――
そのとき―――
「僕の愛しい弟子達に何をしてるんだい?」
少し離れた場所から声が聞こえてきた。
声が発せられた場所には、いつもの穏やかな雰囲気とは違う、冷静ながらもひどく冷たい表情を浮かべたリュカがいた――――。
グレートドラキー:Ⅷとモンスターバトルロードシリーズに登場するモンスター。ドラキー達が合体することで誕生する巨大なドラキー。
妖女イシュダル:Ⅸの序盤のボスモンスターで、ルディアノ城で戦うことになる美女の姿をした悪魔のモンスター。いにしえの魔神の配下でヤンデレ気質。
ヘルヴィーナス:Ⅸに登場するモンスター。妖女イシュダルの色違い。無実の罪によって処刑された娘が、いにしえの魔神に魂を売ることで転生した女性型モンスター。殺戮を繰り返して返り血を浴びれば浴びるほど、自分の美しさに磨きがかかると信じ込んでいる。
ゲームだとイシュダルよりヘルヴィーナスの方が強いですが
この小説だと イシュダル>ヘルヴィーナス です。
違和感を覚えられた方には申し訳ありません。