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「魔王……だと……?」
“いにしえの魔神”を倒した僕とグレドラの前に突如として現れた青年。
彼はサーゼクス・ルシファーと名乗り、自身を“魔王”と呼んだ。
“魔王”――― その単語を聞いた途端、全身の筋肉が強張る。汗が吹き出す。
元居た世界での出来事。かの大魔王との因縁、宿命、そして激闘が鮮明に思い出される。
自らを“魔界の王”、“魔界の神”、“王の中の王”と称する、あの強大な魔の王。神の敵対者にして超越者。
今、目の前にいるこの青年は“奴”と同質の者なのか―――?
そう考えると、久しく忘れていた戦闘の緊張感と昂揚がふつふつと蘇ってくる。
僕自身の意志とは関係なく、歴戦を潜り抜けてきた肉体が自然と臨戦態勢に入る。
―――だが
今、目の前にいる彼からは何らの敵意も感じない……。相手が“魔王である”というだけで戦いを挑むという事はあってはならない。寧ろ、彼とも親交を持ち、理解を深め、友達になれるよう努力すべきではないだろうか……。
肉体の反応を強引に理性で打ち消す。僕も彼……サーゼクスくんに合わせて笑顔を浮かべる。
「ああ……、サーゼクスくんというのか……。たしかリアスさんのお兄さんだったね。彼女達は無事かい?」
「ああ、リアスは無事に避難できた。妹とその眷属達、それにライザーくん達も怪我はない。彼らを助けてくれて本当にありがとう」
彼の言葉を聞き、胸をなで下す。イシュダル達との戦闘で受けたダメージは応急手当てで回復させたが、如何せんグレドラのビッグバンが強力過ぎた。
アレに巻き込まれては、いかに産まれ持った才能に優れるリアス達といえどもひとたまりもあるまい。
グラウンドからできるだけ遠くに離れるようにお願いしたが……言う通りにしてくれたようだ。
「ふむ、彼女もライザーくん達も大切な愛弟子だ。助けるのは当然のこと、礼には及ばないよ」
「そうか……。我ら悪魔の習わしではきちんとした対価を払わねばならないが……、貴方は人間のようだ。とは言えそれではいけない。いずれ御礼はする」
どうやらサーゼクスくんはかなり礼儀正しい魔王らしい。けっこう義理固い。
本当に礼などいらないのだが、それでもいつかは払うというあたり、なかなかの好青年だ。
「それより、こうなった場合レーティングゲームはどうなるんだい? 延期かな?」
「そうだな……。明日、フェニックス家で披露宴のパーティーをする予定だったんだ。ライザーくんの御両親は彼が勝つと決めて掛かっていたからね。そこで何らかのゲームをして決めようかと思う」
そう話すサーゼクスくんの表情は複雑だ。妹の幸せを願う気持ちと、魔王として冥界の皆を導く責務との間でかなり苦慮しての決断であろうことが窺える。
ゲームで妹の結婚を決めるというのもどうかと思うが、とやかく言うことでもないだろう。
「リアスさんもライザーくんも、この十日間で大きく成長している。どちらが勝っても、きっと良い結末となるだろう」
「そう言ってもらえると助かる」
サーゼクスくん表情が和らいだ。そして、僕の方を真っ直ぐ見詰める。
「ところで、……失礼だが貴方は何者だ? 先程の怪物……あれは相当な力を持っていた。それを、そこの―――」
「グレドラだ」
『キキーーー』
「グレドラくん……でいいのかな? ―――の二人で倒してしまうとは……。異世界の人間は、皆これほど強いのかい?」
僕と合体ドラキーを見比べながら尋ねてくる。
さて、何と答えるべきか――――
「まあ、色々とあったからね……。僕はかなり鍛えられてる方だと思うよ」
「ふふっ、そうか……、またいずれ、ゆっくりと貴方の世界について聞かせてもらえるかい?」
「ああ、いいとも―――」
こうして、サーゼクスくんと共に荒れ果てたバトルフィールドから脱出した。
―――――――――――――――――――――――――――
後日
「ヒャドにょ! ヒャドにょ! ヒャドにょ!」
日本から遠く離れた異国の森にて、僕と多くの仲間達は修行に来ていた。
ミルたんは初級冷凍呪文ヒャドの練習中だ。的に向かって手を翳し、必死に唱えている。
ライザーくんの眷属達も、彼女達の中で『地獄の十日間』と呼ばれているあの日々を共にした、それぞれのコーチ役の魔物達と共に訓練している。
僕はその様子を眺めながら、少し離れた場所で腰を掛け、ほうじ茶を飲んでいた。
横にはライザーくんもいる。
「負けた、か……」
「…………………」
僕がそう呟いた。ライザーくんは黙ったまま項垂れている。
レーティングゲームの翌日、結婚の披露宴パーティーにて、ライザーくんとイッセーくんの決闘が執り行われた。
結果はイッセーくんの勝利。ライザーくんとリアスさんの縁談は破談となった。
その決闘の最中、イッセーくんは『
やはり、イッセーくんには底知れない可能性があるようだ。彼の成長は素直に嬉しい。
だが―――
「リアス……、畜生……、畜生……、畜生……」
当然のことだが、ライザーくんの方はかなり悔しがっている。あれだけ誇りにしていた家名に自ら泥を塗ってしまい、婚約者までも奪われた。
彼の人生で味わったことのないとても大きな挫折であろう。
「でも、君はますます成長した」
「……えっ?」
僕の言葉を聞き、ライザーくんが顔を上げた。
「数週間前の君は『上級悪魔たるもの、泥臭い努力などせず才覚のみで十分だ』と言わんばかりだった。
しかし、あの特訓の日々で君は“努力”を知った。
そして、この敗北で君は“その努力を皆がしている”ということを知った」
「“皆が努力をしている”?」
「アレを見なさい」
そう言って指を差す。その先には――――――
ミニモンと
リンガー&ブルートのコンビと切り結ぶカーラマインとシーリスがいた。
ゴレムスとアンクルに殴り飛ばされながらも懸命に立ち向かうイザベラと雪蘭がいた。
マーリンから魔術の講義を聞く美南風がいた。
ラモッチと互いの棍で突き合い、往なし合い、ぶつけ合うミラがいた。
ブラウンとプリズンに必死に立ち向かう
そして、ホイミンと共に皆の傷を癒して回るレイヴェルがいた。
「……どうだい? 今までは彼女達の努力を軽く見ていたんじゃないのかな? 上級悪魔である自分は修行なんかせずとも強く、下級悪魔である彼女達は努力して当然……君はそう思ってた。
しかし、いざ自分が『努力せざるを得ない状況』に追い込まれてみたら、どうなった?
………ライザーくん、最も大事なことを教えてあげよう。
彼女達はね……、“
その言葉を聞いた瞬間、ライザーくんがハッと息を飲み、虚ろだった瞳に意思の光が戻った。
「努力するというのは君が体験した通り、辛く苦しい、とても大変なことだ。
君を倒したイッセーくんも、リアスさんやオカルト研究部の皆の為に努力しているのだろう……。
しかし、君の眷属達は
――――それは君を“愛している”からに他ならない」
ライザーくんにとって、今まで気付くこともなかった“他者の努力”。
そして、下僕達の努力の理由は“自分への愛”。ライザーくんにはとっての最も価値ある“学び”のはずだ。
「人にも悪魔にも“愛”がある。他者の愛がある事を知る。その“愛”に報いるために努力する。
だから、皆、強くなれるんだ――――」
「師匠………」
ライザーくんはもう大丈夫だろう。彼には頼もしい仲間達がいる。ライザーくんと眷属悪魔達の強い絆があればきっと多くの困難に打ち勝てる。
いずれ、リアスさん以外に良い
そんなことを考えていると――――
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!
なんか物凄い沢山の悪魔達が駆け寄って来た。
「ふおっ!? ぶわっぷ……」
顔面に大きく柔らかい何かが押し付けられた。
顔のみならず全身隈なく、同様の柔らかな物体が押し当てられる。
「分かったわ、御主人様♡ アナタの為にいっぱいガンバルからもっと可愛がって~~♡」
「……ちょっ……息が……できない……死ぬ……」
バイサーか? カラワーナか? それともレイナーレか? ミッテルトは……無いな。
そんなことを思いながら、なんとか引っぺがした。
そして相手の顔を見上げる。
そこにいたのは―――
イシュダルだった。
周りに纏わりついているのは、あのとき倒したヘルヴィーナス達だ。
僕の全身に乳房を押し付けてくる。
ああ、そう言えばあのあと仲間にしたんだった。一気に大所帯になったな~……。まあ、いいか。
「なにしてるの、御主人様……?」
「“君がたった一人のレイナーレだから愛する”って話はどうなったのかしら、リュカ?」
「第一の性〇隷である私を差し置いて……」
「そりゃないっすよ~、お兄さま……」
「ソンナ奴ラヨリ俺ト子作リヲ……」
「ワタクシに養分を……」
「御屋形サマの相手はあたしが~……」
この世界で仲間にした堕天使やはぐれ悪魔、転身させた者達もやって来た。しかも、全員が危険な目線を向けてくる。堕天使三人とはぐれ悪魔に至っては、黒いオーラみたいなモノを纏っている。
これは不味いな……、どうやって落ち着かせようか。というよりなんで怒ってるんだ?
あれこれと打開策を考えていたが、しかし全て無駄となった。
このとき、突然想定外のことが起こったからだ。
「「「きゃああああああっ!?」」」
バイサー、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルトが一瞬で凍り漬けになった。
それらの事態を引き起こした魔法が放たれた方角を見てみると――――
「ヒャド! ヒャド! ヒャド!」
氷結呪文を乱射し、辺り一面を凍らせていくミルたんがいた。
「……えげつないな」
―――――――――――――――――
冥界某所 ある廃屋の地下室
薄暗い部屋の中に三人男達がいた。その内の一人、外套を羽織った長身の男は部屋の壁一面に並べられた棚から形容しがたい生物のホルマリン漬けだの、普通の人間であれば見ただけで嘔吐しそうなおぞましい物体だのを取り出し、机の上にある小さな鍋に加えて調合していた。
残る二人、小柄な老人と異様な風体のずんぐりした男はその様子を見ている。
薬を調合している長身の男はローブからクリスタルの小瓶を取り出す。
それは、女魔族が採集したレイヴェルの涙だった。それを見た小柄なほうの男が口を開く。
「キィッヒッヒッヒ……。しかし、貴公も随分面倒なことをなされますな~……。フェニックスの涙なんぞ、金さえ払えば普通に買えますのに……」
老人が床に目をやる。そこには一体のヘルヴィーナスの死体が転がっている。喉を掻き切られたのか、大量の血が床に溢れて、古びた絨毯を赤く染めていた。
老人にとって女悪魔が死んでいることはどうでもよかったが、金で買える物をわざわざこんな真似をして手に入れる意味が分からなかった。
それに追従するかのように、ずんぐりした男の方も長身の男に尋ねる。
「グブブブブブ……。我も同意見だ。そもそも、そんな薬など使わずとも、我の秘術を用い蘇らせればよいはず………」
それらの問いに長身の男が作業を続けながら答える。
「ほっほっほっ まあ、御二人の疑問も御尤も……。しかし、今回は“蘇らせた死体”で代用はできないのですよ。無論、死体にも過剰回復が効かないというメリットはありますが、反対に闘気を自分で生み出せないというデメリットもあります。雑兵であればゾンビでも問題はありませんが、今回は駄目です。
それと、私も市販で買えるフェニックスの涙は試しましたが上手くいきませんでした。どうやら、生成の過程で鮮度の落ちた物しか市場に出回らないようです。まあ、本来の使用目的なら多少の鮮度の低下は問題にはならないのでしょうが……」
長身の男は説明しながらも調合を続ける。
暗黒大樹の葉、パデキアの根、ユニコーンの血液……、そしてフェニックスの涙。
それらを混ぜ合わせ、男が不気味な声色で呪文を唱えると、やがて漆黒の調合物が出来上がる。
「ほっほっほっ、できました。さあ、行きましょう」
男達は部屋から出ると階段を降り、更に地下にある扉の前に辿り着く。
ギィィィィ……
扉が開く。中から冷たい空気が溢れだす。
部屋の中は冷凍室だった。
その室内には、この世界の天使、堕天使、悪魔、様々な魔物、果ては小型ではあるがドラゴンまで、氷漬けの状態で保存されていた。
そして、その中央には一際目立つ
長身の男はその
ジュゥゥゥ……
焼けるような音を立て、液体が
すると、
「ほっほっほっ 次はこれを使います。これまでとは比べ物にならないほど大掛かりな作戦になりますので、貴方に直接出向いて欲しいのですが――――」
「よろしいですね? ザボエラ殿……」
指名された小柄な老人の眼光が鋭く光った。
暗黒大樹の葉:Ⅷに登場。闇の世界にある巨木の葉。魔犬レオパルドを追いかけるのに必要。
パデキアの根:Ⅳに登場。病に倒れたクリフトの治療に必要なアイテム。
遂に謎の男達の内一人の正体が判明!!
……ってコイツら話し方に特徴あり過ぎて正体隠せてなかったような気がしないでもない。