時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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3巻の前に番外編です。
もう一話くらいあります。


番外編
28話 キメラ


  

 

「……おや、奇遇だね」

 

 

 真夜中、駒王学園の近くの森。

 

 人気のない場所で偶然、知人(知悪魔?)と出会った。イッセーくん達、駒王学園オカルト研究部の皆だ。

 

 

「こんばんは、イッセーくん。それに皆も」

 

「あ、こんばんはッス。リュカさん……」

 

 

 イッセーくんが僕の挨拶に返事をし、それに続き他の皆も僕に挨拶してくれる。

 リアスは怪訝な顔をしているが……まあ、無理もない。こんな所に一人でいれば当然だろう。

 案の定、そのことについて質問してきた。

 

 

「それで、どうしてこんな所にいるのかしら?」

 

「ああ、それはね――――」

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

  数日前の昼間

 

 

 

「ああ、なかなか面白そうな本が借りられたな。帰りにアイスでも買っていくか……」

 

 

 図書館から住処のアパートへの帰り道。

 そんなことを考えながら、のんびり歩いていた。ここ最近、同居人が一気に増えた。イ シュダルとヘルヴィーナス達だ。そのことに元から一緒に住んでいたレイナーレ達は猛烈に反対した。そもそも現在借りている六畳一間のアパートは現状でも相当狭い。その上に三十一人も追加で住めるはずもないし、そもそも入る事さえできない。

 

 そればかりはどうしようもない。僕も散々悩んだ末に諦めかけ、もう少し広い部屋に引っ越そうかと思った。

 

 しかし、その問題をイシュダルが解決してくれたのだ。

 何でも、彼女は以前居た世界で、自分好みの美男子・レオコーンを数百年ものあいだ異空間に軟禁した実績(?)があるそうだ。つまり空間操作の魔術に造詣が深い、ということだ。

 

 彼女の魔術で六畳の部屋が、あっという間に三十畳ぐらいの広さになった。

 それでレイナーレ達も納得してくれた。かなり渋々ではあったが……。

 

 

 そんなこともあって、今ではかなりの人数と暮らしている。

 アイスもたくさん買わねばならないだろう。そう思いスーパーに立ち寄ろうとしたとき、駒王学園の制服を着た女生徒とすれ違った。

 その女生徒からは、なにやら違和感を覚える。一体何が原因なのだろうか?

 そんなことを考えていると――――

 

  フラッ……

 

 その少女が急にふらつき、倒れかけた。僕が慌てて駆け寄り、受け止める。

 

 

「大丈夫かい?」

 

「……ええ、ありがとうござ……」

 

 

 彼女は僕に対してお礼を言いかけたが、その途中で気絶した。

 

 

 そのあと、家に連れて帰り介抱してあげた。

 目が覚めた彼女の話では駒王学園の女生徒で、同様の症状で倒れる者が多発しているという。

 学内では病気か貧血と思われているらしい。

 

 しかし、僕にはその症状が単なる病気や貧血とは思えない。何故なら彼女からは微弱にだが魔術の残梓をかんじたからだ。

 

 それからしばらくの間、駒王学園の周りでそのことを調べた。彼女と同じ魔力の残梓を感じる女生徒が数人見つかった。その娘達に話しかけ、彼女達の魔力の波動から、どうにか怪しい場所を突き止めたのだ。

 

 それがこの森だ。

 

 

 

 

「―――というわけさ」

 

「……ふーん……」

 

 

 リアス達にこれまでの経緯を話し終えた。彼女達の表情はどこか白々しい。

 

 

「……リュカさんだったのね。学園で噂になってたイケメンナンパ男って………」

 

 

 リアスがぽつりと呟いた。どうやら僕のことが噂になっていたらしい。

 今にして思えば僕が声をかけた女生徒は、皆駒王学園の生徒だった。そうなっても無理はないと言える。

 

 

「ところで君達はどうしてここに来たんだい?」

 

「ああ、それは――――」

 

 

 リアスの話はこうだ。

 

 昨日の晩のことだ。彼女達オカルト研究部のみんなにはぐれ悪魔の討伐命令が下った。

 その悪魔自体は難なく捕まったらしいが、そのあとグレイフィアさんから新たなる情報がもたらされたそうだ。

 そのはぐれ悪魔は魔物錬金術師で、冥界の食獣植物とドラゴンのキメラを創造し、それを地上に放ったという。そのキメラがいると思われる場所がこの先にあるそうだ。

 

 

 

「ふむ……、どうやらそのキメラと、魔力の痕跡のある女生徒は関係があるみたいだね。

 よろしい! 僕も同行しよう。いいね?」

 

「……わかったわ」

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 しばらくオカルト研究部の皆と夜の森を歩いた。といっても、この世界にはほとんど危険な魔物もいない。

 散歩気分で歩いていくと、やがて少し開けた場所に来たその中央には―――

 

 

「植物の魔物、ですか?」

 

 

 そこにいたのは、大きな薔薇のような生き物だ。そこらの木々よりずっと大きい。

 その姿を見たアーシアの呟きをリアスが否定する。

 

 

「いいえ、これは……」

 

「ドラゴン!」

 

 

 体のてっぺんから生えた薔薇の蕾が開く、そこから現れたのは巨大な竜の頭だ。

 黄色い鱗に鋭い牙、だが粘液でヌルヌルしている。そこは合成生物(キメラ)故だろう。

 

 ふむ……、この世界のキメラはどんなモノなのだろうかと思っていたが……。しかし、植物型とは解せないな。見るからに重鈍そうで移動には不向きだ。それとも戦闘以外の目的で造られたのだろうか……。

 そのドラゴンと植物のキメラを冷静に観察するが、自分の仲間や今まで倒した者に比べると明らかにおかしい部分がある。どうにも解せない。

 

 

「グレイフィア様が仰っていたのは、これのようですわね」

 

「手間が省けたわね。……ッ!? 隠れて、誰か来るわ!」

 

 

 リアスが皆に呼び掛ける。たしかに人の気配がゆっくりと近づいて来た。木々の間から現れたのは……寝間着姿の二人の少女である。目からは光彩が失せ、まるで夢遊病のようにフラフラとキメラに近づいていった。

 

 

「あれは……うちのクラスの片瀬と村山じゃねえか」

 

「知り合いかい?」

 

「ええ、クラスメイトです。あいつら一体どうして……」

 

 

 二人の少女が合成獣の下に辿り着いた。すると、キメラから触手が伸びてきて、二人の胸部に張り付いた。その触手が蠢き、二人から何やら吸い出しているらしい。

 

 

「う、動いてますけど……」

 

「精気を吸い取っているようですわ……」

 

「アイツっ……!」

 

「待ちなさい、イッセーくん……」

 

 

 イッセーくんが咄嗟に前に出ようとするが、僕が止めた。

 

 

「でも、リュカさん!」

 

「これまでの事例からみても、命まで奪う訳ではなさそうだ。もう少し様子を見よう?」

 

 

 リアス達も僕と同意見だったらしい。イッセーくんは渋々といった感じだが、しばらく観察することになった。どうやらキメラはカタセとムラヤマから精気を吸い取ってるらしい。

 彼女達の様子から推察すると、僕がこれまで声をかけた女生徒達と同じく、魔力をかけられているということが窺える。その魔術は彼女達女生徒を誘き寄せるための物のようだ。催眠の魔力で獲物となる少女を自らの足で、自分の下にやって来させる。あの合成獣はなかなか賢いらしい。

 おそらく、病気で倒れたとされる女生徒達はこのキメラによって精気を吸われたのだろう。

 

 それからまたしばらくすると、彼女達から触手が離れ、カタセとムラヤマは元来た道を戻っていった。

 それを見届けるとリアス達が進み出た。皆、あのキメラを戦って倒すつもりらしい。

 

 

「何にしても―――私達にバレてしまったのが、運の尽きね!」

 

「ちょっと待って、僕が――――」

 

『ギャァア? ギャオオオオオッッ!!』

 

 

 リアスが攻撃しようと滅びの魔力を練り上げる。その敵意を感じ取ったのだろう。竜頭のキメラがけたたましい声で咆哮する。その声で僕の制止が掻き消された。

 

 体から生えた何本もの触手を、一斉に彼女達に叩きつけてくる。

 

 

「油断しないで! 攻撃開始よ!」

 

「はい、部長」

 

「……ぶっ飛ばします」

 

「学園の平和を乱すものは倒さないとね!」

 

「よっしゃあ! 行くぜ、ブーステッド・ギア!」

『Boost!』

 

 

リアスが滅びの魔力を放ち、ヒメジマが雷を降らせる。トウジョウが怪力で蔦を引き千切り、キバくんが魔剣で触手を切り裂く。イッセーくんも赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で能力の倍化を始めた。

 

しかし、オカルト研究部の皆の攻撃は効き目が薄い。というよりあのキメラの回復力は非常に高い。この合成生物を造ったはぐれ悪魔は相当優れた錬金術師なのだろう。

 

 

「これじゃキリがない!」

 

「再生力が攻撃を上回っているわ。本来以上の能力を引き出されているのよ。人間界の空気と土、そしてこの学園の生徒の生気が、余程合っていたようね」

 

 

それらの要素も含めてこの地をセレクトしたのであれば、やはり素晴しい。このキメラを造るのに懸けた熱意が窺えるというものだ。

 

 

「イッセーくん、このキメラを造ったはぐれ悪魔はどんな人物だったんだい? なかなか見所のある人物だと見受けるが―――」

 

「リュカさん! 感心してないで助けてくださいよ!」

 

 

 そんなことを話しているとリアス、ヒメジマ、アーシア、トウジョウが触手に摑まった。

 全身に巻きつかれ、持ち上げられる。

 

 

「きゃあ! な、何なのよ、コレ!?」

 

「あらあら、エッチな触手ですわねぇ」

 

「……また、この展開」

 

「これじゃあ、迂闊に攻撃できない!」

 

 

 彼女達を盾にし、身を庇うキメラ。それによって攻めあぐねるキバくん。

 やはり、かなり知能が高い。しかし、それにしてもリアス達の迂闊さには呆れる。

 

 

「あらあら、困りましたわねぇ」

 

「……ヌルヌルで気持ち悪いです」

 

「はうぅぅぅ……、ヌルヌルが服を……」

 

「このヌルヌルというか……、ヌメヌメというか……服を溶かすようだわ!」

 

 

 リアス達の制服が溶かされている。蔦から染み出る粘液の仕業らしい。それにしても、この前のスラ太郎といい、この世界では服を溶かすのが流行っているのだろうか?

 

 

「部長の魔力で弾くことはできないんですか!?」

 

「駄目! 滅びの魔力がうまく発動できない!」

 

「こちらも雷撃が作り出せませんわぁ」

 

「小猫! あなたの力でも引き剥がせないの!?」

 

「……ヌルヌルが滑って」

 

「くぅっ、このままだと皆全裸になっちまうぜ……ハァ……ハァ……これは何とも大変なことだ!」

 

 

 彼女達の身に纏う駒王学園の制服が溶けていき、彼女達の柔肌が露わになる。

 しかし、そんなことはどうでもいい。問題はこのキメラの触手は“行動封じ”としての完成度か極めて高いことだ。

 

 行動封じ―――状態異常の一つ。状態異常の中でもその種類は多岐にわたり、最も戦闘で警戒せねばならない技の一つ。

 

 それを護衛技と覚えさせるあたり、このキメラを生み出した錬金術師といい、キメラ自身といい、技術・戦闘知識が非常に優れている。

 

 それに引き換え――――――

 

 

「申し訳ないが、正直言って失望したよ。リアスさん……」

 

「こんなときに何言ってるのよ!?」

 

「こんなときだからだ。君達にはあれだけ“敵の行動を封じる技には気を付けろ”と言ったじゃないか。

確かに君達の才能は素晴しい。だからこそ、“弱者の創意工夫”には気を付けろと――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――というわけで……」

 

「お願いだから、今説教するのは勘弁して!!」

 

 

 リアスが叫んだ。触手攻めを受けながらの説教はかなり堪えたのだろう。リアスもヒメジマも皆、若干涙目になってる。しかし、辛くないと意味がない。

 一度目の失敗はいい。問題は二度目以降だ。僕の知る限り彼女達がこういう目に会うのは二回目だ。

 スラ太郎&触手丸のときといい、相手が弱い ⇒ 油断する ⇒ 触手に絡み付かれる というのが多すぎる。これを期に少しは反省してもらいたい。

 

 そうこうしてると、アーシアとトウジョウに絡み付いていた蔦がほどけ、二人が地面に落下する。

 アーシアはイッセーくんが受け止め、トウジョウは自分で華麗に着地した。

 

 

「どうして小猫とアーシアだけを解放したの!? あぁん!」

 

 

 二人だけが解き放たれたことにリアスが驚く。すると、触手がリアスとヒメジマの乳頭に張り付き精気を吸い取り始めた。

 

 

「む、胸だけを、執拗に攻めてきますわ。恐らく……ここから精気を、吸い取って……ぁあん!」

 

「い、いやらしい動きね……ぁ、イヤ!」

 

「何て素晴らし……いや、いやらし……いやいや、何て恐ろしい攻撃なんだ! 女性のおっぱいに張り付いて、精気を吸い出すだなんて!」

 

 

 確かに怖い。敵の行動を封じつつ精気まで奪えるとは……。異世界で戦った茨ドラゴンという魔物も近い技を使い『行動封じ』はしてきたが、体力を奪うなどという事はしなかった。

 やはりかなり強い。是非、仲間にしたい。

 

 

「でも、どうして胸を……?」

 

 

 確かに……それは真っ当な疑問だ。

 

 キバくんの呟きに心の中で同意する。それは僕も分からない。

 すると、イッセーくんが確信めいた声色でこう言い切った。

 

 

「分かりきったことを言うな! 俺だって部長と朱乃さんの胸に吸い付いて精気を吸いたいわ!!」

 

「怪物に共感しないでください!」

 

「それは違うんじゃないかな……」

 

 アーシアがツッコみ、僕が疑問を投げかける。

 イッセーくんの答えを聞き、魔物は大きく形状の異なる者同士でも配合できないこともない、ということを思い出したが、キメラにとってアレは食事であって発情しているわけではないということから否定する。

 

 

「共感ではない! 俺は今、猛烈に嫉妬しているのだ! おのれキメラァァァ!!」

 

「ちっとも駄目ですぅ!」

 

 

 イッセーくんが嫉妬の炎に燃え盛り、アーシアがツッコむ。そういえば旅芸人の技に『ツッコミ』というものがあった。眠りから起こしたり、混乱を解いたりできる便利な技だ。今度、アーシアに教えてあげよう。

 

 

「あっ! そう言えば、体調不良を訴えていたのは、胸の大きな女性ばかりだった」

 

「そうか! つまり、こいつの獲物は巨乳限定!」

 

 

 キバくんの気付きにイッセーくんもハッとなる。しかし、巨乳限定か……。今、家にいる者達には胸の豊かな者が多い。バイサー、レイナーレ、カラワーナ、イシュダル………  ミッテルト以外なら大丈夫だ。餌には困らないだろう。

 

 一方、リアス達は乳頭から精気を吸われ悶えている。だが、苦しんでいるようではない。それに死にもしないのは実証済みだ。キメラが満腹になるまで放っておこう――――

 

 そう考え傍観していると、宙吊りにされたリアスの前にグレイフィアの姿が映し出された。

 どうやら立体映像のようだ。

 

 

『上級悪魔の淑女たる者が、そのような卑猥な声を漏らしてはいけません』

 

 

 グレイフィアはリアスがはしたない嬌声を上げていることを冷静に窘める。しかし、諌めるべきなのはそのことではなく、油断して縛り付かれたことの方だろう。どうやら彼女も若干ずれてるらしい。

 

 

「グ、グレイフィア! そんなことより、何か新しい情報を……いやあっ!」

 

『はい。例のキメラは、胸の大きな女性から精気を吸う習性が………』

 

「分かってるわよ! 今、まさにそうされてる、ところ……はあん!」

 

『更にもう一つ、特殊な能力を付与されているようでして。このキメラが実らせた実を口にすると、どんな小さな胸の女性でも、たちまち豊かなサイズになるそうです』

 

 

 は?

 

 

『はぐれ悪魔曰く……

 

 

『世の女性が巨乳になれば、女性の心は豊かになり、男性も夢を持って羽ばたける! 貧乳は罪であり、残酷だっ!! 世界を巨乳に!! 乳・エ―――ンド・ピ――――ス!!!』

 

 

……と』

 

 

 ふぅむ……『女性の心は豊かになり、男性も夢を持って羽ばたける』か……。

 

 どうやら、そのはぐれ悪魔なりに世界を憂いての行動だったらしい。方法は少々偏ってはいるが、その心意気は素晴しい。“世界の為に何かを行動する”。それは内容の如何に関わりなく難しいものだ―――。

 

 僕の横でイッセーくんが感動の涙を流している。どうやら、僕と同じ思いだったらしい。

 

 

「乳・アンド・ピース……。

 な、……何て壮大な夢なんだ! こんな素敵な野望の実現があっただなんて! おっぱいのサイズに悩む女性の為に生み出された究極の生物! それに故にあの悪魔は部長のおっぱいをガン見し、従える蟲も朱乃さんのおっぱいを! 胸にそこまでの執着があったからこその行動理念! 主を裏切ってまでの夢の実現! 感服するぜッッ!!」

 

 

 イッセーくんにとって、はぐれ悪魔のとった方法も大いに共感できる物のようだ。イッセーくんの様な男がいる以上、その錬金術師もあながち間違っていないのかもしれない。

 

  ドゴォ……

 

 後ろから強い気配がした。

 

 

 

「……貧乳は罪、……貧乳は残酷、…………ぶっ潰す」

 

「あうぅ……、どうせ私は部長さんや朱乃さんみたいなおっぱいはありません……」

 

 

 トウジョウが大木を持ち上げキメラに投げつけようとし、アーシアがいじけて項垂れていた。

 一方、キバくんはリアス達を助けようとキメラに向かって行こうとする。

 

 

「部長達は僕がっ!」

 

「待つんだ、イケメン!」

 

 

 そう叫ぶと、イッセーくんはキバくんより前に進み出て、真剣極まりない面持ちでリアスに直談判していた。

 

 

「部長! このキメラを見逃してください! こいつは、全男性の夢を実現できる最高のキメラだと思うんです!!」

 

「な、何言ってるの!? もう! こんなときにイッセーのエッチなスイッチが入るだなんて!」

 

 

 流石のリアスも戸惑っている。まあ、いいか…………。

 

 

「あらあら、困りましたわねぇ」

 

「こいつがいれば、貧乳の女性たちの悩みが解決するんです!

 そして、はぐれ悪魔が言うように、そのおっぱいを見て、男性も立ち上がれる、ってお前、人が必死で擁護してやってるってのに!」

 

 

 話しているイッセーくんの頭をキメラがビシバシ叩き、イッセーくんがそれに文句を言う。

 

 そりゃそうだ……。そんな邪念まみれじゃ懐く魔物も懐かないよ、イッセーくん。

 

 

「……どいてください。そのキメラは私の敵です」

 

 

 トウジョウが合成生物を倒そうと進み出る。普段、あまり顔に表情を出さない彼女が怒り狂ってる。それを見たイッセーくんは必死の形相で言い募る。

 

 

「見るんだ、小猫ちゃん! あの実を食べれば、小猫ちゃんもたちまち巨乳に――――」

 

 

 イッセーくんが乳房のような形状の果実を指さす。だが次の瞬間、キバくんが魔剣で果実とリアス達を縛っていた触手を切り裂いた。

 

 

「テメェ、木場ぁぁぁぁ!! 何てことしてやがるんだぁぁぁアアッ!」

 

「全く、イッセーにも困ったものね……。それにリュカさんにも……」

 

 

 リアスが怒った表情で僕とイッセーくんを睥睨する。どうやら触手に縛られてるときに説教したことが、かなり恨まれているらしい。

 

 

「ぶ、部長! これは世の女性達の希望と未来を……」

 

「ウソは良くないよ。君が考えていたのは、女性が巨乳になる事だけだろう?」

 

「ちょっ、リュカさん!?」

 

 

 (イッセーくん)の言い訳を一言で喝破する。その一方、リアスは僕に構うことなくイッセーくんにこう告げた。

 

 

「いいからお聞きなさい! イッセー、あのキメラを倒したら……私と朱乃の胸を一晩中好きにしていいわ!」

 

「なっ……!」

 

 

 イッセーくんが地面に倒れ込み、頭を押さえながら思い悩む。どうやら相当迷っているらしい。

 とはいえ、どちらを取るかは明白だろう。世界中全ての女性を“ある一面で”のみではあるが救済できるのだ。

 当然、“キメラ助命”を――――

 

 

 

「はい、目の前のおっぱいには敵いません。「……は?」

 ……届かぬおっぱいよりも、届くおっぱい! 今から俺はお前を倒すぜ、キメラ野郎!!」

 

 

 えーーーー………。

 

 

「イッセーさん……」

 

 

 僕は心の中で呆れ、あの優しいアーシアまで冷たい眼差しをイッセーくんに向けている。

 

 

「イッセー、私に力を貸して頂戴!」

 

 

 茫然としている僕達をよそに、イッセーくんにリアスが命じる。それに(イッセーくん)が応じる。

 

 

「任せてください!」

 

 

 赤龍帝の籠手が輝く。キメラが放つ粘液と触手を掻い潜り、躱して力を倍化する。

そして―――

 

 

「Transfer!!」

 

「確かに、一部の女性の悩みは解決できる力なのでしょう。けれど、その為に犠牲者を出すわけにはいかないわ。消えなさい!!」

 

 

 イッセーくんの力の譲渡を受け、リアスの体と周囲が禍々しい赤黒い輝きで覆われる。

彼女(リアス)が倍化する力で強化された滅びの魔力をキメラに向けて放とうとする。

 しかし、その莫大な魔力が解き放たれた瞬間。僕は飛び出す。

 

 

「『大防御』!」

 

 

 闘気のオーラを身に纏い、リアスの攻撃を打ち消す。なかなかの衝撃だが何とか防げた。

 

 

「ちょっと、リュカさん!?」

 

「この子は僕が引き取ろう」

 

 

 これまでタイミングを逃していたが、やっと言えた。

 

 

 

 

 

 その後はまあまあ大変だった。トウジョウに

 

「君は確かに貧乳だ。だが、そんなことは問題ではない。大切なのは心だ。例え体型が小学生みたいであっても、君の心が、魂が大人なら、君は立派なレディーだ」

 

 ―――と言ったらぶん殴られた。あと、触手攻めの真っ最中に説教したのが余程腹に据えかねたのだろう。

 今度は逆に、僕がリアスから説教されるハメになった。

 

 だが、必死に謝ったら バラじろう を貰えることになった。

 やはり何事も誠意が一番大切だと、改めて実感できた。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 自宅 アパート

 

 

 

「―――という訳で、今度一緒に暮らすこととなった バラじろう だ。皆、仲よくしてやってくれ」

 

「「「………………」」」

 

 

 同棲しているレイナーレ達にバラじろうを紹介する。

 全員、呆れたような目を向けてくる。

 

 

「……ふっ、アハハハハハッ、リュカってば、しょうがないわね~」

 

 

 しばらく、冷たい沈黙が続いたが、レイナーレが引きつった笑い声を上げた。

 それに続き他の皆も同様に笑いかけてくる。

 

 

「まあ、御主人様だもの。仕方ないわぁ」

 

「そうだな、御主人だからな」

 

「お兄さまっすもんね」

 

 

 どうやら彼女達も理解してくれたらしい。ありがたい、本当にありがたい。

 

 

「そこでなんだが、君達に御願いがある」

 

「お願い?」

 

「そうだ。この子の餌やりだ」

 

 

 この(バラじろう)を仲間にする上で避けられないことなので話しておこう。

 

 

「分かったわ。何をあげればいいの?」

 

 

 レイナーレが皆を代表して尋ねてくる。

 

 

 

「君達のおっぱいだ」

 

 

「……………は?」

 

 

「君達のおっぱいだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「 捨 て て こ い ! ! !」」」」

 

 

 

 ちなみに、ミッテルトに「君は小さいからいいよ」と言ったら光の槍で刺された。結構 痛かった。

 

 

 

 




バラじろうって微妙な名前だと思いましたが、他に妙案が浮かばなかった。
どなたかいい名前を……って、もうやっちゃったから無理か。
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