3期でもアニメのみのはぐれ悪魔って出るんでしょうか?
「この廃工場か……この中に?」
深夜、寂れた工業地域の一角。そこに問題の廃工場があった。門は片側の扉が外れ、残ったもう一方の扉も鉄製の格子戸も拉げている。その奥にある建物も、設備は錆付き、窓ガラスは一枚残らず割れ、外壁には蔓が伸びている。いかにも人がより付かない場所だ。
「……間違いなく、はぐれ悪魔の臭いです」
トウジョウがそう呟いた。確かに僕も何かの気配を感じる。それも、ヒトに対してあまり友好的ではない
「今晩中に倒すように、ということですわ」
ヒメジマがそう続けた。緊急の討伐命令が下るというのは、ただの討伐命令が下ったはぐれ悪魔よりも危険性が高いという事か―――。
そのことを察し、僕も気を引き締める。リアスが好戦的に目を輝かせて皆に命じる。
「それだけ危険な存在ってことね。中で戦うのは不利だわ。アーシアは後方待機」
「……あっ、はい!」
「朱乃と私は外で待ち構えるから、小猫と祐斗とイッセーで敵を誘き出してちょうだい」
「はい、部長」
「……はい」
「了解! ブーステッド・ギアッ!」
リアスの指示を聞き、アーシア、ヒメジマ、トウジョウが答える。
イッセーくんは
しかし、キバくんは気の抜けた顔だ。いつもの彼らしくない。
「祐斗?」
「……あ、解りました」
リアスに再び呼び掛けられ、キバくんが返事をする。だがその声も明らかに緊張感に欠けるものだ。
やはり彼のことは心配だ。
しかし、そんなことよりも――――
「あの~……僕は?」
リアスは僕のことを丸っきり無視している。
やはり、『もう服は溶かさせない! 地獄の触手克服大特訓 スペシャルコース』を受講させたことを引き摺っているのだろうか。
しかし、彼女の答えは違った。
「リュカさんはここで私達と待機してちょうだい」
「どうして?」
「緊急の討伐命令が下る、ということは、はぐれ悪魔化してからもう随分時間が経っているということよ。
悪魔はね、はぐれ悪魔化して時間がたった者の方が凶暴化している者が多いの。バイサーのときは“愛”で何とかなったのかもしれないけど、完全に理性をなくした相手にそれが通じるとは思えないわ」
リアスが真剣な表情で僕を見つめ、説明してくれる。
理性を無くした はぐれ悪魔―――どんなものか想像もつかないが、そんなことで引くわけにもいかない。
「心配しないで欲しい。君の言いたいことは分かった。でも、僕は自分の力を過信して他者を危険に晒すようなことはしない。信じてくれ」
リアスの青い瞳を真っ直ぐに見詰め、誠心誠意を込めてお願いする。
その思いは通じたらしい。
「……分かったわ。私の可愛い下僕達を頼みます」
話はついた。僕もイッセーくん、キバくん、トウジョウと共に工場内に潜入することとなった。
イッセーくんが張り切って、皆に声を掛ける。
「じゃあ、行くか! 木場、小猫ちゃん、リュカさん!」
「……はい」
「ああ」
「うん、行こうか」
こうして、廃工場の門を潜った。錆付いた扉の前に進む。
イッセーくんが強敵と戦えることへの昂揚感からだろうか、妙に明るい声で一人言のように話す。
「どんなやつかな。またバケモノみたいなやつだったら―――」
「……えい」
バァァン!
イッセーくんの言葉を遮り、トウジョウが拳で錆付いた扉を吹っ飛ばす。気を抜いていたイッセーくんは少し驚いたようだった。
「やっぱ、いきなりですか……」
「……行きますよ」
トウジョウを先頭に、皆で廃工場内に入る。中は放置された機材だのが壁際に打ち捨てられたいたが、それでも閑散としていた。それでも窓から月明かりが入ってくるためか、割と見通しは良い。
しばらく進み、イッセーくんが辺りを見渡す。
「何も見当たらないような……あ、小猫ちゃん」
トウジョウが突然立ち止まった。いつになく真剣な表情で呟く。
「……来ました」
巨大なパイプの裏から出て来たのは、薄い水色の髪をした儚げな印象を与える美女だった。フラフラと僕達の前に出てくると、突然変化した。一瞬にして、目が巨大になり吊りあがり、口が裂けたように開き何本もの長い牙を覗かせる。角が生え、腕も更に二本生え、脚も二本生える。
その様は、まるでヒトと蜘蛛が合わさったかのような、醜く歪な異形のモノだ。
「えっ!? わっ! やっぱバケモノか!!」
『Boost!!』
イッセーくんが驚くが、すぐに落ち着きを取り戻し
或いはバイサーで免疫が付いたのか、彼もまた成長しているのだ。
蜘蛛のようなはぐれ悪魔は壁を伝い、天井を伝い移動する。かなりの機動力だ。バイサーには悪いが、出会った当初の
「……祐斗先輩、お願いします。―――祐斗先輩!」
トウジョウがキバくんに呼び掛ける。だが、キバくんは戦いの最中だと言うのに下を向き、まるで聞いていなかった。普段から無口なあのトウジョウが珍しく声を荒げる。
「ご、ごめん」
キバくんが謝るがはぐれ悪魔はそんなことにはお構いなしだ。腹部後端にある
はぐれ悪魔の攻撃に気付いたのは、すでに攻撃が放たれた後だった。
僕が咄嗟に前に出る。
トウジョウ を かばった!
ジュウゥゥゥ!!
「ぐうっ」
はぐれ悪魔の糸攻撃を体の前面で受けた。どうやらこの糸には強い酸が含まれていたらしい。闘気でガードしたので大事には至らないだろうが、ちょっと肌が爛れた。まあまあ痛い。
「野郎ッ!」
『Boost!!』
僕が攻撃を受けたのを見たイッセーくんが叫び、更に能力を倍化させる。
『Explosion!!』
イッセーくんが力の倍化を止める。彼の体力ならもっと強化できたはずなのに、である。おそらく、僕が負傷したのを見て、勝負を焦った為だろう。
「ドラゴンショット!」
吼えるような掛け声と共に、
パシッ
しかし、直撃したものの、強靭な脚によってあっさり弾かれる。やはり倍化が足りなかったのだろう。それでもそこそこの威力はあったはずだ。このはぐれ悪魔はそこそこ強いと思っていたが、認識が甘かったらしい。
「やっぱりパワーアップが足りないか……って、何、ボーっとしてんだ、イケメン!!」
イッセーくんがキバくんに呼び掛ける。こんなときでも
「キバくん!」
「はあああああっ!!」
僕とイッセーくんの呼び掛けで、ようやく正気に戻ったのだろう。はぐれ悪魔に飛び掛かり、片腕を切り落とす。
しかし―――
キバくんは着地に失敗し、床に落ちてた古ぼけたパイプに躓きバランスを崩した。
理性はなくとも本能によるものか、そのことを大蜘蛛のはぐれ悪魔は見逃さなかった。
倒れたキバくんに馬乗りになった。巨大な口で少年の頭を食い千切ろうとする。
「木場ぁぁっ!!」
このままではキバくんの命が危ない。しかし、はぐれ悪魔の敵意は完全に
今がチャンスだ。素早く気を練り上げ、はぐれ悪魔とキバくんの間に割って入り―――
「『魔物馴らし』!」
魂と闘気、そして愛を込めた掌底打ちを怪物の顔面に叩きこむ。その衝撃で大蜘蛛は後ろに吹っ飛び、コンクリートの壁に激突した。
「大丈夫かい、キバくん!」
「……ええ、何とか……ありがとうございます」
キバくんの体を見回すが、どこにも外傷はない。どうやら無事の様だ。
一方、壁に叩き付けられた はぐれ悪魔はゆらりと起き上がった。
それを見て イッセーくんとトウジョウが身構える。
「ガアア……、ウガアアアアアァァァッッ!!」
はぐれ悪魔が雄叫びを上げ、七本の脚で床を這い、猛スピードで突撃して来た。
「来るぞ、小猫ちゃん!」
「……はい!」
はぐれ悪魔が僕達の眼前に差し迫る―――
「あ~~~う~~~~♡」
はぐれ悪魔が僕の胸に飛び込んで来た。さっきまでの異形の大蜘蛛ではなく、最初の儚げな裸体の美女に戻っている。彼女は僕の体に頬擦りしてくる。
「ああ、もう大丈夫だ。先程の『魔物馴らし』が効いたみたいだ」
イッセーくん達は、もう危険が去ったことを知り安心したようだ。
僕達に生温かい眼差しを送ってくる。
「君は何ていう名前だい?」
「う~~?」
取り敢えず名を尋ねてみるが、彼女は不思議そうな表情をする。どうやら質問の意味が分かっていないらしい。肉体的には成熟した女性の様だが、そのリアクションはまるで赤子みたいだ。
そういえばリアスは“はぐれ悪魔と化して時間が経ち過ぎると理性を失う”と言っていた。おそらくその影響だろう。
「ふむ……、困ったな。名前が分からないか……。では君の名前は『クモりん』にしよう。今日から君はクモりんだ」
「う~~♪ クモりん♪ クモりん♪」
「そういう訳だから、この子は今日からクモりんだ。皆、よろしく頼むよ」
「……は、ははは。流石リュカさんッスね~……」
僕がクモりんを皆に紹介する。イッセーくんが乾いた笑い声を上げる。おそらく“つい数分前まで戦っていた相手と和解する”ということにまだ慣れていないのだろう。
トウジョウの方は何故かジト目で睨みつけてくる。何か思うところがあるらしい。
「……いやらしいです」
「は? いやらしい?」
一瞬、何を言われているのか解らなかったが、改めてクモりんを見てその理由が分かった。
そう考えると、イッセーくんの教育上よろしくない。
「そうか……。じゃあ―――」
腰に掛けた袋から、適当な服を何着か見繕う。
「この『サマードレス』なんかどうだろうか? この世界でもあんまり目立たないし、意外に守備力がある」
しかし、クモりんは首を横に振る。どうやらあまり気に入らなかったらしい。すると彼女は床に置いた装備の中から、ある服を選んだ。
「う~~♪」
「いや、それは駄目だ」
彼女が選んだのは『踊り子の服(Ⅴ)』だった。
踊り子の服(Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ)―――俗称『ふんどしビキニ』。女性用装備の中でも、最も過激なデザインで、最も守備力が低い物の一つである。とてもこの世界の街を闊歩できる物ではない。
「ならせめてこっちの『踊り子の服(Ⅷ、Ⅸ)』に―――」
そう言って、別世界の踊り子の服を見せる。こっちのはスカートが付いている分露出度が低い。それでも十分際どいが………。
「うー! やっ!」
クモりんが拒絶する。どうやらかなり『ふんどしビキニ』が気に入ったらしい。僕では彼女に無理矢理に別の服を着せることは出来ないようだ。赤ん坊の息子と娘の世話をしていれば出来たかもしれないが……。
僕には赤ん坊の面倒をみた経験が無かった。
「まあ、いいか……それで……」
結局、僕が折れて彼女は『踊り子の服(Ⅴ)』を装備することになった。
踊り子の服はクモりんにとても良く似合っている。守備力は低いが――――
「ああ、待たせたね。トウジョウさん、これなら問題はないだろう?」
まあ、多少の問題はあるかもしれないが、飽く迄“多少”だ。真っ裸じゃないし、警察の御厄介になることも……多分ないだろう。
そう思い、トウジョウに確認を取っているとクモりんが抱きついてきた。
「う~~~♡」
ペロペロペロペロ……
クモりんが僕の顔を舐め回してきた。たぶん、犬や猫が飼い主を舐めるのと同じ、親愛の証しなのだろう。
そう思った僕は彼女の頭を撫でてあげる。クモりんは目を細め、嬉しそうにする。
「……いやらしいです。リュカさんが」
「えっ!? 僕が!?」
トウジョウの無情なツッコミに、僕の心はえらく傷付いた。
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