時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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ドラゴンクエストヒーローズにビアンカとフローラが出るらしいですね。デボラェ…。


35話 作戦開始

  

 

「あ、言い忘れてた……」

 

 

 夕暮れ時の帰り道。今日一日あったことを反芻していると、重大な過ちをしていることに気付いた。

 あの後、姿が変わり性能もアップしたが、すっかり変わり果てた『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』をゼノヴィアに押し付け、半ば逃げるように立ち去った。色々と問題が山積みになってはいたがそれらは後回しだ。後日、時間を取ってきちんと詫びねばなるまい。

 

 しかし、それよりも切迫した問題がある。暗黒闘気を纏ったフリードの存在だ。誤って『破壊の聖剣』を折ってしまったことで気が動転してしまい、自分の他にも異世界から着た者がいるかもしれないということを言い忘れてしまった……。

 

 

「……ま、いいか」

 

 

 今日は流石に疲れた。彼女達(ゼノヴィアたち)の大切な剣を壊したときは本当に肝が冷えた。肉体的な疲労より精神的な物の方が大きかった。今晩はゆっくり眠りたい。

 

 それにしても……。この世界における悪魔・堕天使・天使の対立は思っていたより深刻なようだ。聖剣を堕天使側が奪い、それを破壊してでも使わせまいとする教会……。

 無論、力ずくでもある程度であれば何とかなる。仲間達の協力もあれば強引に争いを止めれなくもない(少なくとも自分が関わった者の力量から鑑みれば)。しかし、この世界に来てもう数カ月になるが、依然としてこの世界の歴史には疎いと言わざるをえまい。

 この世界の出来事はこの世界の住人にできるだけ解決させたいという思いもある。それでも、目の前にいる苦しんでいる人々は助けたい。

 

……はぁ、自分でもつくづく自己矛盾が嫌になるな。

 

 

 軽く自嘲した気分になるが、そんなことを言っても何も始まるまい。取り敢えず今は家に帰り、コカビエルとやらについてレイナーレ達に尋ねてみよう。そう考え歩く速度を速めた。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

「あら、おかえりなさい」

 

 

 自宅アパートに帰ってくると、レイナーレが出迎えてくれた。何故か彼女は

 

  E.「ヘッドドレス」

  E.「メイド服」

 

 という出で立ちだった。良く似合っている。というより元々かなりの美少女なのだ。何を着ても大抵は似合う。

 何故、女中の格好などしているのか? ふと、そう疑問に思ったが、すぐに答えは分かった。テーブルには沢山の料理が並んでいる。今夜は彼女の当番らしい。

 

 でも、どうして態々メイド服を……?

 

 

 そんなことをまた疑問に感じたが、取り敢えず席に着いた。他の皆もすでに席に着いている。

 

 

「いただきます」

 

 

 メニューはどうやら和食らしい。この国の郷土料理で彼女(レイナーレ)のお気に入りだと言っていた。

 僕も嫌いではない。レイナーレの作った焼き魚を口に運ぶ。

 

 

「どう? 美味しい?」

 

 

レイナーレが心配そうに上目使いで尋ねてくる。

 

 

「ああ、美味しいよ」

 

「ホント!?」

 

 

 絶妙な塩加減だ。ふっくらと焼き上げられており大変美味しい。旅の最中は宿屋に泊まった時以外、海辺で釣り上げた魚を下ごしらえもせず熱した油に放り込んだものや、保存食の干し肉、更に魔物の餌など、ロクな物を食べていない。

 グランバニアでは友人のコックのグレンが手の込んだ物を作ってくれたし、幼少の頃はサンチョもいた。ここ最近はカラワーナとバイサーが調理してくれる。

 だが、レイナーレの料理はどこか違う。何故か懐かしい感じがするのだ。それは何故

か――――

 

 しばらく黙考したのち、やっと思い出した。

 

 ―――妻の味だ……。

 

 

 彼女(レイナーレ)の料理――――材料も様式も全く異なるものだが、どこか妻の手料理に似ている。結婚してからは毎日のように食べていた物が、つい先程までその味を思い出せなかった。郷愁に駆られ、つい目元が潤む。

 

 

「えっ!? 泣くほど美味しかったの!?」

 

「……ああ、……ああ! レイナ―レ……。ありがとう。本当にありがとう……!」

 

「そ、そこまで言うなら毎日作ってあげてもいいわよ……?」

 

「……ああ、頼む」

 

 

 それから少しの間、長く離れた故郷に思いを馳せ、妻との……家族との思い出に浸った。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 夕食後、しばらくして

 

 

「レイナーレ、ミッテルト、カラワーナ。君達に聞きたいことがある」

 

「一体何かしら? リュカ……」

 

 

 この世界で仲間にした堕天使三人とちゃぶ台を挟んで向き合う。そして、ゆっくりと問い掛けた。

 

 

「“コカビエル”と言う者についてだ」

 

「コカビエル様について? どうしてそんなことを……。そうね――――」

 

 

 三人の解説はこうだ。

 コカビエル―――堕天使の幹部。この世界の『聖書』に記されているほどの大物で、過去の大戦を生き延びた強者らしい。更には『神の子を見張る者(グリゴリ)』の中では強硬派で、総督のアザゼルや副総督のシェムハザと対立している不満分子の筆頭だという。

 

 

「……ふむ、だとすると今回のことは『神の子を見張る者』の総意ではない、ということかい?」

 

「……そうね。アザゼル様は『二度目の戦争はない』と宣言されたそうだし……。多分コカビエル様の独断ね」

 

「そうか……」

 

 

 戦争狂。確かにそういう輩もいるだろう。自分達の世界ではかつてラインハットがニセ太后によって支配されていた時代にそういう手合いの者を何人か見かけている。大方は血に酔った者達で、あまり見ていて気持ちの良いものではなかったのを記憶している。

 

 何にせよ話し合いで解決するのがいい。できるだけ丸く収まるよう頑張ってみるか……。

 

 

 改めてこの世界の根深い問題について考えさせられることとなった。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

  翌日 昼

 

 

 

「もうッ、御主人様ったら『君が心配だ。今日はどうあっても着いて行く』だなんてどうしたのよ? でも、それはそれで嬉しいけど~♡」

 

 

 商店街の大通り。いつも通り買い出しに出かけるというバイサーに同行を申し出た。何せ昨日の今日だ。フリードやゼノヴィア達にうっかり出くわしでもしないかと思ったのだ。

 彼女(バイサー)は初めこそ訝しんだが、最後は快く了承してくれた。歩きながらも強引に腕を組んできて、僕に擦り寄ってくる。

 

 

「ねえ! そこのカップルの御二人さん! 今日は牛肉が安いよ!」

 

「「カップル!?」」

 

 

 肉屋の御主人に声を掛けられた。どうやら僕とバイサーを恋人同士だと勘違いしたらしい。特売品の牛肉を勧めてくる。

 すると、バイサーが悪乗りしだした

 

 

「あら、そうね。今日はハンバーグにでもする? ダーリン♡」

 

「……は、はは……。そうだね」

 

 

 そんなくだらないやり取りをしていると、横から何やら声が聞こえて来た。ふと目をやると人だかりができている。どうやら物乞いらしい。

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉっ!」

 

 

 二人の姿を見た途端、頭を抱えた。白い外套を羽織った二人の女性―――ゼノヴィアとシドーだ。

 

 

「何てことだ! これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ!」

 

「毒づかないで、ゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ? ああ、パン一つさえ買えない私達……!」

 

 

 どうやら路銀が尽きたらしい。それで物乞いの真似事をしているようだ。しかし、教会はちゃんとした資金を与えなかったのだろうか? まあ、異世界にはたった50Gしか持たせてもらえず旅に送りだされた勇者もいるようだし、不思議ではないが……。

 そんなことを考えていると、すぐに答えが出た。

 

 

「ふん。元はといえば、お前が詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

「何を言うの! この絵には尊い聖なる御方が描かれているのよ! 展示会の関係者もそんな事を言っていたわ!」

 

「では、これが誰なのか解るか? 私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

「え~とっ……ペトロ様?」

 

 

 彼女達の横に何やら絵が置いてある。素人目から見ても下手だと分かる肖像画だ。折角の路銀をこんな物の為に使うとは……。

 どうやらシドーが衝動買いした物らしい。ハッキリ言って冒険者としては完全に落第点だ。冒険者の鉄則の一つが「無駄な買い物はしない」だ。僕もサラボナで破邪の剣を思わず購入したが、父の残してくれたパパスの剣とキレ味において大して変わらなかった。それより防具に回し、まどろみの剣まで粘ればよかったと後悔するハメになってしまった。

 

 

「……そうね。それじゃ、異教徒を脅してお金をもらう? 

 主も異教徒相手なら許してくれそうなの」

 

「おい!」

 

「あ、貴方は!?」

 

 

 シドーの何気ない物騒な発言につい前に出る。心の中で『お前も人の家の樽だの壺だのを勝手に壊してただろ!』という声が聞こえたが、今は気にしないでおこう。

 それより、今は彼女達への説諭が先だ。

 

 

「いいかい? 強盗だの物盗りだのは信徒として以前に人として―――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――ということで………、あれ?」

 

 

 見ると、教会の使者達は地面に倒れていた。どうやら、空腹のあまりグロッキーしたらしい。どうやら説教が長くなり過ぎたようだ。

 

 

「何してるんスか……? リュカさん」

 

 

 後ろから話掛けられた。若干戸惑っている声だ。振り返ってみるとイッセーくん、トウジョウ、それとソーナの眷属のサジくんだった。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

「美味い……。イリナ! この国の食事は美味いぞ!」

 

「これよこれ! ファミレスのセットメニューこそ私のソウルフード!」

 

「物凄い食べっぷり……」

 

「よっぽど腹減ってたんだな……」

 

 

 近くのファミリーレストラン。そこにイッセーくん達とゼノヴィア達といっしょに入ることになった。何でもイッセーくん達がゼノヴィアさん達に用があったらしい。

 注文した料理が届くと、彼女達は物凄い勢いでたいらげていく。その様にイッセーくん達は少し引いている。

 

それらを食べ終えると、今度は嘆きだした。彼女達は少々感情の起伏が激しいらしい。

 

 

「なんということだ……。信仰のためとはいえ、悪魔に救われるとは世も末だ……」

 

「私達は悪魔に魂を売ってしまったのよ……!」

 

「奢ってもらっといてそれかよ!?」

 

 

 イッセーくんが堪らずツッコむ。まあ、その気持ちは分からなくもない。

 

 

「僕が出そうか?」

 

「い、いえ……。そこまで世話になるのも悪いんで……」

 

 

 僕がイッセーくんに申し出たが、彼に断られた。

 するとゼノヴィア達は、今度は祈り出す。何とも面白い娘達だ。

 

 

「主よ! この心優しき悪魔達に御慈悲を!」

 

「痛たたた……!? 神の御慈悲なんかいらねーよ!」

 

「ぐあああぁぁぁっ!」

 

「っ……!?」

 

「あぁん……。痛いわ、御主人様~~」

 

 

 彼女達の祈りを受け、イッセーくん達が苦しみ出す。僕の横に座っているバイサーも同様だ。痛みを和らげるように頭を撫でてやる。

 

 

「あらごめんなさい。つい癖で」

 

 

 シドーがあっさり言う。この娘は結構天然らしい。場の空気を切り替えるようにゼノヴィアがイッセーくんに問う。

 

 

「で? 私達に接触した理由は?」

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい!」

 

「何……?」

 

 

 イッセーくんの返答に、ゼノヴィアは軽く驚いたのか、目を細めた。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

「……話は分かった。一本くらいなら任せてもいい」

 

「っ……しゃあっ!」

 

「くぅ……! あっさり断ってくれると思ったのにぃ!」

 

 

 イッセーくんの説明を聞き、あっさりゼノヴィアが了承する。その答えを聞いたイッセーくんは小さく歓声を上げたが、反対にサジくんは項垂れた。どうやら(サジくん)はあまり乗り気ではなかったらしい。

 

 一方、ゼノヴィアとシドーは内輪で揉めている。

 

 

「向こうは堕天使の幹部『コカビエル』が控えている。正直、私達だけで聖剣三本を回収するのは辛い」

 

「それは分かるわ! けれど!」

 

「無事帰れる確率は三割程度だ」

 

「それでも高い確率だと覚悟を決めて、私達はやって来たハズよ!」

 

「ああ。私達は端から、自己犠牲覚悟で上から送り出されて来たからな」

 

「……それこそ、信徒の本懐じゃないの」

 

 

 双眸に決意を秘め、シドーがゼノヴィアに話す。だが告げねばならないことがある。

 

 

「……あー、二人には悪いが、君達だけだと無事に帰れる確率は三割を切ると思うよ」

 

「何!?」

 

 

 そこで、少年神父(フリード)の変貌について語る。暗黒闘気――――この世界における仙術のようなものを身に付け、状態異常に対する強力な耐性を与える魔のリングを所持していることを告げた。

 

 

「あと、これは憶測だが……、どうもここ最近起きている出来事……『スーパーキラーマシン』、『古の魔神』とフリード達には関わりがあるような気がする。

 言っておくが、あの『魔神』クラスが出てくれば、その『聖剣』でも太刀打ちできない。僕の助けは必須かと思うよ」

 

「………分かった。俄かには信じられない話だが、エクスカリバーを復活させたことも貴方が『異世界人だから』と言われれば納得できなくもない。貴方の助力を願おう」

 

 

 こうして急造チーム『エクスカリバーこわし隊』(僕命名)が結成されることとなった。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 場所を変え、始めてイッセーくんと出会った広場 そこでキバくんと待ち合わせし会合する。そこでイッセーくんとゼノヴィアの取引の内容をキバくんに告げた。

 

 

「……成る程。でも正直、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だね」

 

「随分な物言いだね? 君はグレモリー眷属を離れたそうじゃないか。“はぐれ悪魔”と見做して、ここで斬り捨ててもいいんだぞ」

 

「えっ? それは僕に対して喧嘩を売っているのかい? バイサー達に手を出そうと言うなら、またその聖剣をへし折るが……」

 

 

 傍らにいるバイサーを抱き寄せ、ゼノヴィアに告げる。すると彼女は飛び退いた。

 

 

「いやいやいやいや! 貴方に対しては言っていない!」

 

「あん♡ もう、御主人様ってば何処を……」

 

 

 反射的に抱き寄せた為、少々不味い所に触れてしまった。バイサーが甘い吐息を洩らすが、トウジョウが白い目で見ているのでそっと離れる。

 

 そんな僕達を無視したシドーがキバくんに語りかける。

 

 

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと教会に?」

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

 

シドーの言葉にキバくんは更に憎しみを強めているらしい。それにしてもシドーの言葉だ。どんなに失礼だと分かっていても、やはり彼女達の姿は『光の教団』と重なる。

 

 

 

 ――― 誰かが教える必要があった。神ではなく魔王に仕える心構えを。誰かが救う要があった。神なき世界に生きる人々を! 

 私は努力した! だが、私は己が力の限界を知る誠実な男だ。だから、私はマーサを求めた。彼女の大いなる力を……ああ、けして私自身の為にではない。人々の為に欲したのだ。 

 例え、結果として、この手が血赤に染まろうとも……故郷の人々を裏切り、我が神を奉じぬ奴隷達を、多く死に至らしめることになるとしても………私は、私の定めを為さなければならなかった!

 大いなる天数の前には、たかが人間一匹、逆らうことなどできはしない!                

 

 

 かの男の言葉。あの血塗られた悲劇の大元凶。彼は自分を「誠実だ」と言った。確かにそれは真実なのだろう。奴は決して生来の悪ではなかった。それなのに多くの者を死に至らしめ、数多の不幸を産んだ。

 シドー達があの男を見れば、一体どう思うだろう? あの男がこの世界を見れば一体どう思うだろう?

 

 

「……君が聖剣計画を憎む気持ちは、理解出来るつもりだ。あの事件は、私達の間でも最大級に嫌悪されている。だから計画の責任者は異端の烙印を捺され、追放された」

 

「『バルパー・ガリレイ』、皆殺しの大司教と呼ばれた男よ」

 

「……バルパー……。その男が、僕の同志を……」

 

 

 バルパー・ガリレイ……一体どんな男なのだろう。やはり、あの喪神者と同じく、何らかの志があってのことなのだろうか。

 

 

「手先にはぐれ神父を使っていたと言ったろう? 教会から追放された者同士が結託するのは珍しくない。今回の件に、バルパーが関わっている可能性は高いな」

 

「……それを聞いて、僕が協力しない理由は無くなったよ」

 

 

 漸くキバくんも観念したらしい。イッセーくんが喜びの表情を浮かべ、サジくんの肩を叩く。

 

 

「ふぅ、良かったなー。おい!」

 

「良かった、じゃねー! 斬り殺されるどころか、悪魔と神側の争いに発展したっておかしくなかったんだぞ!」

 

「一誠君、君達は手を引いてくれ。この件は僕の個人的な憎しみ。復讐なんだ。君達を巻き込むワケには……」

 

「俺達眷属だろ! 仲間だろ! 違うのかよ!」

 

「……違わないよ。でも……」

 

「大事な仲間をはぐれになんてさせられるか! 俺だけじゃねえ! 部長だって悲しむぞ! それで良いのか!」

 

 

 リアスのことをイッセーくんが口にした瞬間、キバくんの憎しみに満ちた表情が揺らいだ。

 そして、静かに話し始める。

 

 

「っ……リアス部長…………そう、あの人と初めて出会ったのは、聖剣計画がきっかけだった……。

 来る日も来る日も実験の毎日だった……。自由を奪われ、人間としてさえ扱われていなかった……。それでも皆、神の選ばれた者だと信じ、いつか特別な存在になれると希望を持って、必死で耐えてたんだ……」

 

 

 少年の顔に苦しみが浮かぶ。

 

 

「でも、一人として聖剣に適応出来なかった。実験は失敗だったんだ。すぐに僕達は“処分”された。計画の全てを隠匿するためにね。

 彼らは『アーメン』と言いながら毒ガスを撒いたのさ。血反吐を吐きながら…床でもがき苦しみながら……、それでも僕達は神に救いを求めた……。

 僕一人がその場から逃げだすことができたが、瀕死の状態で、力尽きかけた。そんな時だ。部長に出会ったのは……」

 

 

 イッセーくんも他の皆も沈痛な面持ちだ。痛いほどの静寂の中、キバくんの声だけが響く。

 

 

「眷属として、僕を迎えてくれた部長には、心から感謝しているよ。でも、僕は同志達のおかげで、あそこから逃げ出せた。

 だからこそ、彼等の恨みを魔剣に込めて、エクスカリバーを破壊しなくちゃならない。これは、一人だけ生き延びた僕の、唯一の贖罪であり、義務なんだ」

 

「…………」

 

 

 思わず言葉を失うほど凄惨な過去だ。仲間が、同胞が無残に殺される。経験があるだけに彼の気持ちは痛いほど良く分かった。それはサジくんも同じだったらしい。

 

 

「うぉぉおおお! 木場ァ! お前にそんな辛い過去があったなんて!

こうなったら部長の御仕置きがなんだ! 兵頭! 俺も全面的に協力させてもらうぜ!!」

 

「……そ、そうかー。サンキュー」

 

 

 号泣しながらイッセーくんの手を取り、そう宣言するサジくん。どうやら彼は仲間思いの熱い男だったらしい。

 

 

「……私もお手伝いします」

 

 

 ふとキバくんの方に目を向けると、トウジョウが彼の袖を引っ張っていた。

 

 

「小猫ちゃん…?」

 

「……祐斗先輩が居なくなるのは寂しいです」

 

 

 そう言うトウジョウの顔を見たとき、ちょっとだけ驚いた。普段は無表情な彼女が寂しげな表情を浮かべている。

 平常時のトウジョウは決してみせない顔だ。

 

 

「っ……参ったな。小猫ちゃんにまで、そんなこと言われたら……僕一人で無茶なんて、出来るハズないじゃないか……」

 

「じゃあ!」

 

「本当の敵も分かったことだし、皆の厚意に甘えさせてもらうよ!」

 

 

 これまで、ずっと暗い顔だったキバくんの表情が、やっと少し和らいだ。ホッと一安心するのと同時に一抹の寂しさも覚える。キバくんも僕に対して、ある程度の親愛と友情を抱いてくれてはいるようだが、同じリアスの眷属同士の結びつきには及ばない。

 だが、それは羨むべきものじゃない。寧ろ、今は嬉しむべきだ。憎しみと怒りに凍り付いた彼の心がやっと溶けだしたのだ。僕も前に進み出る。

 

 

「ああ! 僕も全力(・・)で協力しよう」

 

 

 キバくん達に向け、高らかに宣言した。

 そうだ……。これ程の苦難を背負い、それでも尚、己の責務を果たそうとするキバくん。そんな彼を支えるオカルト研究部の仲間達。果ては本来無関係で教会の協力を得ることに消極的であったサジくんも全面的な援助を申し出ている。

 この状況でどうして出し惜しみなどできようか。これまでの僕はある程度は協力しつつも、どこか積極性に欠けていた。それは“異世界の問題は、出来るだけその世界の人間に解決させたい”という思いからだ。

 無論、今もそう思うが、これ程の決意・友情・勇気を見せられて、ほんの僅かな協力に留めおくことなど僕にはできない。

 

 そこで、一つの提案をしてみる。

 

 

「僕に考えがある」

 

 

 皆が僕を一斉に見た。どんな計画を提示するのかと、興味深そうな目を向ける。

 

 

「この街はそこそこ広い。そこから堕天使達を探し出すのは大変だろう? だから囮を使う」

 

「囮? 一体誰をですか?」

 

 

 イッセーくんが不思議そうな顔で尋ねて来た。それは尤もな疑問だ。

 

 

「悪魔だよ。彼ら(はぐれ悪魔祓い)は悪魔に対して強い軽蔑の念を持っているからね。だから町中に悪魔を放つ」

 

 

 その言葉を聞くと、ゼノヴィアが半ば呆れたように苦言を呈してきた。

 

 

「悪魔を放つ、だと……? 連中が聖剣を持っていることを忘れたのか? その悪魔程度では瞬く間にやられて終わりだぞ」

 

 

 ゼノヴィアが指差したのは、僕の傍らにいるバイサーだ。バイサーは僕にしだれかかったままゼノヴィアにイーッだ! という顔をする。

 確かに、出会った頃の彼女(バイサー)では、一撃で斬り伏されて終いになっていたであろう。だが、彼女の腕前はここ最近で大きく伸びている。一対一ではゼノヴィアもイリナも敵わないはずだ。それを見抜けぬあたり、彼女達もまだまだ未熟だ。

 だが、あの妖術で暗黒闘気を付与された少年神父相手では苦戦は免れまい。大切な仲間の彼女を、そんな危険な目には合わせられない。

 

 

「ああそうだ。だが、僕の仲間は他にもいる。聖剣などものともしない精鋭を用意するさ……」

 

 

 そう言って親指と人差し指で輪を作り、唇に宛がった。

 

 

  ピィーーーーーーーー……

 

 

 甲高く、大きな音が辺り一帯に響き渡った。僕の口笛が周りで反響する。

 

  しばらくして―――

 

 

 広場の地面に夥しい数の魔法陣が展開した。さながら地面が巨大な魔法陣と化したようだ。それが煌々と光り出し、そこから何体もの悪魔が出現する。

 

 

  紫色の大柄な肉体に三つ又の槍を構えたアークデーモン ―――

 

  赤い肌の筋骨隆々とした上半身に山羊の下半身を持つアンクルホーン ―――

 

  橙色の肌に赤い双眸のエリート戦士 ライオネック ―――

 

  山羊の頭を持つ合成悪魔 メッサーラ ―――

 

  猪の頭に大槍を携えた獣人 オークキング ―――

 

  桃色の皮膚に嘴を有する鳥人悪魔 ホークマン ―――

 

  魔人の金槌を装備した単眼の巨人 ギガンテス ―――

 

  大地を這う赤い悪魔 レッサーデーモン ―――

 

  苔色のトロル族の頭目 ボストロール ―――

 

  そして、アンクルホーンを青紫色にして、更に一回りほど大きくした肉体に

  強大な魔力のオーラを纏った地獄の闘士 ヘルバトラー ―――

 

 

 いずれも僕の仲間達の中でも特に強力な者達。最高の精鋭と言えるだろう。どんなに相性の悪い武器でも力押しで何とかなるはずだ。そんな彼らに呼び掛ける。

 

 

「今、この街で“はぐれ悪魔祓い”と“コカビエル”なる者が跋扈している。そいつらはエクスカリバーという武器を携えている。それはここにいるキバくんにとって仲間の仇ともいえるシロモノだ」

 

 

 そこまで言うと、若干引いてるキバくんの肩をつかみ強引に仲間達の前に立たせた。

そうして仲間の悪魔軍団に対して命令を下す。

 

 

(キバくん)は僕の大切な友達……いや、仲間だ。君達と同じくらい愛おしく思っている。だが彼は自身の手で聖剣(エクスカリバー)を折ることを望んでいる……。

 故に、君達はエクスカリバーを折らず(・・・)、また、はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)殺さず(・・・)連れて来て欲しい。あと、以前に教えた人払いの結界を掛けて、一般の方にはくれぐれもご迷惑を掛けないこと。分かったね」

 

 

「「「ウオーーーーッッ!!」」」

 

 

 僕の下命に悪魔達は一斉に頷く。これでいい。彼らの実力なら例えエクスカリバーだろうと決して後れは取らない。誰か一人に引っ掛かってくれれば僕らがそこに一斉に駆けつけ袋叩きにできる。正に一切の隙が無い万全の布陣だ。

 

 

  ドドドドドドドドドドドドド……

 

 

 悪魔軍団は雪崩を打って街に駆け出した。そうして後ろにいるイッセーくん達、ゼノヴィア達の方に振り返る。

 

 

「どうだい? これなら数時間でフリードくんも見つか―――」

 

 

 

 

 

 

 「「「 す ぐ に 止 め て ! !」」」

 

 

 




ヘッドドレス:DQⅨより。メイドさんには欠かせないリボンとフリルをたっぷり使った頭飾り。

メイド服:DQⅨに登場する防具。フリル付きのエプロンドレスだが、実は男性でも(・・・・)装備可能。


ドラクエネタを挟まないとクロスの意味が無い。けどネタが思い付かず投稿期間が開く。

それでやっと思い付いたネタがコレ……。この調子でネタにネタを重ねていったら収集が着かなくなりそうです……。
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