時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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※注意 今回の話はとある魔物が悲惨な目に会います。

「ライ〇ネックは俺の嫁!」という方はご注意を。


37話 魔界のエリート

  

 

夕刻過ぎ 自宅アパートにて

 

 

「もしもし……。うん……。ああ、それじゃよろしく…………フリードくんが見つかったよ」

 

 

 仲間からの連絡があったので、それをちゃぶ台を囲み、座布団に座っているイッセーくん、キバくん、トウジョウとゼノヴィア、シドーに告げた。皆、真剣な面持ちで頷く。

 

 

「こうも早く見つけ出すとはな……。リュカ殿の配下は優秀なようだ。それにしても……」

 

 

 ゼノヴィアが僕の仲間達を称賛してくれたが、決して警戒を解こうとしない。硬い面持ちで周囲を見渡している。

 ずっと外で待機させるのも可哀そうに思い、自宅に招き夕食を御馳走したのだが、部屋に入ってから、そして食事の最中もずっとこんな感じだ。

 ゼノヴィアとシドーは神経質に思えるほど用心しているが、イッセーくん達の方は驚きと呆れが入り混じった様な顔をしている。

 どうやら部屋の広さを魔法で拡張していることが驚きだったらしい。始めは六畳ほどの広さだったが、今は学校の体育館くらいに拡張されている。

 

 

「―――ああ、イシュダルがそういったことが得意みたいでね。まだ、僕の魔物を全部呼び出すには全然足りないんだけど……。これ以上広げるのは流石に不味いみたいでね……」

 

 

 空間拡張にも限界はあるらしく、広げ過ぎるのもあまり良くないそうだ。

 今、一緒に住んでいるのはこの世界で仲間にした堕天使、はぐれ悪魔、イシュダル達、転身モンスター達、ピエールやスラりん、ゲレゲレといった古株の仲間モンスター達が中心だ。偶にローテーションで他の魔物とアパートで過ごすこともあるが、増やし過ぎるのも色々と問題がある。

 一度、腐った死体のスミス、ロバート、マサールらを呼んだらレイナーレ達がいやぁな顔をしていた。確かに彼らが室内にいると臭いが篭る。それに蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)のスプろうとマッドドラゴンのマッドが大喧嘩したりもした。

 どんなに広い部屋であっても大型の竜を何体も召喚するのはやめた方がいいということを身に染みて理解した。

 

 

「イヤ……、部屋についてじゃなくて……。中にいる連中が、というか……」

 

 

 そう言って、イッセーくんが目を遣る。視線の先にはレイナーレ達がいた。

 その意味は簡単に推察できる。

 

 

「彼女達はこの一件とは関係ない。レイナーレもミッテルトもカラワーナも僕の大切な仲間だ。手出しは一切許さないよ……。

 それに彼女達は『神の子を見張るもの(グリゴリ)』では総督のアザゼルを支持していた。そのアザゼルは穏健派で『二度目の戦争はない』と宣言しているそうだ」

 

 

 疑いの目を向けるオカルト研究部の面々と教会からの使者二人にそう教える。

 しかし、イッセーくんは羨ましがっているような、悔しがっているような、怒っているような、何とも奇妙な態度で堕天使三人娘だけではなくディーネ達やクモりん、イシュダル達を見渡し、何故か泣き始めた。

 

 

「そんなんじゃありませんよ! ……うう……、リュカさんは凄い人だとは思ってたけど、こんなハーレムを築き上げてただなんて……うおおおおおおんッ! うえええええええんッ!」

 

「いや、ハーレムとかじゃなくて仲間なんだがえているよう……って、トウジョウさんはどうして僕を睨むの?」

 

「……いえ、別に」

 

 

 トウジョウがブリザードマンの凍える吹雪並に冷たい視線を向けてきている。年頃の少女は難しい。何を考えているのかさっぱり分からない。いずれ僕の娘もこうなるのだろうか……。

 取り敢えず話を戻そう、と思って現状をイッセーくん達に説明することにした。

 

 

「ま、まあ……、今、フリードくんと僕の仲間が交戦中らしい。急いで向かおう」

 

 

 そう言いつつ席を立つ。するとゼノヴィアが訝しげに尋ねてきた。

 

 

「ほう……、その仲間とは一体どんな魔物だ? 奴らの奪った聖剣に対抗できるというからにはかなりの手練れだと察するが……」

 

「名前はライオウ。雷の魔法に長けた上級悪魔だ。“魔界のエリート”とも言われている」

 

 

 『上級悪魔』という単語を聞いた途端、オカルト研究部の皆が目を見開いた。

 一瞬、どうしてかと不思議に思ったが、そういえば『上級悪魔』といっても僕らの世界とこの世界では基準が色々と違うのだということに気付いた。

 ライオネックという種は大魔王の居城“エビルマウンテン”に生息する魔族で、僕らの基準では十分に『上級悪魔』といえる。

 だが、この世界では「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」だのレーティングゲームだの、色々あって『上級悪魔』の定義が分からない。

 そう考えてみると、僕の仲間達はこの世界でどのくらいランクに振り分けられるのか気になる所だが……。

 

 

「とは言っても、この世界と僕達の世界では『上級悪魔』の基準が違うからね……。この世界では下級か中級かもしれないし……。

 そんなことよりも急ごう。幸い、その場所には転移魔法(ルーラ)で行ける」 

 

「えっ? どこッスか?」

 

 

 イッセーくんがきょとんとした顔で尋ねてくる。以前、彼にはルーラは「一度行ったことのある場所しか転移できない」と教えたことがある。

 そこで僕は、僕の傍らに侍る女悪魔を見ながら答えた。

 

 

「ここにいるバイサーと初めて会った場所だよ。あの廃屋さ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

「――よっと……、着いたみたいだね。ライオウは上手くやっているだろうか………?」

 

 

 グレモリー眷属の皆と教会からの使者二人を連れて、あの廃屋の近くにある林に転移してきた。

 すると、近くから戦闘音が聞こえてくる。どうやら激しく戦っているらしい。

 ライオウの実力には全幅の信頼を置いている。いかに相手が聖剣を保持している凄腕の悪魔祓い(エクソシスト)とはいえど、決して後れは取らないはず―――

 

 

 

 

「フハハハハハハハッ! どうした!? こんなものか人間よ!」

 

 

 聞き覚えのある、まるで高慢さが滲み出ているかのような声が聞こえてきた。

 ………うん。(ライオウ)は無事らしい。上手く戦っているようだ。

 

 でも、その台詞ってこっちが悪者の様な……、まあいいか。

 

 

「クッ……、このクソ悪魔が!」

 

 

 フリードくんの声も聞こえてきた。いつもの巫山戯た調子ではなく真剣な感じなのが何とも………。

 イッセーくん達も、あの少年神父(フリード)の普段の口調を知ってるために、口をあんぐりと開けている。

 

 

「クハハハハハ! 拍子抜けだな。この程度で我に襲い掛かってくるとは……。これが聖剣使いとは、何ともつまらん!」

 

 

 少し歩いた先で一体の悪魔が哄笑していた。橙色の肌に双角、長身で筋肉質。背には蝙蝠の様な大きな羽あり、簡素な鎧を纏っている。仲間モンスターのライオウだ。彼は超高速で剣を振るい対峙する相手を追い詰める。

 ライオウと戦っている相手は白かった頭髪が漆黒に変質したはぐれ悪魔祓いのフリード・セルゼンだ。いつもは常軌を逸した表情をしている彼が、怒り狂ってはいるものの、いたって真面目な面持ちで聖剣を振るい、ライオウの斬撃を防いでいる。

 

 

「調子に乗るんじゃねえ! すぐにその首を刎ねてやるぜ!」

 

 

 ライオウが握るのは「奇跡の剣・改」。敵の生命力を吸い取って自身のモノに変える強力な魔法の剣である「奇跡の剣」、それに錬金術で更なる祝福を付与した最高位の武具だ。

 どうやら武具の性能は、フリードの聖剣と比べても決して劣っていなかったらしい。

 

 

「フン! これだけの力量差があるのだ。貴様は口ではなく手を動かすべきなのではないか?」

 

 

 ……うーん………ライオウは調子に乗りやすいところがあるからな……。それが珠に瑕なんだよなぁ……。

 

 ライオウは余裕綽々だ。それもそうだろう。暗黒の世界の最深部。複雑に入り組み、メカバーンだのマヌハーンだのといった強力な魔物が跋扈する、かの洞窟で出会ったのだ。地上の魔物とは潜在能力が違う。

 

 だが、それだけ慢心しやすい。自身を「魔界のエリート」と呼んで憚らない彼だが、自信家であるが故に油断することが多い。

 そして今も、フリードが何やら腕に暗黒闘気を集中させ、怖そうな技を使おうとしていることに気が付いていない。

 

 

「舐めてんじゃねえよッ! 『闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)』!!」

 

 

 フリードがライオウに向けて手を翳すと、指先から糸状の暗黒闘気が放出された。それがライオウに捲きつき、肉体の自由を奪ってしまった。

 エリート戦士はもがくが、動くことができなくなってしまったらしい。

 

 

「ぬっ!?」

 

 

 闘魔傀儡掌とはどうやら掌から放つ暗黒闘気の糸で相手を束縛する技のようだ。こんな技も身に付けているとはフリードくんもなかなか大したものだ。

 ライオウも、相手を注意深く観察していれば避けれたはずなのだが……。

 まあ、どんな魔物にも人間にも欠点はあるということか。

 

 

「ひゃはははははっ! これがパゥワーアップしたオレっちの新必殺技『闘魔傀儡掌』だよん! 侮っていた人間にぃ、体の自由を奪われるのってどんな気持ち? ねえねえ、今どんな気持ち?」

 

 

 今まで劣勢を強いられてきたフリードがここぞとばかりにライオウを挑発する。実に楽しそうだ。

 一方、ライオウは血管を浮き出させて歯軋りしている。プライドが相当傷ついたらしい。

 

 

「クッ………、フッフッフッフッフッ!! ここまでコケにされるとはな………。

 まあ、いい。主からは『生け捕りにせよ』と言われているが、生きてさえ(・・・・・)いれば多少のことは問題あるまい。なまじ強い自分を恨め」

 

「ハァッ!? 何言ってくれちゃってんスかぁ? 

 この『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピットリイ)』でぶっ殺してやんよ!!」

 

 

 フリードが七分割されたエクスカリバーの内の一つを大上段に振りかぶった。

―――だが、彼もまた過ちを犯している。ライオウはあんなもの(闘魔傀儡掌)でいつまでも抑えられる悪魔ではない。

 

 

「かあっ!」

 

 

 ライオウが吠える。短いが、上級悪魔が有する凄みのある声でだ。

 彼の肉体から眩い光が迸る。光の闘気によるものだ。その輝きは強烈で、辺りはすっかり暗くなってしまっているというのに、この場だけ昼と見紛う程に輝いている。

 

 強烈な光の闘気によって、ライオウに纏わり付いていた紐状の暗黒闘気は焼き切られ消滅し、悪魔は体の自由を取り戻す。

 勝利を確信し、今にもトドメを刺そうとしていたフリードが驚愕し、喚き散らす。

 

 

「な、何だよ、コレ!? 悪魔が光ってどういうことだよ!! ありえねえだろ色々と!!!」

 

 

 確かに(フリード)の疑問は尤もと言える。この世界の悪魔にとって光は猛毒。それは天使・堕天使・悪魔、いずれに与する者にしても常識中の常識だ。

 しかし、ライオウはそんな固定観念に捕らわれている少年神父を嘲笑った。

 

 

「フッフッフッフッフッ! 知らんな、そんな理屈。

 他の凡百の悪魔はどうか分からんが我にはその法則は当て嵌まらない。何故なら――― 

 

 

 

 

 我がエリートだからだ!! 」

 

 

 

 

 

「「「……………」」」

 

 

 イッセーくん達も、フリードも思わず言葉を失った。まあ、予想はできたが……。これは酷い。あとで(ライオウ)とはお話し(せっきょう)しなくてはなるまい。皆が呆れている中でもライオウは構わずに続ける。

 

 

「フハハハハハ! 冥土の土産に見せてやろう。我の最強呪文を。

 そして知るがいい! 我が魔界のエリートと呼ばれる所以を!!」

 

 

 ライオウが高らかにそう告げ、両手を天に掲げた。彼の全身から魔力の波動が溢れ出し、辺りを覆おう。

 

 

「ち、ちょっと待って! その呪文(・・・・)はマズい! フリードくんが死んじゃう!」

 

 

 僕が流石に止めに入る。あの魔法が直撃すればフリードくんが死ぬ。そうなるとキバくんが色々とヤバい。

 と言うより、すでにかなり危ない。目から完全に輝きが失せている。

 僕の必死の訴えかけが、ライオウの耳に届いたのか、彼がこちらに振り向いた。だが―――

 

 

「おお! 我が主、ちょうど良いところに来てくれた! このエリート悪魔ライオウが無礼千万な小僧を打ち倒す様を御覧入れよう!」

 

 

 駄目だ。聞いてない。普段は良い奴なんだが偶にこういう事がある。

 その“打ち倒す”というのが不味いんだが……。

 

 

 

「ハァァァァッ、極大雷撃呪文――――」

 

 

 

 

   ギ ガ デ イ ン

 

 

 ライオウの呪文が辺りに響き渡ったその瞬間―――

 

 天が嘶く。

 

 空気が震える。

 

 強大な魔力の奔流。

 

 空で雲が蠢く。夜空よりも黒々とした雷雲が集束し、雷光で光り輝く。傍目から見ただけでも、あの雲の中に莫大なエネルギーの雷が内包されていることが分かる。

 

 そして、大黒柱の如き太さの稲妻が、幾本も地表に降り注いだ。

 

 

 

 

 だが、(ライオウ)にとっても僕にとっても予想外の出来事が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――マホカンタ!」

 

 

 

 

 廃屋の中からしわがれた声でそう唱えられるのが聞こえた。

 

 

「ぎゃあああああああああああっ!!!」

 

 

 悲鳴を上げて、倒れたのはフリードではない。ライオウだ。

 

 あの刹那、雷撃が少年神父に届く直前。

 堕天使達の住処になってるという廃墟から魔法反射鏡呪文(マホカンタ)が詠唱された。それにより極大雷撃呪文が撥ね返されたのだ。稲妻はフリードを焼かずライオウを焼いた。

 倒れ伏したライオウの姿は酷いものだ。真っ黒に焦げ、その姿はまるで同系統の悪魔であるシャドーサタン。エリートであることを証明しようとして下位種の形姿になるとは………。

 辛うじて死んではないようだが戦闘続行は不可能だろう。

 

 

 そこに、先程マホカンタを唱えたであろう人物が、廃屋から姿を現す。

 

 二人組の男だ。一人は肥満体で眼鏡を掛けた初老の男性。もう一人は子供ほどの背丈しかない髭を蓄えた老人。二人ともこの世界の神父の格好をしているが、肥えた初老の方が若干豪華だ。おそらく彼の方が階級は上なのだろう。

 

 だが、そのことに違和感を覚える。何故なら小柄な老人の方が明らかに普通(・・)じゃない。何となく妖気の様なものをひしひしと感じる。そんな男だ。

 

 

「……バルパーとラエボザのじいさんか」

 

 

 フリードがぽつりと老人達の名を呼んだ。

 

 

「……バルパー・ガリレイッ!」

 

「いかにも」

 

 

 キバくんが丸眼鏡の老人を憎しみが漲った瞳で睨みつけ、相手もそれに堂々と返した。

 その横で妖怪じみた雰囲気の老人神父が妖しく笑った。

 

 

 

 

 

 




奇跡の剣:DQⅣ以降の本編や、外伝作品にも登場する武器。敵にダメージを与えつつ、自分のHPが回復するという追加効果を持つ神の祝福を受けた魔法の剣。

奇跡の剣・改:DQⅧより。名前の通り奇跡の剣を強化した武器。

闘魔傀儡掌:漫画「ダイの大冒険」に登場するミストバーンの得意技。魔剣戦士時代のヒュンケルも使用。『とうまくぐつしょう』と読む。暗黒闘気を糸のように放ち、相手を操り人形の様に縛り付けて行動不能にする。この技から自力で抜けることは非常に困難であり、他の技を追撃として放つことで敵にトドメを刺す。また、暗黒闘気を高めることで、相手を引きちぎるほどの痛みを与えるなど、ダメージを与えることにも使用できる。

魔界のエリート:攻略本「ドラゴンクエストⅤのあるきかた」にてライオネックに与えられた称号。
……だが、加入時期の遅さと成長限界の低さによって、魔界のエリート(笑)扱いされることもしばしば。


何で「魔界のエリート(笑)」が定着しちゃったんでしょうね……?
まあ、助長させてる作者が言えたモノではありませんが。

ライオネックさん、お許し下さい!(チャー研)
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