時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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ネタが思い浮かばない。
   ↓
何を血迷ったのか活動報告でアンケートを取ろうとする。
   ↓
案の定、回答が得られず心が折れかける。

アカン、もっとコツコツ堅実にやろう……。


38話 謎の司教

 

 

 捜索していたはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)フリード・セルゼンを見つけ出したという連絡を受けた僕とオカルト研究部の皆と教会からの使者達。

 その場所に着いてみると、仲間の悪魔戦士ライオウとフリードが激しい剣戟を繰り広げていた。ライオウは技量では勝っているものの、慢心と少年神父が新たに得た暗黒闘気を用いた技『闘魔傀儡掌』により若干の苦戦を強いられる。

 だが、そこは上級悪魔。強力な光の闘気でもってフリード・セルゼンの『闘魔傀儡掌』を引き剥がす。そして、トドメに極大雷撃呪文ギガデインを放とうとした。

 しかし―――

 廃屋の中から魔法反射鏡呪文マホカンタが唱えられた。これによりギガデインはライオウに跳ね返り、彼は戦闘不能になってしまう。

 廃屋から現れたのは二人の神父姿の男。一人は小太りの初老。二人目は子供の様な背丈の老人。

 小太りの男の方はフリードから『バルパー』と呼ばれた。

 それは、かつてキバくんの同胞を無残に死に追いやった「聖剣計画」の立案者の名だった―――

 

 

 

 

「バルパァァァッ!!」

 

 

 “バルパー”。その名を聞くとキバくんの表情が一変した。ついさっきまではフリードとライオウの戦いに呆気を取られ、半ば茫然とした顔であったが、今や憎しみに歪み、怒りに満ちた表情だ。

 キバくんは仇の名を吠えるように叫ぶと、神器(セイクリッド・ギア)で魔剣を生み出し、猛然と斬りかかった―――。

 

 

  ガアッン!!!

 

 

 しかし、止められた。先程まで魔界のエリート・ライオウと渡り合っていたはぐれ悪魔祓い、フリード・セルゼンだ。

 

 

 

「クソ悪魔共が何人来ようと~、このエクスカリバーちゃんの相手には……なりませんぜッ!」

 

「ッ!?」

 

 

 二人が激しく切り結ぶ。両者の刃の間に火花が飛び散り、剣が交わるたびに轟音が鳴り響く。

 しかし妙だ。何が妙かと言えば、「フリードは人間」のはずだ。なのに異常に“速い”。

 勿論、人間と云えど鍛えれば悪魔をも凌ぐのは当然、寧ろ実践してきた身だ。(フリード)が真っ当な修行を経て強くなったとするならば、何も問題はないだろう。

 だが、今の彼からは“速さ”以外が見受けられない。無論、技術的な面もそこそこ高いが、それだけでは理屈に合わない。

 まるで『はぐれメタル』のように速さだけが異様に優れているような歪さ、不自然さを感じる。

 もし、人の身であれぐらいの速さを得れるだけの修行を積んだのだとしたら、速さのみではなく、もっと筋力や技術も身に付いているはずだ。

 

 そうした疑問は、次の彼の台詞で氷解した。

 

 

「これが天閃の聖剣、人呼んで、エクスカリバー・ラピッドリィ! 

 俺呼んで、ちょっぱやの剣!!」

 

 

 ほう……! つまり、あれは『星降る腕輪』のような機能も兼ね備えているということか……。そいつはまた凄い武器だ。差詰め『疾風のレイピア』の強化版か。

 

 

「同じ速度で動いてるってことか……。これじゃ騎士(ナイト)のスピードを封じられたも同然だ」

 

「……かなりマズイです」

 

 

 トウジョウが顔をしかめ、呟いた。確かに彼女の言うとおりだ。

 キバくんの持ち味はスピードだ。しかし、相手も同程度に速く、パワーで劣っている場合、(キバくん)の長所が相殺されてしまう。

 

 

「ハーーンッ、待ってろよ~! 外野もまとめてブッ殺してやるからさッ!」

 

 

 勝利を確信したのか、フリードがこちらを向き嘲笑してきた。

 一方、イッセーくんは必死に高速で動きまわるキバくんを目で追っている。

 良く見ると『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』で力を倍化させ、それをキバくんに譲渡しようとしているらしい。

 だが、イッセーくんにとってはキバくん達が速過ぎ、上手く狙いが定まらないらしい。

 

 

「クソッ! なんとか奴の足を止められりゃ木場に力を譲渡してやれるのに……」

 

 

 僕も動こうかと思ったが、目の前でフリードとキバくんの戦いを観戦している神父の片割れ……名はラエボザといったか……。この老神父から目を離せない。

 無論、フリード、バルパー、ラエボザの三人を一人ずつ倒すことは容易いだろう。しかし、フリードと加減しながら戦いつつ、それでいてラエボザという男を放置するのは危険すぎる。あの老人は例えるのであれば爆弾……、否、猛毒だ。

 僕一人ならばともかく皆まで危険に晒すようなことは出来ないし、何よりキバくんの決戦に水を指すようなことも控えたい。

 

 そう思い悩んでいると、これまで傍観していたサジくんが進み出た。

何やら彼に考えがあるらしい。

 

 

「兵藤、足を止めればいいんだな? ―――ラインよ!」

 

「えぇっ!? 匙……お前!?」

 

 

 進み出たサジくんの手の甲には黒い蜥蜴のような物が装備されている。彼はその籠手らしき物体をフリードに目掛けて振りかざした。

 

 

「いけっ、ラインッ!!」

 

「おッ!?」

 

 

 黒い蜥蜴の口から触手のような舌が飛び出し、フリードの片足にグルグルと巻き付いた。

 サジくんが得意げに叫ぶ。

 

 

「見たか! 俺の神器、『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だ!!」

 

「お前も神器を!? やるじゃねーか!」

 

「クソ! クソッ! クソォッ! この神器もドラゴン系かよ!?」

 

 

 少年神父が『黒い龍脈』の触手を何度も斬り付け、必死に逃れようとする。

 だが、上手くいかないようだ。シドーとイッセーくんの戦いの時もそうだったが、ドラゴン系の神器に聖剣は効き目が薄いらしい。

 どうやらサジくんの神器は相手の動きを封じる類のモノのようだ。

 すると、横から悲鳴が聞こえてきた。トウジョウがイッセーくんを高々と持ち上げている。

 

 

「ぬわぁぁああっ!?」

 

「……いきますよ」

 

 

 困惑しているイッセーくんには一切構わず、トウジョウは大きく振りかぶり(イッセーくん)をキバくんに向けて放り投げた。

 どうやらイッセーくんも、何故トウジョウが自分を投げたのかを察したらしい。確信を込めた声でキバくんに呼び掛ける。

 

 

「木場ァァアアア!!」

 

「一誠くん!」

 

『Transfer!』

 

 

 『赤龍帝の籠手』が煌々と輝く。事前に倍化した力を、フリードがサジくんの『黒い龍脈』で動けなくなった隙にキバくんに譲渡らしい。

 キバくんの魔力が目に見えて増大する。

 

 

「ドラゴンの力! 確かに送ったぞ!」

 

「受け取ってしまったものは仕方ないな……。

 ありがたく使わせてもらうよ! 魔剣創造(ソード・バース)!」

 

 

 キバくんが魔剣を振り翳し、叫ぶ。すると地面からライザー戦の時に匹敵するほどの大量の魔剣が飛び出し、フリードを串刺しにしようとする。

 それに対し少年神父(フリード)は『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』を振り回し、周囲の魔剣を薙ぎ、砕いて身を守る。

 

 だが、そんな抵抗も長続きしないだろう。今、彼の片足はサジくんの触手で封じられている。

 動きに制限が掛かっているため、カバーしきれていない。

 もはや彼もこれまでか、僕がそう思った時。フリードの窮地を見かねたバルパーが口を開いた。

 

 

「『魔剣創造』か。使い手の技量しだいでは無敵の力を発揮する神器……。

 フリード、まだ聖剣の使い方が十分ではないようだな? ふむ……、身体に流れる因子を刀身に込めろ。それでその蜥蜴の舌を斬るのだ!」

 

「流れる因子を……刀身にね!」

 

「気を付けろ! ヤバいぞッ!!」

 

 

 因子……? バルパーのいう因子とは一体何なのだろうか。

 自分にはない新しい情報を訝しみながらも、見極めようとフリードを注視する。

 一方、イッセーくん達も警戒したらしい。慌ててサジくんに注意を呼び掛けた。

 だが一歩遅かったようだ。

 はぐれ悪魔祓いの体から尋常ではないオーラが発せられる。

 

 

「おお! オッホォォオオオ!!」

 

 

 フリードが奇声を上げ、ラインに大上段の構えから斬り付ける。

 

 一刀両断!

 

 あれ程手間取っていたサジくんのラインがいとも簡単に寸断され、フリードは自由になった。

 

 

「ナ~ルホド♪ 聖なる因子を有効活用すりゃ、さらにパワーアップってか! それじゃあ……♪

 俺様の、剣の餌食になってもらいやすかァァァねッ!」

 

 

 “聖なる因子”……。それが聖剣を扱う上ではそういうモノが必要らしい。

 そうなると『天空の剣』を装備できなかった僕にはその“聖なる因子”が無かったからなのか……? という疑問が湧き出してきた。

 しかし、自分には『王者のマント』や『光の盾』といった防具が装備できる。それらは僕にしか身に纏う事が出来ない特別なシロモノだ。

 それらの装備は“聖なる因子”とは関係が無いのだろうか?

 

 そんなことをつい一瞬考えたが周りの皆は待ってくれない。そうこうしている内にフリードが『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』をぶん回し、キバくんを叩き斬ろうとする。

 

 

「死ねェェェェェイッ!!」

 

 

  ガキィン!!

 

 

 絶叫と共に振り降ろされた聖剣が今にもキバくんに届きそうになった時、横から進み出てフリードの凶刃を、それより遥かに神々しく輝く聖剣で以って受け止める者がいた―――。

 

 

「………あり?」

 

 

 フリードの『天閃の聖剣』を防いだ人物。それはエクスカリバーを携えたゼノヴィアであった。

 彼女は少年神父を睨みつけながら朗々とした声で宣告する―――。

 

 

「叛逆の徒、フリード・セルゼン、パルパー・ガリレイ! 神の名の下、断罪してくれる!!」

 

「ハッ! 俺様の前で! その憎ったらしい名前を出すんじゃねー、このビッチが!」

 

 

 ゼノヴィアの言葉に対し、憎しみの表情で口汚く罵るフリード。やはり、この世界で教会とそれと敵対する者達の溝は深い、そのことを改めて思い知らされる光景だ。

 

 

「ダァァアアアアッ!!」

 

 

 咆哮と共にエクスカリバーを斬り降ろすゼノヴィア―――。

 

 

「うっほほ~!?」

 

 

 半笑いでそれを躱すフリード。

 

 技に関しては互角くらいであろうか。しかし、暗黒闘気で強化している分、臂力においてはフリードの方が強い。得物の性能では僕がついうっかり強化してしまったため完全にゼノヴィアが上だ。

 臂力のフリードか、得物のゼノヴィアか―――。

 御互いが一歩も引かず斬り結ぶ激しい剣戟の応酬。

 しかし、少しずつ片方が優勢になって来た。

 

 ゼノヴィアが斬り込む―――。

 

 フリードがそれを受け止め斬り返す。

 

 フリードが少女を唐竹割りにしようと『天閃の聖剣』を振り降ろす―――。

 

 ゼノヴィアは受け止めきれず、フリードに押し込まれる。

 

 ちょっとずつではあるが、ゼノヴィアの一手に対しフリードがより厳しい一手を返すようになってきている。

 それもそうだろう。どんなに得物が優れていても扱い切れなければ意味が無い。

 彼女(ゼノヴィア)はまだエクスカリバーの本来の性能を引き出せていない。と言うより寧ろ“エクスカリバーによって振り回されている”という印象すら持ってしまう。

 

 そんな彼女の聖剣を、何やら不可思議な物を見るような表情で見つめる男がいた。バルパーだ。

 

 

「ん? 何だ、その聖剣は……? 

 資料によればその女の武具は『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』のはずだ。

しかし、形状が異なる……。一体どうなっているのだ?

 まあ、いい……。

 フリード、お前の任務は潜入してきた教会の者を消すことだ。まして、聖剣を持った者が2人も現れては分が悪い。ここは引くぞ」

 

 

 どうやらバルパーは一旦逃げることにしたらしい。その判断は概ね賢明だ。

 戦力ではおそらく僕達の方が上回っている。それなら一度逃げて体制を整えるほうが賢いというものだ。

 フリードも彼の命に応じ、懐から何かを取り出そうとする。

 

 

「ガッテン承知の介! はい、ちゃらば♪

 ……あれ?」

 

 

 フリードが懐を何度も探る。マントの内ポケットに入っていた(・・)物を必死になって探す。

 だが彼の努力は無駄なものだ。何故なら―――。

 

 

「探し物はこれかい?」

 

「!!??」

 

 フリードが驚愕の表情を浮かべる。その様子を見て思わずニヤッとしてしまった。

 何故なら―――

 

 僕の足元にはフラッシュバン、煙玉、キメラの翼、まだら蜘蛛糸、毒蛾の粉etc……が散乱しているのだ。

 それを見たフリードが驚く。

 

 

「な、なんでテメェがッ!!」

 

「君にはいつもアイテムを使われて逃げられるからね……。隙を見て盗ませてもらったよ」

 

 

 そう言って右手に持っている物を掲げて見せる。見た目はただの古ぼけた巻き物だ。

 

 

「これは“盗賊の秘伝書”というんだ。この書には様々な盗賊の秘術が記されていてね。

 君がゼノヴィアと戦っている間に盗み出せるタイミングを見計らっていたのさ」

 

 

 それを聞いたイッセーくん達は驚いた様子であったが別段大したことではない。

 錬金に必要な“夜の(とばり)”や“光の石”を魔物から散々盗み出してきたのだ。スターキメラから“星のカケラ”を奪うのに比べたら人間のフリードくんから逃走用のアイテムを奪うなど爆弾ベビーの手を捻るよりも容易い。

 

 

「さあ、今日こそはおとなしく捕まってもらうよ。そこにいる御二人さんもね」

 

「ぐ、ぐぬぬ……テメェ……!」

 

 

 フリードがまるで親の仇でも見るか様な目で僕を睨み付けてくる。

 一方、二人の老神父は異なる反応をする。バルパーの方は半ば唖然とした表情だ。おそらく高速で動き回っていた少年神父の懐から、相手に気取られずに道具を盗み出せたことを未だに信じ切れないのだろう。

 だが、ラエボザはそうではない。驚きつつもこちらを推し量るような鋭い眼光を向けてくる。どうやら僕に好奇心を持ったらしい。

 

 そのラエボザが口を開いた―――。

 

 

「生憎、こんな所で捕まる気は無いのでな。キィッヒッヒッヒッ……。

逃げさせてもらうぞ」

 

 

 ラエボザがしわがれた声で背筋が凍るようなゾッとする笑みを浮かべつつ堂々と宣言する。

 まるで以って余裕綽々な態度だ。

 

 

「ふぅむ……。この状況を脱することができるとは……、一体どんな手を隠しているのかな?」

 

 

 少しでも妙な真似をしようものなら即座に飛び掛かれるよう身構えつつ、老神父に尋ねる。

 ラエボザの目がギラリと光った。

 小柄な老人の口からおぞましい呪詛が紡がれる――――

 

 

「身体を駆けめぐる血よ、沸騰しろ。心臓よ、裂けよ。その身の内にある体液は凍り付け……―――」

 

 

 その詠唱の第一節が耳に入った途端、凄まじい危機を感じた。

 数多の戦場を駆け巡って来た経験が、知識が、肉体が、これから起こるであろう恐ろしい事への警鐘を鳴らす。

 

 

「皆、引けッ!!」

 

 

「遅いっ! ザラキ!!」

 

 

ザラキ、別称『死の言葉』―――― 古い書物には『死の呪文』とも記されている。この呪文を唱えると、相手の体内の血液を一瞬にして凝固させる。そうなってはどんな生き物でも生き続けることは不可能だ。これを受けた者は恐怖で身の軋むような言霊に襲われ、精神力で耐えきらなければ死に至る。

 

 全身を死への恐怖が駆け巡る。呪詛が耳孔で反響し頭の中で鳴り響く。血が血管を暴れ狂い、内臓が凍りついたかのように冷えていく。このままでは――――

 

 気をしっかり保て!

 

 ……そうだ。この呪文は精神力で耐え切れるものだ。死への恐怖こそが己を殺す。

 それに高々ザラキ一つが何だというのだ。自分はこれまでの旅で何十回もこの呪文を掛けられている。堪え切れずに死んだのも一度や二度ではない。

 

 死の一体何が怖いのか―――?

 

「ハアッ!!」

 

 

 精神を集中し自らに一喝する。

 すると、少しずつ落ち着いてきた。氾濫した河川の様に血管を流れていた血液は元の穏やかな速さとなり、凍り付いたのではないかと思えるほど冷たくなっていた臓腑は本来の暖かさを取り戻す。

 

 しかし、落ち着いてはいられない。練達の冒険者である自分でさえこの様なのだ。周りの皆は……―――

 

 

「ぐわああああああっ!」

 

「くうううぅぅぅぅっ!」

 

「ぎゃあああぁぁぁっ!」

 

「……うぅぅ………っ!」

 

 

 やはり、そうだ。全員が恐怖してしまい精神が負け始めている。このままでは僕を除き全滅してしまうだろう。

 何とかしなければ! そう思った時―――

 

 

「ぐああああああっ!うっ……、うおおおおおおおっ!!」

 

 

 ゼノヴィアが自身の怖れを振り払うかのように吠え、エクスカリバーを頭上に掲げた。

 次の瞬間、聖剣の刀身が輝き始めた。始めは見間違いかとも思ったがそうではないようだ。その光はみるみる大きくなっていく。その光は『死の言葉』に苦しむイッセーくん達全員を包み込んだ。

 な、何なんだ、この光は……! ザラキを打ち消している……。持ち主の思いに反応したのか? では、これがエクスカリバーの真の力だというのか!?

 

 やがて、皆を覆っていた光は消えた。イッセーくん達は若干疲弊したふうではあったが、全員息があった。

 

 

「無事かい?!」

 

「あ、ええ、何とか大丈夫です。リュカさん……」

 

  

 僕の呼び掛けにイッセーくんは青い顔で応じる。

 しかし―――

 すでに、この場にバルパー、フリード、ラエボザの三人はいなかった。そのことに気付いたゼノヴィアが血相を変えてシドーに呼びかける。

 

 

「くっ、追うぞイリナ!」

 

 

 ゼノヴィアが止める暇もなく真っ先に駆け出す。それにシドー、キバくんが続いて行った。

 少々面を食らってしまい対応が遅れた。たった今、殺されかけたというのに……。

 ゼノヴィア達は信仰熱心すぎるのが考えものだ。キバくんも復讐するならもっと冷静になるべきだろうに……。

 イッセーくんも困惑しているらしく、必死に呼びかけている。

 

 

「おーい!? 待ってくれ木場ぁぁああ!……ったく! 何なんだよ、どいつもこいつも!」

 

「うーん、仇打ちに夢中なんだろうね……。これでは少々困ってしまうな」

 

 僕も取り敢えず感想を述べる。彼らの振る舞いは集団での協調性という意味ではあまりよろしくない。

 しかし、ある意味ではああいう方が健全なのかもしれない。

 如何せん僕自身の青春は丁度奴隷時代のため、あまり感情を表に出せなかった。出すと鞭で打たれた。

 ああして感情のままに振舞うのも若者らしいのだろう。 

 

 そんなことを考えていると後ろから女性の声がした。

 

 

「……ええ、本当に。

 全く、困ったものね」

 

 

 現れたのは四人の少女。いずれも見知った顔だ。

 

 

「部長!?」

 

「おや、こんばんは。リアスさん、ソーナさん、ヒメジマさんにシンラさんも」

 

「あら、こんばんは……、じゃなくて! これはどういうことなのかしら? イッセー? リュカさん?」

 

 

 取り敢えず挨拶してみたが、あまり機嫌が良くないようだ。一体どうしてなのだろうか?

 そんなことを疑問に思っていると横でソーナがサジくんに何やら詰問している。

 

 

「説明してもらえますね? 匙?」

 

「か、会長……っ!」

 

 

 どうやら、かなり責められているらしい。

 しかし、サジくんはイッセーくんに無理矢理連れてこられただけだ。ここは身を挺してでも庇うべきだろう。

 

 

「待ってくれ、ソーナさん。彼は悪くない―――」

 

 

 

 

 その後、駒王学園での出来事を聞かされた。何でもギーガ達が大変な迷惑を掛けてしまったらしい。

 その事も含め、今回の一件も全責任は僕にある、とリアスとソーナに説明し、リアスがイッセーくんを折檻する尻叩き1,000回、ソーナがサジくんを折檻する尻叩き1,000回、リアスと学園の修繕に手を貸したソーナが僕に尻叩きを1,000回ずつ、合わせて4,000回尻を叩かれることになった。

 

 僕は奴隷時代に体罰を受けるのが日常茶飯事だったためどうってことは無かったが、逆にリアスとソーナが僕の尻が硬過ぎて腱鞘炎になり、気遣ってべホイミをかけてあげたら二人から凄く微妙な顔をされた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

  翌日

 

 

 午後のオカルト研究部の部室に行ってみると何やら慌ただしい。話を聞いてみると、郊外の道端に負傷したシドーが倒れているのをリアスの使い魔が発見したのだという。僕の仲間達も引き続き探索していているにも拘らず先にシドーを発見できる辺り、リアスの使い魔は優秀らしい。

 イッセーくん達は今からシドーを救護しに行くと言うので僕も同行することにした。 

 

 

「っ!? イリナ!!」

 

 

 現場に行ってみるとすぐにシドーは見つかった。イッセーくんが真っ先に駆け寄る。今は教会と悪魔、対立する者同士ではあるが幼馴染同士思うところがあったのだろう。僕もシドーの傷の具合を確認する。

 

 

「これは……」

 

「誰がこんな……!?」

 

「う、ぐっ……」

 

 

 苦悶の表情を浮かべるシドー。確かにかなり酷い。黒い戦闘服が所々破け、なかなか凄惨な有り様だ。

 だが、命に別状があるレベルではない。べホマでもかけておけばどうにかなるだろう。

 

 

「イリナ……何があった!? 木場とゼノヴィアは!?」

 

「うぅ……、二人は……逃げたわ……。私だけ…逃げ…遅れ、て……」

 

 

 他の二人(キバくんとゼノヴィア)は無事らしい。その事は一先ず安心した。

 

 

「“アイツ”の力……、ハンパじゃない……」

 

「アイツ……?」

 

「気を、付け……て……」

 

「イリナ!?」

 

 

 “アイツ”とやらを警戒するよう忠告すると、シドーは気絶した。

 それにしても“アイツ”とは誰の事であろうか。普通に考えるのであれば昨日の老神父ラエボザかと思うが、あの司教はどう考えても近接戦は強くない。魔術と小手先の戦術で戦うタイプだ。

 彼女の傷は明らかに高い戦闘力を持つ者と戦ったことによるモノであろう。

 

 

「会長……!?」

 

 

 するとその場にソーナとシトリー眷属の者達がやって来た。

 

 

「来てくれたのね蒼那!」

 

「連絡をもらって来ないワケにもいかないでしょう。……ダメージが大きそうですね」

 

「はい……。聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は消耗した体力までは回復出来ませんので……」

 

「……私の家なら治療設備があります。椿姫!」

 

「いや、僕がべホマかけるよ」

 

 

 手早く上級回復魔法をかける。ほとんど一瞬でシドーの負傷箇所を癒すことができた。

 それでも、やはり疲れていたのか彼女(シドー)は穏やかに寝息を立てている。

 とは言えこれで安心だ。あとはそこにいる(・・・・・)下手人から話を聞くとしよう。

 

 

「そこにいるんだろう? フリードくん。説明してもらえるかな」

 

「チッ! 気付いてやがったか……。驚かそうと思ってたのに、あ~、ツマンネ!

 やあ!やあ!やあ! 餌を嗅ぎつけて来ましたね~! 御機嫌麗しゅう♪ クソ悪魔共とクソ人間!」

 

 

 近くの木の陰からフリードが出てきた。そして彼の言葉からシドーが自分達を誘き寄せるための餌だと知ることができたが……。

 罠にしては些か手緩い。一体何のつもりだろうか。

 

 

「おやおやこれは~♪ クソ悪魔に寝返ったアーシアちゃ~ん♪ クソ悪魔ライフ、満喫しちゃってる~ん?」

 

「テメェ! もしアーシアに手を出したら!」

 

 

 寝返ったというのは少し身勝手な物言いだと呆れるが……。イッセーくんも短気だ。もう少し話を聞くべきだろう。

 

 

「あーたたた!? ちょい待ち、ちょい待ち! そっちの赤毛のお嬢さんにお話があるんだって……」

 

「……話?」

 

 

 フリードがここにリアスを誘き寄せたのは、やはり話をするためであったらしい。

 しかし、話をしたければ電話でもメールでも伝書クルック―でも良かったんじゃ……。

 そんなどうでもいい事を思い浮かべていたが、なかなかの力の波動を感じたので気を引き締める。

 

 

「あぁ、ウチのボスがさ!!」

 

 

 上を見上げてみると、そこには一人の堕天使がいた。それも只者ではない。十枚もの翼を持つ男だ。

 

 

「……堕天使」

 

「それも翼が十枚、幹部クラスですわ」

 

 

 ヒメジマの言葉はなかなか興味深い。堕天使は翼が増えると位階が高くなる、と言うことだろうか。

 という事はレイナーレ達も鍛えまくれば翼が増えるのか?

 次の彼女達の目標ができた。

 

 

「……初めましてかな? グレモリー家の娘。我が名はコカビエル」

 

「……御機嫌よう、堕ちた天使の幹部さん。私はリアス・グレモリー、どうぞお見知りおきを」

 

 

 リアスが飽く迄優雅に挨拶する。魔王の妹、次期グレモリー家当主としての誇りからだろう。

 それにコカビエルも皮肉交じりに応える。

 

 

「紅髪が麗しいものだな。紅髪の魔王サーゼクス、お前の兄にそっくりだ、忌々しくて反吐が出そうだよ」

 

「それで? 私との接触は何が目的なのかしら? 幹部さんが直々にお目見えするなんて」

 

「お前の根城である駒王学園を中心に、この街で暴れさせてもらおうと思ってな」

 

「私達の学園を!?」

 

 

 これはまたなんと言うか……。事前に申告するだけ礼儀正しいと見るべきか。

 

 

「そうすれば嫌でもサーゼクスは出てこざるを得ないだろう?」

 

「そんなことをすれば、神と堕天使、悪魔との戦争が再び勃発するわよ!」

 

「フッフッフ…! エクスカリバーでも奪えばミカエルが仕掛けてくるかと思ったのだが……、

 寄越したのは雑魚のエクソシストと聖剣使いがたったの二匹だ。つまらん……あまりにもつまらん!」

 

 

 要するに確信犯だったということだろう。確かに彼ほどの力があれば持て余してしまうのも無理はないのかもしれない。

 

 

「では目的は最初から戦争を起こすことだと?」

 

 

 リアスが信じられないといった表情でコカビエルに問う。

 答えは是であった。

 

 

「そうだ……、そうだともッ! 俺は三つ巴の戦争が終わってから退屈で退屈で仕方がなかった! アザゼルもシェムハザも、次の戦争には消極的でな! 堕天使、神、悪魔は、ギリギリの所で均衡を保っているだけだ。 

 ならば……、この手で戦争を引き起こしてやればいい!」

 

「完全な戦争狂ね」

 

「だから! 今度は貴様等悪魔に仕掛けさせてもらう!」

 

 

 そう言って堕天使の幹部は二人の少女に大仰な口振りでこの地を選んだ理由を述べる。

 

 

「ルシファーの妹、リアス・グレモリー。そしてレヴィアタンの妹、ソーナ・シトリー!

 それらの通う学び舎なら、さぞや魔力の波動も立ち込め、混沌が楽しめるだろう! 戦場としては申し分あるまい!」

 

「無茶苦茶だ!」

 

「コイツ……、マジで頭がイカれてやがる!」

 

 

 サジくんとイッセーくんが思わず口にする。彼らでは到底理解できないだろう。

 一方、フリードは嬉しそうにケタケタ笑いながら纏うマントを広げようとする。

 

 

「ギャハハハハ…! ウチのボス! このイカれ具合が素敵で最高でしょー! 

 俺もついつい張り切っちゃうワケさ。こ~んなご褒美まで、戴いちゃうしさ~♪」

 

「……エクスカリバー……!?」

 

「もしかして……、アイツの持ってるの、全部!?」

 

 

 少年神父のマントの中にあったのは四本もの聖剣(エクスカリバー)であった。一本一本から確かな聖なる力を感じ取れる。

 

 

「……そのようですわね」

 

「無論、勿論、全部使えるハイパー状態なんざます! 俺って最強~♪ 

 あぁ~、この擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)も! ツインテールのお姉さんからゲットさせていただきましたんで!」

 

 

 フリードが聖剣自慢を終えると、コカビエルが高々と告げた。

 

 

「戦争をしよう。魔王サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーよ!」

 

 

 それは古の堕天使からの冥界の次代を担う若き悪魔達に対する宣戦布告であった。

 

 

 

 




まだら蜘蛛糸:DQⅢなどに登場する道具。大蜘蛛の巣から採れる糸。絡みついた相手の動きを阻害し、素早さを下げたり(Ⅲ、Ⅸなど)、行動不能にしたり(Ⅶ)する効果がある。
 
毒蛾の粉:DQⅢ、DQⅦ、DQⅨ、DQⅩに登場する道具。毒蛾から採取される燐粉。戦闘中に使うと、ⅢとⅦでは敵1体を混乱、ⅨとⅩでは麻痺させることができる。
 
盗賊の秘伝書:DQⅨに登場する秘伝書の一つ。戦いで、より多くの戦利品を得るための極意が書かれた書。盗賊の道を極めた者だけがこれを読むことが可能になる。これを所持している味方は、たまに魔物のアイテムを自動的に盗むことができるようになる。

ザラキ:DQⅡ以降に登場する呪文。敵1グループに「死の言葉」を浴びせて即死させる死の呪文。作中の詠唱は「ENIX ORIGINAL GAME BOOK DRAGON QUEST Ⅱ 悪霊の神々」より。


後半、急速にドラクエ分が減った……。
次回以降は頑張ります……。
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