時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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今更になってタイトルが分かりづらいのではないかと思い始めるというダメっぷり。
“時を失った英雄”は一応「ドラゴンクエストモンスターズ+」という漫画からなのですが……。


39話 ケルベロス

  

 

 夕闇はどんどん夜の暗さに変わる。街はこれから始まるであろう激戦を予期させるようなどんよりとした空だ。

 駒王学園の校門前にはキバくんを除くリアス達オカルト研究部のメンバー、ソーナ達生徒会の皆だ。

 学園の周りにはオパールの様な光沢を帯びた乳白色の結界が張られている。それを展開しているのはソーナ達である。

 

 

「リアス先輩、リュカさん。学園を大きな結界で覆っています。これで余程のことがない限りは外に被害は出ません」

 

 

 サジくんが僕とリアスに説明してくれた。確かにあれだけの力を持つ堕天使が無秩序に暴れまわったら大変なことになるだろう。

しかし、今まで様々な場面で戦ってきて、被害を抑えるために結界を張るという発想に至る事が無かった。ニセ太后だのブオーンだのとの戦闘でも全く思い付かなかったのだ。

 十代の若者に配慮で劣るとは……、少し反省すべきだろう。

 

 

「これは最小限に押さえるためのものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば、学園だけでなく、この地方都市そのものが崩壊します。

 更に言うなら、すでにその準備に入っている様子なのです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を私の下僕が捉えました。

 攻撃を少しでも抑えるために私の眷属はそれぞれの配置について、結界を張り続けてます。

 出来るだけ結界は維持しますが、学園の崩壊は免れないかもしれません。耐え難いことですが……」

 

 

 イッセーくん達が一層険しい顔をする。自分達の通う学校が破壊される可能性が強いというのは耐え難い事だったのだろう。リアスが代表して決意を口にする。

 

 

「……そんなことはさせないわよ。ありがとう、ソーナ。あとは私達がなんとかするわ」

 

「リアス、相手は桁違いの化け物ですよ? 

 確実に負けるわ。今からでも遅くないわ、あなたのお兄様へ―――」

 

「あなただって、お姉様を呼ばなかったじゃない!」

 

 

 ソーナの提案をリアスが拒否する。彼女の心情を慮れば不思議はないのかもしれない。

 リアスはこの街の管理者としてのプライドが強い。実の兄とはいえ他者の助けを素直に受け入れられないのだろう。

 確かに気持ちは分かるがこの状況では少々浅はかではないか、と思わなくもないが……。

 そんなことを考えているとイッセーくんがおずおずと尋ねてきた。

 

 

「えーっと……、別に魔王様を呼ばなくてもリュカさんがいれば何とかなるんじゃ……」

 

 

 その言葉を聞き、周りの皆が一斉に僕に目を向ける。

 僕のコカビエルに対する見解を知りたいらしい。それを踏まえ自身の考察を述べることにする。

 

 

「そうだねぇ、コカビエルだけなら僕と皆が力を合わせれば倒せるかと思うよ」

 

 

 ソーナ達が驚いた顔になった。この世界におけるトップクラスの実力者にあっさりと“勝てる”等と言えば驚きもするだろう。

 しかし、僕は苦々しい思いでこう続ける。

 

 

「……ただ、僕からすればコカビエルよりも、あのラエボザという神父の方が気がかりだ。

 あれは必ず何か仕掛けてくる。それも失敗してしまったときのために二重三重に対処を用意している、そういうタイプだ」

 

 

 先日出会った謎の司教―――小柄な体躯、老獪で残忍な眼光を放つ男。

 彼の放った呪文は正に驚きであった。“死の呪文・ザラキ”―――聞いた者を死に追いやる呪詛。まさかこの世界で受けることになるとは思わなかったのだ。

 調べてみたら、この呪文はこの世界にも冥界にも存在しないという。

 その事を踏まえると、僕と同じ異世界の者である可能性が強い。ひょっとしたらスーパーキラーマシンやいにしえの魔神と関わりがあるのかもしれない。

 

 

「だから、絶対に用心するべきだ。僕もサーゼクスくんを呼んだ方がいいと思う。それにソーナさんのお姉さんも……」

  

 

 僕の勧めにソーナは首を振った。

 

 

「私の所は……。リアスの、あなたのお兄様は、あなたを愛しておられるしょう。サーゼクス様なら必ず動いてくれるハズです。ですから……」

 

「っ……」

 

 

 ソーナが憂いを含んだ声色で姉を呼びだす事を拒絶する。何やらシトリー家では家族間に問題があるようだ。出来る事なら力になってあげたいが……。今はそれどころではないだろう。

 一方、リアスは不機嫌だ。了承しかねる、そう言いたげな表情だ。

 

 そこに、ヒメジマが予想外の事を言い出した。

 

 

「サーゼクス様には、私の方から打診しておきましたわ」

 

 

 その言葉を聞きリアスが目を剥く。

 

 

「朱乃!? あなた何を勝手に!」

 

「リアス、あなたがサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないのは分かる。けれど相手は堕天使の幹部。

 それに加えてリュカさんが警戒するほどの相手もいるのよ。あなた個人で解決するレベルを超えているわ」

 

「っ……」

 

「……魔王様の力を借りましょう」

 

 

 ヒメジマがリアスに厳しく告げた。普段はオカルト研究部の部長であり自身の主でもある彼女を常に立てるが、緊急時はきちんと苦言を呈する。No.2のポジションにある者としての非常に好ましい振る舞いにかなり感心した。

 

 

「……はぁ」

 

「サーゼクス様の軍勢はおよそ一時間程度で到着する予定ですわ」

 

「まったく、あなたには敵わないわ……。一時間ね」

 

 

 リアスも漸く納得したようだ。感情では兄に頼る事をよしとしなかったものの理性で動けるあたり、彼女も人の上に立つ者としての資質は十分にあるということだろう。

 

 

「イッセー、あなたにはサポートに徹してもらうわ。高めた力をギフトの能力でみんなに譲渡してほしいの」

 

「成る程! 了解です!」

 

 

 前回のフェニックス戦で新たに身に付けたという『譲渡』。確かにイッセーくん自らが戦うより自力で勝るリアスやヒメジマのパワーアップに使った方が良いかもしれない。

 僕も『不思議なタンバリン』で援護でもしようか………。

 

 

「リュカさんは前衛をお願いするわ。皆を守ってちょうだい」

 

「えっ……ああ、分かったよ」

 

 

 うーん……、タンバリンは次回以降に持ち越しか。まあ、頑丈さでは僕の方がリアスたちよりも上だろうし、そっちの方が向いているかもしれない。それでいいだろう。

 

 

「ライザーとの一戦とは違って、命をかけた戦いになるでしょう。でも、私達に死ぬことは許されないの! 

 可愛い私の下僕達、みんなで生きて帰って、この学園に通いましょう!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

 紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)が号令を掛け、眷属達が力強く答える。

 主従の姿には、すでに歴戦の王者と、それに付き従う忠勇なる家臣達の風格が備わっている。魔王の妹というのも伊達ではない。

 

 ……僕も街中に散らばっている仲間達に連絡を掛けておくか。

 

 こうして僕とオカルト研究部のみんなは古の堕天使が待ち構える学園へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 みんなと一緒に真正面の校門から堂々と敷地へと入る。

 そこには奇怪な光景が広がっていた。

 結界の魔力によって妙な色合いの光の揺らぎを帯びた空の下、広い校庭の真ん中に四本の聖剣が神々しく輝きながら浮かんでいる。その下には運動場の地面に巨大で複雑な魔法陣が書き込まれている。

 

 そして、その中央に初老の神父―――バルパー・ガリレイがいた。

 

 

「あれは一体……?」

 

「四本のエクスカリバーを一つにするのさ。あの男の念願らしくてな」

 

 

 イッセーくんの呟きに答える者がいた。

 コカビエルだ。上空に浮かぶ豪奢な椅子に足を組み腰掛けている。その姿は何とも様になっていた。

 

 

「それでバルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合できる?」

 

「三分も掛からんよ、コカビエル」

 

「そうか。では、そのまま続けろ」

 

 

 老神父から作業の進捗状況を確認したコカビエルは、今度はこちらを見下ろしてきた。

 そして、リアスに尋ねる。

 

 

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私達が―――」

 

 

 リアスの言葉をおとなしく聞いていたコカビエルであったが、途中から双眸が剣呑な光を帯びた。

 

 悠久の時を生きる堕天使が軽く手を振り降ろした。

 

  ドガアアァァァッッンン!!!

 

 近くにあった体育館が、一瞬にして瓦礫と化した。おそらく自身の不機嫌さと強大な力を示すためにそうしたのだろう。

 

 

「つまらん。全く以ってつまらん。まあいい。余興にはなるだろう」

 

 

 成る程、確かに強い。今の時点ではカラワーナ達とは比べ物にならないだろうということは一目で分かった。

 しかし、同時に喜ばしいことでもある。

 悪魔が下級悪魔から成長し中級、上級悪魔へとクラスチェンジする事は聞いていた。

 堕天使も修行次第ではこれくらいにはなれるということなのだろう。

 

 まあ、レイナーレ達には今のうちに「どんなに強くなっても周りにある建物を無闇に壊さないように」と言っておくか。一々直すのが大変そうだし。

 

 その一方で、イッセーくんは何やら武者震いしている。その腕に宿る赤龍帝ドライグと何やら会話しているようだ。

 

 

『ビビってるのか、相棒?』

 

「あんなデケェ光の槍、見たことねぇぞ! 次元が違うじゃねーか!!」

 

『あぁ次元が違うさ。アイツは過去の魔王達と神を相手に戦い、生き残った男だからな』

 

「そんな奴に勝てるのか!?」

 

『いざとなったら、お前の身体の大半をドラゴンにしてでも勝たせてやるさ』

 

 

 半永久ドラゴラムか……。そう考えると意外に悪くないかもしれない。妻からはどやされるだろうが。

 イッセーくんもそう思ったのだろうか。腹を括ったらしい。コカビエルを強く睨みつける。

 

 

「大半、ね。そういうレベルってことかよ!」

 

「折角来てくれたんだ。俺のペットと遊んでもらおうか」

 

 

 半笑いのコカビエルがパチンと指を鳴らす。すると、暗がりから大きな生き物が近づいてくる気配がした。

 現れたのは二匹の9~10mぐらいある犬っぽい魔物だった。大型の肉食獣の特徴として脚が非常に発達していて、そこから鋭い爪が生えている。あれに引っ掻かれたらけっこう痛そうだ。

 赤い目に、ギラギラ光る牙。口からは炎が漏れ出ている。

 そして何より頭が三つ(・・・・)あった。

 

 ふぅむ、首が三つというのは珍しいな。戦った事は無いが、竜皇帝バルグディスなるドラゴンが三つ首だというのは聞いた事がある。

 しかし、首の数と大きさを除けば『地獄の番犬』や『ケルベロス』に近いかな……。

 

“地獄の番犬”、“ケルベロス”―――共に異世界で遭遇した魔物。その姿は大きめの犬に近いが頭が二つという特徴がある。その両の首で素早く何度も噛みついてくるなかなか手強い敵だった。

 

 しかし、その大きさは精々4~5m。首は三つではなく二つだ。

 

 

「う~ん、何ていう魔物かな。地獄の番犬でもないしケルベロスでもないしなぁ……」

 

「いえ、ケルベロスで合ってるわよ!?」

 

「冥界の門に生息する地獄の番犬ですわ!」

 

 

 僕の呟きを聞いたリアスとヒメジマが教えてくれる。

 

 ふ~ん……。ああ、そういえば前にもこういう事があったっけ……。

 

 魔物の姿や特徴、名前には世界ごとに微妙な食い違いがある。

 例えば、“大魔道”という魔物は世界によって大きく異なる外見をしており、ローブに杖を携えた者や、大柄で胸当てと肩鎧を装備した者。小さなドラゴンを引き連れた者などがいた。

 

 そういえば古文書で呼んだがジパングの“やまたのおろち”って何で『やまた』なんだ?

 この世界にも『八岐大蛇』は居たそうだが、首が八つあったそうだし……。

 ジパングの伝承では首は五つなんだよなぁ……。だったら『五岐大蛇』じゃないか。

 それにヒュドラも、この世界では首は九つだし……。

 ひょっとしたらあの世界の奴は足も含めるのか? それならヒドラが九岐というのは合うな。

 でも、肝心のやまたのおろちは一岐分多くなるぞ……?

 

 

 そんな益体もない事を考えてしまう。そうこうしていると―――

 

 

「「「GYAOOOOOOOOOOOOOOOHH!!!!!」」」

 

「うおッ!!」

 

 

 三つの首が同時に咆哮し、かなり吃驚した。

 そんな僕を尻目に、リアス達は決死の面持ちでケルベロス達に向かって行く。

 

 

「人間界に持ち込むなんて……行くわよ! 小猫! 朱乃! リュカさん! 

 イッセーは手筈通り力を高めてちょうだい!」

 

「「はい、部長!」」

 

「いくぜ! ブーステッド・ギアァァッ!!」

 

 

 事前の打ち合わせの通りにリアス、ヒメジマ、トウジョウが迎え撃ち、その間にイッセーくんが力を倍化させ譲渡する構えだ。

 戦術としては正しい。しかし、(イッセーくん)神器(セイクリッド・ギア)の性質上、時間が掛かるのが難点だ。次からはそこら辺は改善していくように言い含めるとしよう。

 

 僕の方も皆に守備呪文(スカラ)でもかけた後に前に出るか……。ん?

 

 今まさにリアス達に向け補助呪文を掛けようとしていたとき、状況に変化があった。

 オカルト研究部の皆に向け“激しい炎”を吐こうとしていた二頭のケルベロスが、ふとこちらを見てきたのだ。

 殺意に満ちた十二の瞳と視線が交差する。

 

  次の瞬間―――

 

 

「「「GUOOOOOOOOOOOHH!!! 」」」 「「「GAAAAAAAAAAAAHH!!!」」」

 

 

 一頭につき三つずつ。計六つもの巨大な口から僕に向けて“激しい炎”が吐き出された。

 

 

「バギマ!」

 

 

 半ば条件反射的に中級真空呪文を唱える。それによって生じた風の障壁によって焔を遮断され、この身を焼く事はなかった。

 自慢の炎を防がれた事に一瞬だけ茫然自失となった三頭犬達だが、今度は直接に僕の頭を噛み砕くべく吶喊してくる。

 黒い猛犬が口から泡と炎を吹き、放たれた矢の如く向かってくる。

 その姿を見て、何故か場違いのこと思い出した。

 

 何だか懐かしいな、彼女(・・)との出会いも確かこんな感じだったか……。

 

 自分の元居た世界。西方の大きな街サラボナ。大富豪ルドマンが街の半分近くを所有する商業都市。

 そこで一人の女性と出会った。美しい蒼い髪の白い薔薇の様な(ひと)

 

 あの時もリリアンがこんなふうに向かって来たんだっけ……。まあ、いいか。

 

 遠い異世界に渡って来た。にも拘らず自分は今もまた良く似た風景を目にしている。

 その不可思議な因果に思うところがあった。

 故に、二頭のケルベロスに向け手を差し伸べる。

 

 

「怖がらなくてもいい。さあ、おいで―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「キャンッ、キャンッ、キャンッ!!」」」 「「「ガウ~、ゴロゴロゴロ……」」」

 

「ははは、くすぐったいよ。よしよし、いい子だから―――」

 

「「「「……………………」」」」

 

 

 三頭犬達がじゃれ付いてくる。体が大きいものだから舌まで大きい。それが六枚もだ。ケルベロス達が僕に親愛の情を込めて顔をペロペロ舐めてくれる。

 おかげで顔中ベトベトになってしまった。だが、そんなことはどうでもいい。

 まだ二頭とも前脚を肩に掛け、顔のみならず腕だの耳だのも舐め回しているが、顔を上げ上空にいるコカビエルを仰ぎ見る。

 コカビエルは―――というより他のリアス達も含めてだが、目をまあるく見開いて口をあんぐり開けていた。

 そんな彼に尋ねる。

 

 

「ねえ、コカビエルくん。この子たちの名前は?」

 

「…………何者だ、お前は」

 

 

 今や魔王の妹とその眷属など一切眼中になく、彼は僕だけを錐のような鋭い目で見ていた。

 

 

 




リリアン:Ⅴに登場。フローラの飼い犬の名。


ドラクエⅢが発売されてから何年も経つのに未だ解き明かされないやまたのおろちの謎。
どう考えても“ごまた”やん!!
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